LUXMANの真空管プリアンプCL-38uを導入

メインのシステムのプリアンプについては、色々試行錯誤していて、真空管アンプで3種類(エレキット、サンバレー。中華アンプ)試しましたが、どれもそれぞれに問題があり、暫定的に半導体アンプであるアキュフェーズのE-600のプリ部を使っていました。(フォノイコライザーはオプションボードのAD-50)
超三結アンプの時はこの組み合わせは結構良かったのですが、今回パワーアンプをKT88全段差動プッシュプルアンプに変えましたが、この組み合わせだと、若干音が硬質になりました。(全段差動プッシュプルアンプが定位が良くて音が引き締まった感じになりますが、それがある意味真空管らしさを減じている部分があります。)それで最後のボーナスももらったので、マッキントッシュのC8、上杉研究所のU・BROS-2011Pと、LUXMANのCL-38uを検討しました。条件は、(1)フォノイコ付き(2)バランス入力有り(3)リモコン付き(4)適当な価格、で比較して結局(4)の要素が一番効いてLUXMANのCL-38uを購入しました。さすがにいいお値段だけあって、今までの真空管プリとは大違いでした。パーツ類も良質なものを使っているようです。また操作感もなかなかいいです。ただリモコンが音量とミュートだけなんで。、出来れば入力切替えも欲しかったです。全段差動プッシュプルアンプとの組み合わせでは、若干ですがE-600に比べて柔らかさが戻ったと思います。なおフォノイコはMMポジションのみで使い、別に昇圧トランスを使っています。

サンチャゴ・ナバスケスの「ギター音楽の3世紀」

私の愛聴盤、サンチャゴ・ナバスケスの「ギター音楽の3世紀」。(Eurodisk)
バチバチノイズだらけになっていたのが、クリーニングマシンによる洗浄で蘇りました。特筆すべきは演奏もですがむしろ録音。きわめて間接音の多い録音でおそらく小さな教会とかで床も壁も石だと思います。その間接音と直接音の混じり具合が絶妙です。全段差動プッシュプルアンプの良好な定位と相性が良いようです。長い間、このギタリストがどういう人なのか分かりませんでしたが、さすがインターネットで情報がありました。1933年生まれのスペインのギタリストです。10枚くらいレコードを出していたようです。

MCカートリッジの値上がりの原因

これはオーディオテクニカのAT33EVというMCカートリッジです。私はこのカートリッジが気に入ってこれまで4回購入しています。その価格がAmazonで40,000円弱だったのが、今は何と59,000円くらいになっています。実に1.5倍です。オーディオテクニカだけでなく他の会社のカートリッジも値上げになっていて、例えばデノンのDL-103というNHK御用達のカートリッジがありますが、これは私の学生時代には14,000円くらいでした。それが今は3万円以上です。
カートリッジの原価に影響するのはコイルの銅線、磁石材料とダイヤモンド、さらにはカンチレバーの材料のボロンやベリリウム、ジュラルミン等ですが、銅と希土類磁石が要するに電動自動車が普及しだしてモーターの需要が急増して値上がりしているみたいです。昇圧トランスの類いも値上がりしていると思います。

フィデリックスのアウター・スタビライザー

反りのあるLPレコードを再生する時に有用なのが、このフィデリックスのアウター・スタビライザーです。ご覧になって分かるようにレコード盤の外周に載せるスタビライザーです。反りのあるレコードをフラットにする手段としては、1980年代に吸着ターンテーブルというのが一時流行りました。それはつまりターンテーブルとレコードの間の空気をポンプで抜いて、レコードをターンテーブルに密着させるものでした。しかしその欠点は吸着に時間がかかり、レコードの片面毎に行うのは面倒であるというのと、もう一つはレコードの表面のホコリを出来る限り取り除かないと、場合によっては真空圧着でそのゴミをレコード盤に食い込ませて取れなくする、というのがあります。そういう欠点と、後数年後にCDの時代が始まった関係で、今は吸着ターンテーブルは見かけません。それに対してこのアウター・スタビライザーは載せるだけなので簡単です。また外周を押さえるだけなんでホコリを食い込ませたりすることもありません。欠点は、センター出しが結構面倒で、レコードの径のバラツキを考え多少大きめに作ってあるため、センターを出すためには何回かトライして調整する必要があります。また重さが十分ではなく、ひどい反りは取り切れません。またこれが一番の欠陥ですが、ターンテーブルの形状によっては使用出来ません。つまりターンテーブルの外周が垂直になっている部分がある程度あるタイプでないとダメです。ただ、お使いのターンテーブルが使える形状なら、持っていて損はないと思います。

KT88全段差動プッシュプルアンプ用真空管ガード

KT88全段差動プッシュプルアンプに、自家製真空管ガードを追加。前もやったことありますけど、Amazonで売っている金属メッシュのペン立てを改造しています。とても簡単。真空管の保護もありますけど、このアンプ常に最大電流が流れていて真空管がかなり熱くなるため、火傷防止でもあります。

