300Bの蛍光

ウェスタン・エレクトリックの300Bで片側で青白い「蛍光」を確認出来ました。似たような現象でグローというのもあって、そちらは一種の不良(内部にガスが発生している)みたいですが、蛍光は特に問題はないようです。

直熱管の縦置き保存

ある知人から、300Bなどの直熱管(ヒーターがカソードを兼ねている構造の真空管、これが分かれているのが傍熱管です)の場合は、保管の際に縦置きしないと寿命が短くなるという未確認情報を得ました。で、その話の出所を調べたら、また例によってサンバレー(旧キット屋)でした
ちなみに今回購入したウェスタン・エレクトリックの300B(言うまでもなく直熱管です)の注意書きをお見せします。

横置き保存が不可どころか、横置き使用もOK、ただ出来れば縦置きをお勧めします、のレベルでした。そもそもこの復刻管は一本一本がしっかりした箱に入っており、更にペアやクワッドの場合は箱ごと木箱に入れられています。この場合、保管時に縦にするのは場所を取るでしょうし、また地震などの際に棚から転落する危険性も増すため、メリットも必要性も無いと思います。本件に関わらず、サンバレーの情報は基本的に疑ってかかった方が無難です。

WE300B(1997年復刻管)その後


ウェスタン・エレクトリックの300B復刻管(1997年製造)のその後。特性チェックの結果として、製造から24年半経っているにも関わらず新品時の特性から3~4%しか劣化していないところから、この300Bは出荷後一度も通電していないヴァージン管だろうという結論になりました。(もちろん製造元で通電して試験していますが。)その意味で第一印象があまり良くなかったのはエージング不足が主因と思いエージングに努め、現在24時間ぐらいです。この位でも前回に比べると印象は大幅に好転し、中高音のふわふわした感じは無くなり、これなら現行の全ての手持ちの他の300B(PSVANE、高槻、JJ、エレハモのゴールド、サンバレー)に比べて上だと言えます。ただまだ中高音に硬さがあり、しっとり感とかふくよかさには欠けています。またいくつかシステムに変更を加え、まずラックスの真空管プリアンプを追加しました。CDプレーヤーを聴くだけならプリアンプは不要ではないかと思っていますが、このケースでは音の品位とS/N比が上がったように思います。また300B以外の真空管(12AU7が2本と12AX7が1本)をMullardからJJ製に変えました。昔のMullardは確かに品質が良かったみたいですが、今売っているMullardはロシアで製造されたものにMullardのブランドを付けて売っているだけであり、それが音質がいいというのはプラセボ効果がほとんどだと思います。JJの真空管の全てがいい訳ではもちろんありませんが、入手がしやすく、またガラスの質も良く、現行の真空管メーカーの中ではもっとも信用出来ると思っています。

KT90(エレハモ)

TU-8200Rで使える真空管という中にKT90というのがありました。この真空管についてはこれまで知りませんでした。調べてみるとKT88の上位互換球ですが、KT120とかKT150みたいにプレート電流を大きくしていないので、このアンプでも使えるとのことのようです。元々EIが開発したものですが、今はEIは作っておらず、市場ではエレハモだけが販売していました。取り寄せて使ってみましたが、確かにゆったり系で余裕がある感じの音でした。マッキントッシュのMC275でも使っている人がいるみたいですが、MC275は固定バイアスかつ調整不可、というアンプですので、下手に変えるとトラブルになる可能性があります。もしやられるなら自己責任でお願いします。

WE300Bの復刻版(1997年)の測定結果


ウェスタン・エレクトリックの復刻版の300Bの特性をeTracerで測定しました。その結果、昨日も書きましたが、ペア管という点では見事なほど2本の特性は揃っており、また新品からの劣化もほとんど感じられない測定値です。ただ一つ不思議なのが高すぎるプレート電流です。一応標準が60mAで出荷時の値も57.7mAでほぼ標準値なのですが、本日測った結果は標準より20%も高いです。私がこれまでこの測定器で50本くらいの中古・新品の真空管を測定した結果としては、真空管は時間が経つほどプレート電流が低下します。なのにこのWE300Bは2割も増えているのです。最初eTracerの測定条件が、WEのと違っているせいかと思って、プレート電圧とグリッド電圧、フィラメント電流・電圧を全部合わせてやってみましたが、結果はほぼ同じでした。また、手持ちの他の300Bの5種類の測定結果も大体45~60mAの範囲で、70を超えているものはありません。まあプレート電流の最大値は100mAなので、余裕が無いほど高い訳ではありませんが、理由が分からないのでちょっと気持ち悪いです。なお、プレート電流が高いほど低音が引き締まるということのようで、それは昨日の聴感とは合っています。
念のため、フルスキャンしてEb-Ib曲線を取ってみましたが、やはりプレート電流値が高めで、グラフが立っています。

