NHK杯戦囲碁 一力遼碁聖・天元 対 佐田篤史7段


本日の(深夜2:15より放送)NHK杯戦囲碁は、黒番が一力遼碁聖・天元、白番が佐田篤史7段の対戦でした。この碁での最初の焦点は左下隅で、白の星に黒が三々に入ってからの大変化でした。黒が2本這って白がケイマしたのに黒が付けて白が押さえて、という変化で隅の黒と白の両方に眼が無く、結局黒の先手セキという別れになりました。これは既に定石化された手順とのことで二人とも時間を使わないで打ち進めました。しかし、あらかじめ調べていないでこれをすらすら打てる人はアマチュアにはまずいないと思います。いきなりの三々入りが元々昔はなかったので、この定石(?)も当然ありません。昔はプロはこのような大型定石は盤面のかなりの部分が形が決まってしまうので嫌って避ける人が多かったのですが、まあ時代の変化ですね。この別れは既にAIで互角とされているものであるため、当然AIによる形勢判定も五分でした。ちなみに一力碁聖・天元は最初の頃はダイレクト三々は打ちませんでした。しかしその後かなり研究したようで今はダイレクト三々の本まで出しています。
次の局面で焦点になったのは、黒が右下隅から下辺にかけて潜航艇のように低く打ち込んでからで、黒はただ中央に逃げていくだけの手を打たず、ここで治まるような打ち方をしました。この部分が一段落して次に黒は上辺の白の間が開いている中に打ち込んでいきました。白が当然包囲してきたのに黒は最強の手を打ち続け、最終的に活き形を得ました。しかし黒は後手で活きに行かず、右側の白を切って行きました。この積極策が劫を奏し、白は分断された左側を活きに行かなければならなくなり、結局上辺で黒が覗いたのに白は継ぐと全体を攻められてもたないため、妥協した手を打ち、黒は後手で活きるのではなく、白の種石を取ってつながる、という大きな戦果を挙げました。ここでAIの判定も黒の勝率が80%以上になり、白は打ち続けたものの、地合の差が大きく、黒の中押し勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 洪爽義4段


本日の(オリンピック中継のために、またも月曜日の早朝2:15からの放送)NHK杯戦囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が洪爽義4段の対戦でした。布石は黒が地を稼ぎ、白が厚みを築いて中央に模様を張るという展開になりました。この中央の白模様を黒が消しに行った以降がこの碁の最初の焦点でした。黒は白模様の中で堂々と居直りました。さらに下辺で白から当てられていた所を継ぎ、この結果白には断点が2つ出来ました。この断点は左側を守っていれば、右側は切られてもゲタで取れるので本来は問題なかった筈です。しかし白は左側を掛け継ぐのを一種の利かしと捉えて、継がずに中央で黒一子をアタリにしました。しかしこの手が疑問ですかさず黒は白を切って行きました。この瞬間AIの判定がそれまで白有利から一気に黒有利に変わりました。黒は下辺左でほとんど取られかけていた2子も動き出し、この結果下辺の白は3つに分断されました。しかし白は中央の黒を攻めることで、自分の方を守る代りにしようとしました。結果、中央で大きな劫が発生しました。白の劫取りに黒は下辺で劫立てし、白が受けずに中央を制し、黒は代償として下辺の白を取りました。結果として派手な振り替わりになりましたが、下辺右側の石も弱いまま残ったので、この時点で黒が優勢になりました。しかし黒はその下辺右側の石を攻めようと追いかけ回しましたが失敗し、その間に地を損して形勢は非常に微細になりました。そして黒がヨセで両先手の箇所を打ち損ねたりした関係で、はっきり白の優勢になりました。最後右辺で黒は劫でねばろうとしましたが、黒が左辺で取られていた石を活きようとした手が無効で、白に劫を解消されて、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 黄翊祖8段 対 広瀬優一5段