全段差動プッシュプルアンプの電源ケーブル交換

全段差動プッシュプルアンプの電源ケーブルが安物で、しかも端子が2ピンでネジで止める旧式のものだったため、中を開けて3Pのインレットを付けようとしました。しかし角穴を開ける必要があったため、質の良い電源ケーブルを直結にしました。これで音が変わり、低音がかなり力強くなり、全体にハードな音になりました。
ちなみに電源スイッチはNKKのS-1Aでした。

KT88の全段差動プッシュプルアンプを入手

オーディオへのAddiction(中毒)は止まらず、今度はヤフオクでKT88全段差動プッシュプルアンプ完成品を入手しました。超三結アンプと並んで、真空管アンプの新しい回路としてぺるけさんが2000年頃考案(正確には以前からあったアイデアを具現化したといった方がいいでしょう)したものです。プッシュプルの高い出力は犠牲にしますが、その代りプッシュプルの2つの真空管に完全な補完動作を定電流回路で行わせるものです。特に定位感の向上に効果があります。ただ、プッシュプルの一番のメリットである高出力が無くなってしまうのに対して、メリットの方はある意味玄人受けというか、初心者だとほとんど違いは分からないと思います。退職金をもらったのでいっそのことヴィンテージの真空管アンプでも買おうかとも考えましたが、それより真空管アンプの新しい可能性を試してみたくてこうなりました。
定位感は本当にいいです。今、フィッシャー・ディースカウのレーヴェのバラードのLPを聴いていますが、本当にそこで歌手が歌っているという感じが出ています。

別冊FM fanのカートリッジフルテスト(1976、1978、1980年)

ヤフオクと日本の古本屋で、別冊FM fanのカートリッジのフルテストを行っている、1976、1978、1980年の各号を入手。この内1980年の号は実際にリアルタイムで所有していました。テストしているのはすべて長岡鉄男です。今こんなに詳しいカートリッジのテスト記事は無いです。感心するのが、すべてのカートリッジで、20時間テストレコードをトレースするというエージングをやってからテストしていることです。このため1976年の最初の40機種のテストには実に4ヵ月かかったそうです。またレビューの中身も単なる様々なソースを聞いての印象批評だけではなく、それぞれのカートリッジの技術的な特徴を、自分の言葉でちゃんと説明しています。それに比べると今のカートリッジ評はメーカーの宣伝文句をそのまま繰り返すだけで自分で理解して書き直すということがまずないですし、またエージングをやっている例も少ないです。長岡鉄男も色々に評価される人ですが、このカートリッジの評価ではいい仕事をしていると思います。

サテンのMCカートリッジ

昔京都にサテン音響という会社があり、学生の頃そこのM-21というMCカートリッジを使っていました。この会社はもうありませんし、創業社長ももうお亡くなりになっています。しかしこのカートリッジは今でも忘れられない素晴らしい音のカートリッジでした。そもそもMC型のカートリッジを世界で最初に作ったのがデンマークのオルトフォンで、最初の製品はSPUというものでした。(今、そのレプリカを使っています。)この時にオルトフォンが採用した構造は、今でもMCカートリッジのおそらく8割くらいで採用されています、というか真似をしています。ところが、このサテン音響はオルトフォンのMC型に真っ正面から挑戦し、その欠点である所を全て解決した製品を出していました。オルトフォンのSPUの欠点とは、
(1)出力電圧が低く、昇圧トランスやヘッドアンプを必要としSN比が悪い。
(2)カンチレバーの後ろに十字型の枠があり、それにコイルを巻く構造です。このためMM型のような簡単な針交換が出来ませんでした。
(3)コイルを巻くのに鉄芯を使っていましたが、それは磁性体歪を発生させます。
上記3つ以外に、筐体が柔いというのも欠点でしたが、それは省略します。
サテンのMCカートリッジは、
(1)独自のリボン型巻線を採用し、出力電圧をMM型並みにした。
(2)針先の近くに、パンタグラフ状の金属バネを付け、針の振動はこのパンタグラフ状の金属を経由してコイルに伝えられました。針先とパンタグラフは接着されていないため、簡単に針交換が出来ました。しかもスタイラスユニットと本体の固定は、本体の中に磁気回路として入っている磁石でくっつけていました。
(3)コイルは歪の発生しない空芯コイルを採用していました。
といった構造で、オルトフォン型の欠点を全て解決した独自の構造を持っていました。
また(2)の構造はカンチレバーの共振とか、歪、群遅延特性といった問題をある程度解決しており、ビクターのMC-1、MC-L10、MC-L1000といったダイレクトカップル方式に先んじていました。現在こういう構造のMCはオーディオテクニカのAT-ART1000だけです。

以上のように素晴らしい製品でしたが、使いこなしは結構難しく、ビリツキが出るのをなかなか解決出来なくて苦労しました。針圧も0.01g単位で調整してください、みたいなことが書いてあって、本当は専用のアームを使わないと真価を発揮しなかったのかもしれません。

