NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 藤沢里奈女流本因坊(2023年10月29日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が藤沢里奈女流本因坊の対戦です。この対戦は黒が2手目で左下隅の三々に入り、白もまたその後数手で右上隅の三々に入るといういかにも今風の戦いになりました。しかし次第に白は各所で地を稼ぎ、黒が白を積極的に切りに行き、切り離した弱石を攻めるという展開になりました。一時白は左下隅からの石、下辺の石、右辺の石、と三方に弱石を抱え、三方がらみみたいな形で攻められました。左下隅で劫になり、これに黒が勝った結果、黒の左下隅、下辺、中央、右下隅の石は全てつながり、地合では白が良かったものの、中央でコミ分くらいの黒地をつければ黒が勝ち、という形勢になりました。しかしこういう碁形は藤沢女流本因坊の得意な碁形であり、その後の黒の寄り付きを白は上手くかわし、微細な勝負になりました。こうなると藤沢のあだ名である「半目の女王」の通り、白のヨセは正確を極め、黒に付けいる隙を与えず、見事に白の半目勝ちとなりました。余正麒8段という最強クラスの棋士の一人を女流棋士が倒したということで、少なくとも日本に関しては、男性棋士と女性棋士の差はほとんど無くなりつつあります。

NHK杯戦囲碁 張栩9段 対 大竹優7段(2023年10月22日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が張栩9段、白番が大竹優7段の対戦です。対局前にちょっと驚いたのは、張栩9段はノーシードで1回戦からの出場なのに、大竹7段がシードで2回戦からということです。(多分本因坊戦リーグに入ったからでしょう。)時代が変わりつつあります。碁の内容も、大竹7段は、ぬるいと思われるくらい、張栩9段が利かしに来たのを丁寧に受け続けました。そうした打ち方が出来るのはそれでも遅れない、という形勢判断がしっかりしているのかなと思いました。この碁での最大の焦点は左下隅で、白が隅に入られないように外側で1手打った後に黒は隅に入って行きました。そして小さく活きるのは簡単でしたが、それをせず劫にしてかつ外側の白との攻め合いを目指しました。AIの推奨は隅は軽く打って捨てて外側から利かして左辺の模様を大きくするでした。結果論ですがそういう打ち方の方が良かったようです。結局黒は下辺の白、左辺から伸びる白のどちらとも攻め合いに持ち込むことが出来ず、隅の黒は打っただけ取られここに27-28目くらいの白地が出来、これが最後まで響きました。その後のAIの形勢判定はずっと白優勢でしたが、最後のヨセで実は左辺からの白を切り離す手があり、それを決行したら白の一部を取り込むことが出来逆転でした。張栩9段は感想戦で真っ先にそれを言っていましたので、見落として後から気付いたのか、あるいは何か嫌な図が見えたのかは分りませんが、時間は余していたので、じっくり読んで決行すべきでした。最終的に白の3目半勝ちで、大竹7段は初めての3回戦へ進みました。

NHK杯戦囲碁 羽根直樹9段 対 酒井佑規4段(2023年10月15日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が羽根直樹9段、白番が酒井佑規4段の対戦です。右下隅でツケヒキ定石で黒が一間飛びではなくケイマしていた所を白がツケコシの味を見て利かしに行き、その後のやりとりの中で白がハサミツケという手を放ち、黒が反発して渡らずに下辺に打込み、その辺りから結構面倒な戦いになりました。結局上辺方面が黒で白4子くらいが取り残され、逆に下辺方面は白で黒3子が取り残されました。黒が右辺の白に活きを催促して利かしに行ったドサクサに紛れて、白は上辺方面の石の逃げ出しを図りました。それは成功しましたが、黒は左上隅の白と上辺の黒の分断に成功しました。その後黒は更に下辺の3子を動き出し、ここはまた難解な攻め合いになりましたが、紙一重で白が黒を取りました。しかし白も黒2子を抜くことが出来、左辺から左上隅方面でどのくらい黒地を付けられるかが勝負になりました。結局白はここでも最強に頑張り、2手寄せ劫残りではありましたが、ほぼ活きて優勢になりました。黒は結局劫材が続かず投了となりました。酒井4段はこれで3回戦進出で次は芝野虎丸名人です。今大会のダークホース的存在になりつつあります。

