現時点の手持ちの天然砥石の仕上げ砥

本日時点の天然砥の仕上げ砥の手持ち。包丁、鉋・鑿、日本刀、床屋用剃刀、やろうと思えば何でも研げます。(曲線の刃は除く。)
内曇砥は本当は柔らかい刃砥と硬めの地砥の2種類があるそうですが、産出量が減っていて、現在では2種類に分けて販売することが困難なのだそうです。
鳴滝砥はその内曇砥の更に後に使う日本刀用の仕上げ砥です。内曇砥、鳴滝砥の両方とも、本来の砥石として使う以外に、鏨(タガネ)で薄く割って磨いて、裏に漆で美濃紙を張り、親指で刃に押しつけて日本刀を磨くのに使います。
巣板は、包丁用にももちろん最高ですが、鉋や鑿の大工道具にも良く使われます。しかし左のコッパの方は鋼を研ぐと鋼を変色させますので、ステンレス包丁専用です。一番右は巣板なのに巣がほとんど入っていない、一生物の一品です。
若狭の戸前は、これも巣板と並んで天然仕上げ砥の二大ブランドの一つで、特にこの浅葱(浅黄)は、かなり硬くてしっかりした砥石で、鉋向きと言われています。
対馬と名倉は、砥石の面を整えるのと、硬めの砥石で砥汁を補給する役割を果たします。巣板のコッパは卵色の巣板のおまけです。
右下の青砥2本は、今でもそれなりにコンスタントに採取されていて3千円ぐらいで買えるので、天然砥の入門としてはお勧めです。結構柔らかくて砥汁が良く出るので、#1000くらいの中砥で研いだ後の仕上げ砥として使えます。

シャプトン砥石を水に長時間漬けるとどうなるか実験

シャプトンの昨日届いた1500番のセラミック砥石(マグネシア系)について、ちょっと使う気が失せたので、この際マグネシア系がどの程度水に弱いのか調べるために、一晩水に漬けて放置しました。大体7時間半です。結果として、見た感じの変化はほとんどなく、クラックや剥がれも発生しませんでした。ただ、やはり硬度は落ちている感じがあり、試しにアトマエコノミー(ダイヤモンド砥石)で角部をこすってみたら、結構簡単に削れました。おそらくこういう吸水した状態で刃物を研ぐと、ぼろぼろいきそうな感じです。実際に研いでみれば良かったんですが、朝で時間がなかったのでそこまでしませんでした。まあこの結果からは普通の人造砥石のように使う前に15分くらい水に漬けても、そこまでひどいことにはならないのではないかと思います。ただ注意点は今回テストしたのは5mmの砥石層に15mmの補強層が付いたタイプであり、15mm全体が砥石層で補強がない「刃の黒幕」シリーズが、長時間水に漬けてトラブルがない、という保証にはならないと思います。

マグネシア系の長所は、1000℃以上の高温で焼き固めるビトリファイ系に比べ、ほぼ常温での製造になるので、収縮が小さくサイズについて精度を出しやすく、特に研磨粉の径が小さい仕上げ砥が作りやすいということだと思います。(ビトリファイ系で小さい径の研磨粉を使うと収縮が大きくなり、歩留まり良くサイズを揃えるのが難しくなる。)

ちなみにビトリファイ系のビトリとは、元々ラテン語で「ガラスの」という意味です。丁度12月の実践ビジネス英語で、体外受精のことをIVF=in-vitro fertilizationというと習ったばかりです。(この場合はガラス=試験管のことです。)日本語でガラスのことを昔「びいどろ」と言いましたが、これはこのvitroと同語源で、おそらくポルトガル語のVidro(ガラス)から伝わったものです。

シャプトンの「刃の黒幕」ではないセラミック砥石1500番

丁度昨晩、シャプトンの「刃の黒幕」についてまとめを書いた後に、Amazonから、シャプトンの「刃の黒幕」ではないセラミック砥石1500番が到着しました。これには一応説明書が付いていますが、「長時間水につけないでください」とあるだけ。どのくらいの時間なのか、長時間水につけるとどうなるのか、まったく書いていません。というかこれある意味詐欺商品です。研磨に使える層はトータルの厚み20mmの内、たったの5mmしかありません。それで価格は研磨層15mmの刃の黒幕とほぼ一緒です。また「下部に補強材を使用しているため多少のヒビは問題ありません」とも書いてあります。つまり15mmの補強層がないとヒビが入って使えなくなるみたいです。で、研磨層は「刃の黒幕#1500」とおそらく同じだと思います。色もブルーで一緒です。(ちなみに1000がオレンジで2000がグリーンで刃の黒幕とまったく一緒です。)おそらくこのシリーズが「刃の黒幕」に変わったんだと思いますが、ヒビが入る欠点をどのように克服したのか不明です。(先のポストで書いたように、この商品はシャプトンのHPに出てきません。)
でもともかくこの会社のインチキ臭さがこれ見てよく分かりました。私は今後二度とシャプトン製品は買わないでしょう。

