松下製2A3(UX-2A3)

パナソニックじゃなくて松下電産/ナショナルの2A3ペアをebayで入手。正式な型名はUX-2A3で、作られた時期は不明ですが、箱の底に「正價980円」と旧字体が使われているので(真空管の真の字も「眞」です)、昭和30年よりも前でしょう。(新字体は昭和24年に作られていますが、すぐに社会全体が新字体に変わった訳ではなく、黒澤明の映画でも「黑」が使われているのが、1950年代前半ぐらいまであります。)また品名がUX-2A3でこの品名が使われたのは昭和30年までなんで、おそらくは昭和25~26年ぐらいの製造かと思います。(もっと前という可能性もありますが、戦争中はこんなどちらかというと娯楽向けの真空管は作れなかったでしょうし、また戦後すぐもこんな高級真空管の製造は難しかったんではないかと思います。)
でもその当時で980円は、おそらく今だと1.5万円~2万円くらいのイメージでしょうか。2A3は高級な電蓄に使われる高価な真空管だったので、価格は頷けます。
音質は今聴いていますが、柔らかさの中に芯がある感じでまた大音量でもクリップしにくく、なかなかいい感じです。日本製2A3というと、東芝製の方が有名みたいですが、松下製もなかなか悪くない感じです。無帰還アンプは真空管の違いを良く出してくれます。

P.S.
https://holdings.panasonic/jp/corporate/brand/history.html
に松下/ナショナル/パナソニックのロゴの歴史がありますが、写真右側の丸に「ナショナル」のロゴが作られたのが1937年と1955年の間になっています。なので上記の推定はそう間違っていないと思います。

P.S.その2
https://radiomann.sakura.ne.jp/HomePageVT/Tube_Identify_Date.html#Mat によると、松下で真空管製造が始まったのは1946年でした。またソケット部に「W」と「S」ってあってロットかなと思いましたが、上記ページによればWが1949年、Sが1953年製みたいです。eTracerで測定してみましたが、2A3のプレート電流の初期値が60mAなのに対し、片方が58mA、片方が55mAで少なくとも片方はいわゆる新古品(NOS)のようでした。この2本は、プレートの色が違い、明らかに製造時期が異なっています。

 

1952年製RCA JANの2A3

ヤフオクで落札したRCA JANの1952年製の2A3が到着しました。JANというのは米海軍事用管という意味で(Joint Army Navy)、本来のデザインから若干機構を簡略化してコストを下げたものです。なのでオリジナルのビンテージ品よりは安く入手出来ます。出品者の情報では未使用品ということです。これはその内測定器で調べて確認します。しかし、1952年ということは70年前で、私よりも長く生きている管です。
音はまだ聴き始めたばかりですが、PSVANEのTiiに比べると高音が自然です。(逆に言うとPSVANEは高音にちょっと強調感、装飾めいた感じがあります。)またボーカルの艶についてはこちらの方がはるかに優れています。全体にとても良い感じで、これは下手すると300Bより上かもしれません。

B&W 706 S2 の再評価-無帰還アンプとの組合わせ


ちょっと思いついて、使っていなかったB&W 706 S2というスピーカーを物置きから取り出して、2A3無帰還シングルアンプに組合わせてみました。理由はこのスピーカーは音場がスピーカーの後方に広がる傾向があり、特にボーカルがそうでした。それに対し2A3無帰還シングルアンプは逆にボーカルが前に出るんで、組み合わせると丁度いいのではないかと考えました。結果は非常に良く、スピーカーの左右のユニットをつなぐ線よりわずか前くらいにボーカルが定位し、実在感があってなかなかでした。
ただこのスピーカーの欠点としては、音は美しいんですが、スピーカーが自己主張しすぎで、どんなソースを聴いても、このスピーカー独特の美音に変換してしまって、最初はいいですが、次第に飽きが来ます。(それが常用していない理由です。)この点は2A3無帰還シングルアンプとの組み合わせでも、多少マシにはなりましたが解消はされていないようです。
なお、このスピーカーのレビューで箱鳴りがする、と書いている人がいますが、それは単なるバスレフのダクトの共振(ヘルムホルツ共鳴)だと思います。私の試した限りでは、ダクトを完全に解放するより、付属のスポンジの外側だけをダクトに詰めるのがいいようです。全部詰めて密閉型にすると、若干ですが詰まった感じが出てきます。

