栗田信の「醗酵人間」のバックグラウンド

栗田信の「醗酵人間」って戦後SFの最大の奇作と言われていて、しかし長らく古書店でも流通していない幻の本だったのが、約10年前に復刻されました。それで私も買ったのですが、超C級という出来映えで、そのまま忘れていたのですが、ちょっと思う所あって色々調べて、バックグラウンドらしきものを付き止めました。
まず出て来る「醗酵人間」というのは墓場から蘇って、お酒とかの醗酵物を口にすると体が膨張して怪力になり、おまけに空まで飛ぶんですが、その叫び声が「こけっか、きっきっ」なんです。これが読んだ人に強く印象に残るんですが、実は水木しげるが「コケカキィキィ」という似た音のタイトルの漫画を描いています。内容は醗酵人間とは関係ないんですが、実はこのタイトルも水木のオリジナルではなく、戦前から戦後にかけての関西地方で流行った紙芝居の「コケカキイキイ」がオリジナルです。これは墓場から蘇ったコケ太郎というのが、戦うというもので、水木の「ゲゲゲの鬼太郎」の先祖の一つです。(直接の先祖はやはり紙芝居の「墓場奇太郎」です。そもそも水木しげる自身が紙芝居作家でした。)それで栗田信は1925年の大阪生まれなので、ほぼ間違いなく子供の頃、この「コケカキイキイ」の紙芝居を見ていると思います。それでおそらく、栗田少年が文字の「コケカキイキイ」ではなく、紙芝居屋が節を付けて語った「こけっか、きっきっ」の方を記憶していて、それをそのまま使ったんじゃないかと。ちなみに醗酵人間もコケ太郎と同じく、墓場から蘇ってますから、ルーツはやはりそこかと思います。

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