NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 結城聡9段(2024年12月1日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が結城聡9段の重量級対決です。布石は伝統的な布石とAI的な布石の組み合わせで、2つの隅でカカリにハサミが出来たのが最近では珍しいです。下辺から左下隅の戦いで、黒がちょっと左右の連絡を絶たれて苦しくなり、左側を劫にしたのですが、黒の劫立てに白は受けずに劫を解消し、黒7子を取り込んで白がリードしました。その後上辺に白が打ち込んでからの攻防が激しかったですが、白が右上隅を荒らす手を選んだのが打ちすぎで、ここもまた劫になったのですが、白の劫立てが少なく、黒が劫を解消して黒地が多く黒が打ちやすい碁になりました。唯一左辺から中央の黒が心配でしたが、実は上辺での白の渡りが不完全で、そこを付いていって結局は上辺の白を取り込んでつながったので、これで完全に黒のリードになりました。しかしその後白が右辺を荒らしに行ったのですが、黒も右下隅から出ていって、結局黒も白も眼が無いという攻め合い含みの状況になりました。この攻め合いをAIは正しく読めておらず、結局黒から右辺に一眼作る手があったので、攻め合いは眼有り眼無しで白が最後ダメを詰めることが出来ず、黒の攻め合い勝ちとなり、白の投了となりました。河野9段のさすがの読み、という感じでした。

NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 依田紀基9段(2024年11月24日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が依田紀基9段というタイトル経験者同士の好対局です。序盤の右上隅の攻防がまず珍しく、黒がツケヒキで右上隅を地にしたのかと思ったら、その後の白のアテコミに隅ではなく右辺を受けたので、隅が白地に変わりました。その後の左辺から左下隅の攻防で、お互いが意地を張ったような戦いが面白かったのですが、左下隅で黒が受け方を間違えて、中央の黒6子が切離されてしまったのは黒の失着でした。これで白が優勢になりましたが、ここから依田9段の楽観癖という何度も見た悪い癖が出て、右辺に打ち込んで黒地を減らしに行った後の打ち方があまりにも固すぎて、その間に黒にいい所を打たれ、あっという間に追い付かれただけでなく、その後の打ち方も今一つで黒に右上隅からの地を拡げられ、結局黒の4目半勝ちという差になってしまいました。

NHK杯戦囲碁 田中康湧5段 対 佐田篤史7段(2024年11月17日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が田中康湧5段、白番が佐田篤史7段の対戦です。この両者は2022年8月にも同じNHK杯戦での対局があり、その時は逆転で佐田7段が勝っています。という訳で田中5段にとっては雪辱戦でした。序盤は黒の石が上辺に集中し、手堅く地を取って、白がそれに対して模様で対抗、という碁形になりました。ずっとほぼ互角の形勢が続いていましたが、局面が動いたのが上辺で黒が1線に下がって白にてを入れさせようとしたのに白が反発して劫になった場面です。この劫で右辺の黒の劫立てを巡っての白の対応がまずく、この劫では黒がポイントを上げ、黒のリードになりました。その後黒が上辺上方の白を切離して攻めようとしたのですが、白は上手く中央を左辺に連絡させた後、上辺右側で策動し、巧みに上辺左の白が目を持つための手入れを先手にさせ、これが大きく形勢はわずかですが白のリードに変わりました。その後ヨセではお互いに悪手はなく、結局白の2目半勝ちに終わり、田中5段はまたも惜しい碁を落しました。