整流管の品質について

真空管アンプと整流管について。真空管アンプを作る時、オール真空管にこだわる人は、整流に半導体ダイオードではなく整流管(2極管)を使います。その方が音がいいという主張ですが、故上杉佳郎さんも、ぺるけさんもそうい説には疑問を呈しています。個人的に、自分で作るアンプに整流管は使いません。
一番最初に組立てた300Bのシングルアンプが5AR4という整流管を使っていました。これの300BをJJ製に替えた時に、他の真空管もJJ製にしようと思って、整流管もJJ製にしたのですが、替えてすぐヒューズが飛びまくるという不具合が発生し、ヒューズの容量を増やしたりして色々調査しましたが、最後は整流管がビカビカとグロー放電して、明らかに整流管の不具合でした。その後、5AR4のソケットに入る半導体整流モジュールを試したりしましたが、結局ヤフオクで買った松下製の整流管(おそらく1960年代の製造)に替えたら、ピタリと不具合は治まりました。
それで何故現在作られている新品の整流管で不具合が出るのか調べて見ましたが、一説によるとRoHSというEUの環境規制である材料が使えなくなった結果、整流管の電気的耐久性が低下しているという話があります。これの真偽は確かめていませんが、ありえる話だと思います。何故なら私が勤めている会社で作っているスイッチにも同じような話があって、多くの会社で高定格のスイッチには接点部の銀にカドミウムを混ぜています。これがRoHSでやはり禁止なのですが、結局カドミウムを使わないと信頼性が確保出来ないということで、ずっと期限付き免除になっていて、期限が来る度に延長が繰り返されています。整流管にも同じような話があってもおかしくはないです。
今回、ヤフオクで落札した2A3の無帰還アンプが整流管でした。しかも最初に付いていたのは、トラブルを経験しているJJ製の整流管でした。すぐに手持ちの松下製(300Bのアンプに使っていたもの)に替えました。これでちょっと安心で、音質も気のせいかもしれませんが、柔らかくなりました。それで整流管というのは消耗品であり、1年ぐらいで寿命が来てもまったくおかしくないので、予備として東芝製と松下製をもう一本ヤフオクで落札しました。写真の右から2番目はSOVTEK製で、300Bのアンプに最初に付いていたものです。一番右はNational Electronicsというブランドのもの(これも新品ではなく中古品)で、松下製をヤフオクで落札した時におまけでもらったものです。作りは外から見る限りはしっかりしていますが、まだ使っていません。
ということで、結論としては、私は現在製造されている整流管の品質をあまり信用していません。この情報が本当かどうか分りませんが、トライオードの300Bアンプは最初整流管で出しましたが、整流管によるトラブルが続出したため、今は半導体整流に変わったということです。

2A3無帰還シングルアンプの真空管変更


2A3無帰還シングルアンプの真空管を全部別のに替えました。
2A3: エレハモgold→PSVANE Tii
6SL7:JJ製→SOVTEK製
整流管:JJ製5U4GB→松下製5AR4
もちろん替えた後の方がいいかどうかは慎重に判断しないといけませんが、共通の特長としては「音離れの良さ」があり、直接音が間接音の中から若干前に出てくる感じで音像が明確です。
整流管をJJ製から松下製5AR4に替えたことで、全体に音の硬さが減った感じです。(JJの真空管は硬くて厚いガラスのせいじゃないかと思いますが、EL34を評価した時も硬かったです。)
2A3は、PSVANEのTiiに替えた後は、音がピラミッド型によりなった感じがします。ただ低音の制動はちょっと緩んだ感じがします。
このアンプのダンピングファクター(DF)は無帰還アンプということで、わずかに1.5なんですが、それによる音質低下はまったく感じません。DFって一体なんだったのか疑いたくなります。

2A3のシングル無帰還アンプ

自作PCL86全段差動プッシュプルアンプは大成功で、この所50日間くらい毎日6~8時間ほど聴いて来ましたが、さすがにちょっと飽きて来て、ヤフオクで物色し、2A3(直熱3極管)の無帰還シングルアンプを12万1千円で落札しました。このアンプは秋一郎さんという方がMJ(無線と実験)という雑誌に6ヵ月間連載して発表したもので、それをご本人がヤフオクに出品していたものです。
アンプの詳細はご本人のサイトをご覧下さい。

なお、MJ誌がこのアンプの部品一式を16万5千円で売っていますので、組立て済みで12万1千円はかなりお買い得でした。

今聴いていますが、さすが無帰還アンプだけあって音離れが非常に良く、元気な音です。ちょっと強音の時に歪っぽさはありますが。それでこれってJJの真空管のせいじゃないかと思って、整流管を以前300Bアンプで使っていた松下製5AR4に変えたら、これが当たりでかなり柔らかくなり歪み感も減りました。明日更に2A3をPSVANEのT2に、また6SL7をSVETLANAに変えて試してみます。

久し振りに300Bアンプ

ここの所、50日間ぐらいずっと、先日完成したPCL86全段差動プッシュプルアンプを聞いていました。さすがにちょっと飽きて来たので、気分を変えるためにまた300Bアンプを取り出しました。久し振りに聴くととてもいいですね。アンプは連続でずっと使うより時々休ませた方がいいのかも。

