2A3のロフチンホワイトシングルアンプで最後まで残っていたハム音がようやく解決しました。一番最初に出ていた盛大なハムは2A3のソケットの接触不良でこれはソケット交換で直ったのですが、それでもなお、音楽をかけていない時にボリュームを上げるとはっきりハム音が聞こえていました。これの解決のため、試しに2A3を1本ずつでテストしてみたのですが、右のがきちんとハムバランサーでハムが0に出来るのに、左のがハムバランサーを回してもハムに変化が無いどころか、一番左に回すと軽いポップ音がしました。これは多分左のハムバランサーに使っている東京コスモス電機製の可変抵抗器がおかしい、と思ってこれを新品に交換したらピタリとハム音が止まりました。以前東京コスモス電機のボリュームは耐熱性が弱いとどこかに書いてあったのを記憶しており、おそらく半田ごてを当てすぎたんだと思います。
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手持ちの出力管棚卸し
手持ちの出力管の棚卸しをしました。17種類になっています。同じタイプは1ペアだけにしています。ポイントは単にコレクションしているのでなく、この内これからアンプを作るRCA50とEL84(これは300Bシングルの前段として使われていたものですが、出力管としても使えるので入れました)以外は、全部ちゃんと音を聴いていることです。整流管や電圧増幅管も入れると総数では200本を超していると思います。
レコードクリーナーの修理
レコードクリーナーを久しぶりに点検したら、2つあるトグルスイッチの右側ののレバーが折れていました。開けて確かめたら私が勤めている会社のM-2203(ON-OFF-ONタイプ)でした。操作中に折れたのではなく、このクリーナーを床に置いている時に上から本が落ちたことがあり、その時折れたんだと思います。
まあ真空管アンプの組み立てで鍛えているので、このくらいの修理は何でもありませんが、スイッチを交換ついでに、穴を12.5φにし、スイッチをS-333-Jという何と20A 125VACのスイッチ(やはりON-OFF-ON)にしました。このスイッチで駆動しているはモーター2つと真空ポンプ1つで、典型的なモーター負荷ですので、この位のスイッチの方が安心であり、またレバーも丈夫さがまるで違うので、今度本が落ちても多分平気だと思います。
RCA50を入手
古典直熱三極管、2A3、45と来れば後は50です。でもこの50はヴィンテージ管があまり出回ってなくて、eBayだとペアで12万円以上する上に写真を観てもかなり使い古されたものしかありませんでした。それがヤフオクで何故か本家のRCAのが一本ずつ3万3千円で出ていました!2本買って今日届いてetracerという測定器で測定したら、2本ともプレート電流、Gmともほとんど新品同様でした!最初あまりに状態がいいんで、中国製をベースにした偽物かとも疑いましたが、それなら一本10万円以上とかで売らないと採算取れないんで、違うと思います。アンプはある会社のキットを使う予定です。自分でシャーシ加工するの大変ですし、また全部自作しようと思っても、電源トランスが500VのB電圧、7.5Vのヒーター電圧とかなり特殊で高いんで、決して安くなりません。これが本当の真空管アンプ道楽の最後にしたいですね。
DC高圧用ヒューズ
今回のロフチンホワイトシングルアンプには、初めての試みとして2次側にもヒューズを入れました。それで色々調べて電流定格は1Aにしました。電圧はB電源の電圧が大体405Vですから、500Vのを探しました。そして最初AC用しか出て来なかったので買ったのが、右のEATON/BUSSMANNのものです。しかし増幅回路は言うまでもなくDCであり、そこでAC用のヒューズでいいのか悩みました。調べてみたら、溶断特性はDC用でもAC用でも同じで、過大電流が流れればヒューズ自体は切れます。ではAC用とDC用で何が違うのかというと、ACならば切れる時にアークが発生しても、ご承知の通り電流の流れる方向が1秒間に50回ないし60回変わる訳ですから、アークは短時間で切れ、結果的に問題なく回路がしゃ断されます。しかしDCの場合は、ヒューズの導体が切れたとしても、その後その切れた間をしばらくアークが流れ続けます。(同じ電圧ならDCの方が厳しいのはスイッチの接点も同じです。)これではヒューズの意味が無くなりますし、また最悪ヒューズ管自体が破断する、とかになる可能性があるようです。そこでDC用のヒューズということになりますが、この中には珪砂が詰まっています。アークが発生するとこの珪砂が一部蒸発して熱を奪い、アークを消し、なおかつ溶けた珪砂が再度固まって完全にアークを消去します。ということでDC500V/AC600V定格の左のヒューズ(Littelfuse製)に変えました。それはいいんですが、問題は価格で右のAC500V定格のは一本200円程度です。しかし左のDC500V定格のはRSコンポーネンツで一本3,000円以上します。真空管アンプを自作する人で2次側にも保護回路を入れているのはあまり見ませんが、こういう理由もあるようです。なお、エレキットや音の工房のアンプでは、ヒューズ以外の方法で2次側に保護回路を入れており、良心的です。
ロフチンホワイトの音質について
2A3ロフチンホワイトで色々聴いてみての個人的な感想。Web上で探しても、この回路の音質についてきちんと書いているのはあまり見かけませんので、あくまで2A3のロフチンホワイトで私が作ったアンプでの感想になりますが、紹介します。
この回路の音の最大の特長は、過渡特性、つまり音の立ち上がり、立ち下がりがいいことではないかと思います。いわゆる「キレがある」、また力強い音です。ただこの特長が常に良い方向に働くとは限らず、真空管アンプに「暖かく柔らかい音」を求める人には「ちょっと違う」と思われる可能性があります。また歪み感も普通のCR結合の無帰還回路に比べて強いように感じます。例えて言えばコントロールの定まらない速球投手でしょうか。(豪速球というほどではない。)さらには、普通直熱三極管の音はソースの粗を隠して聴きやすくする方向の音になりますが、ロフチンホワイトの場合だとそのまま出してしまう傾向が強いようです。そういう意味では半導体アンプ的でもあります。
