「中世合名・合資会社成立史」を改訂しました。

「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳、第1回正式公開版(2020年9月23日より公開開始)はその後細かな校正で30回以上改訂して来ましたが、この度第4章の一部でちょっとした誤訳があったのを発見しこれを改めたのと、特に前半部で原注の番号が抜けている箇所が多く見つかったため、これを修正してこの機会に版を新たにしました。この際に同時にヘッダーにこれまで版番号を入れていたのを読者の便宜を考え章名に変更しました。

「中世合名・合資会社成立史」日本語訳正式公開

「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳売れ行き

Amazonで売っている書籍版のヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳、これまで月に1~2冊程度でしたが、何故かこの1月は10冊近く売れています。なんかあったのでしょうか?
(私のに限らず、Amazonでのマックス・ヴェーバー関連本は、一番売れているのでも月に数冊程度です。検索した時のランキングから推測して。)

立林和夫編著の「入門 MTシステム」

立林和夫編著の「入門 MTシステム」を読了。これを読み始めてから、1/3で中断し、一度タグチメソッドに戻って学習しなおし、改めて読んでいます。もちろん数式については細かい所は理解しないで、感覚的な理解に留めています。Mはマハラノビスで、Tはタグチメソッドです。要するにマハラノビスの汎距離を使った解析に、タグチメソッドを組み合わせたもので、マハラノビスの汎距離を使う単位空間を構成する要素について候補の中から直交表を用いて実験を行い、そこでS/N比や感度というタグチメソッド的手法で選定を行っていきます。マハラノビスの汎距離と通常のユークリッド距離がどう違うかと言うと、マハラノビスの汎距離の場合は要素間の相関を考慮し、各サンプルの重心からの距離に相関係数の逆数をかけて補正します。現実のパラメーターについて、お互いに相関が0というものはほとんどないので、単純なユークリッド距離を使った重回帰分析よりも、少ない要素数でより的確な解析や予想を行うことが出来ます。なおMTシステムといっても、実際はバリエーションがあり、最初のMTS法から始って、MTA法、TS法、T法などがあり、T法はさらに3種類あります。それぞれ特徴があります。なお、この本でのMTシステムの事例として挙げられているのは、製品歩留まりの予想、手書き文字認識、機械のノイズによる不良検知、天気予報、賃貸不動産の賃料予測、医療診断などきわめて多岐に渡っています。このようにMT法の有用性は昔から分っていたのですが、実際に相関係数の逆行列をかけていってマハラノビス距離を計算するのが大変でした。しかし今はパソコンで簡単に出来てしまいます。私はスイッチメーカーでの経験が長いですが、例えば押ボタンスイッチの荷重曲線を使ってMT法でスイッチの寿命を予測したり不具合を検知する、ということは当然出来そうです。なお波形データとかをどう数値化するかですが、微分である変化量と、積分である単位時間の面積を使ってパラメーターとする手法が紹介されています。生成AIのエンベディングにマハラノビス距離が使われているのも、少ないパラメーターで出来るだけ精度の高い解析を行うのが目的のようです。

ヴェーバー関係の書籍の整理

新居にてようやく段ボール箱開梱もほぼ終って、これまで本はかなり適当に空いている本棚に詰めていただけなのを、本棚を更に1台追加して、まずマックス・ヴェーバー関係を集めてみました。残念ながら1台では足らず、翻訳の時の資料とかは溢れてしまいました。これだけ集めたのは、今集めておかないともう簡単には買えなくなるという予感があったからです。例えば「経済と社会」の日本語訳を出していた創文社は解散してしまいました。なのでヴェーバー本人の書いたものは大体読みましたが、研究書や入門書の類いはきちんと読んでないのが沢山あります。

ヴェーバーポータルでの新着書き込み2件

日本マックス・ヴェーバー研究ポータルに、2つほど新しい書き込みをしました。

(1)フッサールの「厳密な科学としての哲学」(2)
(2)ヴェーバーの科学論文で言及されている「心理学」とは

どちらもヴェーバーの「理解社会学」とは何か、というのをきちんと調べようとしている動機からのものです。

David GraeberとDavid Wengrowの”The Dawn of Everything”(2)

David GraeberとDavid Wengrowの”The Dawn of Everything”をようやく読了しました。この本、ベストセラーになっていますが、このペーパーバック版で注を除いて525ページあります。そのせいか、ダイジェスト版が2種類も出版されています。中身の感想は「日本マックス・ヴェーバー研究ポータル」の方に書きましたので、そちらを参照してください。

アドルフ・ヒトラーの「わが闘争」

これを買いました。「ドイツの文化と社会」というご大層な名前の学科の卒業生としては、やはり一度は読んでおきべきかと思って。またマックス・ヴェーバーの初期の主張はヒトラーとかなり共通性がある、と言っている人もいるので、アマチュアのマックス・ヴェーバー研究者としても読むべきかと思いました。
多くの人が誤解していますが、ヒトラーは軍事クーデターや革命で政権を取ったのではなく、合法的に選挙で権力を得ています。すなわち当時のドイツやオーストリアで多くの人に支持されたということです。

中野敏男氏の「ヴェーバー入門 ――理解社会学の射程」の書評

中野敏男氏の「ヴェーバー入門 ――理解社会学の射程」という入門書についての書評を、日本マックス・ヴェーバー研究ポータルの方で公開しました。ご興味のある方は参照ください。この書については折原浩先生と中野氏の論争がありますが、そちらへの応答というつもりではありません。

マックス・ヴェーバー「中世合名・合資会社成立史」日本語訳久し振りの校正

中世合名・合資会社成立史の日本語訳ですが、久し振りにある程度まとまった校正を行いました。前の版からの校正箇所は65箇所くらいです。ほとんどが日本語として分りにくい表現をよりこなれた日本語にしたものですが、誤訳の訂正も数ヶ所含まれています。Web公開版は既に校正済みのものです。Amazonで販売されているペーパーバック版とKindle版は現在作業中で、おそらく11月18日ぐらいからの販売のものが今回の校正済みの版になります。

小泉進次郎とマックス・ヴェーバー

何かの過去の選挙の開票特番で池上彰(マックス・ヴェーバーのファン)が小泉進次郎に対して、「マックス・ヴェーバーの『職業としての政治』は読まれましたか?」と聞いたのに対して、その答えが「ええ、でも中身には共感しますが、タイトルがいただけない。政治は職業ではありません。」といった答えをしています。(ここ参照。)
(1)おそらく小泉進次郎は「職業としての政治」も「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」のどちらもきちんと読んでいないと思います。読んでいれば「政治家は職業ではない」などというトンチンカンな答えをする筈がない。マックス・ヴェーバーにおけるBerufの意味を全く理解していません。
(2)この答えは小泉進次郎自身に対しても不利に働くもので、この時池上彰が「職業じゃないとしたら世襲の地位なんですか?」と聞いたら、進次郎は一体どう答えたんでしょう。

ちなみに小泉進次郎はアメリカに留学し、政治学修士。(コロンビア大学で「「TOEFLのスコアが600点に達するまで大学内の語学講座で英語の授業を受ける」という条件の、ほとんど裏口入学。通常留学に要求される英語力はTOEICであれば最低でも950点ぐらい、IELTSで6.5以上。)
さらに、政治家としては4代目のこれ以上ない世襲政治家。(ちなみに曽祖父の小泉又次郎は入れ墨をしていたヤクザ代議士でした。)