NHK杯戦囲碁 六浦雄太8段 対 伊田篤史9段(2023年10月8日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が六浦雄太8段、白番が伊田篤史9段の対戦です。
布石では白が右下隅で黒の一間ジマリの横に付けて行き、結局はそこの石を捨て右辺に足早に展開しました。また左下隅で黒がケイマのカケを2回続けて打ったのに、白が直接受けずに隅を固く打ち、その後シチョウアタリとして中央でノゾキを打った後、ツケコシて行ったのがいい手で、白は下辺の黒地を減らして中央で居直りました。この辺りずっと白が優勢でしたが、中央で黒も白も眼の無い石が出来た時、黒が勝負手で白の連絡している石にコスミツケて切って行きました。これで白は切られた一団を活きる必要がありましたが、際どく黒が覗いて行き、そこを継ぐと白の一団に活きがあるのか、ということになり、結局白は継がずに一団の活きを優先しましたが、黒が切りに回って白の6子くらいを取り込んで20目以上の実利を得、これで黒の逆転となりました。結局白の投了となりました。六浦雄太8段はこれまで伊田9段に公式戦で6連敗でしたが、初勝利を上げて3回戦に進みました。

今度は囲碁関係の書籍を整理

今度は囲碁関係の書籍を整理。丁度本棚1台分くらいになりました。上段にある打碁集はまだ一割も並べていませんが、これは完全リタイアした時の楽しみに取ってあります。
大学時代に囲碁を本格的に始めた時は、100冊くらいの棋書を読んでいますが、その内残っているのは数冊です。後は捨てたり亡父に贈呈したりしています。なので私は典型的な本で覚えた碁です。そういう碁は実戦では弱いのですが、囲碁プラグラムと長年九路盤で対戦して実戦経験を積み、それで何とか有段者になれました。詰碁は好きではないのですが、むしろ最近少しずつやっています。

NHK杯戦囲碁 一力遼棋聖 対 孫喆7段(2023年9月24日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が一力遼棋聖、白番が孫喆7段の対戦です。孫7段は、棋聖戦でSリーグに昇格を決めるなど、今年度の活躍が目立ちます。対する一力棋聖もついに本因坊戦で井山裕太3冠からタイトルを奪取し、実力一位の座を固めています。
この碁では左上隅から競い合いが始りました。白がはさんだのに、ぶつかって受けたのが珍しい形でしたが、中央に頭を出した後、上辺に打って白を攻撃する態勢を見せ、ここから激しい競い合いになりました。黒が更に左辺でも厳しい打ち方を見せたので、ここでどちらかがつぶれてもおかしくないような戦いになりましたが、結局攻め合いで黒が6子を捨てて締め付ける形となりました。ここまではどちらかというと白の方が上手く打っていたと思います。次の焦点は右上隅方面で、黒が白の薄みに対し覗きのような手を打ったのに対し、白が反発したため、ここでも激しい戦いとなりました。しかし、ここは黒が上手く打ち回し、白地が付きそうだった所に地をもって治まり、なおかつ中央の石が左側に連絡出来ました。ここで一転して黒のリードに変わりました。黒はしかしヨセで左下隅方面で最善手を逃し、若干白に寄りつかれました。それでも黒は全体に厚く、順調に各所で地を増やして、最後は白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 辻󠄀篤仁4段 対 許家元9段(2023年9月17日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が辻󠄀篤仁4段、白番が許家元9段の対戦です。この碁の序盤では、黒が左下隅で攻めを見られているのを手抜きし、他に先着して得を図りました。その代償で右下隅を攻められましたが、不可解だったのが形として両ノゾキが残る形を敢えて打ち、しかし実際にそこに打たれ、石の分断を避けるために白にポン抜きを許すことになったことです。白はポン抜いた後、更に切って劫を仕掛けました。黒には劫立てが無く、結局当たりの1子を延びて逃げましたが、白はその延びた黒を追って中央に厚みを築き、右下隅からの黒を狙いました。そのため黒はそちらに手を入れる必要があり、中央での競い合いで白は黒をハネることが出来ました。そしてその結果白は上辺に大きな地模様を築くことが出来ました。しかしその後上辺右で延びていれば普通だったのを押さえて、黒に切られて劫で受けました。これは明らかに白が無理気味の打ち方で、劫は白が勝ったものの、白の中央が薄くなりました。白はしかし中央の数子を捨てるかと思いきやしのぎに行きました。ここでの黒の打ち方に疑問があり、結果論としては左辺で白が取られていた2子を助けながら中央に2眼作ってしのぐことが出来、これで白の優勢が確定しました。結局地合は盤面でも白がいいということになり、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 高尾紳路9段 対 鈴木伸二8段(2023年9月10日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が高尾紳路9段、白番が鈴木伸二8段の対戦です。全体として淡々と進んだ本局ですが、白が黒の右下隅に仕掛け、2子を犠牲にして右辺で1子を抜いて、それにより右辺の白が活きた展開は白が打ちやすい感じでした。そうなると今度は右上隅から伸びる黒が狙われることになりますが、黒は劫を仕掛けて勝ち、黒もここははっきりと活きました。こうなると形勢は不明でヨセ勝負となりました。しかしそのヨセの中で、黒がツケこして白を切断に行った時に、白が上方のハネで応え、結果的に黒1子を取り込んで上辺の白地を増やしたのは、はっきりと白が得をしたように思います。その後黒は中央で白を切断して頑張りましたが、黒が覗いたのに白が横へ延びて受けたのが好手で、ここでは黒は戦果を挙げられず、結局そのまま白リードでヨセが進み、終ってみれば白の1目半勝ちでした。鈴木8段は最近各棋戦で活躍していますが、本局も隙の無い打ち回しでした。

