今日は自分へのクリスマスプレゼント。アルゲリッチの弾くバッハについては、学生時代にドイツからの輸入盤のLPを買い、長く私の愛聴盤です。演奏も素晴らしいですが、録音も故長岡鉄男が別冊FMファンの「外盤ジャーナル」で取り上げる程のレベルで、高音の冴えた音の粒がそろったきわめて魅力的なものでした。しかしこのLPについてはあまりに聴きすぎたために、あちこち傷が入り、またゴミを取ろうとして木工用ボンドを使ってクリーニングした際に剥がすのに失敗して一部ボンドが残ってしまう、というかなり悲惨な状態になってしまっていました。アルゲリッチの演奏ですから当然CDは出ていてそれも持っているのですが、CDの音は高音がぼやけて音の粒もはっきりしなくなった、LPに比べればかなり落ちるものでした。そういう訳で長らくこの演奏のSACDが出るのを心待ちにしていたのですが、ついにエソテリックからSACDが発売されていました!早速聴いていますが、SACDの音はCDよりかなり上質で、かなりLPでの再生に近い感じです。エソテリックさん、有り難う!
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ロザリン・テューレックの「ゴールドベルク変奏曲」
ロザリン・テューレックのバッハの「ゴールドベルク変奏曲」を聴いています。メジューエワの本の中で「ゴールドベルク変奏曲」のお勧めとして彼女が挙げていたので興味を持って買ってみたものです。聴き始めてびっくり!グレン・グールドと演奏スタイルが非常に似ています。特にグールドの2回目の録音に。と思ってテューレックについて調べてみたら、何と事実は逆でした!グールドがテューレックのバッハ演奏に大きな影響を受けているんだそうです。ゆっくりしたテンポ、一音一音大事にするようなフレージング、またチェンバロでの演奏を真似るかのような一つの音の前に「タメ」を作るスタイルなどが特徴かと思います。2枚組で5000円ととても高かったのですが、買った甲斐はありました。さすがメジューエワです。
イリーナ・メジューエワの「ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ」
イリーナ・メジューエワの「ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ」を読了。メジューエワと対談した人が聴き取ってまとめたものです。素晴らしい本で、全てのクラシック音楽を愛する人、またピアノを弾く人にお勧めします。メジューエワはその演奏を聴くと、感受性と知性がかなりの高いレベルで融合した人、という印象を受けるのですが、その印象はこの本によって更に強固になりました。こういう本が出ると、大抵の音楽評論家の本は不要になるのではないかと思います。ピアニストが曲を取り上げるにあたってここまで深く色々なことを考えているということが新鮮で感動的です。取り上げられている作曲家は、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ショパン、リスト、ドビュッシー、そしてラヴェルです。バッハの「ゴールドベルク変奏曲」の中に「数」へのこだわりがあるとか、ベートーヴェンのピアノ・ソナタは弦楽四重奏曲の様式で書かれているとか、シューベルトこそ本当の古典派であるとか、ともかく目から鱗が落ちるような指摘に満ちています。また、メジューエワのお勧めの演奏(本人以外の)が載っているもなかなか楽しく、シュナーベルとかコルトーが多く登場します。個人的には、シューマンのクライスレリアーナとラヴェルの「夜のガスパール」についてはアルゲリッチを外して欲しくないのですが、ライバル意識があるのか(?)一度も登場しません。一方で私が好きなアファナシエフは何度か登場します。しかし、この本を読んで、いわゆる「ロシア・ピアニズム」というものが、ネイガウスやソフロニツキーが亡くなってかなりの時間が経った今でも、このメジューエワの中にしっかり生きているだなと思いました。
イリーナ・メジューエワのショパンのポロネーズ集
ルドルフ・ヴァルシャイ指揮、ケルンWDR交響楽団のショスターコヴィチ交響曲全集
ルドルフ・ヴァルシャイ指揮、ケルンWDR交響楽団のショスターコヴィチ交響曲全集を聴きました。何故かHMVでもAmazonでも3,000円以下で現在販売されています。ショスターコヴィチ交響曲全集は、既にゲルギエフ、キタエンコ、ロジェストヴェンスキー、ハイティンク、ヤンソンスなどで持っているため、今さらと思ってヴァルシャイのは買っていなかったのですが、この価格で触手が伸びました。聴いてみてびっくり、超オーソドックスで素晴らしい演奏で録音もいいです。初めてショスターコヴィチ交響曲全集を買おうという方には是非ともお勧めします。一つ嬉しいのは、ショスターコヴィッチの交響曲は15曲もあって、長いのもあり短いのもありで色々なんで、全集にする時は例えば1番と15番をカップリングするなんていうことが良く行われるのですが、この全集ではきちんと順番通りに収録しています。これはありそうでなかなかないことです。ヴァルシャイのは既に14番の東京ライブのCDを持っていましたが、買って本当に良かったです。
