今回の真空管アンプ→メインシステムに採用

結局、今回作った真空管アンプはメインシステムの一部に採用しました。そういうつもりで作製したのではないのですが、予想外に音が良かったためです。特に良い所は、
(1) S/N比
真空管アンプなのにボリュームを最大にしてもまったくノイスがありません。これは、ショットキーバリアダイオードによる整流ノイズの減少、定電流回路で三端子レギュレーターを使わず全て定電流ダイオードを使ったこと、およびツイストペア配線を使うべき所に使ったこと、などの複合の効果だと思います。アナログ録音を聴いた時に、テープのヒスノイズまでがはっきり確認出来る位に静寂なバックです。
(2) 定位の良さ
全段差動プッシュプルアンプは原理的に他Chからの同相信号が抑制されてクロストークが0になり、定位が非常に優れています。なんですが、今回のアンプは手持ちのKT88の全段差動プッシュプルアンプと比べても更に定位が良く、かつ音像が引き締まっています。
の2点です。いやー、真空管アンプもまだまだ色々な可能性を秘めていますね。

真空管アンプ-左Chの音量がフルになるまで30分かかる問題の解決

今回作成した真空管アンプの左Chの音量が電源ONしてから30分ぐらい経たないとフル音量にならない問題ですが、偶然発見した解決策ですが、NF(負帰還)の回路の電圧をテスターで測定すると、プローブを当てて3秒くらいでフル音量になるということを発見しています。しかしこの方法は一旦底板をネジ止めしてしまうと使えないため、まずはリード線を外に出して、底板が付いた状態でも出来るようにしました。しかし、毎回起動時にテスターを取り出してプローブを当てるのも面倒です。要はわずかな電流を該当の箇所に流してやればいいのだと考え、単三乾電池二本に抵抗をつないで簡単な回路を作りました。それで抵抗はどのくらが適当かかを試行錯誤で1,000Ωから段々強くしていったのですが、結局300KΩぐらいが適当でした。この場合の電流はわずか0.01mAに過ぎません。この程度の電流で何故回路の目が覚めるのかは、まだ突き止められていません。しかしながら、これで使い勝手は非常に良くなりました。電源ONして30秒くらいで真空管が温まったら、この装置のスイッチをONにして3秒ぐらいしてOFFに戻すだけです。
この回路は電源を内部から取るようにして、タイマー付きリレーで起動時に3秒だけ動かすということは可能でしょうが、根本的な解決はNFの量を変えてみるとか、初段の定電流ダイオードのピンチオフ電流値を変えてみるとかそういうことではないかと思いますので、場当たり的対策を永続化させるようなことはしません。

松本市の日本ラジオ博物館(3回目)

連休中の5月2日にまた松本市の日本ラジオ博物館に行って、訪問客は私一人だったので、館長の岡部さん(「ラジオの技術・産業の百年史」の作者、アキュフェーズ社員)に一時間半たっぷりお話を伺いました。
(1)テレビの初期の組立てキット。テレビの中は例えばブラウン管を駆動するフライバックトランスの電圧は3,000V以上になりますので、私はキットに手を出したいとは思いません…どちらかというと、NHKが中心になって標準的な受像機の仕様をまとめ、それを各メーカーのエンジニアが理解するためのキットだったようです。
(2)第2次世界大戦中のアメリカ軍の無線機2つ。歩兵用と、B-29などの爆撃機に積んであったもの。どこでこんなもの手に入れたのですかと聞いたら、何とヤフオクだそうです。特に爆撃機用は、1940年代に既にこのレベルのものを作っていたということで、日本との技術力の差は歴然としています。また爆撃機用は航空兵が操縦の片手間にいじるということで、操作も可能な限り簡素化していてUIのデザインもシンプルで機能的です。
また歩兵用の無線機の方はトグルのON-OFFスイッチが何と横方向の操作です。会社でトグルスイッチが使われた製品についてはかなり調べていますが、パネル用のON-OFFスイッチを横方向の操作にしたのは初めて見ました。この理由はこの無線機はリュックサックに入れて担ぐもののようで、リュックサックに入れる時に縦操作だと間違ってスイッチがONになったりするためかなと想像します。

