また村上もとかで、「フイチン再見!」を読みました。
「フイチンさん」は上田としこの漫画で、連載当時手塚治虫の「リボンの騎士」に負けない人気を誇った作品です。私はさすがにこの漫画の連載時は幼児であり、また少女マンガを読む習慣も高校生になるまで無かったので、「フイチンさん」も上田としこも知りませんでした。しかし村上もとかは私より10歳年上であり、幼少の頃女の子の遊び友達の家にあった「フイチンさん」をリアルタイムで読んでいます。また「龍-RON-」でハルビンが出てくる話を書くときに、ハルビンで生まれ育った上田としこにインタビューして、それで上田としこの波乱に富んだ人生を知ってこの作品となったということです。「フイチンさん」が人気絶頂の頃、その担当の編集長が、中国大使館から抗議が来ることを恐れて連載をストップしようとする、というのが出てきます。確かにフイチンさんの絵を最初見た時に、現在ではタブー視されている「細くてつり上がった目」という類型的な中国女性描写なので、ちょっと危なさを感じました。しかし実際には中国から抗議は来たりせず、「フイチンさん」は上田としこの代表作として残りました。上田としこは「サザエさん」の長谷川町子の3つ上であり、この2人が女性の漫画家という職業ジャンルを確立したのだと思います。また上田としこは手塚治虫のある意味盟友で、お互いに励まし合う関係だったようです。村上もとかの作品らしく、読後感がとても爽やかです。
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ウルトラQの「甘い蜜の恐怖」
ウルトラQの「甘い蜜の恐怖」を観ました。このエピソードは初期に撮影されたものなのか石坂浩二が「アンバランス・ゾーン」という単語を2回言っています。そしてハニーゼリオンというローヤルゼリーの200倍くらいの効果があって生物を巨大化させる薬を発見した木村研究員役が、ウルトラマンでハヤタ隊員を演じた黒部進です。木村研究員の出世とその恋人の愛子に横恋慕している伊丹という別の研究員が、ある夜モグラをハニーゼリオンが保管してある温室に侵入させ、ハニーゼリオンを食べて超巨大化した大モグラ(モングラー)が鉄道を脱線させたり、農村を破壊します。伊丹の犯罪は目撃者がいてばれますが、彼は責任を取ろうと大モグラの至近でダイナマイトを爆発させますが、大モグラは無事でした。それで自衛隊?が出てきて戦車とミサイルで大モグラを攻撃し効果がありましたが、大モグラはモグラだけに土の中に逃れます。やがて地震が起き、一の谷博士は「大モグラめ、火山地層に激突したな!」と根拠無く断定して終ります。
元々江戸川由利子役で、ウルトラマンのフジ隊員役の桜井浩子も出ていますし、脚本も金城哲夫、とかなりウルトラマンを思わせる話でした。
NHK囲碁新春スペシャル
今日のNHKの囲碁の新春スペシャル、「定石対決」というのがあって、プロ同士の対戦に出題されたのは結果を白石だけで並べたものを再現するというもの。これ自体は確かに難しいですが、出題されたのは「大ナダレ定石」の一つの形です。びっくりしたのは右の女性プロ初段が、「この定石は存じ上げません」と言ったこと。しかも大ナダレ定石の途中の変化の多い所が分らないのではなく、小ナダレ定石と大ナダレ定石の分岐点で止まっていたので、そもそもナダレ定石というのをまったく知らないようでした。別にプロは定石を覚えるのに注力しなくてもいいと思いますが、ナダレ定石を知らないということは、呉清源さんとかの時代の棋譜をほとんど並べたことがないということでしょう。(ナダレ定石が生れたのは1930年代の戦前、そして戦後も流行廃りはあるものの{プロはナダレ定石や大斜定石のような手順が長い定石は嫌う傾向にあります。}盛んに打たれ多くの変化形が生まれました。)それはいくらAIの時代だと言ってもプロとしては恥ずかしいことだと思います。(故に武士の情けで名前はぼかしました。)なお、左の木部夏生三段はちゃんと最後まで再現出来ていました。
