稲垣浩監督の「無法松の一生」(1943年)

稲垣浩監督の「無法松の一生」(1943年)を初めて視聴しました。新しいブルーレイプレーヤーを買った記念(?)です。これまでこの有名な映画を観る機会がありませんでした。また、戦前に内務省によって、また戦後にGHQによってと2度も検閲を受けてずたぼろにされた作品ですが、それでも名作ですね。阪妻は先日「狐の呉れた赤ん坊」を観ましたが、その主人公ともちょっと共通点があって、こういう役はぴったりはまっています。吉岡夫人を演じていた園井恵子は、広島の原爆に遭って亡くなってしまったということですが、物語の舞台となっている小倉も、寸前の所で原爆の惨禍に遭う所だったのを考えると、複雑な気持ちです。(長崎に投下された原爆は当初は小倉に落とされる筈でした。)この映画のクライマックスで出てくる小倉祇園太鼓の暴れ打ちは、創作で実際のものとは違うそうです。山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズはこの作品の影響を受けているそうで、主人公の車寅次郎という名前も、松五郎が車屋だったところからつけたそうです。

NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 羽根直樹9段

本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が羽根直樹9段の平成四天王同士の見応えのある対戦です。黒と白が上辺で競い合っていましたが、黒は左上隅で地を取っていたので上辺の戦いは白が有利かと思いましたが、そういう時でもひたすら攻めるのが山下9段です。上辺右の白にはいざとなったら左の白に連絡する保険があったのですが、それをふくらんで、白が押さえたのに切り込んで、この切った一子を取らせて先手で渡りを止め、そこから右辺へと延びた白を切断しました。この結果、上辺の白は攻め合い一手負けで、攻め取りとはいえ取られてしまい、まずは山下9段のパンチが入りました。さらに黒は2つに切られた白のもう一方の石も攻め、なんとこれも取ってしまいました。黒地は概算しただけで90目ぐらいになり、黒の勝勢になりました。しかし白は中央に厚みを築き、中地を囲って何とか挽回しようとします。黒は左下隅にかかっていき、白地の削減を図ります。その折衝の途中で白は上辺の取られていた石に手をつけてうまく劫に持ち込みました。劫材は右辺の取られている白を生きようとする手が何手もあり、白は劫に勝ってこの白が生還しました。その後白は右下隅の黒地に侵入し、また劫に持ち込むことを狙いましたが、その前に左下隅を黒に打たれて、本劫にされてしまいました。黒からは右下隅に侵入した白を取る手がすべて劫材になり、白は両方を持ちこたえることは出来ず、ここで白の投了となりました。一貫して、山下9段の豪腕が見事だった一戦でした。

山川惣治原作、川崎のぼる絵の「荒野の少年イサム」

山川惣治原作、川崎のぼる絵の「荒野の少年イサム」全五巻読了。この作品はリアルタイムで読んでいましたが、結末の所は読んでなかったので、今回ちゃんと読めて良かったです。この作品に出てくる、ビッグ・ストーンという黒人のガンマンはとても魅力的な脇役ですが、実はこれは原作にはなく、川崎のぼるが付け加えたものなんだそうです。イサム全編を通して最大の山場は、イサムとビッグ・ストーンの一昼夜に及ぶ決闘だと思うので、この作品への川崎のぼるの貢献度って大きいと思います。今になって読んでみると、結構色んな西部劇の影響が各所に感じさせられますが、マカロニウェスタンではない、うどんウェスタン(?)とでもいうべき、優れた作品だと思います。

今村俊也の「世界一厚い碁の考え方」

今村俊也九段の「世界一厚い碁の考え方」を読了。今村九段は、タイトルの通り「世界一厚い碁」を打つと言われている棋士です。碁の最終目的は相手より多く地を取る、ことです。「厚い碁」というのは、どちらかというとその正反対で、相手に地を与え、自分は外回りの勢力と好形を得る打ち方です。現在の囲碁は、足早に展開していく打ち方や、地を先行して取っていく打ち方が主流です。というのは「厚い碁」というのはなかなか勝ちにくいからです。「厚い碁」は相手にまず地合でリードを与え、後半で盛り返して逆転する勝ち方をする必要があり、これが簡単そうでなかなかできません。そういう訳で今村九段のような打ち方はプロでは少数派ですが、「厚い碁」を打ってなおかつ勝っているというのがすごいです。今村九段はタイトルこそ取っていませんが、7大タイトルで2回挑戦者になっていますし、NHK杯の囲碁でも2回準優勝しています。この本はそんな今村九段のノウハウを書いた本ですが、内容はどちらかというと初級者~中級者向けです。もう少し実戦例を多く載せて欲しかったです。

