NHK杯戦囲碁 辻󠄀篤仁3段 対 依田紀基9段(2022年6月19日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が辻篤仁3段、白番が依田紀基9段の対戦です。辻3段は関西棋院期待の若手で初出場です。局面が動いたのは白が左辺の黒の構えに打ち込んでからで、黒白双方眼が無い石で攻め合いになり、攻め合いは黒が有利かと思いきや、白の放り込みがAIも予想していなかった妙手で、攻め合いは白の勝ちになり、白は左上隅から左辺に大きな地を作りました。これで白の優勢となりましたが、解せないのがその後の白の打ち方で、左辺に残された白を動き出したのは厳しくて良かったのですが、中途半端に途中まで打って、下辺に転じてしまいました。この結果黒は2箇所の白の種石を取って中央が厚くなり、形勢は互角に戻りました。その後白は右下隅に潜り込んで生還し、細かい碁になりましたが、黒は右辺を広げまた中央にも地を付けてリードし、白は挽回のために上辺で策動しましたが上手く行かず差が広がり、結局黒の3目半勝ちとなりました。辻3段の戦いとヨセが見事でした。

NHK杯戦囲碁 福岡航太朗3段 対 張栩9段(2022年6月12日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が福岡航太朗3段、白番が張栩9段の対戦です。福岡3段は初出場です。韓国で修行し、院生時代は197連勝という記録を作った若手強豪です。4隅星打ちのじっくりした布石で始まりました。右上隅で白が上辺からかかったままだったのを黒が低く二間に挟み、白が三々に入り懐かしい感じの定石形が出来ました。その後上辺の黒に白が肩に打って利かそうとしたのに黒が反発し、勢い白は上辺の黒を二分し戦いになりました。結局白の左上隅の石も眼がなくなり、黒白弱石2つずつのもつれた戦いになりました。戦いは左辺に及び、黒は左辺で活きて白地を削減しましたが、白は上下がつながって厚くなり、ここで白のリードとなりました。しかし黒も右辺の白模様を捨て石を使って上手く削減し、形勢は接近しました。その後ヨセで白にミスがあり、かなり細かくなりましたが、結局白の1目半勝ちに終わりました。

NHK杯戦囲碁 上野愛咲美女流棋聖 対 久保勝昭9段(2022年6月5日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が上野愛咲美女流棋聖、白番が久保勝昭9段の対戦です。上野女流棋聖は、先日女流の最強戦で優勝し世界一になりました。久保9段は実に18年振りの出場ということで、64歳というお歳ながら、AIを活用することで往年の力を取り戻し、第46期(2021年)の棋聖戦Cリーグで3勝2敗で見事残留を果たされたようです。序盤は両者研究済みと見えて、黒の実利、白の厚みで互角の進行でした。局面が動いたのは、黒が右下隅で付けてハネに切っていった時でした。白は黒に隅を小さく取らせ厚く打って中央に取り残された黒との戦いになりました。黒が白の一団を中央で切断する手を打った後、下辺左の白にカケを打って利かしに行きました。しかし白は中央の黒を切って両アタリにし、上下の白が連絡しました。しかし下辺では元々白の勢力地であった所に黒はそれなりの大きさの地を作って治まり、黒が打ちやすい形勢になりました。非勢の白は黒の唯一の弱石である下辺から延びる石を攻めましたが、黒も強く逆襲し、結局白は中央左の黒を取り、また黒3子も取りましたが、黒は下辺からの一団が右辺につながった結果、右辺も大きな地になり、ここで黒の勝勢になりました。白はその後の打ち方が非勢な割には緩く(例えば左辺の黒の三間開きに打ち込まず、四線から利かして渡らせただけでした)、結局黒の19目半勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 伊田篤史8段(2022年5月29日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が伊田篤史8段の対戦です。布石は白が2手目の左下隅で大大高目が意欲的で、黒はその後星からかかりましたが白のハサミに手を抜いて、左下隅は結局白地になりました。白はその後左辺に打ち込んだ黒を攻めながら下辺の模様を大きく拡げました。黒は左上隅の白を多少攻めつつ左辺の黒をしのぎ、右辺を地模様にして対抗しました。クライマックスは、下辺の模様の完成寸前に黒が下辺の4線の白に付けて行き、白模様の中で活きを図った時でした。しかし白が最強に頑張り、黒の数子は持ち込みになりました。黒も中央で白2子を取りましたが、ここで細かいながら白のリードとなり、最後まで形勢は変わらず、白の3目半勝ちで終わりました。

NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 富士田明彦7段(2022年5月22日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が瀬戸大樹8段、白番が富士田明彦7段の対戦でした。両者戦いよりも形勢判断を重視した棋風ということで、地味な寄せ合いになるかと思いきや、中盤から激しい戦いの連続になりました。まずは右下隅で白が仕掛け、黒は右辺と右下隅が分断され、隅は単独で活きなければならず、白が先手で右辺の黒を割った形になり、白がポイントを挙げました。その後下辺の白と中央の2つの黒と白、下辺左から延びる黒とのもつれた戦いになりました。その後中央の2つの黒は白3子を取ってつながり、下辺の白は単独で活きました。次に下辺左から延びる黒は下辺の白への利きを使って活きようとしましたが、白があらかじめ黒が眼を持とうとした場所に置いていったので、黒は一眼しかなくなりました。そこで黒は左下隅に潜り込んでそこで眼を持とうとしましたが、劫になり、白が黒の左辺の劫立てを無視して劫を継ぎました。この結果黒は下辺に一眼もなくなり、劫立てに打った左辺で二眼を作ろうとしましたが上手く行かず、黒は全部取られてしまいました。後は黒が逆襲して白の包囲網の一部を取ってしまえるかですが、これも白に正確に応じられ上手く行かず、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 広瀬優一6段(2022年5月15日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が広瀬優一6段の対戦です。広瀬6段は対局前のコメントで、鶴山8段は戦いの碁が得意なので穏やかな碁にしたいと言っていましたが、実際の碁は最初から最後まで激しい戦いとなりました。タスキの布石でしたが、白が左下隅に高くかかってツケ引き定石となった時、白は定石通りに左辺に開かず、左上隅の星から上辺に向かって小ゲイマに締まったりしたので、むしろ広瀬6段が戦いを誘ったような打ち方でした。左辺と右辺でお互いに眼の無い石がもつれ合い、黒が下辺の白に中央の石からケイマにかけた時、白が出切っていったので更に局面は複雑化し、闇試合の様相を呈して来ました。こうなると戦いの得意な鶴山8段に一日の長があり、中央でかけて上手く白の種石を取って局面は黒のリードとなりました。しかし白も左辺の棒石の黒を攻めようとしましたが、ここでも逆に黒が中央の白を攻め、右辺に取り残された白を大きく飲み込んで勝勢になりました。白はその後色々やって右辺の一団を連れ戻しましたが、その代償にまた中央の種石を取られてしまいました。最後に白は右上隅で取られていた石を動き出し、劫形で渡って成功したかと思いましたが、黒は渡らせた全体を攻め結局全滅させて右上隅に50目強の黒地を確定させ、ここで白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 呉柏毅5段 対 三村智保9段(2022年5月8日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が呉柏毅 5段、白番が三村智保9段の対戦です。布石では白が左辺の黒に打ち込んで黒がそれを直接受けずに下辺にかわした辺りでは白がリードしていましたが、その後黒が白のノゾキを逆手に取って白を左下隅と中央で切断したことで互角に戻りました。中央で激しい戦いとなり、結局黒は中央の一団を捨て、代償で右辺の白を大きく取り込むという振り替わりになりました。中央の黒は取られたといっても攻め取りなので見た目ほど大きくなく、ここで黒が優勢になりました。しかし、黒が上方の白の薄味を突いて取られていた石を逃げ出したのは、打ち過ぎでした。上辺の白はギリギリでしたが捕まらずに脱出出来たため、黒の中央の損害が拡大しました。なおかつ黒の包囲網の一部が逆に取られてしまって攻め取りもなくなりました。こうなると盤面でも白が5目以上のリードで黒の投了となりました。黒が余計なことをせずに右辺を大きく取って中央は攻め取りさせれば勝ちではなかったかと思われ、呉柏毅 5段としては残念な一局でした。

NHK杯戦囲碁 小県真樹9段 対 林漢傑8段(2022年5月1日放送)


2022年5月1日のNHK杯戦囲碁は、小県真樹9段と林漢傑8段の対戦です。この碁のポイントは、中央の黒への白への攻めがどのくらい効果を上げられるかでした。その意味で白が中央の黒の一間飛びに下から覗いたのに、黒は素直に継がずに上辺からの白の一団の石に突き当たりました。これは私も一瞬考えてすぐ無いな、と思った手でしたが、小県9段が実際に打ったのには驚きました。この突き当たりに白は延び、そうすると黒はもう一手タケフでつながる必要があります。白からすれば薄みが気になっていた一団を先手で強化出来た理屈になります。実際にこの黒の手でAIの評価は白の大幅リードになりました。黒はその後一方的に攻められることになり、白は攻めながら効率良く右辺と下辺を地に出来ました。黒も左辺を目一杯囲いましたが、あちこちに穴があって侵入出来、大きくはまとまらず、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 鈴木伸二7段 対 鶴田和志6段(2022年4月24日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鈴木伸二7段、白番が鶴田和志6段の対戦です。二人ともじっくりと打つ棋風ということで地味な寄せ合いの碁かと思いきや、戦いの連続の激しい碁になりました。中央の戦いでは黒が下辺から封鎖を突破して上手く打ち回した感じでしたが、
左上隅にもたれていって、劫にしたのがどうかと思います。黒は劫に勝ち左上隅を取りましたが白も代償で左辺の黒を取り、その結果左下隅の白が安泰になり、ここで白がリードしました。その後黒も追い込んで右辺を囲いまた中央の白も取り込みましたが、代償で上辺で損をしていて、わずかに届かず結局白の3目半勝ちに終わりました。

NHK杯戦囲碁 洪爽義5段 対 大竹優6段(2022年4月17日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が洪爽義5段、白番が大竹優6段の対戦でした。この碁の焦点は下辺の攻防で後から入って行った白がそれなりの地を持って治まり、黒は代償でかなりの厚みを築きました。このワカレは元が黒の構えだったことを考えると白の成功でした。黒は攻めと中央の地作りにこの厚みを活用したかった所ですが、結果的にどちらもいまひとつでした。右上隅は劫になって黒が劫に勝ち、白の一団が一眼だけになりましたが、白は上手く右辺に展開し、黒からの攻めを予防しました。黒はその後右辺と上辺の白を切り離して上辺の白を攻めましたが、左辺で白が若干地を損しながらも中央を厚くしたのがよく働き、こちらも黒の攻めは不発でした。最後は黒は中央を囲おうとしましたが、下辺の黒の厚みが連絡が切れると死んでしまう関係でつながる手を打たざるを得ず、結局黒がコミを出せず投了となりました。