桂三木助の「三井の大黒」

jpeg000-40今日の落語、三代目桂三木助の「三井の大黒」。
三木助が得意とした噺らしく、三木助の1960年の最後の高座もこの「三井の大黒」だったそうですが、これは1956年の録音です。
名人の左甚五郎にまつわるお噺で、落語というより何か講談を聴くような感じです。甚五郎が身分を隠して大工の棟梁の所に居候して世話になるけど、隠していても自然と実力が出てしまって、みたいなお噺です。

白井喬二の「上杉謙信」

jpeg000-39白井喬二の「上杉謙信」を読了。上杉謙信と武田信玄の戦いを描いて、いわゆる川中島の戦いがクライマックスになります。
ただ、前半は上杉家の武将の鬼小島弥太郎とその友である甘粕備中守(後に甘粕近江守)が、若き謙信である長尾景虎と三人で不犯の誓いを立て、一生女人を遠ざけるとしていた所へ、鍛冶屋の娘の小衣が弥太郎に恋します。弥太郎も困惑しつつもまんざらでもない所があったのですが、甘粕備中守もあろうことか小衣に恋してしまいます。その結果二人で競い合うようなことになり、二人は手柄を求めて甲斐の国に間者として忍び込みます。二人は結局武田方の武将二人を斬り殺して、甲斐の国を脱出して越後に帰って来ますが、このことが原因で弥太郎は味方から甲斐に通じているという疑いをかけられ…(以下省略)というのが川中島の戦いの前までの話になります。いざ信玄との戦いになると、鬼小島弥太郎も甘粕近江守もそれぞれ鬱憤を晴らすような大活躍をします。
謙信と信玄の戦いを描いた作品では、海音寺潮五郎の「天と地と」が有名で、NHKの大河ドラマや映画にもなりましたが、この白井喬二の「上杉謙信」も悪くないと思います。信長や秀吉や家康ではなく、この謙信と信玄こそ、戦国時代のスーパースターで、川中島の戦いこそ、その二人ががっぷり四つに組んで戦った素晴らしい戦いだったと思います。

三遊亭圓生の「鼠穴」

jpeg000-38今日の落語、三遊亭圓生の「鼠穴」。
放蕩して一文無しになり、兄から商売の元手を貸してもらおうとしたが、兄が貸してくれたのはたった三文。それでも気を取り直して、その三文で細々と商売を始め、こつこつ貯めて増やして、何年か後には何とか倉を三つ持つ店を構えることができた。兄の家に金を返しに行き、その晩泊まったら、店が火事になり三つの倉も全部焼けて元の一文無しに。兄にまた金を借りようとしたが、少額しか貸してくれず、それではと七つの娘が吉原の禿に身売りして二十両をこしらえる。しかし、その金を盗まれてしまい、もう駄目だと思って首を吊って…その時目が覚めて、という夢落ちの噺です。何か後味が良くないし、笑える所もほとんどなくて、これ本当に落語?という感じです。

NHK杯戦囲碁 苑田勇一9段 対 新垣朱武9段

jpeg000-43本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が苑田勇一9段、白番が新垣朱武9段の一戦。苑田9段は1手目が高目、それに対し新垣9段がいきなり2手目でかかり、苑田9段はそれに受けずに右下隅でやはり高目、新垣9段が左下隅を打って、苑田9段が左上隅を目外しという今まで見たことのない序盤でスタートしました。その後苑田9段は右下隅を白が手抜きしたのもあって大きく地にしかつ右辺を模様化しました。これに対し白は左下隅から左辺、下辺にかけて地模様を築きました。それから白が右辺を消しに行き、黒が反発して勝負はこの白に対してどのくらい攻めが利くかでした。結果的にはこの白は十数目の地を持って治まってしまい、むしろ黒の方が右辺から中央に飛んだ石の眼を心配しなければなりませんでした。白は左上隅の黒に対してもうまい手を打って地を減らすことが出来ました。全局を通じて戦いらしい戦いがなく、囲い合いになりました。こういう展開になると白のコミがものを言い、終わってみれば白の4目半勝ちでした。苑田9段はちょっとらしくない碁でした。

曲亭馬琴・白井喬二訳の「南総里見八犬伝」(下)

jpeg000-37曲亭馬琴・白井喬二訳の「南総里見八犬伝」(下)読了。
なんせ、八犬伝のオリジナルは、全98巻、106冊もあるそうですから、それがこのボリュームで読めるのは幸いです。それでも普通の文庫本の4冊分くらいありますが。私は伝奇小説が好きなんですが、考えてみればこの八犬伝が元祖ですよね。
とにかく八犬士が八人集まるまでがはらはらどきどき、そして最後の犬江親兵衛が現れると、この人が年は一番若く、再登場時(4歳の時に神隠しに遭い、行方不明になります)の時もまだわずか9歳。しかしながら武芸抜群で、再登場後は胸が空くような大活躍です。しかも美少年という設定です。後は出てくる悪役の名前が素晴らしいです。鰐崎悪四郎猛虎(わにさきあくしろうたけとら)、暴風左衛門舵九郎(あかしまざえもんかじくろう)なんてのはすごいです。
全体に白井喬二の訳はとても読みやすく、そして格調も失っていません。お勧めです。