シャプトン 刃の黒幕シリーズ 私なりのまとめ

シャプトンの砥石「刃の黒幕」シリーズについての私なりのまとめ。

現時点の結論:
私の砥石の使い方からするとあまりメリットがなく、今後これ以上このシリーズを買い進めていくことはしない。ただ、単純にステンレス包丁を切れるようにしたいので砥石が一種類だけ欲しい、という人にはこのシリーズの#1000~#2000辺りがまあお勧めでしょう。

この会社については、実はわずか従業員20人の小さな会社です。(信用調査会社の情報によれば、資本金:2,200万円、売上:2億4千万円/年、社員:20人)しかしその割りには非常にマーケティングが巧妙と感じます。ホームページもなかなか良く出来て格好いいですが、私が別に購入した刃の黒幕シリーズ外のセラミック砥石1500番についてはまったく情報無く、困ったHPの見本でもありますが。

マーケティングがうまいというのは、先行する名前の通ったキング砥石とエビ印に対し、以下のような差別化を図っている点です。
(1)キングが手を出していないマグネシア系セラミック砥石に集中
(2)現状ほとんどの家庭がステンレス包丁しか持っておらず、それがキングの砥石より短い時間で研げることをアピール。
(3)なおかつマグネシア系の特徴として、長時間水に浸す必要もなく、すぐ研げるメリットを強調。
(4)同じデザインで色んな番のを揃えて統一感を出し、またそれぞれの番で色を変えて、研いで表面の文字が消えても番号がすぐ分かるようにした。
(5)「刃の黒幕」「空母」といったネーミングの面白さ。
(6)マグネシア系はビトリファイ系より単価が高いが、砥石の厚みを15mmに抑え、値段を安くした。(通常の砥石の厚みは25mm~30mm。)一般家庭で15mmでもそれが半分になるまで使う人はまずいないと思いますので、一般用としては確かに15mmで十分です。

反面、マグネシア系の欠点を含む様々な問題点がユーザーにきちんと伝えられていないとも感じます。
(私が買った2000番と320番には取扱説明書は無かったと思います。)
(1)30分以上水に漬けたままにしておくと、表面が軟化したりクラックが入ったりして砥石としては使えなくなる。
(2)経年変化で砥石自体の硬度が変化する。(おそらく吸湿により柔らかくなる。)→砥石としてはかなり大きな問題。
(3)付属プラスチックケースが安っぽく、また強度も十分でない。更にサイズもぴったりではなくガタがあり、砥石台としては良くない。また保存用としても湿気が中にこもりやすく良くない。
(4)HPのFAQに意味のよく分からないことが書いてある。「名倉砥石はついていますか?→名倉砥石をすることで砥面が荒れて凸凹になる為、名倉砥石は必要ございません。」→一般論として、名倉をかけて砥面が荒れて凸凹になることはなく、むしろその逆で微細な凸凹を直す機能がある筈。シャプトン砥石との相性でそのような現象が起こるのかどうか説明がきわめて不足している。

ちなみにマグネシア系の砥石は、ナニワ研磨工業は昭和35年から発売していますので、新しい技術でも何でもありません。(シャプトンの創業は1983年=昭和58年でそれよりずっと後。)世の中にはマグネシア系の耐湿性を改良する技術がいくつか出ていますが、シャプトンの砥石がそのようなものを採用しているという情報はありません。

シャプトンの刃の黒幕シリーズの注意点

Amazonで「砥石」を検索すると、1番に出てくるのはシャプトンの刃の黒幕シリーズのオレンジの1000番。このシリーズは私も320番と2000番を持っていますが、研磨力がありかつ均質ないい砥石だと思います。
しかし誰もレビューで書いていないんですが、この砥石はマグネシア法という製法で作られていて、耐水性に問題があります。メーカーのHPにも30分以上水に漬けたままにしないように、とFAQに記載があります。
マグネシアという一種のセメントは、梅雨時の高湿でも劣化して、割れたりするみたいです。その意味では、この刃の黒幕シリーズについている砥石台兼用の安っぽいプラスチックケースは問題で、使った後よく乾燥させないでこのケースにしまうと、確実に寿命が縮まると思います。

ちなみに、エビ印で有名なナニワ研磨工業の「ナニワ エビ 超セラミック砥石 台付 #1000」は、これもマグネシア系でセラミックの研磨剤ということで、シャプトンの刃の黒幕シリーズと製法的には一緒です。でもシャプトンの方は何の注意書きもありませんが、こちらは砥石の側面にちゃんと書いてあります。また、シャプトンのHPでは「30分以上はダメ」だったけど、こちらは「1時間以上」。またケースではなく、台なのでしまう時に湿気がこもる心配もありません。あまり知名度ありませんが、ナニワ研磨工業(エビ印)は実はこの手の角砥石では世界シェアナンバー1だそうです。私が徳島時代に買った仕上げ砥もここの製品でした。