本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が井山裕太3冠の対戦です。(ちなみに今年は囲碁のお正月特番が無かったです。将棋はちゃんとあったのに。残念。)布石は白が左上隅でかかったまま手を抜いていた黒を大きく取り込む構えを見せ、地合は白がリード気味でスタートしました。その後白が右上隅の黒の星からの小ゲイマ締まりに肩をついて黒がすべったのに今度は右辺に入り、それを黒が裂いていって、という戦いになりました。この戦いの中で右下隅にどちらが先に回るかが勝負でしたが、結局白がかかることになりました。ここの折衝で白は右下隅に大きな地を取りました。黒は代償で右辺に取り残された白5子を取れていれば互角でしたが、白は堂々と逃げ出しました。この白のシノギで黒の中央のダメが詰まっていて傷があるのが災いし、結局黒はこの白を取ることも、他で大きな戦果を上げることも出来ず、最後は中央の包囲している黒が取られてしまって、12目ぐらいの地を持って白に治られてしまっては、黒が勝てない碁になりました。結局白の中押し勝ちでした。
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NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 佐田篤史7段(2024年12月29日放送分)
12月29日(日)のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が佐田篤史7段の対戦です。(旅行のためNKH+で後から視聴)布石では上辺の白の模様と黒の右辺から中央の模様が対抗形になりましたが、黒は上辺の白を押していってそちらを地として確定させ、中央を厚くして模様を拡げました。しかし右辺で白から大々ゲイマに開いて2線に潜るのが切れそうで切れない手で、これによって黒地が値切られてしまい、ここで白が一歩リードしました。しかしその後左辺から延びる白と黒の石で、中央で大きな劫争いが始りました。この劫は中央の勢力争いと左辺のそれぞれの石の死活で非常に大きく、黒は右辺の白を分断する手を劫材にし、白は劫材がないので劫を解消しました。この結果先の局面で折角黒地を値切った白がほぼ取られになりましたが、白はこの一団を活きに行き、また右上隅で劫が始りました。この劫は黒が勝って右辺を地として確定させ、白は右下隅を2手連打し、ここでまた劫が始りました。黒はこの劫は譲ってヨセ勝負に持ち込もうとしましたが、この時、左下隅をきちんと活きておけば黒がわずかながらに優勢だったようです。しかし黒は形勢が難しいと思っていたのか、結局左下隅が劫になり、白はこれに勝って地合がわずかながらですが白優勢になりました。結局黒の投了となりました。劫がめまぐるしく移り変わっていく、という面白い碁でした。
NHK杯戦囲碁 一力遼4冠王 対 広瀬優一7段(2024年12月22日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が一力遼4冠王、白番が広瀬優一7段の対戦です。普通に考えると一力4冠王の勝ちを予想し、広瀬7段がどこまで食い下がれるかと思っていましたが、直近の早碁の対戦で広瀬7段が一力4冠王を半目勝ちで破っているとのことで、楽しみな対戦になりました。対戦は右下隅で白が三々に入り、這った後一間に飛んだので、黒から出切りからシチョウに抱える手があり、黒は左上隅の白の断点をシチョウアタリで覗きました。白はこれに対して右下隅に手を入れましたので、黒は左上隅の白を切っていきました。これでもつれた戦いになりましたが、白が上辺で2子を捨て石にして締め付けて、左側の白のハネだしの弱点を補おうとしたのに対し、黒が切って2子を取りに行かず、上辺の左側の黒から3線に曲った手がAIも予想していなかった好手で、結果として劫になり、振り替わりで黒は右側の白を大きく取り込み、優勢になりました。しかし白は諦めずに、かなり無理気味ですがこの取られ気味の白を活きに行きました。結局劫にはなり、また黒が劫立ての手でやや譲り気味の手を打った結果、白は何とか活きることが出来ました。しかし黒も右下隅を取った上に全体に厚いので、黒の優勢は続いていました。最後に白は上辺から延びる黒の大石を狙いましたが、包囲している白にも眼がなく攻め合いであり、黒の手数が2手ほど長いため、白の投了となりました。しかし劣勢になってからの白の頑張りは見応えがありました。
