トワイライト・ゾーンの”The Mind and the Matter”

トワイライト・ゾーンの”The Mind and the Matter”を観ました。アーチボルト・ビーチクラフト氏は20世紀の住人ですが、どこに行っても溢れている人にうんざりしていました。満員電車、エレベーター、そして彼のオフィス。ある日彼は彼にコーヒーをこぼした給仕の少年からその少年の友人が書いたという本、「心と物質」という本を贈られます。それには精神を集中させれば何でも思い通りになる、とあり、ビーチクラフトはすぐにそれを最後まで読み、それを部屋代の催促にやってきた大家を消すことで試してみて成功します。次の日、駅で全ての人間がいなくなるように願い、彼は一人だけになり、彼以外空っぽの電車で会社に行きます。会社に着いた彼はしばらくは一人を楽しんでいましたが、すぐに退屈しだします。それで地震を起してみたり雷雨を起してみたりしましたが、それは面白くありませんでした。次の日彼は、全ての人間が彼のような人間だったらいいと願って世界をそう変えます。しかしそれは彼のような非社交的な人間がぶつぶつグチを言いながら暮しているので、まったくいいものではありませんでした。結局彼は世界を元のように戻します。
うーん、話の進行はほとんど予想出来たという意味で今一つでした。

手塚治虫の「陽だまりの樹」

手塚治虫の「陽だまりの樹」を読了。これも学生時代にリアルタイムで読んでいました。作中に出てきてタイトルにもなっている「陽だまりの樹」(日当たりも良く、風もあまり吹かない庭にあった大木が、いつの間にか中が虫に食われてボロボロになり、ある時の地震で真っ二つに倒れたもの、作中での徳川幕府の象徴)のシーンが妙に記憶に残っています。それが今勤めている会社の姿ともちょっと重なっている所があります。
主人公二人の内、手塚良仙は手塚治虫の曽祖父(ひいじいさん)です。女好きでちゃらんぽらんな人物に描かれていますが、手塚が自分の先祖を格好良く描くのを遠慮したからではなく、ある程度事実だったようです。もう一人の伊武谷万二郎は、愚直でまっすぐである意味古武士の良さを保った武士ですが、結局滅び行く幕府と運命を共にします。漫画の幕末にありがちなように、西郷隆盛や坂本龍馬など有名人が登場しますが、それに寄りかからず手塚らしく重厚な物語を語りきっています。

ウルトラQの「ガラモンの逆襲」

ウルトラQの「ガラモンの逆襲」を(続けて)観ました。このエピソードでは平田昭彦が電波研究所長として初登場します。平田昭彦は東大法学部卒でこの手の「博士」が得意で、初代ゴジラの芹沢博士(ゴジラを倒した化学物質を発明)、ウルトラマンの岩本博士などを演じています。またレインボーマンでミスターKを演じたのも忘れられません。ちなみにウルトラマンの岩本博士は、ウルトラマンでさえ倒されたゼットンを一撃で倒す兵器を開発しています。このエピソードでは前回の電子頭脳がエイリアンによって盗み出され、それと前後してガラダマが多数降ってきてガラモンが一匹(一台)ではなく多数登場して東京を破壊します。またガラモンを作ったエイリアンがセミ人間として最後に正体を現わします。ちょっと造形がバルタン星人に似ています。このエピソードでも、ガラモンの電子頭脳が何故一個しかないのか、量産して地球に送り込めばいいじゃない、また宇宙船で来ているならその中に電子頭脳を置いておけば、と突っ込みたくなります。

ウルトラQの「ガラダマ」

ウルトラQの「ガラダマ」を観ました。続篇の「ガラモンの逆襲」を合わせ、ウルトラQの中では少ない本格的地球侵略もの。但し、色々と矛盾は多く、何故電子頭脳とガラモンを分けて送り込まないといけないのかとか、電子頭脳から電波が遮断されたらガラモンは動かなくなるだけの筈なのに死んでしまうのは何故か、と色々突っ込めます。但し造形としては円谷プロの怪獣(今回はロボットですが)の中では出色の出来で、人気が出たのは良く理解出来ます。ちなみにウルトラマンでは同形ではるかに小さいのがピグモンで復活しますが、こちらはロボットでは無く普通の怪獣でややこしいです。またガラモンは白黒(まあ白黒放送だったからですが)、ピグモンはカラー(全体にオレンジっぽい)と違います。
ちなみに東京大人倶楽部のウルトラQ特集では、M1号=朝潮関、説に続いてガラモン=甲斐よしひろ(甲斐バンドのリーダー)説を挙げていました。こっちはなるほど、という感じです。

NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 佐田篤史7段(2023年1月29日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が佐田篤史7段の対戦です。黒が下辺に展開して地模様を作ったのに白が左下隅への渡りを見ながら2線に置いて侵略を図ったのに、黒がカウンターで左下隅三々に入って、結局白の下辺の石は渡れず、競い合いになりました。その競い合いの中、白が黒の右下隅にプレッシャーをかけた結果、黒が裂かれ形で突き抜かれた格好になり右下隅を単独で活きなければならなくなりました。この時の白の踏み込みがやり過ぎで、黒は先手で活きました。これで黒はピンチを脱し、足早に左辺に展開出来て、黒の打ちやすい碁になりました。その後白は右辺を大きく囲いましたが、黒も中央の白3子を切り離すことが出来て、黒が優勢を維持しました。更に白は左下隅から延びる石に眼が無く、劫がらみで黒に攻められました。特に白が中央で取られていた白1子を助ける劫立てを打ったのに黒が受けずに下に延びて白の左下隅と中央を切り離したのが機敏でした。このため白は左下隅の劫を一手で解消出来ない一手ヨセコウになりました。劫材は黒が多く、右下隅で黒が白4子を取って得をしてなお劫が続くという局面で白の投了となりました。今回思ったのは、AIの形勢判断は序盤のは当てにならないと言うことです。AIは決して神の次元には到達していません。以前も書きましたが、AIは複雑な戦いは避ける傾向にあります。これはアルゴリズムを考えれば、読み切れない複雑なことになる手より、簡便な打ち方の方が限られた時間の中では上位に来ると言うことです。これでベスト8が出揃いました。

アウター・リミッツの”Fun and Games”

アウター・リミッツの”Fun and Games”を見ました。これまたフレドリック・ブラウンの「闘技場」の亜流みたいな話(スター・トレックにもありました)でした。ただ闘技場と違うのは、闘技場では2つの星の代表者が1名ずつ選ばれて戦うのに対し、このエピソードでは男女のペアがチームになって戦うということです。その戦いはアンデラというエイリアンが自分達の楽しみのためにやっているものでした。負けた方の星は5年以内に滅ぼされます。地球側のチームは、元ボクサーのベンソンと、離婚歴のあるローラという女性です。敵側はカルコ星人で地球人より原始的で、ブーメランを武器としています。カルコ側は限定された食料を2倍にするために、男の方が女性の方を殺してしまいます。ローラはベンソンに同じようにするよう言いますが、ベンソンはそれを了承せず、ローラは結局半分の食料を持って逃げ出します。ベンソンとカルコ星人の男の方は、溶岩の川にかかる丸木橋の上で争いになりますが、結局ローラが放置されていたブーメランを投げてカルコ星人の男を倒します。
なお、脚本家はフレドリック・ブラウンの「闘技場」を読んでいなかったようで、そこからアイデアを得たのではないようです。

ウルトラQの「バルンガ」

ウルトラQの「バルンガ」を観ました。これまで観たウルトラQの怪物の中では、一見地味ですが一番大きな被害を与える不気味な生命体です。要はエネルギーを全て吸い取ってどんどん巨大化していきます。最後は宇宙空間で爆発させた核爆弾に惹かれて宇宙空間に出ていき、そこで太陽という格好のエサ?を発見して太陽に向かっていく、というオチです。宇宙戦艦ヤマトの漫画版に似たような生命体が出ていて、そちらもオチは太陽を食べようとして逆に吸収されてしまう、でした。もしかすると元ネタはこのバルンガかも。また、これまでレギュラー陣は色んな怪獣に襲われても怪我したり死んだりはなかったですが、このエピソードでは一平が落ちて来た車の破片を背中に受けて瀕死の重傷を負い、バルンガによって電気が吸い取られて病院が手術を行えず危機に陥るという、シリアスな展開が初めてありました。

光線療法用のLEDライト

ここ1年ぐらい、またメンタル面でうつっぽく、特に最近は調子が悪く調べてみたら「冬期うつ」の症状そのまま(過食=特に甘いもの、過眠、悪夢を見る)でした。その治療のための光線療法用に買った10,000ルーメンのLEDライトが到着しました。(朝強い光を浴びることで体内にセロトニンが作られて気分が安定化する効果があります。)ただ強烈な明るさでこれを直視すると間違いなく眼を痛めるため、安いサングラスも取り寄せ中。ルーメンは光束=光の量=明るさの単位ですが、100Wの白熱電球が大体1,500ルーメンですから、単純計算でその6.7倍です。これで消費電力は100Wですから、LED様々という感じです。ハロゲンランプでこの明るさを実現しようとしたら、かなりのW数になると思います。本当は中でどうやって高輝度LEDを駆動しているかにも興味がありますが、取り敢えずは治療優先で分解したりはしません。