本日の(26日早朝。オリンピックのため、月曜早朝に変更。しかもHPでは2:15からということだったのが、実際に始まったのは2:53頃。)NHK杯戦囲碁は黒番が黄翊祖8段、白番が広瀬優一5段の対戦です。序盤で白が右下隅の黒の大ゲイマジマリの間に付けて行きました。AIの影響で最近はこの手が普通に打たれるようになりました。出来上がった結果は、黒が実利、白が厚みですが、右辺はスソアキで白の厚みは中途半端な気がしました。(実際に後で攻めを見られました。)局面が動いたのが、右上隅で白が両ガカリした所からの折衝で、黒は星から中央に進出した一団がまだ治まっていない状況で、敢然と右辺に打ち込んで行きました。これは黒が白の右下隅の構えを厚みとは思っていないとのことで、実際にAIの評価も黒の勝率65%くらいになりました。結局右辺で黒と白の石が2集団ずつ、合計4集団の眼が無い石が絡み合うという展開になりました。ここで黒に痛恨のミスが出て、白が右辺の黒がケイマで中央に進出している所をツケコシて切りに行きましたが、ここの折衝で白が当てたのに継いでおけば良かったのに無理に頑張って劫にしました。しかし劫材は白が有利で白は劫に勝ち右下隅と中央が握手しました。黒が劫材で打ったのは右辺の白を取りに行く手でしたが、無条件には取れずこちらも劫になりました。こちらの劫材も白が有利であり、白は黒の劫材を全て最強に受けきりました。結局右辺は活き活きになりました。黒が得たのは上辺に打ち込んで若干白地を減らしながら場合によっては白を攻める可能性がある、というだけでした。しかし黒の攻めは奏功せず、また白は左下隅から左辺にかけて大きな地模様を築き、容易に負けない態勢になりました。黒は左辺に殴りこんで紛れを図りましたが、白が最強かつ正確に受け、結局黒が左下隅で地をかすっただけで、中央の黒は全て取られ、黒の投了となりました。広瀬優一5段は初出場でしたが、黒の失着をとがめ、その後は的確に勝ちきりました。

