古今亭志ん朝の「百年目」

jpeg000 93落語、今日は志ん朝の「百年目」。店の中でいつも小言ばかり言っている商売一筋の堅物に見える番頭さんが、実は大変な遊び人で、ある日芸者と花見に出かけてそこで店の旦那とばったり会ってしまい、遊びをやっていたことがばれて…というお噺です。
登場人物が大変多いのですが、志ん朝の演じ分けが見事ですし、長い噺ですが志ん朝のトントントンと噺を運ぶテンポが実に気持ちいいです。

小林信彦の「セプテンバー・ソングのように 1946-1989」

jpeg000 82小林信彦の「セプテンバー・ソングのように 1946-1989」を再読。この本は小林信彦のエッセイを集めた本ですが、特筆すべきは「1946-1989」となっているように、1946年の当時13歳で中学2年生だった小林信彦の夏休みの日記(学校に提出したもの)がそのまま掲載されていることです。戦争が終わり「平和になって初めての夏休み」ですが、それは明るさに満ちたもので、小林少年は先輩たちが開いてくれた夏期スクール、昆虫採集、映画、読書に熱中します。
タイトルの「セプテンバー・ソングのように」というエッセイは、映画評論家の荻昌弘さんへの追悼文です。
「セプテンバー・ソング」は作詞マクスウェル・アンダーソン、作曲クルト・ワイルによる名曲で、日本では1952年に公開された映画「旅愁」のテーマ曲として使われてから有名になりました。「9月になると日は短くなっていく」と歌われていますが、これが人生のたとえにもなっています。
表紙のイラストは江口寿史です。江口寿史は最近復刊された「極東セレナーデ」でも表紙を描いています。

古今亭志ん朝の「品川心中、抜け雀」

jpeg000 91落語、今度は志ん朝の「品川心中、抜け雀」を取り寄せて聴きました。
「品川心中」は、品川で売れっ子だった遊女が、寄る年波で段々人気がなくなり、移り替え(衣装替え)をしたくてもお金を出してくれる客がなく、それをはかなんで客のうち人の良い貸本屋の若旦那と心中しようとします。しかし土壇場で、若旦那を海に突き落とした後、お金を出してくれる客が見つかったと連絡があり、遊女は若旦那を海の中に落としたまま帰ってしまいます。突き落とされた若旦那は幸い海が浅かったので助かり、世話になっている親分の所に行きますが、子分共は博打の真っ最中で、手入れが入ったと勘違いして慌てふためくさまを志ん朝は見事に演じ分けます。実際の品川心中はこの後、若旦那が遊女に復讐する話があるのですが、これは現在では演じる人がいないようで、この志ん朝のCDも前半までです。
「抜け雀」は、一文無しで旅籠に泊まった絵師が、宿代の形に衝立に雀の絵を描いたのが、朝日を浴びると雀が絵から抜け出して餌をついばみにいってまた戻ってきます。これが評判になり旅籠は大儲けしますが、ある日老人がやってきて、その絵に欠陥があると言い出して、というお噺です。噺として面白いですし、サゲも決まっています。

小林信彦の「名人 志ん生、そして志ん朝」

jpeg000 79小林信彦の「名人 志ん生、そして志ん朝」を再読了。2001年10月に、古今亭志ん朝が63歳の若さで亡くなったことをきっかけにして、作者の志ん朝・志ん生に関するエッセイをまとめ、なおかつ「小説世界のロビンソン」に掲載されていた夏目漱石と落語の関係を論じたものを再掲したものです。
作者は、志ん生、志ん朝の親子、特に志ん朝を贔屓として、その早すぎる死を惜しんでいます。私もこの所ずっと志ん朝の落語をCDで聴いていますが、私も志ん生より志ん朝の芸の方を高く評価します。
作者は日本橋の商家の生まれで、志ん生-志ん朝に関しては特に江戸言葉の素晴らしさを讃えています。伝統的な下町の言葉は1960年代に絶滅してしまったようで、今後志ん朝のような素晴らしい江戸言葉をしゃべれる噺家というのは出てこないのではないかと思います。

NHK杯戦囲碁 本木克弥七段 対 清成哲也九段

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本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥七段、白番は清成哲也九段の対戦です。本木七段は初出場ですが、NHK杯戦では3年間記録係の経験があります。清成九段は出場回数30回以上のベテランです。対局で黒本木七段が上辺右の白に上から覗いて仕掛けていき、白が反発したことから、白石は2つに分断されて白が苦しくなりました。しかしながら清成九段は両方ともしのぎ、黒に決定的なリードは与えません。白は下辺を確定地にしながら、左上隅の黒の大ゲイマジマリに手をつけていき、左辺を白の勢力圏にしました。この結果、白優勢でのヨセ勝負かと思われましたが、ここで黒が白の左下隅に切り込みを入れたのが鋭い手で、部分的に地は損ですが、外から締め付けることが出来ました。これを利用して上辺の白と左辺の白を分断しました。白は両方をしのぐことはできず、白の投了になりました。本木七段の一瞬の隙をついた攻めが成功しました。

