アウター・リミッツの”The Man Who Was Never Born”を観ました。これは6番目のエピソードですが、これまでので一番良かった「SF悲恋もの」でした。
ある宇宙飛行士が宇宙を航行中に、時空を超えるトンネルのようなものの中にロケットごと吸い込まれます。地球に帰還してみると、そこはまったく違った荒涼とした風景になっていました。そこには顔が腫れて怪物のようになった人類がわずかに棲息していました。飛行士は1963年から2148年の未来に移動していました。その怪物のような人、アンドロの説明によると、ベルトラム・カボット・ジュニアという生物学者が、宇宙のウィルスを操作して新種のウィルスを作り出し、それが人々の生殖能力を奪い、また姿を醜く変えて、風景すらも荒涼としたものに変えてしまったと言います。最後の人類として死ぬのを待つだけ、と言ったアンドロに対し、宇宙飛行士は元の時代に戻って、そういう未来が起きないように変えるべきだと言い、アンドロを連れて再度元の時代に戻ろうとします。首尾良く元の時空トンネルみたいなものに入れましたが、宇宙飛行士は何かの理由で消えてしまいます。アンドロは一人で昔の地球に来ました。そこでカボットを殺害しようと計画します。しかし、時代は早すぎ、まだカボットは生れていませんでした。そのため、将来カボットの母親となるノエルがジュニアの父であるカボット・シニア-と結婚するのを阻止しようとします。「卒業」ばりに結婚式に乱入したアンドロは、カボット・シニアを銃で撃とうとして失敗し、それまで催眠術で本当の姿をごまかしていたのが、多くの人に正体を見られてしまいます。しかしノエルは何故かそんなアンドロを愛してしまい、結婚式を抜けてアンドロを追います。ノエルはアンドロに彼の世界に連れて行ってと頼みます。追っ手を振り切って二人はロケットで未来にもどろうとしますが、ノエルがカボット・シニアと結婚しなかったことによって未来が変わってしまい、その結果アンドロ自体が生れてこないことになります。(これがタイトルの意味で、カボット・ジュニアとアンドロの両方をかけていて秀逸です。)結局宇宙船の中でアンドロは消滅してしまい、残されたノエルが泣き叫ぶ所で終わりになります。通常未来の地球が滅んでいるとしたら、核戦争が通常パターンですが、新ウィルスによって人類が滅亡しかけるという設定が珍しいですが、COVID-19を経験したばかりの私達にはなかなか笑えない話でした。
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トワイライト・ゾーンの”Eye of the Beholder”
トワイライト・ゾーンの”Eye of the Beholder”を観ました。タイトルはある英語のことわざを知っていればすぐにピンと来ます。そのことわざは、”Beauty is in the eye of the beholder”(美はそれを見る人の眼の中にあり→蓼食う虫も好き好き)です。
ある病院で、顔を包帯でグルグル巻きにされたジャネット・タイラーという若い女性がベッドに寝ています。彼女は非常に醜い顔をしていて、子供とすれ違うと驚いた子供が必ず振り返る、という人です。今回11回目の整形手術を受けたものですが、包帯を取った結果、医者は「何の変化も無かった!」と叫びます。そして悲しみのため半狂乱で逃げ出したジャネットですが、その顔は実に美人です。それと対称的にその病院の看護師も医師も、すべて豚鼻で口はひん曲がっていました。(写真参照)そうです、この世界ではこういう顔が普通で、ジャネットのような顔が異常でした。医者は彼女の最後の選択肢は、彼女のような顔の人間が集まっているコミュニティに行ってそこで暮すことだと言い、そこからの迎えの男性を紹介します。そちらもいわゆる二枚目でした。彼はジャネットに”Beauty is in the eye of the beholder”ということをよく考えるようアドバイスします、という話でした。
まあタイトルである程度お話は推測出来ました。医師や看護師の顔がもうちょっと捻りが欲しいというか、もっとエイリアン風に毒々しくしても良かったのではないかと思います。このエピソードの顔は醜いというよりコミカルです。
NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 六浦雄太7段(2022年10月16日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が六浦雄太7段の対戦です。この両者は2020年8月にも同じくNHK杯戦で対戦しており、その時は六浦7段が勝っています。布石では黒が3隅で実利を得て地合いでリードし、白はそれに対して上辺の模様で対抗するという碁形になりました。右辺は白が2つ、黒が1つの弱石同士の絡み合いになりましたが、黒が右辺上方の白と上辺の白との連絡を脅かしながら、中央で白1子を緩めたゲタで取って弱石がなくなったので、これで黒のリードとなりました。それに対して右辺下方の白は依然として弱く、白はかなり頑張らないといけませんでした。黒は左下隅で白が小ゲイマに締まっていた所に後からかかって行き、左辺と左下隅を若干侵略しました。白はこの黒を狙って行きましたが、黒は白の右辺下方の石の連絡を脅かしつつ手厚く打って眼形を作り、白に付け入る隙を与えませんでした。黒はここを先手で切り上げ、上辺の白模様の削減に回りました。黒はここで強く白模様の中に踏み込んで行きましたが、白も数ヶ所に断点があって強くは戦えず、黒は踏み込んだ一団を無事に連絡させることが出来ました。盤面10目以上の黒のリードでヨセに入りましたが、白はウスミがあって右辺上方の石と上辺の連絡が切れてしまいました。これを見て黒が右辺で下に1線にハネたのが見合いの好手で、右辺下方の白が死ぬか、右辺上方の白が黒から見た花見コウになるかの見合いでした。結局右辺下方の白が死に、ここで白の投了となりました。
アウター・リミッツの”The Sixth Finger”
アウター・リミッツの”The Sixth Finger”を観ました。初めてあまりホラー系ではなく、純粋なSFものとして楽しめた作品でした。あるウェールズの炭鉱町で、一人の教授が何かの実験を繰り返しています。彼は核爆弾の開発に携わったことを後悔し、今度は人類をよりましなものにする機械を作ろうとしています。それは生物の進化のスピードを加速する装置であり、既にチンパンジーでの実験は成功し、そのチンパンジーは人間並みの知性を得ていました。博士にパンを届けに来たキャシーは、ちょっと頭が弱いのですが、自分も賢くなりたいと言い、博士の実験台を志願します。しかし、彼女の血液はその実験に不適でした。キャシーは今度は恋人で、頭が良いにも関わらず炭鉱での肉体労働をやっていて不満を持っていたグリムを連れてきます。グリムは実験に志願します。実験は成功し、グリムの前頭部は張り出し、手には6本目の指が生えかけていました。グリムはまた人の心を読む力も身につけます。そして本を持ってくるように言い、超絶スピードで多数の本を読み出します。その中にバッハの平均律の楽譜を見つけると、博士のピアノでグリムはプロ級の腕でピアノを弾き始めます。もちろんそれまでグリムはピアノに触ったこともありません。一晩経つと、グリムは更に進化して、人類の100万年後の姿になったと言いますが、その姿はまるでエイリアンそのものでした。人々がグリムの姿を見て恐れおののくのに怒ったグリムは一度は町を破壊しようとしましたが、しかしその後も彼の進化は続き、ついに怒りの感情を超越した段階に達します。そしてキャシーに、肉体と霊魂の対立を超越した最後の段階に進化するのを手伝って欲しいと言い、再度進化機械の中に入ります。しかしキャシーはレバーを進化ではなく退化の方に倒し、グリムを元の姿に戻そうとします。その過程で戻すの行き過ぎて類人猿になったりしましたが、最後はついにグリムを元に戻すことに成功します。グリムは優しくキャシーに触れましたが、あまりに短時間に進化と退化を繰り返した副作用で、グリムは死んで行きます。
しかし、このエピソードが放映された1960年代では、核兵器開発が戦争を勝利に導いたという単純な技術賛美ではなく、一種の罪悪感が取上げられているという点で興味深かったです。なお、グリムを演じていたのは、0011ナポレオン・ソロでイリヤ・クリヤキンを演じていた、デヴィッド・マッカラムです。(おそれイリヤのクリヤキンという冗談が昔ありました。もちろん恐れ入谷の鬼子母神のもじりです。)
折原浩先生の「マックス・ヴェーバー研究総括」
折原浩先生の「マックス・ヴェーバー研究総括」、本日先生より贈っていただき届きました。但しAmazonで9月30日に別に予約したものはまだ届かず、今日見たら「注文後1~2ヵ月で発送」になっていました。(発送予定自体は10月14~16日)この本は、元々2019年7月の「東大闘争総括」の書評会での質問や批判に応答するというのが執筆動機であり、本来は2020年のヴェーバー没後100年の年に出る筈だったのが遅れに遅れてやっと出たものです。折原先生自身のご病気、奥様のご病気、またコロナのパンデミックによって、おそらくはスペイン風邪で亡くなったと思われるヴェーバーとの関連での記述が追加になったとか、色々な理由で遅れています。