それから、たまたま今回のアンプだけの特長かもしれませんが、高音が硬いです。これはおそらく超高域が早めに落ちている、いわゆるカマボコ型の音になっているためではないかと思います。(前段の12AX7がパラっているとはいえ結構インピーダンスが高く、このため高音が落ちやすいみたいです。)この場合、プリアンプのトーンコントロールで6KHz以上を少し持ち上げやると高音の硬さが軽減されより聞きやすい音になります。
それから音像・音場も独特で、音像自体ははっきりしているのですが、音場が何かホログラム的というか、大地と切り離されて空中に浮いているような不思議な音場になります。またCR結合の無帰還アンプで音が前に出てくる感じはロフチンホワイトでは文字通り後退し、音場はどちらかというと狭く奥に向かって拡がる感じになります。
こういう特質から向いている音源はソロ楽器より、むしろオーケストラとかジャズだったらビッグバンドとかになると思います。ソロ、特にヴァイオリンのソロは結構きつい音に聞こえるソースがありますが、オケの弦合奏だとあまりそれを感じません。またいいのがロックで、適度に歪み感を残してストレートに立ち上がるのがロックには合います。このためこのアンプを聞き出してから、手持ちの60年代、70年代のロックのLPを多く聞くようになりました。
以上のような音の傾向から、私は無帰還で聴くより、少しNFBをかけてやった方がいいと判断し、現在帰還係数β=0.23、約11dBくらいのNFBをかけています。元々2A3の増幅特性は直線性が良く、無帰還でも十分聞けますが、ロフチンホワイトだとどうも歪みが目立つ感じです。なおロフチンホワイトでは位相ずれを発生させるコンデンサーやトランスを段間に使っていないので、NFBには元々相性の良い回路だと思います。(ロフチンホワイトが最初に作られた1929年頃にはまだNFBの技術は無かったのでオリジナルは当然無帰還です。)
結論としては、私が一番好きなタイプの真空管アンプでの音とはちょっと違いますが、他にも色々持っているので、こういう音の真空管アンプが1台あってもいいと思いますし、特にロック用としては良いと思います。
それからこのロフチンホワイトで使う2A3については、いわゆるヴィンテージ管よりも、むしろ300Bのプレートと共通の構造にしている現在の2A3の方が相性がいいように感じます。
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ回路図
今回の2A3ロフチンホワイトシングルアンプの回路図です。元は宍戸公一さんの「送信管によるシングルアンプ製作集」に載っているものです。
その元の回路との違いは、
(1)トランス類は元は全てタンゴでしたが、電源トランスを春日無線変圧器のに、チョークと出力トランスをゼネラルトランス(旧ノグチトランス)のに変更しています。
(2)(1)の電源トランスの電圧が400V→340Vになったので、元の回路での整流管出力のすぐ後にある電圧降下のための50Ω10W抵抗を外しました。それでもB電圧が405V程度と元の回路より一割くらい低くなりましたが、問題無く動作しています。
(3)元の整流回路では、5AR4の整流の直後に100μFの電解コンデンサーがつながっていますが、これは5AR4の推奨容量を上回っていて、コンデンサーによる突入電流のため5AR4の寿命が短くなる可能性があります。なのでこれを47μFに変更しました。なおかつおまじない的に、2.2μFのフィルムコンデンサーをパラに入れました。(秋一郎さんの2A3アンプの真似)
(4)ボリュームを追加しています。
(5)出力トランスの8Ω端子から5KΩの抵抗経由で12AX7のカソードにNFBをかけています。(帰還係数β=1.5K/(1.5K+5K)=0.23、約11dB)
(6)スイッチを安全のため両切りに変更しました。
(7)スパークキラー用回路を入れました。
(8)ハムバランサーは20Ω抵抗+10Ω可変抵抗+20Ω抵抗ではなく、50Ωの可変抵抗だけを使いました。
(9)1次回路だけでなく、2次回路の保護のため、2次回路にもヒューズを入れました。(1A 500VAC、1A500VDCのは取り寄せ中。ちなみにACでもDCでも溶断特性には変わりがありませんが、DCの場合ヒューズが切れる際に強いアークが発生するので、その対策をした{管の中に充填された珪砂によってアークを瞬間的に消す}のがDC用みたいです。)
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ改造
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ、完成!
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ、一応完成
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ、ひとまず完成しました。ただ、演奏中も弱音の時に聞こえるハムが出ています。ハムを減らすために、平滑用の電解コンデンサーの容量を倍にしたり、配線を見直したり、色々やってみて多少マシにはなりましたが、まだ聞こえます。これの低減は今後の宿題とします。
音質ですが、2A3のCR結合の無帰還アンプと比べると、中低音が力強く、高音はCR結合が柔らかいのに対し、こちらは何というか鋭利な感じ(といっても決して金属的ではありません)の高音です。
途中で小さな音しか出なかったのは、何と2A3のソケットを180度間違えて配線してからでした。それでも小さいとはいえ音が出ていたのが不思議です。実はこの間違い、Webで紹介されたのを読んでいたんですが、自分でもやってしまいました。ソケットの細い方がヒーターだと思い込んでいました。
なお、シャーシは、サンバレーのJB300BVer.3のものの流用です。なので使わない穴が色々開いています。ロフチンホワイトは発熱が大きいので丁度良かったです。