三遊亭圓生の「錦の袈裟、猫怪談」

jpeg000-38本日の落語、三遊亭圓生の「錦の袈裟、猫怪談」。
錦の袈裟は、錦の布が手に入ったので、それを褌にして吉原に繰り出せばもてるだろう、ということで、一人錦の布が足らない与太郎が、和尚さんの錦の袈裟を借りてそれを褌にして吉原に行ったら、お大名と間違えられて一番もてた、という他愛ないお噺。
「猫怪談」は以前聴きましたので省略。

曲亭馬琴作、白井喬二訳の「南総里見八犬伝」(上)

jpeg000-35曲亭馬琴作、白井喬二訳の「南総里見八犬伝」(上)を読了。白井喬二関係の著作で、現時点で一番売れているのはどうも「富士に立つ影」ではなく、この八犬伝のようです。Amazonのレビューを読む限り、白井訳は非常に評判がいいみたいなんで、読んでみました。「八犬伝」は子供の時、子供向けの翻案を読んでいますが、ちゃんとしたのは読んだことがなかったので、丁度いい機会と思いました。白井喬二は学生時代から、近松門左衛門や井原西鶴の作品の現代語訳を手がけていて、手慣れたものです。白井の現代語訳は、非常に読みやすく、リズムもいいと思います。そして白井は馬琴からストーリーテリングの手法を学んでいるように思います。
上巻では、八犬士のうち、六人までが判明し、七人目と思われる人物が出てきた所で終わっています。

古今亭志ん朝の「犬の災難、三枚起請」

jpeg000-34本日の落語、古今亭志ん朝の「犬の災難、三枚起請」。
「犬の災難」は酒を飲むのにつまみを、隣の家の分として預かった鶏肉を自分のもののように装って、後で辻褄が合わなくなったので、犬に盗られたとし、あげくの果ては友人の買ってきた酒を一人で飲んでしまって、これまた犬が徳利を倒してしまった、と言ってごまかす調子のいい男の噺。
「三枚起請」は以前聴いているので省略。
これで、志ん朝のCDは手持ちのものを全部聴き終えました。

梶原一騎・川崎のぼるの「男の条件」

jpeg000-32梶原一騎・川崎のぼるの「男の条件」読了。
「巨人の星」のゴールデンコンビが1968年に少年ジャンプに連載したもの。漫画家を主人公にして、梶原流スポ根をやったものです。
川崎のぼるの絵というのが、ワンパターンで、主人公は星飛雄馬そっくり。ライバルは花形満、親友のギャグ漫画家志望は伴宙太そっくりです。星一徹のそっくりさんは、ドヤ街で無銭飲食の男として登場します。(笑)ストーリーはあの当時の梶原一騎のいかにも時代がかったもので、ひたすら熱いです。ちなみに主人公の名前は旗「一太郎」です。一太郎は、ある旋盤の工員を主人公にした有名漫画の漫画家に、旋盤の絵が間違っている(そんな旋盤は存在しない)と指摘し、漫画家に工場に見学に来るように要求します。漫画家を工場に連れて行くため、一太郎は漫画家が酒場で酒を飲む間待っていますが、やがて喧嘩に巻き込まれ、頭を怪我します。その出血のため、工場に行くことができなかったため、一太郎は「自分の血で」床に旋盤の絵を描きます。それを見た漫画家は「まるで雪舟だ」と感動します…それから、一太郎は師匠と仰ぐ漫画家と一緒に紙芝居を描いて日銭を稼いでいましたが、ある時ヤクザに因縁をつけられます。この辺りがいかにも梶原一騎。
ともかく、「ああこういう漫画の時代もあったんだ」と懐かしいです。

三遊亭圓生の「ちきり伊勢屋」(下)

jpeg000-29今日の落語、三遊亭圓生の「ちきり伊勢屋(下)」。
占い師に死ぬことを予言され、全財産を使い果たして自分の葬式まで出したのに、傳次郎は棺の中に入っても結局死ねません。自分の屋敷も売っぱらってしまいましたから、今では浮浪者同然。易者に出会って問いただしてみたら、財産を使い果たす時に、人助けをして人の命を救ったので、それで運命が変わり、今度は80過ぎまで生きるという。それで色々あって駕籠舁きの真似ごとをしていたら、そこで前に命を助けた女性に出遭って、今度は逆にその女性から恩返しをされて幸せに暮らした、という長いけれど中々後味の良いお噺です。