なお、左の棋譜は、1958年4月30日~5月1日の第1期日本最強位決定戦で、黒番が木谷実9段、白番が呉清源9段(互先、コミ無し)の棋譜で、実に右下隅、左下隅、左上隅の3隅で大ナダレ定石が出現しています。(白16は黒5の上、黒27は白26の右)
秋保大滝
謹賀新年
村上もとかの「JIN-仁-」
村上もとかの今度は「JIN-仁-」を読みました。この漫画はこれが連載されていた頃はもう漫画とは離れていたので、これまで未読です。幕末というと、大衆小説家達がもっとも取上げた時代です。そして登場する坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛、徳川慶喜、近藤勇、沖田総司、高杉晋作という誰でも知っている人物との絡みで話を作っていくというのも、大衆小説の伝統に従ったものです。もっとも坂本龍馬が司馬遼太郎が描いたものほぼそのままのキャラクターなのがちょっと難点ですが。まあタイムスリップものというのは沢山ありますが、この漫画では最先端の脳外科医が幕末にタイムスリップするという設定がある意味奇抜です。そして、何とその時代の日本でペニシリンを作り出してしまう、というのがまあ荒唐無稽ですが、楽しめる話でした。医学の関わるシーンも専門家の監修を受けたきちんとしたものであり、さすがに村上もとかで、手抜きがまったく無いです。
ジョージ・オーウェルの「1984年」
ジョージ・オーウェルの「1984年」を今さらながらに読了。オンラインの英会話で今この本を読んでいるという話をしたら、驚くべきことにほぼ全ての先生が「昔読んだ」と言いました。英語圏では教科書にも載っていたようです。その位英語圏では有名な本です。しかもこの本が描写しているディストピア(ユートピアの反対)が、長らく共産主義国に対するステレオタイプなネガティブイメージとしてある意味悪用されました。良く読めば、共産主義国に限らずあらゆる体制の国で、このような監視社会の未来があり得た筈ですが。現実問題として、例えばシンガポールでは、国が建てたアパートに住む人は、一日何回トイレに行ったかを政府によってモニターされています。また中国では、例えば上海では、ありとあらゆる所に監視カメラが置かれており、交通違反をするとたちどころに逮捕されます。そういう意味で残念ながら架空の未来の話ではなく、既に一部が実現してしまっています。それから興味深かったのは、この世界では歴史が絶え間のない書き換えの対象となっており、本当の歴史は何だったのかという努力が100%抑圧されています。これもここまでひどくなくとも、フェイクニュースが氾濫する現在既に起きてしまっていることのように思います。ただあまりに過大評価されているようにも思いますが、英語圏の人と話す上では読んでおくに越したことはない本と思います。
村上もとかの「龍 -RON-」
村上もとかの「龍-RON-」全42巻を16年ぶりくらいで読みました。この漫画はビッグコミックオリジナルで連載していたのをリアルタイムで読んでいましたが、実に1991年から2006年まで15年以上続いた漫画で、かつストーリーもあまりにも壮大で、連載終了後にまとめて読み直してやっと全体が分ったという感じでした。それで一度読むとなかなかもう一度読めなくて、16年が経ちました。最初の方は「六三四の剣」の延長線上にある剣道漫画っぽいですが、主人公が日中混血と分ったあたりから、どんどん複雑化していきます。また昭和史の有名人が多数登場し、北一輝、甘粕正彦、鮎川義介、石原莞爾、周恩来、毛沢東、杜月笙、魯迅、等々豪華です。またもう一つのラインとしてある意味昭和映画史的な面もあって、ヒロインの田鶴ていが女優から日本初の女性監督になりますが、このていは実在の女性監督である坂根田鶴子がモデルです。またていと絡む名監督として溝口健二、小津安二郎、山中貞雄をモデルにしたキャラクターが登場します。