NHKの朝ドラ「エール」、今週は「露営の歌」と「暁に祈る」が登場しました。「露営の歌」がたった1回で終わりという扱いにびっくり。まあフィクションでドラマですから、事実と違うというのを言っても野暮ですが、曲だけは本物を使っているんで、誤解してもらいたくないです。・「露営の歌」は、古関夫妻が奥さんの金子さんのお兄さんが満州で会社をやっていた関係で満州を旅行し、日露戦争の戦地の跡を回って実際の戦争の陰惨さを身をもって理解したことが背景にあります。
・そして「露営の歌」の作曲は自宅ではなく、その満州からの帰国の時にコロンビアから電報が入り急いで作曲して欲しいものがあるので、船で神戸まで行かず、門司で下りて汽車で戻って欲しいという要請がありました。そして汽車の中ですることもなく退屈していたら新聞に「露営の歌」が載っていて、それで汽車の中で短時間で作曲したもの。
・それでコロンビアに出社したら、作曲して欲しいというのが「露営の歌」で、「それならもう出来ています」と差し出し、コロンビアのディレクターがびっくりして「どうして分ったんですか」と聞いたら、「そこは作曲家の第六感ですよ」と古関はとぼけて答えています。
・エールだと短調に難色を示されていますが、実際はコロンビアのディレクターも短調がいいと思っていました。
・「露営の歌」の歌手は、佐藤久志のモデルである伊藤久男も入っていますが、実際は5人での斉唱で、当時のコロンビアの男性歌手陣の総動員(中野忠晴、松平晃、伊藤久男、霧島昇、佐々木章)でした。コロンビアもこの曲がおそらく出征兵士の見送りの時に皆で斉唱されるんだろうということを想定していたんだと思います。この5人の中では後にジャズ系の軽快な歌をボーイズグループで歌った中野忠晴が軍歌を歌っているのがちょっと面白いです。
・「暁に祈る」を依頼した軍人は、硫黄島の戦いで守備隊長として戦死した栗林忠道陸軍大将で、当時は陸軍省兵務局馬政課長でした。
・「暁に祈る」の作詞で、野村俊夫が何度もダメ出しされたのは事実で、7回書き直しています。そして最後のダメ出しの時に「あー、もう嫌だ」と叫んだ結果で、その「ああ」という冒頭の歌詞につながっています。
・そしてその冒頭の「ああ」の歌詞に、今度は作曲の古関裕而がどんな旋律を付けるか悩むことになりますが、たまたま家で奥さんの金子さんが詩吟をうなっていて「あーあー」とうなったのを「これだ!」と思って採用したという嘘みたいな話があります。
・エールでも出て来ましたが、軍馬の飼育を奨励するのが目的の映画の主題歌なのに、「馬」は3番で「あーあー傷ついたこの馬と飲まず食わずの日も3日」と出て来るだけです。
・後、「露営の歌」については、古関が中国に慰問に行った時の感動的なエピソードがあるんですが、これは多分これから出てくるんだと期待しましょう。このエピソードを使わないのであれば、その脚本家は失格です。
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本多猪四郎の「モスラ」
「モスラ」(本多猪四郎監督、1961年)を観ました。大体のストーリーは知っていますが、全部通して観るのは今回が初めて。これも音楽が古関裕而だから。
気付きなど。
1.女性の祈りで守護神が来る、というのは大魔神ですね。といっても大魔神は1966年なんでこちらの方が先ですが。
2.蛾というよりイメージはお蚕様ですね。養蚕の神様の「おしら様」というのが遠野物語に出て来ますが、それを思い出しました。
3.最後にモスラをおびき寄せるのに、鐘が使われますが、まさか音楽が古関裕而だから鐘を使ったのでは?と思いました。
4.シン・ゴジラでのゴジラが途中で変態するのは、このモスラへのオマージュなのかなと思いました。
5.インファント島の原住民は日本人俳優の顔黒塗りで、今では完全にアウト。
6.またロリシカ国のシーンでは、アフリカ系アメリカ人は一人も登場しません。1961年で公民権法が成立する前にはこのようにアフリカ系アメリカ人の俳優というのはきわめて例外的でした。
7.そのロリシカ国をモスラが襲う特撮はなかなか見応えがありました。
8.また東京のシーンでは、東京タワーの回りに高層ビルが一つも無いのに驚き。といってもよく考えたら霞が関ビルが1968年オープンなので、1961年だったら当たり前でした。
9.古関の「ドンドンドコドコ」のリズムは、例えば「三日月娘」とかにも使われていて、古関流のエキゾチズム描写ですが、ワンパターンといえばワンパターンです。
10.フランキー堺は3枚目的な新聞記者でしたが、達者な演技でした。
まとめて、東宝の怪獣映画の中ではかなり良く出来た方ではないかと思います。小美人のピーナッツも可愛かったし。
ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」についての訳者コメント
ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」について色々と記事をアップしましたが、最後のものとしての訳者コメントをアップしました。
十二分に検討したものではなくて、あくまでも約11ヵ月かけて訳して来た結果としての正直な気持ちという所で、学問的な批判のレベルにはなっていないです。
ただ、この論文のための各種ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの調査が後の「理解社会学のカテゴリー」においての、かなり特殊なゲマインシャフトとゲゼルシャフトの位置付け(テンニースのように対立する概念ではなく、ゲゼルシャフトは特殊なゲマインシャフトとするもの)につながったのではないか、というのはかなり本気でそう思っています。
ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」の英訳の評価
ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」のLutz Kaelber氏による英訳である、“The History of Commercial Parntership in the Middle Ages”, Rowman & Littelfiels Publishers, Inc., 2003、についての評価を公開しました。この英訳に感謝しながらも、私が理想とする翻訳からはほど遠く、やはり厳しい評価になっています。
山本嘉次郎監督の「雷撃隊出動」
山本嘉次郎監督の「雷撃隊出動」を観ました。これも主題歌が古関裕而だからというのが観た理由の一つですが、その主題歌は後半残り1/3の所で兵隊達が野原で酒盛りするシーンで少し聞えるというだけであまり主題歌らしい扱いではありませんでした。ちなみにこの主題歌は戦後、別の歌詞が登山家達によって付けられ「穂高よさらば」という替え歌に生まれ変わっています。
「ハワイ・マレー沖海戦」と同じ監督ですが、そちらが実話ベースで日本が勝つ話ですが、こちらは昭和19年11月製作、12月公開です。昭和19年8月には学童疎開が始まっており、大本営発表にもかかわらず敗色の濃さが国民にも実感されて来た頃です。そのためかこの映画もかなり暗く、南方の基地で、肝心の飛行機が来ず、それを待つ間がかなりの時間を占めています。そして後半残り1/3の所(酒盛りシーンと同じタイミング)でやっと戦闘機と艦攻機(天山と一式陸攻)が到着し、その時丁度発見された敵機動部隊(空母12隻)を基地と空母(瑞鶴)の両方から攻撃隊が発進して攻撃するという話です。基地からの攻撃は夜間雷撃になりましたが、そんなの可能だったのかと思いましたが、天山にはレーダーが装備されていて実際に夜間雷撃はあったようです。空母からの発艦シーンは、真珠湾攻撃に参加した空母6隻の内で最後まで残った瑞鶴で撮影されています。しかしこの映画が封切られた時は、レイテ湾攻撃に参加した瑞鶴は敵の攻撃で沈没し、既に存在していない艦でした。結局の所は、「一人で10人倒せばアメリカに勝てる」というやけくそ気味の思想で、攻撃隊はそれぞれ魚雷を命中させますが、被弾した後敵空母に自爆攻撃して果てる、という気持ちの良くないラストになっています。
大塚久雄氏の「中世合名・合資会社成立史」への言及への批判
ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」についての日本人学者の言及として、大塚久雄氏の「株式会社発生史論」におけるそれについての批判をアップしました。私はマルクス主義のいわゆる「発展段階説」が大嫌いなので、自然と辛口の批判になりました。
NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人 対 瀬戸大樹8段
本日(20日)のNHK杯戦囲碁は、またTOEICのSpeakingのテストの関係で録画での視聴。黒番が芝野虎丸名人、白番が瀬戸大樹8段という好カードでした。この対局は白の名局と言って良いかと思います。序盤で上辺で白が黒をハサミツケていた所に、黒が2線への出を敢行し、結局上辺右の白3子を取り込んだ時点では黒がいいのかなと思っていました。しかし白は手厚く構えて動じません。その後何度も白から仕掛けるチャンスがあり、特に左上隅の劫は白から仕掛ければ、上辺右の取られている白石を復活させる手が劫立てになり、白が面白いかと思いましたが白は決行せず、結局黒が手を入れました。また右上隅で黒が大きく構えたので、白は三々に付けて行きましたが、これも黒のハネにすぐ切り違えを打たずチャンスを伺っていました。それが後になって利いてきて、右下隅の黒の包囲網で黒が膨らんで白1子の動きを制止している所で、その白1子を伸び出しました。これが両にらみの好手で、右下隅を受けると中央が危なくなりますので、やむを得ず中央に手を入れましたが、そうすると右下隅でハネ出して黒地を減らす手が打てました。後は普通に寄せても白が優勢なのでそうするのかと思いましたが、貯めていた力を一気に出す感じで中央の黒に襲いかかり、結局10子ぐらいを取り込んで、ここで白の勝ちが決まりました。その後芝野名人が勝負手を何手か繰り出しましたが、白が的確に受けて、結局黒の投了となりました。名人対8段という立場を逆にしたような白の横綱相撲でした。
ジブリさん有り難う!
安藤英治氏の「中世合名・合資会社成立史」の紹介についての論評
安藤英治氏が、「ウェーバー歴史社会学の出立 ―歴史認識と価値意識―」という本の中で、20ページくらい「中世合名・合資会社成立史」の内容を紹介されており、それについて論評しました。故安藤先生には申し訳ありませんが、かなり厳しめの評価になりました。
ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」のダイジェスト版を公開
ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」のダイジェスト版を公開しました。
日本マックス・ヴェーバー研究ポータルのアクセス統計を見ていると、この論文の結論部にだけアクセスしている人が非常に多いんです。しかし、この論文の結論部だけ読んでもこの論文の内容はほとんど分りません。何故なら、全体が一つの仮説を提示しそれを論証するといった結論がはっきりしているものではなく、いわゆる決疑論を広範囲の地方の法規に対して展開しているのがこの論文であり、個々の法規の評価の部分が重要で、結論で簡単にまとめられるような内容ではありません。
ダイジェスト版といってもWordで17ページありますが、せめてこの位は読んでいただきたいと思います。