追伸:その後、ウェスタン・エレクトリック自身が出しているWE300Bのデータシートに出ている、プレート電圧、グリッド電圧と、プレート電流の関係は、前2者が300V、-58Vの場合、75mAと読み取れました。これが正しい標準値だとすると、今回測定した2本はそれが4%弱低下しており、他の項目との整合性が取れています。となるとおかしいのは出荷時の測定データで、おそらく何らかの理由があって測定条件が書いてあるのと違うように思います。いずれにせよ、結論としては今回購入した2本は特性的には経年変化の影響も非常に少なく、まったく問題無いということになります。

追伸の追伸:
サンバレー(旧キット屋)のブログによると、1997年の復刻品ではなく2021年の復刻品ですが、プレート電流が60mA強~80mA後半に分布しているロットもあるとのことです。今回入手したもののデータシートは、ウェスタンエレクトリック側が別のロットのと間違えたのではないかと思います。(ちなみに最初販売店が別の球の成績書を間違えて入れたのかとも思いましたが、成績書のシリアル番号と球自体に記載しているシリアル番号は一致していました。)
追伸の追伸の追伸:
etracerの設定をプレート電圧:300V、グリッド電圧:-60Vでテストして、プレート電流が右60.7mA、左が61.5mAとほぼ標準的な値になり、また他の値もほぼ標準値となりました。いずれにせよ、今回入手した球はほぼヴァージン管だと思います。これで2本で$1,300はお買い得でした。音が期待外れだったのは、100時間くらいのエージングが必要ということでしょうね。
追伸の追伸の追伸の追伸:
元々300Bのフィラメントにかける電流と電圧は1.2A x 5Vで要するに6Wでした。かつての300Bはこのフィラメント電流で8W以上の出力を出せるという超高能率管でした。しかし今はそのノウハウが失われ、現在の300Bは本家の復刻版を含めフィラメント電流が上げてあり、WEのは1.46Aだそうです。そうすると今回測定したプレート電流72mAに1.2/1.46を掛けると59.3mAになります。おそらく試験成績書はそういった補正をかけた値でプレート電流を掲載しているのではないかと思います。

ついにご本家300Bを入手…しかし…

ついに憧れの(?)ご本家ウェスタン・エレクトリックの300Bを入手しました。といってもいわゆるヴィンテージ管ではなく、1997年8月製のご本家による復刻管です。非常に期待してアンプに装着して聴いてみましたが、その結果は「え、この程度?」という感じでした。確かに低域の引き締まりと定位はいいと思います。しかしそれに比べると中高音が床から離れてふわふわ空中に漂っているような音で、大変聴きやすい音であるのは確かですが、あまりHiFiという感じがしない音です。繊細さも、PSVANEのWE300Bの方があるように思います。PSVANEのWE300Bを聴いた時はとても気に入って、ずっと聴いていたい気持ちになりましたが、このご本家の音はちょっとがっかり感が先に立ちます。なお、eTracerで特性をチェックしましたが、左右はかなり揃っていて、また内部抵抗などもそれほど増大しておらず、あまり使われた形跡がありません。これを最初に買った人も、最初は大いに期待したけど、聴いてみたらがっかり、ということなのかもしれません。ヴィンテージのWEの音は知りませんが、この復刻版300Bの音を聴く限りにおいては、ウェスタン・エレクトリックのものだけが別格で他を圧倒する、ということは無いと思います。各社の300Bには良い所と悪い所があり、単純に順列を付けられるようなものではありません。今回のご本家の復刻版、たとえば10種類の300Bでテストしたら、まあ上位4位以内くらいには入るでしょうが、1位にはならないと思います。

キャプテン・スカーレットの”Dangerous Rendezvous”

キャプテン・スカーレットの”Dangerous Rendezvous”を観ました。今回のミステロンズの狙いは何とスペクトラムの本部基地であるクラウドベースで、真夜中に爆破すると予告します。一方、前回月面のミステロンズ基地から持ち帰ったエネルギー源のクリスタルを研究し、それを使ってミステロンズと通信出来ることが判明します。カーネル・ホワイトはそれを使ってミステロンズにそもそもこちらがミステロンズの火星の基地を攻撃したのは誤解からということを説明し、和平を提案します。2時間後、ミステロンズから返事があり、アイスランドのある荒地に通信装置も武器も無しで一人を寄越すようにということで、キャプテン・スカーレットが志願します。スカーレットはその地点に近付くと飛行機は放棄し、パラシュートで脱出するよう命じられます。会見ではミステロンズ側の映像は見ること出来ず声だけが流れます。しかしそれはキャプテン・ブラックで、彼はテープレコーダーで同じメッセージ(そちらが始めた戦争でありミステロンズは復讐を継続する)だけが流れ続け、ブラックは姿を消します。録音に気がついたスカーレットがガラスを割って録音機を見ると、その側には例のエネルギー源のクリスタルがあり、点滅を始めていました。すぐに爆発することを悟ったスカーレットは不死身の力でなんとか脱出します。スカーレットはホワイトベースにあるクリスタルも同様に爆発することを察知し、それこそがミステロンズの予告の正体であることを見破ります。しかし通信装置を持っていないため、至近の通信基地まで行って、そこでリード線を切断した上で、接触と切断を繰り返してモールス信号をホワイトベースに送ります。間一髪でホワイトベースに伝わり、クリスタルが窓から捨てられて、ギリギリ助かるという話です。
しかし通信基地の装置が真空管だったのは笑えました。この番組は1960年代だからその時代に真空管はいいとして、近未来の設定の筈が未だに真空管というのがちょっとミスマッチでした。何となくKT88のプッシュプルぽかったです。(笑)ドラマの中で、ミステロンズのクリスタルを解析して通信装置を作った科学者がスペクトラムの通信システムについての説明を受けて「何て最先端の仕組みなんだ!」と感嘆する場面があり、最後の真空管はわざとそれと格差を付けたんだと思います。