久し振りにJBL4307

PCL86全段差動プッシュプルアンプを作って1ヵ月が経過し、その音には満足しています。そこで久し振りにJBL4307を取り出してつないでみました。出力音圧レベルが91dB/mありますから、余裕で鳴らせます。やはり、この位の大きさ(=25cm)のウーファーで鳴らす低音は無理がないです。出力音圧レベルについて言えば、今多くのスピーカーが86とか85ぐらいですが、私がオーディオを本格的に始めた頃は、平均が90dB/mぐらいだったと思います。別に今のスピーカーを全面否定する訳ではありませんが、もっと多様性が欲しいと思います。

PCL86全段差動プッシュプルアンプー1ヵ月間試聴結果

PCL86全段差動プッシュプルアンプを作って聴き始めてからおよそ1ヵ月が経過しました。ここでこのアンプの音に関して感想をまとめておきます。

(1)定位の良さ、音場の広さ
これはまさに全段差動回路の効果だと思いますが、左右のセパレーションが良く、音像の定位が明確でまた音場も広いです。「カメルーンのオペラ」という長岡鉄男推薦の二本のマイクだけで録音した本物のステレオのSACD(元はレコード、SACDは数年前に発売されたもの)を聴くと、部屋の中がカメルーンの熱帯雨林になり、虫がちゃんと地面で鳴いています。
(2)S/N比の良さ
フルボリュームしても、ハムもノイズもまったくありません。非常に静かです。なので音楽ソースの細かな音が非常に良く聞こえ、聴感上のダイナミックレンジが広いです。これは、全ての電源にショットキーバリアダイオードを使った結果整流ノイズが少ないのと、定電流回路に三端子レギュレーターではなく定電流ダイオードのみを使ったこと、及び配線において要所でツイストペアーを多用したことの相乗効果ではないかと思います。
(3)安定性
1日12時間ぐらい連続して音楽を聴いても、非常に安定しています。発熱も電源トランスのケース上部がちょっと暖かくなるぐらいで全体的には真空管アンプとしては発熱は少ないです。また、PCL86という複合管のおかげで三極管部と五極管(ビーム管)部でヒーターは共用ですので、電源トランスのヒーター用巻線の定格2Aに対し、その6割の1.2Aしか使っていないので、余裕があります。またそのヒーターの駆動も13.4VDCと低めで無理をしていません。

といった所が長所ですが、逆に短所はこれはこの位の出力(3.1W+3.1W)の真空管アンプでは皆そうですが、オーケストラの強奏の所で歪っぽくなることがあるのと、出力音圧レベル88dB/mのクリプトンのKX-1.5ではまったく問題ありませんが、85dB/mのオートグラフminiGRでは音割れが発生します。

ということで、現在までは非常に満足しており、作って良かったと思っています。
なお、同じPCL86を使った超三結アンプも持って来て聴き比べてみましたが、高音の繊細さはそちらが優りますが、低音の締まりは全段差動プッシュプルの方が上で、トータルでは全段差動プッシュプルの方に軍配を上げます。

スイッチと接点復活剤

真空管アンプの本を色々読んでいますが、「スイッチの接触が悪くなったら接点復活剤を使いましょう」なんてのが書いてあってびっくりします。市販の接点復活剤はほとんどが化学的な合成油を溶剤に溶いたようなものが多いようです。この場合ピンポイントにスイッチ接点だけに付けて拭くのならまだいいですが、大抵がスプレー式で隙間から細いノズルを入れて吹き付けるようなものが多いようです。この場合油ですから乾かずにそのまま絶縁物や金属の表面に付着したまま残ります。機器をクリーンルームで使っているならいいですが、普通家庭で使うならホコリ・ゴミが無いということはありえません。油の上にそういったゴミやホコリが積もって混じり合い、スラッジという泥状のものになります。そうなると絶縁性が低下し、場合によってはトラッキング現象が起きて最悪発火という事になりかねません。また逆に接点間にそういうものが入ることによって接触抵抗が上がってスイッチとして使えなくなるという可能性もあります。そもそも安物のロータリースイッチとかなら接点が外部に露出しているものもありますが、普通はスイッチの内部にあって接点だけに直接接点復活剤を付けることはまず不可能です。また一時的に接触が復活したように見えても中長期ではトラブルになる可能性大です。そもそもスイッチの接点の損傷は、硫化といって銀の表面が黒くなるようなもの以外に、アークによってスイッチ接点の材料がどんどん減っていくのと2種類が主で、前者に接点復活剤は多少効くかもしれませんが、後者には無意味です。スイッチを長持ちさせるには、
(1)(電源スイッチなら)スパークキラーを入れる
(2)時々操作する
などが基本です。それで最終的に接点が本当にダメになったらそれは交換するしかありません。スイッチは基本的に消耗品です。