本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鈴木伸二7段、白番が鶴田和志6段の対戦です。二人ともじっくりと打つ棋風ということで地味な寄せ合いの碁かと思いきや、戦いの連続の激しい碁になりました。中央の戦いでは黒が下辺から封鎖を突破して上手く打ち回した感じでしたが、
左上隅にもたれていって、劫にしたのがどうかと思います。黒は劫に勝ち左上隅を取りましたが白も代償で左辺の黒を取り、その結果左下隅の白が安泰になり、ここで白がリードしました。その後黒も追い込んで右辺を囲いまた中央の白も取り込みましたが、代償で上辺で損をしていて、わずかに届かず結局白の3目半勝ちに終わりました。
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NHK杯戦囲碁 洪爽義5段 対 大竹優6段(2022年4月17日放送)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が洪爽義5段、白番が大竹優6段の対戦でした。この碁の焦点は下辺の攻防で後から入って行った白がそれなりの地を持って治まり、黒は代償でかなりの厚みを築きました。このワカレは元が黒の構えだったことを考えると白の成功でした。黒は攻めと中央の地作りにこの厚みを活用したかった所ですが、結果的にどちらもいまひとつでした。右上隅は劫になって黒が劫に勝ち、白の一団が一眼だけになりましたが、白は上手く右辺に展開し、黒からの攻めを予防しました。黒はその後右辺と上辺の白を切り離して上辺の白を攻めましたが、左辺で白が若干地を損しながらも中央を厚くしたのがよく働き、こちらも黒の攻めは不発でした。最後は黒は中央を囲おうとしましたが、下辺の黒の厚みが連絡が切れると死んでしまう関係でつながる手を打たざるを得ず、結局黒がコミを出せず投了となりました。
NHK杯戦囲碁 志田達哉8段 対 田中康湧3段(2022年4月10日放送)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が志田達哉8段、白番が初出場の田中康湧3段の対戦でした。志田8段は棋風通り着実に実利を取って打ち進めていましたが、上辺で白に割り込んで節を付け、切って行ったのはいいかと思いますが、その切った石をあっさりシチョウで取らせたのはどうかと思います。確かにその後シチョウアタリを打てて右辺に展開出来ましたが、AIの評価もそれまでの黒優勢から白優勢に変わりました。白はその後右辺の黒への攻めを見ながら左辺に打ち込み、左辺の黒を2つに分断して結局1線を渡らせるなど寄り付き、中央の地こそ出来ませんでしたが、下辺を盛り上げ、黒もヨセで追い上げましたが届かず、白の1目半勝ちに終わりました。
NHK杯戦囲碁 鈴木歩7段 対 沼舘沙輝哉7段 (2022年4月3日放送)
本日より第70期のNHK杯戦の囲碁がスタートしました。黒番が鈴木歩7段、白番が沼舘沙輝哉7段の対戦です。白の4手目が向かい小目で黒が先にカカリを打てるので、昔はあまり見られなかった手です。その上辺の攻防で白が二間でふわっとしたボウシみたいな手を打った後、続けて4線に利かしに行ったのに黒は受けずに左側の黒から飛びました。気持ちは分かりますが、白は好形で上辺を割ったので白が打ちやすくなり、AIでの形勢判断も白に傾きました。白は中央の一団を重視し、右側の白は捨て気味に打ちました。その後、下辺の白を攻める展開になりましたが、黒が白の一間トビに割り込んだのが失着で、白が下から切るのを期待していたのかもしれませんが、白は上から切って黒が継いで延びたのが、いわゆる「鶴の巣ごもり」の形で先手になり、結果的にほぼ死んでいた右辺の白を一部生還させたのが決勝点になりました。下辺の白は利きが色々あって死ぬことはなくなり、地合で白のリードとなり、白の中押し勝ちになりました。
なお今期からAIの形勢判断だけでなく、次の手の候補が3手表示されるようになりました。私的には、次の手を自分で考えるが、いい訓練になるので、この新機能はあまりいいとは思いません。
NHK杯戦囲碁 高尾紳路9段 対 一力遼NHK杯選手権者