NHK杯戦囲碁 村川大介9段 対 呉柏毅6段(2024年11月10日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が村川大介9段、白番が呉柏毅6段の関西棋院同士の対戦でした。戦績は村川9段から見て6勝0敗と、呉6段はまだ勝ち星がありません。対局は白の実利、黒の厚みで進み、左辺と右辺で黒が模様を築き、そこの戦いがポイントになりました。対して白は上辺に模様を築いています。白が右辺で黒から攻められた時に、早々と劫を仕掛けたのが意外でしたが、黒は下辺の劫立てに受けずに劫を解消しました。白の劫立ての結果下辺の黒は分断されたのですが、黒がどちらかを捨てていれば黒が優勢だったようです。実戦は黒が両方頑張った結果、白の中央が厚くなり、黒の右辺上方の石が厚みから攻められる石に変わりました。黒は左下隅の白に寄りつこうとしたのですが、隅と下辺で2つの劫になり、白はどちらかに勝てばいいという状況になり、結局隅は黒が劫に勝ち、下辺は白が勝ち、その結果左下隅からの活きも確定して白が優勢に変わりました。その後白は緩まず黒を攻め立てて一杯に打ち、地合は盤面でも白がいいという形勢になりました。それでも黒は上辺で頑張って多少形勢を挽回したかと思いましたが、最後右上隅が薄く、白にその薄みを付かれて黒地をへこまされ、黒の投了となりました。呉柏毅6段の対村川大介9段初勝利でした。

NHK杯戦囲碁 洪爽義5段 対 井山裕太3冠(2024年11月3日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が洪爽義5段、白番が井山裕太3冠の対戦です。序盤が白が3隅を取って実利を稼ぎ、黒が左下隅から左辺・下辺の模様で対抗という碁形になりました。というより黒がそうするしかなかった、という感じです。序盤はどうも黒の手が受け優先でもう少し攻め気が欲しかった感じです。白は黒模様に対し左辺と下辺で潜航艇のような手を2手打って、まずは左辺を減らし、下辺から中央に展開してどこかで活きれば、という手を打ちました。結局白が左辺で活き、黒が下辺をほぼ地にするという別れになりました。この辺りは黒が少し挽回した感じでした。その後黒から白の上辺の地への侵入を巡って劫になりましたが、黒は劫材が足らず劫は白が勝ちました。このままヨセ勝負になるかと思いきや、白から黒の中央を切っていったのが良い狙いであり、結局黒の左上隅方面の石が切離されて取られては勝負がありました。井山裕太3冠のさすがの強さでした。

NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 羽根直樹9段(2024年10月27日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が瀬戸大樹8段、白番が羽根直樹9段の対局でした。この碁の焦点となったのは黒からの2回のシチョウアタリに対する白の対応で、特に2回目の対応は白が見事に黒からのシチョウアタリをかわしてシチョウ有利を保ち、それがポイントになったように思います。右上隅から延びる白の大石を黒がどう攻めるかが後半の最大の焦点でしたが、黒が無理気味でしたが、左下隅に手を付けて劫になって劫争いになった時に、白を包囲している中央左側の黒がダメが詰まって結局劫で分断され、黒は両方の劫は頑張れず、左下隅の劫は白が勝って地合は大きく白に傾きました。後は右上隅からの白が活きるか死ぬかが勝負でしたが、羽根9段は活きを読み切っており、冷静に活きて黒の投了となりました。羽根9段の味わい深い名局だったと思います。

NHK杯戦囲碁 大竹優7段 対 一力遼三冠(2024年10月20日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が大竹優7段、白番が一力遼三冠の対戦です。対局は黒の実利、白の厚みと模様という展開になり、特に左辺がどうなるかが焦点でした。そこで予想通り激しい攻防になりましたが、その余波で下辺で白が下がっていたのに黒が受けている暇が無く、白から強烈な覗きが来ました。黒はそこを受けずに左辺の戦いに集中して、左下隅3子を取り込んで戦果を挙げましたが、結局白が右下隅の切りに回り黒地だった所に大きな白地が出来、白のリードとなりました。白はその後巧みに右辺にも踏み込み、半分死んでいた白1子が生還しただけでなく、逆襲して右辺の黒を攻めました。右下隅との連絡の関係で劫になりましたが、この劫に白は勝ちに行かず、右辺全体を攻めました。黒は結局右下隅に渡ってそこに一眼作っても、後の一眼を作ることが出来ず、ここで黒の投了となりました。一力三冠は世界戦の応氏杯でも日本人棋士として久し振りに優勝し、今絶好調です。