NHK杯戦囲碁 山田規三生9段 対 瀬戸大樹8段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山田規三生9段、白番が瀬戸大樹8段の対戦です。局面が動いたのは下辺で、黒が白に右下隅から詰められて、普通は下辺の黒を何か補強して守る所でしたが、黒は敢然と白の間に打ち込んで行きました。この手は若い頃「ブンブン丸」と言われたくらい力が強く強引に戦いに持って行くのが得意な山田9段らしい手でした。しかしその後の瀬戸8段の打ち回しが巧妙で、黒はこの後少しずつ形勢を損ねて行き、結局それは最後まで覆りませんでした。ポイントは2つあり、白が下辺左の黒にもたれて中央の白を強化し下辺右の黒を封鎖した時、黒は右下隅の三々に打ち込んで、場合によっては隅で地を稼いで振り替わろうとしました。しかし白の冷静な応手でこの手は不発になり、黒の一団は上方に脱出したものの、右下隅に打ち込んだ黒はそのまま持ち込みになりました。2番目のポイントは白が下辺右からの黒をまだ狙っている時に、右上隅の黒の二間ジマリの間に付けていった場面です。この手は単なる黒地の侵略の手段としても最近は普通の手ですが、白の狙いは隅を捨て石にして右辺から締め付けて壁を作り、黒の下辺右からの石を攻めることでした。この狙いは見事に奏功し、下辺右からの黒石は命からがら逃げ出し何とか右上隅に連絡しましたが、その代償として上辺中央の黒1子が切り離されて上辺が白地に変わり、なおかつ中央にも白地が見込めるようになりました。この結果、AIの判定では白の勝率が95%になり、以降黒の逆転のチャンスはありませんでした。白の名局で白の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 中野寛也9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が中野寛也9段の対戦です。4隅で星を打ち合い、左下隅で黒が、右下隅で白が三々に入り、途中までほぼ左右同形の布石でした。しかし右下隅で黒が下からハネた後、上からツケコシを打ちました。白はそれに対し定石化された手順ではなく、黒の肩を切っていってここから戦いが始まりました。この戦いの中で右下隅の白は黒1子をどちらか取れば活きでしたが、白は活きに行かず劫になりました。結局白の劫材が続かず、下辺を渡る間に黒に隅を打ち抜かれ、ここに20目以上の黒地が出来ました。元々白地だったので出入りは30目以上でした。白としては中央で孤立した黒を取ることが出来れば損を取り返せましたが、この黒は利きが色々あって活きるまたは左辺に連絡するのは容易で、白の得たのは中央の厚みだけでした。その後白は右上隅にスソガカリして黒模様の削減を目指しましたが、黒は右辺を大きくまとめることが出来、かつ中央にも進出して白地を作らせないことにも成功しました。その後黒は左辺は妥協して白の侵入を許しましたが、他は確実に打って結局黒の8目半勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 志田達哉8段 対 呉柏毅5段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が志田達哉8段、白番が呉柏毅5段の対戦です。布石は黒が各所で地を稼ぎ、白が左辺から中央にかけて大模様を築くという展開になりました。黒は白の大模様を浅く消そうとしましたが、白はボウシし、黒が二間に踏み込んでということになり、この黒のシノギが問題になりました。黒は途中で自らの眼形を確保する守りだけの手を打たず、上方の白の包囲網を切って行きました。この積極策が成功し、打ち込んだ一団は上手く左上隅と連絡しました。白は中央で孤立した黒の4子を攻めようと、上辺を利かしてからコスミツケました。これに手を抜いて中央の4子を捨てたのが好判断で黒が優勢になりました。白はそこで必死に右下隅の黒に迫りました。ここでの折衝で黒に誤算があり、右半分の黒が取られてしまい、白の逆転中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 横塚力7段 対 安斎伸彰7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が横塚力7段、白番が安斎伸彰7段の対戦です。右上隅で白が大ゲイマジマリの黒に付けて行って、難解ながら最近定石化している攻防になりましたが、黒からシチョウアタリを打った後、シチョウの逃げ出しを狙うという形が残りました。この黒の狙いの効果を減らすため、白は取られている隅の1子を下がった後、更に黒の構えの急所に置いて行き攻め取りにして上辺で1線の下がりを先手にしようとしました。これに対して黒は左下隅の白に対してノゾキからシチョウアタリで大ゲイマに打ち、右上隅を受けませんでした。この結果右上隅は白地に変わり、黒はシチョウを逃げ出しました。この振り替わりはAIの判定では白の実利の大きさにも関わらず黒が優勢でした。次に左下隅で黒が覗いて白が継がないでいた所を黒が切り、ここでも戦いになりました。しかし白は左下隅をあっさりと捨てて打ちました。しかしこれはさすがに黒の実利が勝り、黒のリードは拡がりました。その後白は下辺に打ち込んでいた黒を切り離し下辺から右下隅に大きな地を作りました。しかし左辺から中央の白の眼が無く、ここのシノギ勝負になりました。白は手順を尽くして中央に何とか一眼を作りましたが、左辺を切られ劫になりました。しかし側劫が白にはいくつかあったものの、黒からは右上隅で取られている黒を活用して3手ぐらい劫立てが利くため、白の劫材は尽き白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 上野愛咲美女流棋聖


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が上野愛咲美女流棋聖の対戦です。豪腕 対 ハンマーパンチという無茶苦茶かみ合う対戦です。布石は伊田9段が5の5から大目はずしという意欲的な布石でした。形勢が動いたのは、左上隅での星の白に対しての黒の両ガカリからの一連の折衝で、黒が三々に入ったのに、白がコスんで受けたのが私には疑問で、白は黒に地をかすられた上に根拠を奪われ、狙われる石になったのは疑問に思いました。黒はその左上隅からの白の中央にケイマしている所の切断を狙ってシチョウアタリが目的で下辺の白にヨコヅケしました。白がここで後手を引くと左上隅からの白を切断されるため、白は左辺の黒に付けて行き、1子を犠牲に切断を防いで下辺に回りました。次に焦点は右辺での黒模様がどの位まとまるかでしたが、今度は白が右下隅から延びる黒にツケギリし、それを手がかりに右辺の黒地を制限し中央を手厚くしました。左下隅は黒が地を掠めていましたが、白から打てば劫残りでした。白は中央の孤立した黒に利かしを打って劫材を減らしてから左下隅の劫を決行しました。黒の劫材で中央の白に迫ったのが無劫で、白は左下隅を取り切って大きな戦果を挙げ、ここで白が優勢になりました。しかし差は数目で、ヨセでAIの形勢判断は揺れ動きましたが、結局白の2目半勝ちに終わりました。

