今野元の「マックス・ヴェーバー ――主体的人間の悲喜劇」

今野元の「マックス・ヴェーバー ――主体的人間の悲喜劇」を古書で購入。この著者のヴェーバーに関した本は他にももっていますが、あまり評価していないので、新書とはいえ新品を買う気がせず古書にしました。この人はヴェーバーの学問よりも伝記的なことばかりを追いかけている人で、ご丁寧にもヴェーバーの子供の時の論文(?)まで日本語訳しています。私は「中世合名・合資会社成立史」を翻訳しようとした時にまず思ったのが、こんな子供時代のはっきりいって学問的価値の無いものを訳す暇があったら、どうして「中世合名・合資会社成立史」や「ローマ土地制度史」を訳さないのかということです。しかし本文をチェックして、その「中世合名・合資会社成立史」の所を読んでいたら、Die Offene Handelsgesellschaft (合名会社)を「公開商事会社」と訳していて、ああ、これはとてもじゃないがヴェーバーの学術論文は訳せないなと思いました。それからヴェーバーの博士号論文でテオドア・モムゼンが「結論に異議を呈した」とありますが、本当の所は、「モムゼンが生涯考え続けていたローマの植民市における何かの概念についての解釈がヴェーバーと違っていた」というだけです。それからこの論文を「資本主義の起源を扱った」と書いていますが、資本主義という単語はこの論文には一度も出て来ず、実際はローマ法のソキエタースがどのように法制史上で合名・合資会社を取り込んだか、というのが主眼であり、資本主義の起源を書いたなどというのはナンセンスです。この程度の人が書いた「伝記」など読む気はしません。

アウター・リミッツの”Corpus Earthling”

アウター・リミッツの”Corpus Earthling”を観ました。ある岩石の研究室にて、外観は石そのものの地球外からやって来たエイリアン同士について、博士のポール・キャメロンはオーブンの小爆発の事故で頭に怪我をして金属片が頭に入り込んだ結果、その会話を聞ける能力を得てエイリアンの地球征服計画を耳にしてしまいます。同僚のテンプル博士と女性の助手でポールの妻のローリーにそのことを話しても、頭を打って幻聴を聞いたのだろうと理解してもらえません。しかしエイリアンはポールを「リスナー」と呼び、自分達の計画の邪魔者と見なしその心を操って窓から飛び降り自殺させようとしますが、間一髪でポールはローリーとテンプル博士に止められます。家に戻ったポールとローリーは、ポールの精神が正常に戻るように、やっていなかったハネムーンにメキシコに行くことを突然決めます。二人はメキシコの田舎のコッテージに落ち着きますが、テンプル博士がエイリアンに乗り移られて、二人を追って来ます。ポールが車で買い出しに行っている間にテンプル博士がコッテージにやって来て、ローリーもエイリアンに乗り移られます。ローリーの顔は老婆のようになり、驚いたポールは逃げ出して街のホテルに泊まりますが、そこにコッテージの管理人がやって来て、ローリーはこの地方に多い風土病にかかっており、治療しないと死ぬと言ったので、ポールはコッテージに戻り、ローリーの手当をします。しかしそこに再びテンプル博士がやって来て、ポールを殺そうとしますが、ポールは争って何とか博士を倒します。しかし今度はローリーがピストルを持って彼を撃とうとします。ポールは何とかピストルを奪い、やむを得ず彼女を急所を外して撃ちます。エイリアンは彼女の体から出てきましたが、ポールはコッテージに火を点けて彼らを焼き払います。(元々が石なんだから、火には強そうな気がしますが…)元に戻ったローリーを車に載せて病院に連れて行く、というエピソードです。
エイリアンがちょっと岩明均の寄生獣を思い起こさせました。しかし、元々エイリアンがどうやって地球にやって来たかも語られていませんし、仲間が来るというのもどこからなのか分らず、ちょっと説明不足な内容のように思います。また冒頭でローリーが老婆になるシーンが出てきますが、エイリアンに乗り移られても別に老婆になる必要性はないのでは、と思います。

核魚雷で500mの津波は可能か?