自作真空管アンプ最後の仕上げ

自作真空管アンプの最後の仕上げ。若干だけ定位が右寄りなんで、11本持っているITT LorenzのPCL86の中から、若干プレート電流が大きめのペアを選別してそれを左チャンネルに適用して解決。
それから自作の真空管ガードを適用。これで地震などで何かが落ちて来ても真空管は大丈夫です。
残った問題:
ちゃんとした音になるまで右チャンネルが10~15分、左チャンネルが30分ほどかかります。それまでは音量も小さく歪んだ音。
これの回避手段は分かっていて、NF(負帰還)の回路の両端をテスターの電圧測定モードで3秒ほどプローブを当てればすぐ正常状態になります。もしこの問題が続くようでしたら、これ用の端子を外に出すなどを考えます。でもまあ30分待てばいいだけなんで特に大きな問題ではありません。なおこの問題はもう一台の全段差動プッシュプルアンプにもあって、こちらは電源ON直後では右チャンネルが弱く(プリのバランスボリュームで10時くらいにしないと真ん中に音像が来ない)フル音量になるまで3時間くらいかかります。なのでこれは私の配線が間違っているとかどこかの半田付けが外れているとかの問題ではなく、全段差動プッシュプルアンプの固有の問題ではないかと思います。

完成!PCL86全段差動プッシュプルアンプ

真空管アンプ、底板も付けて最終版として完成しました。外観と内部の最終写真です。ちょっと本体と底版の隙間が空いていますが、部品を詰め込み過ぎたんで、あまり締め付けるとショートする危険性もあってこのくらいにしています。これを完成するのに結局2ヵ月半もかかりましたが、なんとか無事に連休中に完成出来て嬉しいです。
それから音質ですが、自分で一から作ったものに親馬鹿的バイアスがかかるのは当然ですが、それを抜いても音質は非常にいいです。このアンプは全段差動プッシュプルアンプというものですが、このタイプはもう一台KT88のものをヤフオクで買って持っています。それと比べても定位の良さ、音のピュアさは優っていると思います。出力は計算値で3.1Wくらいですが、実際は3.5Wくらい出ている感じです。