NHK杯戦囲碁 福岡航太朗4段 対 蘇耀国9段(2023年9月3日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が福岡航太朗4段、白番が蘇耀国9段の対戦です。布石は両者2連星から、5手目で左下隅ダイレクト三々といういかにも最近多い進行です。白は左下隅で黒に包囲されてサバキに行ったのですが、左辺でのハネだしを打たず隅をハネたのがどうだったのでしょうか。白は一手入れて活きましたが、外側の黒の厚みがかなり広壮になり、形勢は黒に傾きました。しかし白は右辺で模様を作り、入って来た黒を分断して攻め立て、多少挽回しました。しかし下辺の折衝で頑張って、黒の下辺から延びる大石を狙おうとしましたが、話が遠く、その間に黒に上辺に侵入され、逆に白が攻め立てられ寄りつかれてしまいました。また黒はその間に上辺で活き、地合の差は盤面10目程度のままヨセが進行しました。結局黒の中押し勝ちとなりました。まだ17歳でニキビ顔の福岡4段がどこまで勝ち進められるかが楽しみになりました。

NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 関航太郎NHK杯戦者


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が関航太郎NHK杯戦者の対戦でした。この碁はプロらしい石の張った見応えのある応酬が続き、AIの予想手を上回る人間の手が沢山見られて実に面白い碁でした。戦いが激しくなったのは、右下隅で白が黒がハネただけで先手を取っていた箇所を切り当てしてからです。一時は白黒共に弱い石が3つずつ絡み合いながら、お互いが守るだけの手を打たず相手を攻めるという展開でした。しかし、黒が左下隅の白3子を取り込んで、隅から左辺で35目ほどの地を確保してから、黒が打ちやすくなったように思います。白は代償として右下隅からの黒を攻めましたが、途中で攻めを保留し上辺に向かいました。この上辺で黒が白の間に打ち込んで、白1子をほぼ取り込んだような形になりました。しかし後に白はこの石を動き出し、ここでまた眼の無い石のもつれ合いになりました。その後一旦白は下辺からの石に連絡し無事に分れたように思いましたが、その後白は自分も切られながらも黒も切断するという手を打ち、また攻め合い含みでかつ劫のついた戦いになりました。劫は左辺中央と上辺の2箇所に出来ましたが、左辺中央は黒が劫に勝ち、上辺は白が勝って無事に分れるかと思いましたが、黒は何と左上隅に手を付け、白が上辺の劫に勝っても全体で眼が無い、という攻めを見せました。結果として白は妥協し、この部分では黒が戦果を挙げました。その後白が今度は上辺の黒と攻め合おうとした時失着があり、攻め合いの黒は上手く脱出出来ました。しかし白が劫材で打ったノゾキが、黒が取っている白1目を逃げ出すシチョウアタリを兼ねており、黒は継げずに、白が切断し、これでまた形勢不明になりました。という具合の乱戦でしたが、最後は黒の半目勝ちという、これだけ戦った結果としては信じられないような結果になりました。関航太郎NHK杯戦者は、初戦で散りました。