NHK杯戦囲碁 小池芳弘6段 対 鈴木伸二7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が小池芳弘6段、白番が鈴木伸二7段の対戦です。試合前の挨拶ではお互いにあまり戦わない碁を目指すようなことを言っていましたが、実際はかなり激しい戦いの碁になりました。特に白が上辺から右上隅の小目の黒にかかって一間に低く挟まれたのを放置して右下隅に今度は一間に高くかかってから、お互いの石がもつれました。黒はこの右下隅からの白の一団を上手く地を稼ぎながら攻め、白は中央に厚みらしきものを作りましたが、結局眼がないため、厚みとして十分働かず、むしろ最後まで祟りました。白は右下隅からの石と上辺で右上隅にかかった石をドッキングしましたが、黒は全体を攻め立てました。しかし白も先手を取って上辺で両方の黒を挟むことになる一石二鳥の手を打て、戦いはさらにもつれました。このハサミによって分断された黒の弱石2つと、白の上辺の弱石と、右下隅からの石という4つの石の絡んだ戦いになりました。この戦いの中で、黒が右下隅から延びる石に付けて来たのに対し、白は中央を押さえて黒の進出を止める手が時間が足らずに読み切れず、結果的に中央で黒に突き抜かれては形勢は黒に傾きました。しかし白もその後、上辺から伸びる黒を攻めながら下辺になだれ込み、左下隅の黒3子を取る戦果を挙げましたが、ここで黒がほとんど活きと思われていた右下隅からの白石の眼を取る手を打ちました。結果的にこの白は一眼しかなく、右上隅で後一眼が出来るかが勝負でしたが、結局劫になりました。劫争いの結果、白は右上隅で劫を解消しましたが、今度は左辺の黒を動き出され、結局左辺の白半分を取り込むという大きな戦果を挙げました。白も左上隅で得をしたものの、トータルでは損が大きく、以降白のチャンスはありませんでした。結果的に黒の6目半勝ちに終りました。

NHK杯戦囲碁 藤沢里奈女流本因坊 対 佐田篤史7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が藤沢里菜女流本因坊、白番が佐田篤史7段の対戦でした。序盤、白が右下隅の二間高ジマリの構えに左側の2線からかかったのに、黒は手抜き、白が二間高ジマリの黒の右側の石の左に付けて行きました。これは最初に見た時は驚きましたが、今は普通の手になりつつあります。ここの折衝の結果、白は下辺を盛り上げ、右辺の石は軽く見ました。黒は白の右辺の石の全体を攻めようとしました。この時、右上隅が掛かりっぱなしだったのを隅に付けて行って様子を見ました。ここを含みにして右辺で黒の左に付けて行ってサバキを図りましたが、黒が反発して戦いになりました。ここで白が右辺と右下隅の黒の連絡を断つぞと打ったのが、AIの評価では良くなかったのですが、黒もお付き合いして押さえたので形勢は動きませんでした。しかし白はここの利きと上方の2子を捨てることで上手く脱出してました。この辺りは互角の別れでしたが、黒が上辺の白を攻めに行った時にちょっとうっかりし、固い右辺の黒の構えに先手で利かされ手を入れることになり、白が上辺の黒を逆に攻める展開となっては、形勢は白に傾きました。また黒が時間つなぎとして右下隅の黒をつなぎましたが、白が受けずに下辺を拡げたのが機敏でした。最後に左上隅で非勢の黒が頑張ったため劫になりましたが、形勢には大きな影響は無く、白の中押し勝ちとなりました。