最近ロシアのポセイドンという一種の水中ドローンみたいな核魚雷が、例えば東京湾の入り口で爆発したら、500mの津波が東京を襲う、といったヨタ記事を見かけますが、

(1)東京湾の水深は平均25m
(2)東京湾の面積は1,500K㎡

(1)からして大平洋の海水を瞬間的に東京湾に移動させない限り、300mとか500mの津波は不可能です。
また(2)の面積から言っても局部的ではあっても東京湾の海面高さをそこまで持ち上げるだけの量の海水を瞬間的に移動させることは、いくら最大級の水爆であっても不可能と思います。
もっとも10mの津波でも壊滅的被害は起きますから、危険を考えないでいいということにはなりませんが。
ちなみにアメリカ軍がビキニ環礁で行った水中核爆発実験では、原爆ですけど、水中27mで爆発させて、日本の戦艦長門などのテスト用の船舶を沈めることすら出来ませんでした。
おそらく500mというのは魚雷の爆発直後にその周辺海域が、おそらく極狭い範囲でそれだけ吹き上がるということでしょう。それがそのまま500mを維持して東京を襲うというのはまずあり得ないでしょう。ちなみにご承知の通り、東日本大震災はマグニチュード9レベルで、最大級の水爆よりはるかにエネルギーが大きかったですが(現在の最大の水爆の10倍のエネルギー)、津波の最大高さは40mでした。

トワイライト・ゾーンの”The Trouble with Templeton”

トワイライト・ゾーンの”The Trouble with Templeton”を観ました。ブース・テンプルトンは、ハリウッドで30年以上も活躍している男優です。庭では彼の2番目の若い妻が今日も新しい男を連れ込んでプールサイドでじゃれ合っています。彼は18歳の時に結婚し、その7年後に死んだ最初の妻ローラと、彼の若い時代を懐かしんでいます。テンプルトンはある劇のリハーサル初日に遅れて到着します。劇のディレクターはスポンサーの意向で若いやり手の男に変わっていますが、その男はテンプルトンの遅刻を激しくなじります。いたたまれなくなったテンプルトンは出ていきますが、外では多くの観客が彼を待ち受け拍手していました。テンプルトンが壁に貼られたポスターを見ると、それは彼が主演のドラマのもので、1927年となっていました。テンプルトンは30年前に戻っていました。ある男がローラが彼をあるスピークイージー(禁酒法時代の闇バー)で待っていると言い、テンプルトンはそこでローラと、また親友であったバーニーもそこにいました。喜んだテンプルトンでしたが、ローラは彼が知っているような女性ではなく、スピークイージーのジャズに合わせて踊り狂う蓮っ葉な女性でした。テンプルトンはバーニーとローラーに必死になって未来から来たことを説明しようとしましたが、まるで理解してもらえません。そしてローラを静かな場所に連れて行こうとしたテンプルトンに、ローラは「ここはあんたのいる場所ではない、元の場所に帰ったら」と言われ、ショックを受け店を出ます。その時にローラが手に持っていたパンフレットを持ってきていました。元の劇場に戻ると、時代も元に戻っていました。そこでテンプルトンは手にしていたパンフレットに気付くと、それは台本でした。その中には先ほどバーニーやローラーがしゃべった言葉がそっくりそのまま書かれていました。テンプルトンはローラの態度が芝居で、おそらくは彼が過去に戻りたがっているのを諫めるために芝居をしたのだ、ということが分り、もう一度今の世界でやっていくことを決意し、若いディレクターに謝りながらも毅然とした態度で接し、若いディレクターは態度を変えてテンプルトンを敬うような調子に変わります。第1シーズンでやはり大女優が年老いて自分の若い頃の映画ばかりを観て、ついにはその映画の世界に入ってしまう、というのがありましたが、それと好対照のエピソードでした。