NHK杯戦囲碁 芝野虎丸9段 対 羽根直樹9段(2024年12月15日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸9段、白番が羽根直樹9段の対戦です。芝野9段は今年7大タイトルの5つを争ったそうですが、残念ながら今は無冠です。序盤右下隅の戦いで黒が両ノゾキを打ち、その結果黒が白7子を取り、白が右下隅を取る振り替わりとなりました。その後右上隅方面の戦いが、石が切り結んでのギシギシした戦いになったのですが、白が黒2子を当てた時に黒が手を抜いて上辺を飛んだのは驚きました。この当たりに延びると白が取られている7子を復活させる手があるということみたいでしたが、ここは白が上手くやったと思います。しかしその後白が上辺から延びる眼の無い黒石をかけて止めにいったのがやや打ち過ぎで、結果としては白が上辺をへこまされながら黒が無事連絡したため、ここでわずかですが黒がリードしたように思います。その碁ヨセで黒が右辺を止めていなかったのを白が手を付けていけばもしかすると逆転したかもしれませんが、結局黒が押さえに周り、結果としては黒の1目半勝ちとなりました。
NHK杯戦囲碁 孫喆7段 対 許家元9段(2024年12月8日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が孫喆7段、白番が許家元9段の対戦です。この碁は白が地に辛く打ちながらも途中で下辺から戦いを仕掛け、その後延々と戦いが続き白が少しですがリードを保ち続けました。途中上辺左、左上隅、左辺の打ち方で、黒が左上隅の星上に付けたのに、白が外からハネて隅を黒に譲れば普通でしたが、左に延びたため、上辺から左上隅は黒地になりました。白の狙いは左辺の黒への置きでしたが、これは大した戦果が挙がらず、ここで黒がやや盛り返した感じでした。ヨセに入って白の技が決まったのが右下隅で、黒が割りこんで来たのに下から当てたのが妙手で、右下隅の黒地が逆に白地になり、ここで白が大きくリードしました。白はリードしているにもかかわらず、左下から中央、右上へと延びる黒の大石を執拗に狙っていきました。その関連で、左下隅で黒が下辺を掛け継いで劫を狙っていたのに白が手を抜いている所が問題になり、黒がハネた時、ケイマに外したのが白の上手い受けでした。これでセキになる筈でした。しかし黒はそれでも手を付けて行き、なんと下辺第1線で自ら2子当たりに突っ込む手があり、これで結局劫になりました。黒はこの劫を利用して大石を無事活きて、白は妥協しましたが、形勢には影響なく黒の投了となりました。やはり隅というのは色々と手があるものだと、死活の勉強になりました。
NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 結城聡9段(2024年12月1日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が結城聡9段の重量級対決です。布石は伝統的な布石とAI的な布石の組み合わせで、2つの隅でカカリにハサミが出来たのが最近では珍しいです。下辺から左下隅の戦いで、黒がちょっと左右の連絡を絶たれて苦しくなり、左側を劫にしたのですが、黒の劫立てに白は受けずに劫を解消し、黒7子を取り込んで白がリードしました。その後上辺に白が打ち込んでからの攻防が激しかったですが、白が右上隅を荒らす手を選んだのが打ちすぎで、ここもまた劫になったのですが、白の劫立てが少なく、黒が劫を解消して黒地が多く黒が打ちやすい碁になりました。唯一左辺から中央の黒が心配でしたが、実は上辺での白の渡りが不完全で、そこを付いていって結局は上辺の白を取り込んでつながったので、これで完全に黒のリードになりました。しかしその後白が右辺を荒らしに行ったのですが、黒も右下隅から出ていって、結局黒も白も眼が無いという攻め合い含みの状況になりました。この攻め合いをAIは正しく読めておらず、結局黒から右辺に一眼作る手があったので、攻め合いは眼有り眼無しで白が最後ダメを詰めることが出来ず、黒の攻め合い勝ちとなり、白の投了となりました。河野9段のさすがの読み、という感じでした。
NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 依田紀基9段(2024年11月24日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が依田紀基9段というタイトル経験者同士の好対局です。序盤の右上隅の攻防がまず珍しく、黒がツケヒキで右上隅を地にしたのかと思ったら、その後の白のアテコミに隅ではなく右辺を受けたので、隅が白地に変わりました。その後の左辺から左下隅の攻防で、お互いが意地を張ったような戦いが面白かったのですが、左下隅で黒が受け方を間違えて、中央の黒6子が切離されてしまったのは黒の失着でした。これで白が優勢になりましたが、ここから依田9段の楽観癖という何度も見た悪い癖が出て、右辺に打ち込んで黒地を減らしに行った後の打ち方があまりにも固すぎて、その間に黒にいい所を打たれ、あっという間に追い付かれただけでなく、その後の打ち方も今一つで黒に右上隅からの地を拡げられ、結局黒の4目半勝ちという差になってしまいました。
NHK杯戦囲碁 田中康湧5段 対 佐田篤史7段(2024年11月17日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が田中康湧5段、白番が佐田篤史7段の対戦です。この両者は2022年8月にも同じNHK杯戦での対局があり、その時は逆転で佐田7段が勝っています。という訳で田中5段にとっては雪辱戦でした。序盤は黒の石が上辺に集中し、手堅く地を取って、白がそれに対して模様で対抗、という碁形になりました。ずっとほぼ互角の形勢が続いていましたが、局面が動いたのが上辺で黒が1線に下がって白にてを入れさせようとしたのに白が反発して劫になった場面です。この劫で右辺の黒の劫立てを巡っての白の対応がまずく、この劫では黒がポイントを上げ、黒のリードになりました。その後黒が上辺上方の白を切離して攻めようとしたのですが、白は上手く中央を左辺に連絡させた後、上辺右側で策動し、巧みに上辺左の白が目を持つための手入れを先手にさせ、これが大きく形勢はわずかですが白のリードに変わりました。その後ヨセではお互いに悪手はなく、結局白の2目半勝ちに終わり、田中5段はまたも惜しい碁を落しました。
NHK杯戦囲碁 村川大介9段 対 呉柏毅6段(2024年11月10日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が村川大介9段、白番が呉柏毅6段の関西棋院同士の対戦でした。戦績は村川9段から見て6勝0敗と、呉6段はまだ勝ち星がありません。対局は白の実利、黒の厚みで進み、左辺と右辺で黒が模様を築き、そこの戦いがポイントになりました。対して白は上辺に模様を築いています。白が右辺で黒から攻められた時に、早々と劫を仕掛けたのが意外でしたが、黒は下辺の劫立てに受けずに劫を解消しました。白の劫立ての結果下辺の黒は分断されたのですが、黒がどちらかを捨てていれば黒が優勢だったようです。実戦は黒が両方頑張った結果、白の中央が厚くなり、黒の右辺上方の石が厚みから攻められる石に変わりました。黒は左下隅の白に寄りつこうとしたのですが、隅と下辺で2つの劫になり、白はどちらかに勝てばいいという状況になり、結局隅は黒が劫に勝ち、下辺は白が勝ち、その結果左下隅からの活きも確定して白が優勢に変わりました。その後白は緩まず黒を攻め立てて一杯に打ち、地合は盤面でも白がいいという形勢になりました。それでも黒は上辺で頑張って多少形勢を挽回したかと思いましたが、最後右上隅が薄く、白にその薄みを付かれて黒地をへこまされ、黒の投了となりました。呉柏毅6段の対村川大介9段初勝利でした。
NHK杯戦囲碁 洪爽義5段 対 井山裕太3冠(2024年11月3日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が洪爽義5段、白番が井山裕太3冠の対戦です。序盤が白が3隅を取って実利を稼ぎ、黒が左下隅から左辺・下辺の模様で対抗という碁形になりました。というより黒がそうするしかなかった、という感じです。序盤はどうも黒の手が受け優先でもう少し攻め気が欲しかった感じです。白は黒模様に対し左辺と下辺で潜航艇のような手を2手打って、まずは左辺を減らし、下辺から中央に展開してどこかで活きれば、という手を打ちました。結局白が左辺で活き、黒が下辺をほぼ地にするという別れになりました。この辺りは黒が少し挽回した感じでした。その後黒から白の上辺の地への侵入を巡って劫になりましたが、黒は劫材が足らず劫は白が勝ちました。このままヨセ勝負になるかと思いきや、白から黒の中央を切っていったのが良い狙いであり、結局黒の左上隅方面の石が切離されて取られては勝負がありました。井山裕太3冠のさすがの強さでした。