NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 高尾紳路9段


本日のNHK杯戦の囲碁は準々決勝の第1局で、黒番が山下敬吾9段、白番が高尾紳路9段の平成四天王同士の対戦です。この二人はなぜかNHK杯での優勝がなく、今期はどちらも今度こそ、という気持ちではないかと思います。布石は山下9段がまた見せてくれて、初手が5の5、3手目が右下隅大高目という新鮮な構えです。白は右上隅の5の5の構えに右辺から臨み、黒の右辺の構えが大きくなるのを牽制しました。しかし黒は右辺で上から白を圧迫しました。白は中央に顔を出しましたが、右辺で黒から出切る手が残り、黒はすぐに決行し、白2子を取って右上隅の一団が安定しました。白は黒1子を抜きましたがまだ一眼で黒から攻めを見られてました。その攻めを防ぐ意味で白は右辺の黒の開きに打ち込みました。これに対して黒は白の渡りを遮り最強の手を打って来ました。白は直接戦うのは不利と見て、右下隅に置いて行きました。白が右下隅から出切って行った時、黒は切った石を当てましたが、実は黒は白のシチョウが成立しているのを見落としていました。しかし白はシチョウに抱えるのは黒から左上隅にシチョウアタリを打たれて良くないと考えたようで、隅で延びました。結局右下隅は黒が白の4子を取って20目ぐらいの地を作り、代償で白は右辺を渡って黒地を減らし、また下辺で黒を圧迫しました。この分かれは、元々大高目で地がつきにくかった右下隅で黒が実利を稼ぎ、更に右辺と下辺で白の眼の無い石が残り、黒の有望な局面になりました。この後、黒は当然2つの弱石のカラミ攻めを狙い、白がしのぎながら逆襲を狙うという展開になりました。一時は白が左辺の黒を切り離して攻め、形勢不明になりかけましたが、左上隅の三々に黒が打ち込んだ石を巡って、結局劫になりました。この劫立てで黒が右上隅に打ったのに白は受けずに劫を解消しましたが、右上隅から黒に上辺にケイマにすべられ、また左上隅も黒が一部活きて、これで黒の優勢がはっきりしました。結局黒の中押し勝ちになりました。山下9段は斬新な布石で3連勝であり、自信を深めたのではないかと思います。