イリーナ・メジューエワのリストの「巡礼の年 第3年」
イリーナ・メジューエワの弾くリストの「巡礼の年 第3年」を聴きました。メジューエワは好きなピアニストで波長が合うというのか、全てのCDで叙情性豊かでかつ繊細な演奏を繰り広げます。これが手持ちのメジューエワの16枚目のCDになります。リストの「巡礼の年」も好きな曲で、これまでホルヘ・ボレットやブレンデル、ベルマンで聴いています。この第3年の中では、「エステ荘の噴水」が有名です。リストは若い頃は、ピアノのヴィルトゥオーゾ性を誇示するような曲が多いですが、晩年に近づくにつれ、内省的・宗教的な曲が多くなります。この「巡礼の年 第3年」もその一つです。「ものみな涙あり」とか「心を高めよ」とか題名もいいです。
クラウディオ・アバドの2回目のマーラー交響曲全集
クラウディオ・アバドの2回目のマーラー交響曲全集を聴きました。「全集」と書きましたが、最初から全集にする意図があったのではなく、ライブ録音を集めたものだと思います。オケもベルリンフィルだけではなく、ルツェルン祝祭管弦楽団が混じっています。この全集に収められている録音では既に4番や7番は持っているのですが、まとめて聴きたくて買いました。学生時代に最初にマーラーを聴きだした頃、アバドの最初の全集が進行中でした。私にとっては、マーラーの基準はこのアバドの最初の録音です。それはクレンペラー、ワルター、バーンスタインといったマーラー指揮者の第一世代とも言える指揮者のものとは明らかに一線を画していて、どろどろとした情念とは無縁のかなり知的なマーラーでした。今2回目の全集を聴いて、基本的なアプローチは1回目と変わってないように思いますが、より柔軟さが加わって表現も自在になったように思います。もうこれで10種類以上のマーラーの交響曲全集を所有していて、今はマイケル・ティルソン・トーマスのがお気に入りですが、やっぱりアバドのも好きです。
クリスチャン・ゲアハーアーの「美しき水車小屋の娘」
クリスチャン・ゲアハーアーの「美しき水車小屋の娘」の再録音を聴きました。ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ以降、ドイツ人歌手には大した人が出てこなくてかなり衰退していましたが、このゲアハーアーが一時騒がれました。ただ、私はあまりいいとは思わなくて、今回のも一応買ってみましたが、特に印象に残る点はありません。このCDは歌だけではなくて、所々にドイツ語で歌曲の内容を説明するような朗読がついています。はっきり言ってなくてもいいようなものですが。
この「美しき水車小屋の娘」は完全に恋愛と失恋の歌で、恋敵に対する激しい憤怒の歌も含まれています。これが「冬の旅」になると、単なる失恋の歌を超えて、「共同体からの追放」にまで至る重い内容になります。
波多野睦美+高橋悠治の「冬の旅」
高橋悠治(ピアノ)+波多野睦美(メゾソプラノ)の「冬の旅」を聴きました。これが多分60種類目以上の「冬の旅」です。高橋悠治が「冬の旅」の伴奏をするのは、以前岡村喬生とのものがあるようですが、私は聴いていません。また、波多野睦美という人も初めて知りましたが、1964年生まれなのでもう結構なお年ですが、普段高橋悠治と一緒に活動している歌手のようです。私が持っている「冬の旅」のCDでは、ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)のものと比較的に近い感じで割と最近流行りの歌い方という感じです。好感が持てるのは、日本人リート歌手の場合、「劇場ドイツ語」という古くさい歌い方で、wiederをヴィーデルのように発音する人がとても多いのですが、この波多野睦美は普通の歌い方です。白井光子以来、やっと日本人歌手も普通になって来たと思います。高橋悠治の伴奏は、非常に普通で特にどうってことはないです。
ピーター・ヤン・リューシンクのバッハ教会カンタータ全集
J.S.バッハの教会カンタータについては、「選集」は2つ持っていて、カール・リヒターの26枚組と、フリッツ・ヴェルナーの10枚組です。でも、バッハの教会カンタータはいつかは全部聴いてみたいと思っていました。HMVとAmazonを検索したら、定評ある鈴木雅明のが出てきますが、2万6千円くらいとちょっと決心のいる価格です。Amazonをもっと検索してみたら、ピーター・ヤン・リューシンク指揮ネーザーランド・バッハ・コレギウムの物が出てきて、これが50枚組で¥8,597、実に1枚170円くらいという掘り出し物でした。Amazonでのレビューも上々だったので、これをポチりました。この価格だとさすがに歌詞ブックは付いていませんが、それは別に書籍で持っているので私には不要です。少しずつ聴きたいと思います。バッハの教会カンタータは、実際に日曜毎に教会で歌われるために作曲されたもので、本当はそれぞれの日曜日のために作られたカンタータを一曲ずつ聴いていくとよりいいのですが、さすがにそこまで暇ではありません。