以前読んだ時はそれらの監督の映画をほとんど観ていませんでしたが、今回は例えば小津安二郎をモデルにした監督のエピソードでは、映画の一シーンのスチール的なページを見ただけで「ああ小津安二郎だ」と分りました。ちなみに村上もとかのお父さんは映画会社の美術担当でした。この漫画の随所に映画のスチール的な印象的なコマが登場します。この漫画の難点としては、主人公があまりに理想的人物過ぎて実在感に欠けるというのと、主人公が自らの生命を賭け、また多くの人の命を犠牲にして守り抜いた黄龍玉璧(高い放射能を持った物質で作られた、中国の皇帝の権威を支える玉璧)の秘密が、結局アメリカが核兵器の開発に成功して、ある意味無意味になってしまう、ということです。とはいっても、この漫画は白井喬二以来の日本の大衆小説の伝統の上に生れた漫画史上で強烈な輝きを放つ傑作であることは間違いありません。
アウター・リミッツの”Long Distance Call”
アウター・リミッツの”Long Distance Call”を観ました。今日はビリーの5歳の誕生日ですが、ビリーを溺愛しているお祖母ちゃんは、ビリーにオモチャの電話機を贈り、これを使えばいつでもお祖母ちゃんと話しが出来ると説明します。しかしすぐにその後、お祖母ちゃんは倒れ、そのまま危篤状態になります。臨終の直前に、息子はある女性に取られてしまったので、ビリーが本当の自分の息子だと言って息を引き取ります。その後ビリーはオモチャの電話機で誰かと話していますが、それは単にそういう振りをしているだけだと両親は思っていました。しかしある日ビリーは車の多い通りにいきなり飛び出し、危うく車に轢かれかけます。車の運転手がビリーに理由を聞いたら、誰かからそうしろと言われたとビリーは答えます。そして深夜にオモチャの電話機でビリーが誰かと話しているのを聞いた母親は、そっと近付いて電話機を奪い、そこから本当にお祖母ちゃんの声が聞こえるのに驚き、電話機を落して壊してしまいます。それを見たビリーは家を飛び出し、家の前の池に飛び込み、溺死します。救急隊員が必死で蘇生させようとしますが、思わしくありません。父親はビリーの部屋に行き壊れた電話機でお祖母ちゃんに話しかけ、ビリーの人生はこれからなんだ、ビリーを返してくれと必死に頼みます。その直後奇跡が起き、ビリーは蘇生しました。
ビリーを演じている子役が非常に上手いんですが、何とこの子は宇宙家族ロビンソンのウィル・ロビンソンを演じたビル・マミーでした。宇宙家族ロビンソンの時、11~12歳ぐらいだったと思いますので、年齢は合っています。
アウター・リミッツの”Specimen: Unknown”
アウター・リミッツの”Specimen: Unknown”を観ました。
宇宙ステーションの外壁に奇妙な茸のようなものが付着したのを捕まえて培養したら、それは花になりましたが、種子または胞子のようなものを撒散らして増えるのと同時に、花の中心から何かの毒ガスを出し、それを吸った動物はヘモグロビンが著しく減少し死に至ります。一人の研究者がそれで死に、残った4人は地球に帰還することにしましたが、途中でその宇宙植物が入れ物から出て増え、ガスを撒散らし4人は瀕死の状態になります。地球の基地側は、一旦その帰還ロケットをミサイルで撃って爆破することを考えましたが、中の乗組員の一人の奥さんがそこにいたため、情にほだされた司令官はロケットに着陸を命じます。しかし着陸のショックでその植物がロケットの周りに撒散らされ、乗組員を救助にいった者もガスにやられます。それでも何とか乗組員を救急車に乗せて病院に送った後、残った司令官と乗組員の一人の奥さんは、そこを脱出しようとしますが、車のエンジンの中まで植物が入り込み、エンジンがかかりません。植物に取り囲まれて絶体絶命の時に、雨が降り出します。そうするとその植物は悲鳴を上げながら全部やられてしまう、という何ともご都合主義的な終わり方でした。この程度のストーリーならトワイライト・ゾーンのように30分枠で十分だと思います。