TU-8200Rのデュアルモノ、各種出力管の比較に最適

TU-8200Rのデュアルアンプは出力管の聞き比べには非常に便利であることを発見しました。
真空管はご承知の通り、ヒーターまたはフィラメントが温まるまで時間がかかり、真空管をすぐ差し替えても、本来の音を聴くには待たないといけません。しかし、このデュアルアンプなら、スピーカーを接続していないチャネルに次にテストする真空管を刺しておけば、ヒーターは暖められますので、スピーカーの接続と入力のチャネルを切り替えれば、すぐ新しい真空管のテストが出来ます。
なお、このTU-8200Rは自動バイアス機構が入っているので、EL34、6550、KT66、KT77、KT88、6L6GC等がバイアス調整無しで差し替え可能です。左右の回路は独立していますので、左右で別の真空管を刺してもデュアルモノの構成では問題ありませんでした。(あくまで待機状態としてです。1台のアンプの左右に別の真空管を刺して鳴らすのはさすがに止めた方がいいと思います。)

写真はJJ製EL34とGenalexのKT77(ロシア製)を比較しているもの。JJのEL34はまだ買ったばかりでちょっと高音が強すぎてキンキンする感じです。それに対しKT77は、高音の品位が高いです。(KT77というのはKT88とかの類似管ではなく、EL34の高級グレードとして企画されたものです。但しビジネスとしては失敗して、マイナーな存在です。

TU-8200Rデュアルモノラル

半年くらい前に全段差動プッシュプルアンプというのをヤフオクで落札してその音を経験しました。私なりの感想は、定位とか音場とかは非常にいいけど、音色そのものにはあまり魅力が無い、でした。それで定位とか音場の良さは、要するに回路的にクロストークが0になるようにしているからだと思いました。であれば、シングルアンプで、モノラル2台で聞けば、全段差動プッシュプルアンプの定位の良さと、シングルアンプの音色の良さが両立出来るのではないかと考えました。それで実験として、手持ちの真空管アンプでは一番安いエレキットのTU-8200R(6L6GCシングル)をもう1台購入して、それでデュアルモノをやってみました。結果は、
(1)音場の自然さ、音像の明確さ、音が前に出る等の全段差動PPの特長がちゃんと出ました。
(2)副産物で音の力強さが増しました。考えてみれば当然で、同じ電源で半分の出力段しか使ってないのですから、余裕が出るのは当り前です。
(3)音色はもちろんシングルアンプの快い音そのままです。
ということで、実験は大成功です。TU-8200Rはキット状態でなら6万4千円ぐらいで買えますので、2台でも13万円未満です。それでかなりのレベルの高い音を聴くことが出来ます。
後さらにステップアップとしては、BTL接続にして、チャンネル毎の出力を倍にするというのがありますが、個人的にはあまり回路を複雑にするよりシンプルなままの音を楽しみたいと思います。

PCL86→結局VALVO

各社のPCL86の音を比べたのではなく(超三結アンプで真空管の聴き比べをするには、30分ランニングした後バイアス調整をしなければならないので大変です)、中の構造を比較して見て、素人目かも知れませんが工作精度とか丁寧さという意味で一番高レベルに作られていると思ったのが、ドイツのVALVOです。今はもう無い会社ですが、品質の良さでは定評があって、テレフンケンのよりも良いと言われていたり、実はテレフンケンの一部のハイグレードの真空管はVALVOのOEM品だったみたいです。それでPCL86超三結アンプのPhilips製PCL86を取り外して、このVALVOを付けました。バイアス調整をし直して聞いてみたら、また少し発振が出るようになりましたが、スピーカーケーブルにフェライトコアのノイズフィルターを巻いたら、ほぼ問題ないレベルになりました。それで音質ですが、Philipsがやや大人しめで、超三結らしい高音のきらめきが抑えられていましたが、このVALVOでまたきらめきが蘇りました!ちょっと癖がある高音といえばそうなのですが、耳には非常に快い高音です。PCL86の主流はPhilipsの方なんでしょうが、異端もいいものだと思います。そんな訳で、またeBayでVALVOのPCL86を何本か落札して取り寄せ中です。

なお、超三結というのは三極管で五極管に100%のNFを掛けているので、真空管を変えても差が出ないと思っていらっしゃる方がおられたら、それは違うと申し上げます。PhilipsとVALVOで音ははっきり違います。これはプラセボではなく、ある程度の耳がある人だったら誰でも分かると思います。