全段差動プッシュプルアンプに三端子レギュレータって?

ぺるけさんの全段差動プッシュプルアンプの最終段には、定電流回路として三端子レギュレータ(LM317Tなど)が使われていて、またそれを多くの人が真似しています。私はこれに疑問を持っているので、定電流ダイオードと三端子レギュレータで波形を比べてみました。定電流ダイオードの方がほとんどスイッチング電源のノイズだけできれいな直流の波形を出したのに対し、今作ろうとしているPCL86全段差動プッシュプルアンプの元になっている回路の指定通りに三端子レギュレータに抵抗とコンデンサーを付け、DC7.7Vぐらい印加した時の波形はごらんの通りでした。すぐ分かるようにリップル(電圧変動)が出ていますし、ノイズもかなり乗っています。確かに平均電圧は±0.05Vくらいでそれは安定していますが、私はアンプの増幅回路の中に三端子レギュレータを使いたいとは思いません。そもそも定電流ダイオードよりFETの方がいいとか書いている人もいますが、定電流ダイオードはFETそのもの(FETのゲートとソースを短絡させたもの)です。最近の照明用の超超高輝度のLED用などで、定電流ダイオードを並列にして使用することは普通に行われています。

真空管アンプ-後少しです。

真空管アンプ、かなり進み、部品は後4つだけ。配線箇所は残り20箇所くらいです。ちょっと配線がごちゃごちゃになって来ましたが取り敢えず一度動かして動くのが確認出来たらやり直します。
カップリングコンデンサーは最初HGCのオイルコンデンサーを使おうとして一度取り付けましたが、一個半田ごてを当てて表面を溶かしてしまったので、ASCのポリプロピレンフィルムコンデンサーに交換しました。まあこの辺はどうせ色々変えて遊びたい所です。連休前には何とか配線が終わるかなと思います。

定電流ダイオード(CRD)の補償抵抗について

定電流ダイオードの補償抵抗の抵抗値の決め方ですが、図はSEMITECのEシリーズのCRDの温度によるピンチオフ電流の変化を示したものです。これによるとE-153(1.5mA)で20℃から50℃に温度が上がった場合、実に17%もピンチオフ電流が低下します。
一方で炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)の温度係数ですが、-200ppmから-800ppmとのことです。%に直すと、-0.02%から-0.08%ということになります。この値では、温度が上昇した場合にCRDでのピンチオフ電流減少を全部補うということにはなりません。おそらくですが、温度上昇分を見込んで、あらかじめ定電流値をかさ上げしておくという意味が大きいのだと思います。

真空管アンプ-定電流回路取付け

真空管アンプ。ヒーターへの配線が長すぎてごちゃごちゃしていたので短くしてすっきりさせました。それから定電流回路2つを実装、左側の2枚のユニバーサル基板です。といってもご覧の通り、定電流ダイオードに抵抗を並列につないだだけです。初段が定電流ダイオード1.5mAのを一本で抵抗は1.8KΩ、電力増幅段が定電流ダイオード4本並列で56mA、抵抗が2KΩです。この抵抗は補償抵抗といって、定電流ダイオードは温度が上がると電流値が下がるので。それを補正するものです。真空管アンプのシャーシーの中はそれなりに熱くなるので入れた方が無難と思いますが、これまでWebで見た限りではちゃんと入れている人は一人もいませんでした。なお定電流回路ですが、いわゆるキルヒホッフの法則ですね。2つの真空管からの電流が定電流ダイオードに流れるので、2つの真空管電流値の合計と定電流ダイオードのピンチオフ電流が等しくなります。(補償抵抗は、後で考えなおし、電圧増幅部が5KΩ、電力増幅部が3KΩに変更しました。この辺りはトライアンドエラーです。補償抵抗で合計の電流値が増えますが、これは温度上昇での電流低下を見込んだかさ上げの意味があります。)
これで未実装の部品は16で全部抵抗とコンデンサーです。後2日ぐらいで取り敢えずは実装は完了しそうです。

ぺるけ氏の定電流ダイオードに関する記述への疑問

ぺるけ氏が定電流ダイオードについて書いているページで以下の疑問を持ちました。(ぺるけ氏=「情熱の真空管アンプ」や「真空管アンプの素」の作者の木村哲さん、今私が作っている「全段差動プッシュプルアンプ」の提唱者)

(1)「電圧が高くなると定電流ダイオードの自己発熱が大きくなり、その影響が出てしまうのです。」と、定電流ダイオードのマイナスの熱特性についての記載はあるが、ではそれに対してどう対策するのかまったく記載が無い。「他の部品の発熱によってシャーシ内の温度が上昇するにつれて特性は変化します。厳密な設計する場合、この変化を見越しておく必要があります。」で見越してどうするのか?

SEMITECのEシリーズのデータシートによると、補償抵抗を並列に付ければいいことになっています。
これはどういうことかというと、炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)は負の温度係数を持ちます。つまり温度が上がると抵抗値が下がります。抵抗値が下がれば同じ電圧であれば電流は増えます。一方で定電流ダイオードは同じく負の温度係数を持っていますが、電流値は逆に下がります。一方で下がって一方で上がるので温度による影響が小さくなるということになります。注意点として、カーボン抵抗の温度係数はばらつきが大きいので、「何ΩでOK」ではなく、トライアンドエラーで試す必要があるようです。
(2022年4月26日追記)
良く考えたら補償抵抗はLEDの点灯みたいに電圧が変動しない回路ならいいですが、この差動アンプに使うのには、電圧が変動しそれに伴い補償抵抗の電流値も変動するのでダメですね。ぺるけさん、失礼しました。