井山裕太、黄翊祖の「井山、黄の定石研究 進化する流行定石」

井山裕太、黄翊祖の「井山、黄の定石研究 進化する流行定石」を読了。私の囲碁は典型的な本で覚えた碁で、理屈には詳しいけど、実戦経験が不足しているのでなかなか強くならなかったのですが、コンピューター囲碁が進化して私の棋力を追い越して、ようやく稽古相手として不足がなくなって、対局の数をこなして多少強くなることができました。しかし、最近伸び悩みを感じているので、また少し棋書に戻ってみようと思います。最近の囲碁でついて行けないのは、定石がどんどん変わっていることです。この本の表紙に出ているのなんかいい例で、昔はこんな打ち方をする人は皆無でした。定石は、隅での黒白の攻防を、ある程度机上で研究して、または実戦で試されて、黒白互角とされる攻防をまとめた手順ですが、碁は隅で完結している訳ではなく、他の箇所との関連があるので、その部分だけ見た最善手が全局的に見た最善手とは限りません。そういった関係で、プロの実戦では定石はどんどん変わっています。そういうのにちょっと追いつくにはいい本でした。かなりレベルの高い本で、アマ高段者向け。

あぶくま洞

元日の午前中は初詣とアクアマリンふくしまに行ってきましたが、午後はあぶくま洞まで出かけました。鍾乳洞で、発見されたのは1969年ということで、意外と新しいです。中は1周600mくらいです。所々かなり低くなっていて、腰をかがめないと通れません。鍾乳洞としては、小学校の時に行った秋芳洞(山口県秋吉台)の方がはるかに規模が大きいです。

新春お好み囲碁対局 東西対決!スーパー早碁

本日のEテレで12:00~14:00で新春の特別番組の「新春お好み囲碁対局 東西対決!スーパー早碁」がありました。東は武宮正樹九段・吉原由香里六段・芝野虎丸三段、そして西は 石井邦生九段・吉田美香八段・谷口徹二段で、解説が石田秀芳二十四世本因坊、そして聞き手が田村千明三段という陣容でした。普段のNHK杯戦では1手30秒で、途中1分単位で10回の考慮時間というものですが、本日は1手15秒のスーパー早碁です。考慮時間は30秒で、若手組が1回、女流が2回、ベテランが3回となっています。
若手同士の対戦は、黒が芝野虎丸3段、白が谷口徹二2段です。黒の芝野3段が中央に武宮9段好みの大模様を築いて打ちやすい碁だったんですが、白に抱えられていた石を逃げ出して攻め合いにし、劫になったのがどうだったか、劫立てで取られていた中央の白が堂々と逃げ出してしまい、逆転の白勝ちでした。
女流同士の対戦は、黒が吉田美香8段、白が吉原由香里6段でした。白が上辺の3子を捨てて、右下隅から下辺にかけての黒を狙ったのですが、左辺の攻防で黒の痛恨のポカミスが出て、黒のタネ石が抜けてしまいました。白の中押し勝ち。
ベテラン同士の対局は、黒が武宮9段、白が石井9段です。黒が2連星に対し、白は4手目が目外しで、棋風とは逆に黒が実利を取り、白は余し作戦でした。しかし、武宮9段が1手15秒とは思えないほど終始見事に打ち回し、上辺と下辺に大きな地を作って白の投了となりました。
という訳で、東が2勝1敗で勝利しました。

エトピリカ

元日に、マリンピアふくしま、という水族館に行きましたが、そこにエトピリカがいました。エトピリカは以前北海道東に行った時に、霧多布岬という所で見ようとしましたが、5時間くらいねばって駄目だった記憶があります。今年は酉年なんで縁起がいいですね。