ベースとなっている回路は、https://lavie60.blog.fc2.com/blog-entry-659.htmlにあったものです。この場を借りて御礼申し上げます。
元の回路からの変更点は、
(1)出力段の定電流回路を三端子レギュレータから、定電流ダイオード16mA~18mA(SEMITECのE-153かE-183)のものの4本並列に変更。(1本あたり平均で14mAが必要なのですが、SEMITECのEシリーズの定電流ダイオードは大体公称値よりも実際のピンチオフ電流が低い傾向にあり、さらにばらつきも±20%程度ありますので数多く測定してその中から4本ずつ2組選びます。)テスターで測定して4本合計で56mAになる組み合わせを2組選んで使いました。(ノイズを出す三端子レギュレータより、定電流ダイオードの方が絶対にいいです!)
(2)ヒーター用電源+14V電源の回路の電解コンデンサーを10,000μFx3本を4,700μFx3本に減らしています。いくらなんでも14V電源用に30,000μFは理不尽ですし、またかなりのレベルの突入電流が発生してスイッチその他の部品を傷めます。オシロで見て、4,700μFx3本でまったく問題ありませんでした。(というかそれでもまだ多すぎると思います。)またヒーターは傍熱管なのでそもそもDC点灯にする必然性は少なく、さらに若干のリップルが残っていても問題ありません。
(3)同じくその電源のアースポイントを最初の電解コンデンサーのマイナス側ではなく、最後の電解コンデンサーのマイナス側に変更。これによりアースに混入するリップル電流が少なくなります。
(4)表示灯としては定電流ダイオード内蔵のLEDを使用。ちょっと明るすぎますが、今回のテーマが「定電流ダイオード」だったので敢えて使いました。明るさを落とすには、抵抗を入れて定電流ダイオードにかかる電圧を6Vより低くしていわゆる「肩特性」の所を使えばいいです、ってそれをやるくらいなら最初から普通のLEDを使った方がいいです。
(5)これは変更ではありませんが、元のページには電源トランスがもう1台必要なことが回路図以外には書いてありません。(同じページにこのアンプで使うトランス類という写真がありますが、その中にも含まれておらず、また外観写真でも使用を確認出来ませんでした。)この6V電源はC電源でバイアス用ですが、ぺるけさん式の整流用ダイオードの電圧降下を利用するなどでわざわざ別トランスを使わなくても出来そうですが、今回は修正に自信がなかったので回路図のままにしました。
(6)3極管部のプレート電圧を調整する抵抗は47KΩにしました。これで206Vくらいになっています。
(7)組み上げた後盛大にハムが出て、その対策としてカップリングコンデンサーの電力増幅段側をアース(全体のアースとは違うポイント、つまり2点アース)に落としました。これでピタリとハムは止まり、ボリューム最大でもハムは出ません。
(8)スパークキラーは岡谷のS1201が納期半年で入手出来なかったので、120Ω2Wの金属皮膜抵抗と0.1μF 200VAC(400VDC)のフィルムコンデンサーを3つ並列にして(つまり0.3μF)自作しました。(S1201は120Ω+0.1μFです。コンデンサーを0.3μFに増やしたのは大容量の電解コンデンサーが多く使用されているので、その突入電流を十分吸収させるためです。)
(9)電源スイッチはNKKの2極単投のS-21Aを使い「両切り」にしました。つまりライブ(トランスの100V端子につながる方)とニュートラル(同じくトランスの0V端子につながる方)を同時に入り切りして安全性を高めています。このスイッチの定格は15A 125V ACで、フューズが2Aであることを考えると十分な容量があります。
(10)B電源の整流回路を普通のブリッジダイオードではなく、ショットキーバリアダイオードに変更。このアンプには3つの電源回路がありますが、その全てでショットキーバリアダイオードを使っています。
(11)ヒーター用電源はDCのため電源トランスの14.5Vタップからではなく、12.6Vタップから取りました。これでヒーターの電圧が13.4Vくらいになっています。(14.5Vタップから取ると、整流することで電圧が1.2倍くらいになりますので、元の回路の抵抗程度ではヒーター電圧が17Vに近くなります。もちろんこれでも動きますが、ヒーターの寿命が短くなります。)
(12)回路の変更ではありませんが、抵抗は出来る限り指定より大きめのW数のものを使うように心がけました。

真空管アンプ-取り敢えず音が出ました!


真空管アンプ、慎重に配線をチェックし、電源を入れて煙などが出ないことを確認して、各部の電圧をチェックして一部配線を修正し、音出ししました。最初プレート電圧が高すぎたようで音が非常に小さくしか出ず、抵抗を変更してOKになりました。またどうにかすると盛大にハムが出るので2箇所ほどグラウンドに落とす箇所を追加し、また電解コンデンサーも一個追加しました。
後は底板とオシロでの波形チェック、使用する真空管の再測定です。

一応音が鳴った証拠に動画を貼っておきます。

真空管アンプ-配線作業完了!


真空管アンプ、配線作業完了!ただこれから奥飛騨温泉に2泊3日で行って来ますので、配線の再確認、各部の電圧チェック、音出しは戻ってから連休後半の作業になります。最初シャーシーが大きすぎてスカスカになるかと思いましたが、まったくそんなことなくて、ごらんの通りぎっしりになりました。これでまだ音が出るかどうかは分かりませんが、初めてスクラッチから作ったにしてはまあまあ良く出来たんではないかと思います。

真空管アンプ-最後の難所

徹夜で真空管アンプ組立て。300KΩの抵抗が断線していて、代りは無いので、手持ちの抵抗を組み合わせて作成。
またこのアンプは元はヒーターを直流点灯だったのを交流に直したのですが、何と今日、このヒーター電流で5極管のバイアスをかけていることにようやく気がつきました。仕方がないので、A電源回路をまた付けました。但し10000μFの電解コンデンサーは4700μFに減らしました。元のアンプ、10000μFを3本も使っているんですが、盛大に突入電流が発生すると思います。4700μFを3本でも多すぎるような気がしますが、スパークキラー回路のコンデンサーを0.2μFから0.3μFに増やしました。
本当はヒーターをAC点灯のまま改造したいんですが、残念ながらまだそこまでの知識が無いです。