ヴェーバーの誤り:母権制とメンナーハウス

マックス・ヴェーバーの「支配の社会学」の中に、「母権制」は「メンナーハウス」(戦士宿)で男子が戦士としての腕を磨くために共同で暮して家を空けた制度の名残であろうと説明しています。そしてWikipediaの「男子集会所」の項はこのヴェーバー説を正しいと認められた理論であるかのように引用しています。
しかし、
(1)まず「母権制」という概念自体がインチキで、スイスのバッハオーフェンという人が19世紀中頃に主張した説で、大昔は結婚制度がなく乱婚状態で、その場合父親が誰かは分りにくいけれど、母親が誰かは分るので、母親を中心とした家が作られた、というまったく歴史的事実に裏付けされないトンデモ説であり、いわゆるマルクス主義の原始共産制という概念もこれに基づいています。
(2)「母権制」といえる、女性が権力を継承するという社会は、世界全体では非常にまれで、「母系制」と混同しています。母系制は女性が権力を得るというものではなく、子供が母親の家系の成員となりその財産を相続するというものです。ただ、実際には母親の財産を管理しているのは男性の兄弟だったり息子だったりしますので、必ずしも女性が家長権を握っている訳ではありません。(母系制については中根千枝先生がいくつか論文を書かれています。)
(3)メンナーハウスがある所に(あった所に)、母系制社会があったというのも証明されていないと思います。メンナーハウスで一番有名なのはおそらくスパルタでしょうが、スパルタが母系社会であったというのは聞いたことがないです。
マックス・ヴェーバーの欠点は2次文献、3次3文献で得た知識を性急に一般化してしまうことで、これなんかまさしくそうだと言えます。

アウター・リミッツの”The Human Factor”

アウター・リミッツの”The Human Factor”を観ました。場所はグリーンランドの北方にあるおそらくアメリカのレーダー+核ミサイル基地で、約200名の男性と若干の女性が任務のためそこに住んでいました。そこの医者であるハミルトン博士はその女性助手であるケラーマンと、お互いの脳を接続して共有する装置の実験をしていました。その実験は上手く行きましたが、ケラーマンが博士を愛していたのに、博士は愛という感情を重視していない、という結果になりました。基地には核兵器のエンジニアであるロジャー・ブラザースがいましたが、彼は屋外の作業で部下がクレバスの中に落ちたのを助けずに見殺しにしていました。その罪の意識から、その部下が蘇って彼を襲うという幻覚を見るようになっていました。この幻覚から逃げるため、基地の核兵器を爆破させ、クレバスごと破壊しまた基地全体も吹っ飛ばし、自分も死のうとしていました。そんな状態の彼がハミルトン博士の所に診断のため連れてこられます。博士は例の装置を使って、ブラザースの心を読み取ろうとしますが、その最中に地震が起きて装置が切れますが、その瞬間に二人の心が入れ替わってしまいます。ブラザースの姿の博士は自分が博士であることを何とか証明しようとしますが、結局ベッドに縛り付けられて鎮静剤を打たれて気を失います。今は博士の姿のブラザースは、基地の司令官に核兵器の起爆装置を見せるように要求します。一方ケラーマンは、研究室に残された博士のメモから二人が入れ替わった可能性を察知し、ブラザースの姿の博士に会いに行き、博士が二人しか知らないことを話したので、入れ替わりを確信します。ケラーマンは鍵を盗んで博士を解放します。核兵器起爆に失敗し一度研究室に戻って来たブラザースと博士が対決し、ブラザースは自分の姿の博士を撃ちます。しかしギリギリの瞬間で二人の心は再度入れ替わり、元の姿に戻ったブラザースは息を引き取ります。
博士はケラーマンに何故自分だと分ったか聞きましたが、ケラーマンは私が愛していたのは博士の心だと答え、博士も今こそケラーを愛するようになります。
しかし氷と雪に1年中閉ざされた核兵器基地で働いていたら、心が病む兵士が出てきてもまったくおかしくないな、と現実的な恐怖が湧いてくる話でした。
ちなみに博士を演じた俳優は、タイムトンネルの第一話の上院議員を演じていたゲイリー・メリルです。

NHK杯戦囲碁 芝野虎丸9段 対 謝依旻7段(2022年10月23日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸9段、白番が謝依旻7段の好カードです。布石では白が三隅を取り、黒が右辺と左辺の模様で対抗という碁になりました。黒は全体的に厚い手を打って自分の弱みを消してから、強い手を打って白を攻めるというのが一貫していました。それに対して白の謝7段の逆襲が見られず、一方的に黒の横綱相撲を見せられた感じです。特に黒が中央の白を攻めながら右下隅を大きくまとめたのが、巧妙でした。ヨセで黒が左下隅をハネたのに白が押さえたため黒が切り、ここが劫になり、黒は左辺ワタリのコウダテに受けずに劫を解消しました。この結果、左辺の黒地が半減しましたが、右下隅が白地がほぼ無くなり逆に黒地が数目付き、別れとしては互角だったかもしれませんが、局面が整理され、白からの逆転のための策動の余地が無くなり、黒の勝勢になりました。白の中央の地も上下が空いていたので大きくまとまることはなく、白の投了となりました。これで今期の女流棋士は全員敗退しました。