人名索引に私の名前が出ていたので、また羽入批判関連かと思ったら、私が大学時代に先生のヴェーバーの「経済と社会」解読演習に参加していた、という話でした。
中身は、文字通り「総括」でヴェーバー研究を始めた動機、東大紛争での闘争と学問、宗教社会学の公開自主講座の話から始って、「経済と社会」の編纂問題のまとめ、宗教社会学3部作(「ヒンドゥー教と仏教」「古代ユダヤ教」「儒教と道教」)の読解とまとめ、などです。この3部作は本当に難解なので、個人的にはとても助かります。
久し振りに包丁研ぎ
最近の手紙本はひどい…
以前、J社で手紙文自動作成というプロジェクトに関係していました。その時市販の手紙の書き方本・文例集を何冊か買って調べましたが、中身は噴飯ものでした。最近のはどうかと思って、Amazonで一番売れていそうなの(敢えてタイトルと著者は書きませんが、出版社は主婦の友社)を買ってみましたが、さらにレベルが落ちていました。封筒ののり付けする所に書くのは「メ」じゃなくて「〆」なんですけど…
芳賀矢一・杉谷代水合編「書翰文講話及び文範」では、元は「〆」だったのを明治になって男性で「緘」「糊」「封」などを書く人が増えたと言っています。1896年の樋口一葉の「通俗書簡文」では、一葉は「状封じて墨を引くこと古くよりの法なりとぞ、封、緘、鎖、糊、いづれも女のものならず、まして此處に検印おしたるいかなる心にかと怪し、ただ〆とばかり書てありぬべきを。」として、女性はただ「〆」と書きなさい、と教えています。(この部分、故山本夏彦氏がそのエッセイの中で何度か引用していました。尚、「緘」は封緘紙の「緘」で現在では「かん」としか読みませんが、「通俗書簡文」は「しん」とルビを振っています。「書翰文講話及び文範」は「かん」です。)
それから日付は手紙の本文中に書くもので、封筒に書く必要はないと思いますが。(履歴書を郵送する時とかは別)
手紙の本を買うんだったら、大正時代以前のものが良いです。戦後のものは買う価値無いです。
CASIOの電子辞書、中古で買い直し
カシオの電子辞書XD-GF10000を2009年12月に買って、長い間愛用して来ました。しかし、掃除の時間違えてゴミ袋の中に落とし、そのまま気が付かないでゴミとして出してしまったようです。仕方が無いので新しいのを買おうとしましたが、同等レベルの辞書が入っている新品は3万円以上します。ふと思ってAmazonで「安い順」で並べ替えてみたら、中古品が1,500円~3,000円くらいで多数出てきました。それで2,160円でこのモデルを買いました。前に持っていたのよりほんの少し前のモデルですが、コンテンツ的にはほぼ同じです。最初音声再生(英単語の発音確認)が上手くいかなかったので、価格なりかな、と思ってがっかりしていたのですが、試しにヘッドフォンをつないだら音声がちゃんと聞こえて、「ヘッドフォン←→スピーカー」の切り換えスイッチがヘッドフォン側になっていただけでした。英語に関していえば、最新の語彙はあまり必要ではなく、そういうのはネットで調べればいいので、今回の中古品購入は満足出来るものでした。なお、中古品が多数出まわっている理由ですが、高校入学とか大学入学のお祝いとかでもらったり買ったりする人が多いんでしょう。それで卒業したら売っているのかな、と。
西洋剃刀の研ぎについて
久し振りに剃刀ネタ。西洋剃刀(ストレートレザー)で入浴時に髭を剃り始めて3年9ヵ月くらいになります。現在常用している剃刀は7本で、月曜日はこれ、火曜日はこれ、という感じでローテーションして使っています。(コレクションの全容はここを見て下さい。)この剃刀の研ぎですが、始めた頃色々試行錯誤して、砥石で剃刀をキレキレにするのは結構大変で(私は砥石は57種67本持っていて日本刀を含めて色々な刃物に対応可能です)、簡単で効果的な方法として、ラッピングという革砥(ベルト型ではなく、テーブルに置いて使うタイプ)にダイヤモンドペーストの#8000と#14000を塗って研磨する方法で、これまではかなり満足出来る結果が得られていました。