AT-OC9XSHのレビュー

オーディオテクニカのAT-OC9XSHのレビューをAmazonにアップしました。(現時点ではまだ公開されていません。)買ったのはヨドバシですが、前のAT33EVもAmazonでレビューしたのでAmazonにしました。多分ですが、インターネット上では一番詳しいレビューだと思います。
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AT-OC9Xシリーズには、5機種有り、その内パーメンジュール(鉄とコバルトの合金で磁束密度が高い)のヨークとボロンのカンチレバーを備えたのが、上位からSL、SH、MLの3種類。この3つの違いは針先のダイヤモンドチップの形状の違いで、この順で特殊ラインコンタクト針、シバタ針、マイクロリニア針となっています。でこの3種類の中からわざわざSHを選ぶ人は、要するにシバタ針というものの音を一度経験してみたい、という人が多いのではないかと思います。(私がそうです。)このシバタ針というのは元々は、1970年に日本ビクターが開発したCD-4というLPレコードで4チャンネル再生をするにあたって、前後のスピーカーの差分信号を30KHzの搬送波を使ったFM変調でLPレコードの溝に記録したものを再生する必要がありました。この目的で従来の丸針や楕円針より優れた高周波特性を実現するために開発されたのがシバタ針で、名前は発明者が柴田憲男という方だったためです。一言で言えば現在で言うラインコンタクト針の走りであり、丸針や楕円針よりも先端を鋭角にしてより深く音溝に針先が入り込み、左右の音溝との接触が点ではなく長方形に近い線状になります。これによるメリットは周波数レンジの拡大以外に、摩擦が分散されることによる針の長寿命化ということがあります。ちなみに4チャンネル再生は方式が乱立した結果自滅し、CD-4のLPがその後作られることはありませんでした。しかしシバタ針そのものは生き残り、1980~1984年頃に日本ビクターが発売していたMC-1やMC-L10と言った、プリントコイルを使ったダイレクトカップル方式のカートリッジに採用されていました。これらのカートリッジは長岡鉄男が使っていたことで有名です。しかし、シバタ針は結構扱いが難しい面がありかなりマニア向けであり、ビクターはその他のカートリッジでは楕円針に戻したりしており、ダイレクトカップルの最終版のMC-L1000では特殊マイクロリッジ針に変わりました。オーディオテクニカがシバタ針を採用しだしたのは、おそらく日本ビクターの特許が切れた1990年代だと思われ、現在はVM型2種、MC型3種にシバタ針を採用しています。面白いのがオーディオテクニカがシバタ針を採用している理由は、「豊かな中低域再生を実現する」ということであり、高周波特性が優れているという理由ではありません。これは何かと言うと、私の想像ですが、アルミやジュラルミンのカンチレバーに比べ、ボロンのカンチレバーは特性としては非常に優れていますが、聴感上は音が細身に聞こえエネルギー感が乏しいと感じる人が多くいます。特にマイクロリニア針との組み合わせはそうだと思います。これに対しシバタ針はラインコンタクトと言っても接触形状のアスペクト比は、現在のラインコンタクト系の針よりも高くなく、せいぜい2.5倍くらいであり、また研磨の仕方もある程度針先の剛性を維持しているため、マイクロリニア針に比べて中低音の厚みが出て、ボロンによる細身の音を補うという効果があるのだと思います。
前置きが長くなりましたが、最初にこのAT-OC9XSHを聴いた時は「何だこれ?」でした(昇圧にはトランス:AT3000Tを使用)。これまで主に同じテクニカのAT33EVを使って来ましたが、SHの音色と音場に違和感があり、かつトラッキング能力が十分ではなく、ピアノの強音で音割れが生じていました。それでも我慢して聴き続け、LPを20枚くらい再生し、また電動のスタイラスクリーナーで何度か強制的なエージングをした結果ようやく音のビリツキは解消し、また音場や音色も自然なものになりました。その後はAT33EVと比較して音像が立体的で特に前後感が良く出て音場も広く自然です。また金管楽器や電子楽器の音に独特の艶がある一方で弦楽器やボーカルも悪くなく、クラシック、ジャズ、ロックとジャンルを選ばない万能型です。一方中低音の押出し感という点では、いくらシバタ針とはいえ、AT33EVのテーパードジュラルミンによる押出し感までは行きません。総合的にはAT33EVよりは上で良く出来たMCカートリッジだとは思いますが、最近のMCカートリッジの高価格化に合わせて、実売で税込み78,000円前後という価格は、消耗品であるMCカートリッジとしては辛い部分があります。また分析的な音より音楽のグルーブ感を優先するならAT33EVを選んだ方がいいと思います。ただそのAT33EVも発売当初は実売で4万円くらいだったのが、Amazonで現在5万8千円くらいになっており、こちらも気安く買えるものではなくなっていますが。