(2)「定電流ダイオードの並列接続は意味がありますが、直列接続は意味をなしません。直列接続した場合は、直列になった定電流ダイオードのうち1つしか働かなくなるからです。」
これも間違っています。まああまりやるべきではないのでしょうが、SEMITECのデータシートによれば、電流値の低い方のCRDに電圧が集中するのを防ぐため、並列にツェナーダイオードを入れれば直列接続で使えます。また、CRDの向きを逆につなげば、双方向に定電流を作れますので、直列接続を使うことがあります。

SEMITEC社による定電流ダイオードのQ&Aはこちらを参照ください。

真空管アンプ-電源トランス交換、B電源一部作り直し

真空管アンプ、先日煙が出た電源トランスを新品に交換しました。その際にトランスケース(東栄の)の再取付けが大変であれこれやっていたらB電源回路のFETの脚を折ってしまったので、そこのユニバーサル基板の回路も作り直しました。作り直したものでB電源の電圧を測ったら平均304Vで26Vも低下しました。これは電源トランスの特性のばらつきなのか、前のB電源回路の配線が一部間違っていたのか良くわかりませんが、何にせよ抵抗やAC用コンデンサーでB電源の電圧を下げることは必要なさそうになってきました。(最終的に回路を接続すればB電源はもっと下がります。)

真空管アンプ-電源部完成

真空管アンプ、電源回路は完成しました。先日、電源トランスの6.3Vと14.5Vを分離されたタップと勘違いして両方に配線して、電源トランスとA電源の整流用ダイオードから煙が出るという失敗をやらかしました。それでA電源回路をもう一度作り直すために電解コンデンサーを発注しようとしていたら、そもそもヒーターの回路に何で10000μFx3、つまり合計で30000μFもの電解コンデンサーがいるのか、と思い始めました。それでもう一度PCL86全段差動プッシュプルアンプの回路例を見たら、私が参考にしたサイト以外は全部AC点灯です!考えてみれば直熱管では無いのでAC点灯で十分な筈です。そうであれば電源トランスの14.5Vの端子をヒーターにつなぐだけで、実に簡単にヒーターを正しい電圧で点灯させることが出来ました。後はC電源回路(バイアス電圧用)ですが、その14.5Vをパラで取り出して整流して、電圧を落として使おうと思っていましたが、何百KΩという抵抗を入れても電圧が上手く落ちてくれなかったため、やむを得ず先日買った100V→6Vの小型電源トランスを入れました。これでバイアス電圧は-7.5Vがきちんと出ました。後は増幅回路の真空管回りと、定電流回路ぐらいです。ところでこの全段差動プッシュプルアンプですが、元々の設計は定電流ダイオードに温度変化による電流値ダウンの対策の補償抵抗(定電流ダイオードに並列に入れます。抵抗値等はSEMITECのEシリーズのデータシートを見てください。)が入っていません。まあ電流値の多少の変動は無視出来るのかもしれませんが、気持ちが悪いので私は入れます。また電力増幅部の定電流回路はオリジナルは三端子レギュレータですが、私は定電流ダイオードを並列に4本使ってやってみます。

真空管アンプ-A電源の電圧を下げる

真空管アンプ、ヒーター電圧が16.5Vぐらいあって高すぎるので、メタルケース入りの高定格の抵抗を直列に入れてみたり、配線を見直したり色々試行錯誤しました。何のことはない、真空管を4本とも挿した状態で測定したら、13.4Vでフィリップスのデータシートの推奨ヒーター電圧にピタリとなりました。抵抗を入れる方法は、電圧は確かに落ちますが、やり過ぎると電流も落ちるのでヒーターが点灯しなくなります。
それから、一つはまったのは、このアンプには電源トランスがもう一つ、100V→6Vが必要だということが分かったことです。最初同じ電源トランスを使えると思って14.5Vと6.3Vを同時に使おうとしたら、トランスから煙が上がって…この6Vはバイアス電圧用なんで、もう一つトランスを使わないでも、整流用ダイオードの電圧降下を利用して作る方法がありますが、実験したら上手く動いているのかどうか分からなかったので、諦めてトランスを取り寄せました。写真の白い紙の所が追加の電源トランスです。

真空管アンプ-A電源実装

高さ3cmの電解コンデンサーが届いたので、A電源を実装しました。ご覧のようPCL86の4本でヒーター点灯出来ました。ただ、問題があって、電源トランスの14.5Vの出力を使いましたが、AC点灯ならこのままでOKですが、私の場合DCにしているので、現状で16.5Vもあります。なのでおっかなびっくりでテストしましたが、短時間では大丈夫そうです。PCL86のヒーターの定格電流での電圧は15V以上となるようなので、16.5Vで焼き切れたりはしませんでしたが、中長期的には寿命が短くなるのでもう少し電圧を落とす必要があります。高定格の抵抗かAC用のコンデンサーで電圧を落とすつもりです。

真空管アンプ-C電源取り付け、ついでにオシロ

真空管アンプ、B電源を再度一つ一つ接続を確かめて間違いが無いことを確認し、スペーサーを付けてシャーシーに取り付けました。本当はネジ止めするんですが、面倒なのと、後表にやたらとネジの頭が出ているのは美しくないので、樹脂製のスペーサーを使い瞬間接着剤でシャーシに接着しました。万一修理とかの場合は樹脂性スペーサーをそのままニッパーで切るつもりです。それから今日はC電源(バイアス電源)も実装しました。ここはーの電圧なんでアースにつなぐ方向が逆です。
それからオシロで整流後の波形を取ってみました。上がB電源で下がC電源です。(C電源はマイナス電圧ですが、オシロのプローブは正電圧になるよう当てています。)B電源はショットキーバリアダイオードで全波整流した後、チョークコイルと電解コンデンサー3個で平滑化したのをさらにFETでリップルを除いているので見事にフラットです。