しかし、最近になってもっとも古くから使っているDovoとThiers-issardの2本が、このラッピングでは切れ味が回復しなくなりました。それで何回か色々な研ぎ方を試行錯誤して分った結果ですが、写真の別のThiers-issardの剃刀の上部に見える光った部分、この部分がラッピングを繰り返した結果として無くなると、いくらラッピングしても元に戻らないということが判明しました。それで切れ味を復活させた手法ですが、
(1)革砥ではなく、ちゃんとした砥石で最低でも片面200回以上、この光った部分がちゃんと形成されるまで研ぐ。なお、良く剃刀の研ぎ方として説明されているような力を入れない研ぎ方ではなく、それなりに力を入れ、またエッジ部を押さえるようにして研ぎます。丸みがある刃の場合は、いわゆるX字研ぎのように傾きを変えて交互に研ぎます。ちゃんと研げていれば砥石の上に黒い金属粉を含む液体が出てくる筈です。
(2)番手は私は、1次研ぎでは#2000の人造砥石(ビトリファイド法)、2次研ぎで天然砥石(巣板)(おそらく人造砥石なら#4000~#6000ぐらい)を使いました。その後、3次研ぎで人工砥石の# 12000を使いました。
(3)次にラッピング(革砥に研磨ペーストを付けた研磨)で、# 8000と# 14000のダイヤモンドペーストを用いて刃をシャープにします。
(4)最後にベルト型の革砥で研磨剤無しでストロッピングして仕上げます。
ポイントは(1)の時にきちんと刃の端部の光る部分が形成されるまで研ぐ、ということです。
なお、研いだ後の刃のシャープさの確認として、爪に当てる、というのが良くやられますが、包丁ならこれでいいですが、剃刀では不十分で、手を切らないように注意しながら、指の腹を軽く刃に当てて、シャープさと刃が十分薄くなっているかをチェックします。(指を切らないように十分注意してください。)
なお、ついでに世の中には、革砥信者、特にコードバンの革砥の信者みたいな人がいて、砥石やペーストを使わなくても革砥だけで切れなくなった剃刀の切れ味が戻る、と主張している人がいますが、ペーストを付けない革砥に剃刀を研磨する能力はありません。
以前紹介した英語のシェービングの教科書に載っていた記述の日本語訳を再引用します。
「一度きちんと砥石でカミソリを研いだ後は、革砥でストロッピングさえすれば常にカミソリを良い状態に保つことが出来るという主張は、革砥のメーカーが宣伝文句として主張したものです。それらによれば革砥の表面を「金属化」したとか、特殊な表面処理をしたとか述べられています。しかし、読者の皆様はそのような「魔法の革砥」には注意していただきたいです。そういった処理は革砥の性能を若干改良するかもしれませんが、それ以上の効果があるということは否定します。革砥とカミソリの性質を良く理解すれば、革砥が砥石を置き換えることが出来ないことは明白です。」
革砥は日常のお手入れとして、微小な刃こぼれの断片が刃に付着しているのを除く、刃のバリを取る、刃についたゴミや脂を除去する、ということでしかなく、ペースト無しの革砥だけで剃刀の切れ味が維持されるということはありません。
NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 大西竜平7段(2022年10月9日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が大西竜平7段の、まあ言ってみればイケメン対決でした。大西7段の碁は大西ワールドという独特の世界観が特長ですが、本日の碁はどちらかと言えば、鶴山ワールドとも言うべき、力と力の全面対決という碁でした。布石は黒が盤面の右側、白が左側を占めあうプロの碁では比較的珍しい展開になりました。単純な囲い合いでは先番の黒に利があるため、白は右上隅に肩付いた石から中央に展開し、これを黒が攻める碁になりました。中央の押し合いで、白がじっと伸びて我慢すべきなのをハネていったのが、私から見れば打ち過ぎで、鶴山8段が待ってましたとばかりに切りました。白がそれに対し黒の反対側を切ったのがやり過ぎの第2段で、鶴山8段の大好きな碁形にしてしまいました。結局白は頑張れず中央でタネ石の4子を取られ、右辺から右上隅に展開して、結局振り替わりになりましたが、白の中央の損が大きく、ここで黒が優勢を通り越して勝勢になりました。ただ大西7段の碁は大体このように中盤まで劣勢で、ヨセで逆転して半目勝ちという碁が多いそうで、この碁も黒が固く打ったのと、途中小さなミスもあり、半目勝負かという局面になったこともありました。しかし結局黒の2目半勝ちに終わりました。大西7段は少し中盤の打ち方に誤算があったように思います。