手塚治虫の「グリンゴ」

手塚治虫の「グリンゴ」を読了。これは手塚の正真正銘の遺作です。確かビッグコミックだったと思いますが、連載をリアルタイムで読んでいました。主人公の名前は「日本人」=ひもとひとし、つまり「にほんじん」です。手塚の人生の最後になって日本と日本人を改めて書こうとしたものです。その日本が南米のある大国に総合商社の支店長として赴任し、派閥のボスの失脚でたちまち左遷され、政府軍とゲリラが年中戦っている国へ飛ばされ、そこでレアメタルの鉱脈を発見して功績を挙げるものの、ゲリラがアメリカの援助を受けた政府軍に敗れ、ジャングルの中を逃げている時にインディオの部族に助けてもらい、最後は日本人ブラジル移民の「勝ち組」がジャングル奥地に作った村に捕まって…とかなり波瀾万丈のストーリーです。そして主人公が背が低いものの、相撲が得意で、というのが手塚漫画の主人公としてはかなりユニークです。その主人公が日本人村で奉納相撲に出て10人抜きすればフランス系カナダ人である奥さんと娘がその村で受け入れられる、その試合が始る直前で惜しくも終ってしまいます。手塚はこの連載中に一度入院し、開腹手術して手の施しようのない胃がんであることが分り(本人は知らされず)一度退院してまた入院し最後の方はベッドの上で描いて連載を続けます。巨匠に合掌です。本当に最後まで読みたかった作品でした。最後の日本人村ですが、手塚にとって戦時中の振り返りたくない記憶であるのと同時に、それでも懐かしさを抑えきれない、そういうものとして描写されているような気がします。

手塚治虫の「アドルフに告ぐ」

手塚治虫「アドルフに告ぐ」を読了。私の大学生時代に連載されていたものですが、掲載誌が週刊文春で漫画誌ではなかった関係で未読でした。総じて手塚の晩年の大人向けは重厚な名作が多いですが、これも「まあ」 その一つに入ります。
物語の中心になっているのは「アドルフ・ヒトラーにユダヤ人の血が混じっている」ことを証拠付ける文書です。ちなみに、この説は機密だったのではなく、第2次世界大戦中から連合国の間でも知られており、例えばアメリカに亡命したユダヤ人作曲家のクルト・ヴァイル(カート・ワイル、「マック・ザ・ナイフ」や「セプテンバー・ソング」で有名です)は、1942年に「シッケルグルーバー」という歌曲に曲を付けています。


その歌詞の内容はまさにヒトラーの父方の祖母の姓がシッケルグルーバーで、その子であるアロイス(ヒトラーの父)にユダヤ人の血が流れている=同時にヒトラーにも、ことを揶揄したものです。ちなみにヒトラー自身も自分の血統についてははっきりしたことは知らず、こうした噂が出てから調査させたようです。それに関係した一人の弁護士がニュルンベルク裁判の時に、ヒトラーの祖母が働いていたのはユダヤ人の家で、そこの息子の一人とヒトラーの祖母の間に生まれた私生児がヒトラーの父である、という証言をしています。この証言はその後の調査で、その街にユダヤ人が住んでおらず、またヒトラーの祖母が働いていた家もユダヤ人ではなかったことが分り、虚偽とされています。ちなみについ最近ロシアがユダヤ人が大統領であるウクライナをナチ扱いする理由として、ヒトラー=ユダヤ人説をまた持ち出し、イスラエルとウクライナがそれに激しく抗議しており、現代まで生き続けている風説です。

そういう意味で物語の中心を成す文書は、歴史的には存在しませんし、またお話の全体が史実に基づく以上、ヒトラーがユダヤ人の血統であることを暴かれて失脚する、などということは起こる筈が無いので、その辺りが今一つと思います。更には峠草平という主人公兼狂言回しが、最後までその文書を隠し通すだけであり、何故さっさと公表される手段を取らないのか、場合によっては英米ソ他のスパイに売っても良かった筈ですが、最後まで疑問が残るまま、ヒトラーが死んで文書は無意味になります。
ただ、同じアドルフという名前を持つ日本人とドイツ人の混血と、ユダヤ人が、幼馴染みでありながら対立する立場にしたのは手法としては上手く、その二人が最後はイスラエルとPLOに別れて殺し合う、というのもさすがに手塚らしいスケール感があります。