自宅サーバーのリニューアル開始

自宅のWeb・メールサーバーのリニューアルを開始しました。
これまでは3年に1回サーバーマシン(といってもドスパラの普通のミニタワーPCです)を新しくしていましたが、今使っているサーバーからストレージをHDDからSSDに変えたので、まあ4年は保つだろうということで、今が丁度4年です。
今のサーバーのOSはCentOS 7ですが、ご承知の通り、CentOSは開発が中止になったので、Almalinux 8を使います。既に会社で一度インストールしているので、多分大きな問題は無いと思います。実際問題使っていて、CentOSとAlmalinuxの違いは全くといっていいほどありません。まあどちらもRedHatだから当り前ですが。
取り敢えずブートディスクを作って、インストーラーのanacondaが起動するかどうかをチェックしました。

トワイライト・ゾーンの”The Lateness of the Hour”

トワイライト・ゾーンの”The Lateness of the Hour”を観ました。ある洋館の中で、両親と娘が一人、そしてメイドが一人いて、母親の肩を揉んでいます。娘のジャナは父親が築いたある意味「完璧な」屋敷とその召使い達にウンザリしています。そして家にあるアルバムを調べ、自分の小さい頃の写真が一枚も無いことを発見します。実はその家の召使い達5人ほどは、すべて父親が作ったロボットでした。ジャナは普通の人間の暮しがしたいと駄々をこねて、ロボット達を壊さないと出ていくと言います。最初は拒否していた父親ですが、ジャナが本当に荷物をまとめているのを見て、ロボット達をお払い箱にします。しかし彼ら・彼女らは「私達に何か落ち度がありましたか?」と聞くほど、高度に人間的なロボットでした。ジャナはロボット達がいなくなったことを喜びますが、やがて自分も父親が作ったロボットではないかと言い始めます。その証拠に手を階段の手すりに打ち付けても痛みを感じませんでした。そうです、その通りでジャナも子供のいない夫婦として父親が精巧に作ったロボットでした。ジャナはそれが分ってパニックを起こします。次のシーンで、誰かが母親の肩を揉んでいます。それはメイドに作り替えられたジャナでした…
というエピソードです。ジャナもロボットなんだろうなというのは、10分くらい見てすぐ分りました。

アウター・リミッツの”O.B.I.T.”

アウター・リミッツの”O.B.I.T.”を観ました。アメリカのある研究所で、何やら係員が怪しげな装置を操作しています。その装置では、研究所内の全ての人員が今何をしているか、何をしゃべっているかをモニター可能で、その係員はある研究者の反政府的発言を録音していました。突然その装置のディスプレイに怪物のようなものが映り、気がつけばその怪物は係員の後ろに回って、係員を絞め殺してしまいます。その研究所は今回の殺人事件以外にも自殺や争い等々の問題が多くあったため、その調査にオーヴィルという上院議員がやって来ます。彼は研究所の人員を尋問して、その怪しげな装置に気が付き、国防相関係者がマル秘と言い張るのを撥ね除け、それがO.B.I.T.と呼ばれる装置で、研究所内の監視に使われていたことを知ります。オーヴィルは所長が不在なのに気が付き、居場所を問い質しますが、その男は一種の精神障害的に扱われ隔離されていました。オーヴィルはその隔離場所を突き止め、所長にインタビューしますが、所長はある怪物、つまり最初に出てきた怪物を自身も目撃していたのですが、誰にも信じてもらえず、ここに隔離されていました。オーヴィルは所長を研究所に戻し、全員を集めて尋問を続けます。所長はO.B.I.T.を使って自分の妻を監視しており、最初はほんの少しだけのつもりがどんどん常習になって、ついにはその浮気現場を見てしまいます。尋問を続けていって、ついにローマックスという研究員が本体を現わし、O.B.I.T.のモニターにはあの怪物が映っていました。その怪物はエイリアンで地球征服のため、地球人同士に不和を与えるためにO.B.I.T.をばらまいていた、というオチでした。
うーん、ウルトラセブンにも似たような話がいくつかありましたが、セブンの場合はそのエイリアンをセブンが最終的に倒すのでカタルシスがありますが、このアウター・リミッツでは何だか後味の悪さが残ってすっきりしません。よくこんなに娯楽性が乏しいドラマが長続きしたな、と逆に感心します。