TOEIC新形式の問題集にトライ

jpeg000 98TOEICの新形式のテストを6月26日に受けます。その準備で、新形式の問題集を取り寄せやってみました。リスニングが475点、リーディングが465点の合計940点でした。
新形式になったから難しくなったとは感じませんでしたが、より実践的な英語力を問うようになった気がします。リスニングは、単に聴くだけではなく、図表を見ながらリスニングするのが追加されています。リーディングパートは、Eメールは従来からありますが、オンラインでの商品レビューみたいなものも出題され、普段見ている英語に近づいたように思います。従来からリーディングパートは時間ぎりぎりでしたが、新形式ではさらに英語を読む量が増えて厳しくなりました。今回は何とか時間内に終わらせることができましたが。

桂文楽の「富久、景清、酢豆腐」

jpeg000 89落語、今日は桂文楽の「富久、景清、酢豆腐」です。
どれも文楽はとてもうまいのですが、私にはあまり笑えるポイントがありません。
富久は富くじにあたったのに、お札を火事で焼いてしまったと思っていたら、最後に出てきたというお噺。景清は眼の不自由な人が、観音様に100日お参りしても御利益がなく、観音様に毒づいて帰る途中で雷に打たれ、目が明くお噺。酢豆腐は知ったかぶりをする若旦那の噺。

小林信彦の「オヨヨ城の秘密」

jpeg000 81小林信彦の「オヨヨ城の秘密」を再読了。オヨヨ大統領シリーズのジュブナイルのものは、「オヨヨ島の冒険」「怪人オヨヨ大統領」に続いて、この「オヨヨ城の秘密」が3作目ですが、2作目と3作目の間に、大人向けシリーズが4作書かれていて、「オヨヨ城の秘密」が出版されたのは1974年3月です。中二時代に連載されたものです。
ジュブナイルとはいえ、第1作、2作が軽く読めてしまうのに比べると、この3作目はより読み応えがあります。旦那刑事、刑事コロンボを思わせるコランボ刑事、ジョイス・ポーターのドーヴァー主任警部を思わせるブキャナン主任警部が登場します。大沢家の方も、おなじみのメンバーに加え、二歳の赤ん坊の大沢リサが登場し、この子がパパとルミのヨーロッパ行きの荷物に潜り込んで、アムステルダムのオヨヨ大統領の基地を吹っ飛ばしたりする活躍をします。
かぐや姫の「神田川」の替え歌が出てきたりするのが時代を感じさせます。

桂文楽の「素人鰻、よかちょろ、かんしゃく、夢の酒」

jpeg000 88落語、今度は志ん生と並んで昭和の名人と讃えられた桂文楽を聴いてみました。「素人鰻、よかちょろ、かんしゃく、夢の酒」です。桂文楽と志ん生は野球でいうなら文楽が王、志ん生が長嶋、文楽がアポロンなら志ん生がディオニュソスです。4つのネタはいずれも大ネタではなく小ネタですが、文楽らしさがよく現れていると思います。とくに「かんしゃく」は、文楽自身が大変なかんしゃく持ちだったそうで、どなる親父が昭和の親父という感じで絶品です。

フレドリック・ブラウンの「発狂した宇宙」

jpeg000 78フレドリック・ブラウンの「発狂した宇宙」を読了。先日読んだ「火星人ゴーホーム」が、「唯我論」(自分がいなくなったら世界は存在しなくなる)を扱った作品だったのに対し、それとは対照的な多元宇宙をテーマにした作品です。SF雑誌の編集人であった主人公が、月ロケットの事故によって多元宇宙の別世界に飛ばされます。この世界が自分の知っている世界とは共通点はあるものの、どこかずれていて、まるでスペースオペラの世界ですが、その理由は最後まで読むとわかるようになっています。SFしながら一方でスペースオペラのパロディにもなっています。また、別世界へ飛ばされた主人公が、異星人のスパイと間違われ、追われる展開もなかなかスリルいっぱいで読ませます。最後のオチも予想はできましたが、なかなか面白いものです。解説は筒井康隆が書いていますが、筒井康隆にもかなりの影響を与えた作品です。(「火星人ゴーホーム」は星新一に影響を与えています。)