NHK杯戦囲碁 富士田明彦7段 対 西健伸5段(2024年10月13日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が富士田明彦7段、白番が西健伸5段の対戦でした。この対戦は途中までは西健伸5段の柔らかな打ち回しが成功して、黒の攻防がやや空回りした感があり、左辺の黒を白が飲み込んで大きく地にしてやや白優勢だったように思います。黒はその分を右下隅と上辺の白を攻めて取り戻そうとしましたが、白も右上隅に潜り込んで地を取ったりで対抗して、中盤後半までは白優勢のまま進みました。しかし左辺で黒が時間つなぎ気味かあるいは勝負手に打った手を、白が楽観視して上から受けたのが失着で、黒は左辺で取られていた黒石を半分連れ戻して白地を大きく削減することに成功しました。これ以降は黒のペースで白の上辺に寄りつきながら各所で少しずつ地を増やしました。また黒が下辺で9の18に付けて目一杯下辺の地を増やしに行ったのに白が受けなかったため、更に差が広がりました。最後二段劫になって劫は白が勝ちましたが形勢に影響はなく、結局黒の9目半勝ちに終わりました。

こども囲碁名人 小学生の部決勝戦(2024年10月6日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、こども囲碁名人戦でお休み。黒番小川さんが小学4年生、白番横手さんは去年の優勝者で小学6年生、二人は何と同じ藤澤一就9段の教室に通う、普段からのライバル同士です。序盤黒が左辺の攻防で左下隅を捨てて上手く振り替わりましたが、白地が40目ぐらいあって大きく、ここまでは白がリード。しかし右上隅から右辺、中央の戦いで、白の疑問手があり、黒が右上隅からの一団を活きた上に、左下隅も大きくまとめてここで逆転、黒の12目半勝ちとなりました。二人とも近い将来プロ棋士になるのではと思います。その日が楽しみですし、小さい時からAIを使って強くなったプロ棋士がどういう碁を打つようになるのかも楽しみです。

NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 福岡航太朗5段(2024年9月29日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が福岡航太朗5段の対戦です。山下9段はまたユニークな布石を見せてくれ、1手目が右上隅の高目、2手目に白が右下隅に打つと3手目は左下隅の小目、白が左上隅の星に打つと黒の5手目は何と天元の左で、良く見ると3手とも星の左で斜め一直線というものでした。山下9段のユニークな布石でいつも感心するのは、そのユニークなものがただユニークだけであるというだけではなく、きちんとそれが後で働いてくる打ち方をされることで、この碁でも中央の天元左の石が、上辺で切りが入って戦いになった時に実にいい位置にいました。この碁はお互いに相手に利かしに行ったのに反発が入り、地の配置が目まぐるしく変化し、左辺は大きな黒模様だったのを黒が白のハネツギに受けずに他を打ったため、白地に変わりました。また右下隅も白地かと思っていたら、黒が急所の覗きから三々に打ち、白が反発して右辺に展開して黒が右下隅を取りました。そして更に黒が白3子を取り込んだ結果、黒が先に下辺に目一杯踏み込んで打った石をバックして中央に連絡する必要がなくなり、ここで黒がリードになりました。また右上隅も白から手が残っているかが焦点でしたが、黒が巧みに打って黒地を確定させました。こうして黒がややリードでヨセに入りましたが、左下隅のヨセで黒が普通に受けていればいいものを、中央で後手一眼作れるからと他を打ったのがミスで、これでまったく形勢不明になりました。AIの判定がおそらく下辺での攻め合いをきちんと読めてなかったのか、最後まで50:50でしたが、結局黒が手止まりを打ち、黒の半目勝ちという大激戦でした。