本日のNHK杯戦の囲碁はついに決勝戦で、黒番が高尾紳路9段、白番が一力遼NHK選手権者です。決勝戦にふさわしい激戦になりました。まずは左下隅の攻防が面白いワカレになり、黒が左辺で白1子を抜く代償に、白は黒の左下隅の6子を「ほぼ」取りました。しかし白がその黒を包囲する断点を継がなかったので、黒はすぐ切って行きました。白は左下隅を完全に取ろうとすると、自身もダメヅマリで危ないことになるということを察知し、左下隅の復活を容認し、中央下方で黒1子を抱えて大きな厚みを築きました。そして白はこの厚みを活用して、左上隅から上辺、左辺にかけて大きく模様を張りました。そして黒は上辺に入り活きを図りました。しかし黒は辺で這っても6子なので一眼しかなく、後は中央で眼を作るしかありませんでした。そして白は単純な取りかけには行かず、黒の右上隅の構えに手を付けて行きました。この辺りの柔軟な発想はさすが一力9段です。結果的に黒の一団は中央に逃げ、白は右上隅から上辺を地にしました。このワカレはほぼ互角で、後は黒がまだどの程度攻めを受けるかにかかっていました。白はこの黒を攻めながら中央に白地を付けようとしました。黒は中央にもう一眼作って活きた後、中央の白を切って行って中央の白地に手を付けました。しかしここの打ち方に何か誤算があり、折角切っていった黒2子が取り込まれました。この結果、若干ですが白が厚い形勢になりました。しかしその後白も左辺へのヨセで手順前後があって、形勢は半目勝負になりました。最後半劫争いがあるかと思いましたが、3箇所あって順番に継ぎあって劫争いはなく、結局白の半目勝ちになり、一力NHK杯選手権者が連覇を果たしました。しかし敗れたとはいえ、今期の高尾紳路9段の戦い振りは見事だったと思います。一力遼9段はこれで3回目のNHK杯戦優勝で、この先何回優勝するかが楽しみです。
NHK杯戦囲碁 高尾紳路9段 対 余正麒8段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が高尾紳路9段、白番が余正麒8段の対戦です。高尾9段はこれまで余8段に1勝9敗と、苦手にしています。布石は黒が右辺と左辺に模様を張り、白が上辺と下辺に地を確保するという展開になりました。白は右辺に打ち込みましたが2手打っただけで他に転じ、その後左辺に打ち込んで行きました。その折衝で白は黒2子を取って下辺が盛り上がり、黒は左辺で白2子を取ってなお上方の白への攻めを見ていました。黒は白の下辺の盛り上がりを抑制するため、右辺から延びる黒からケイマにかけたのを、白は短兵急にツケコシて切って行きました。この後の折衝にて、白は下辺を受ける前に右辺の黒にノゾキを打ちましたが、黒は受けずに下辺を打ち、白は右辺を連打しましたが、下辺が荒らされただけではなく、結局右下隅の白が全部取られ、ここに40目弱の黒地が出来ました。代償で白は右辺の黒4子を取りましたが、中央から何手も締め付けられてしまい、この収支ははっきり黒良し、でした。形勢は盤面10目ぐらいの黒のリードで、白はその後左辺の黒を攻め、1線を渡らせるなど追い込みを図りましたが、差は縮まらず、結局黒の4目半勝ちに終わりました。来週は一力遼9段と高尾紳路9段の決勝戦です。意外にも高尾9段はNHK杯戦の決勝は初進出です。今期、許家元9段、井山裕太5冠、そして今日の余正麒8段と実にいいメンバーを破って平成四天王はまだまだ現役バリバリだという意地を見せてくれています。決勝の相手の一力遼9段とは2020年にもNHK杯戦で当たり、その時は激戦の末一力遼9段が勝ちましたが、さて今年はどうなるか楽しみです。
NHK杯戦囲碁 一力遼9段 対 河野臨9段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が一力遼9段、白番が河野臨9段の対戦です。布石で黒は懐かしい低い中国流でした。ただ昔とはかなりその後の打ち方が変わっています。この碁の焦点は下辺から左下隅にかけての攻防で、黒は右下隅と左辺の厚みをバックに下辺の白に鋭く仕掛けて行きました。黒が左下隅で覗いてここを手にしに行きました。白が最強に応じると劫になる所でした。しかしその最中に白が下辺の黒に当てを打ったのが余計で、黒が継がずに左下隅から這いを打ったのが機敏でした。これでも劫になりますが二段劫で、白からの解消に2手かかります。白は下辺の黒を封鎖しようとする手を打つ、劫材作りに右上隅に手を付けましたが、黒に白2子を打ち抜かれ、3手かけてた左下隅が黒地に変わり、また右上隅の白も黒から打てば劫残りで、黒が大きくリードしました。その後白は中央を大きくまとめるなどして挽回しましたが、元の損が大きすぎ結局黒の3目半勝ちに終わりました。一力9段はNHK杯戦の出場が8回でその内6回で決勝に進出、そして2回優勝です。3回目の優勝が見えて来ました。
NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 山下敬吾9段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が山下敬吾9段の対戦です。対局前のインタビューで山下9段は「独創的な布石のネタも特に白番のは尽きて来たので、黒番が当たりたい」と言っていましたが、結果は白番でした。しかし2隅で大目外し(星にケイマにかかるそのケイマの位置)と今回も見せてくれました。その白の変則的な位置に、黒がすぐ星の位置にかかったため、右下隅が空き隅のまま競い合いが始まるという不思議な碁になりました。その競い合いで余8段は山下9段のお株を奪うような強気で攻撃的な手を打ち、左辺で戦いになりました。そこで劫になり、黒が白を包囲する手を劫立てに打ちましたが、白は劫を解消しました。黒は当然白を包囲しましたが、白がすぐ切っていきました。白はその切った石から黒の下辺をいじめようとしましたが、結果的には誤算があり、黒は白の4子を取りながら右下隅につながり、下辺がいい地になりました。白は黒2子を抜いて中央が厚くなりましたが、このワカレは明らかに黒良し、でした。そこで白は第2の攻めで左辺から延びる白を狙っていき、その過程で上辺左を抉りましたが、黒もつながって厚くなり不満はありませんでした。波乱が起きたのは、白が右下隅の三々に入った後で、黒は下辺側から抑えていればなんの問題もなかったのを、右辺側から抑えて頑張りました。しかしこれは打ち過ぎで、黒のダメ詰まりを利用して、下辺で取られていた白4子が復活し、劫になりました。黒が左辺の白の活きを脅かす手を劫立てにしたのを白が受けずに劫を解消しました。これによって黒地だった下辺が逆に白地になり、形勢が逆転しました。後は左辺をどう処理するかで、眼の無い石同士でセキになれば白の勝ちでした。しかし駄目詰めの過程で白に疑問手があり、結局黒の取り番の劫になりました。白はどこにもこの大きさの劫立てが無く、仕方なく下辺の黒7子をアタリにしましたが、黒は当然受けず左辺の白20子くらいを打ち抜いて、派手な振り替わりになりました。(写真)白からすると泣けるのは、残された白の左下隅がまだ活きていないことで、白が一手入れれば活きで、黒から打てばセキまたは万年コウということになりました。結局黒は劫材を消してから劫を決行したため、この白は全部取られてしまいました。AIの判定では途中で白が手を入れれば白の勝ちだと言っていましたが、実戦心理としてもし手を入れて半目負けだと切なく、山下9段が抵抗したのは理解出来ます。余8段はこれで準決勝進出です。去年も決勝に進出しています。
NHK杯戦囲碁 広瀬優一6段 対 河野臨9段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が広瀬優一6段、白番が河野臨9段の対戦です。左辺で戦いが始まり、黒が左辺下方で地をまとめる代わりに白が黒3子を取りました。しかしその後黒がほぼ取られていた石を動き出しました。白も小さく3子を取ることが出来ましたが、黒に利かされるのを嫌って反発した結果、黒は取られていた3子が逆に白3子を取って復活し、白は中央で黒3子をポン抜くという派手な振り替わりになりました。この結果は互角でした。その後白は右上隅の黒に利かしに行き、上辺から右上隅の黒模様を値切りました。その後右辺に開いた白に黒はすぐ打ち込みましたが、一本利かしただけですぐ右下隅に潜水艦のような打ち込みを行いました。これは三々と下辺を見合いにする打ち方でした。その後、右辺で白と黒のどちらが強いかという戦いになりましたが、黒はおそらく右辺の白が活きていなくて劫にする手があると錯覚しており、結局白が先に活きて右辺の黒が一方的に攻められました。白はこの黒を攻めながら下辺を目一杯囲うという理想的展開になり、白の大きなリードとなりました。しかし左下隅のヨセで黒が下辺に滑って来たのに反発して劫にしたのが疑問で、黒が盛り返しました。更に左辺の白のヨセでも白は損をし、形勢は微細になりました。しかしわずかに届かず、白の1目半勝ちとなりました。
NHK杯戦囲碁 井山裕太5冠 対 高尾紳路9段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が井山裕太5冠、白番が高尾紳路9段の対戦です。序盤の焦点は上辺で、黒が左上隅にかかったのを白が一間に挟み、黒が中央に飛んで、と競い合いになりました。黒が右上隅の白にプレッシャーをかけた時、白は上辺の黒に肩付きを打ち、黒はそれを受けずに右側の黒から中央に飛んで行きました。その後の折衝の結果、黒は先ほど肩付いた白の1子を含め白の3子を取り込む形で上辺をいい地にして、白も左辺を連打していたものの、黒のリードとなりました。しかしその後しばらく局面が進んだ後、白が取られていたかに見えた白を動き出し、これが的確な反撃になりました。この結果中央の黒が薄くなり、白とのもつれた争いになりましたが、白が最強の手を打って中央で大きな劫になりました。白からは上辺に劫立てがあり、結果として劫は黒が勝ち白の3子をポン抜きましたが、それ以上に上辺で取られていた白が逆に黒を取って復活したのが大きく、白の大きなリードとなりました。そこで黒は下辺の白を取りに行きました。しかし白は右下隅を黒に取らせて、うまくこの一団をしのぎました。しかしここからの井山5冠の反撃が素晴らしく、中央で10目程度の黒地を作り、なおかつ上辺の黒の取られた石を劫付き攻め合いに持ち込み、非常に僅差になりました。しかしわずかに届かず、白の半目勝ちとなりました。