NHK杯戦囲碁 横塚力7段 対 表悠斗2段(2024年5月26日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が横塚力7段、白番が表悠斗2段の対戦です。表2段は16歳初出場です。対局は黒の実利、白の厚みで進み、AIの判定は白が有利でしたが実際には拮抗した状態が続いたように思います。右上隅から右辺にかけて劫になったのですが、白が黒が下辺を打った劫立てに受けず劫を解消しました。これに黒は下辺を渡って行っただけでしたが、もしかすると13の16に跳ね出して行くより厳しい手が成立したかもしれません。ヨセで黒は左辺上方の地の所に白から真ん中に置いていくヨセがあるのをうっかりしていたようで白に渡られ黒地が減り、ここでは白がリードしたようです。しかし黒も左上隅を劫に持ちこんで若干挽回し、結局最後まで形勢不明の勝負になりました。最後右下隅で半劫が残り、これに白が勝ったことで白の半目勝ちというきわどい勝負でした。表2段は初出場ながら良く戦いきったと思います。次は張栩9段との対戦です。

NHK杯戦囲碁 蘇耀国9段 対 沼舘沙輝哉7段(2024年5月19日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が蘇耀国9段、白番が沼舘沙輝哉7段の対戦です。黒が初手高目、3手目が大高目と珍しい布石で、白が4手目で左下隅の星に入っていきました。その後左辺から左上隅の折衝で黒が白のノゾキに受けず隅を跳ねて行き、ここが劫になりました。黒の左下隅への劫立てに受けずに劫を解消するのが有力だったようですが、白は受け結局黒が劫に勝ちました。そして上辺で白が劫立てに打った手で連打し、黒は中央の石を捨てるのかと思いきや愚形に曲がって逃げました。しかし白の左辺からの大石は取られるような石ではなく、この辺りはほぼ互角でした。焦点となったのは白から11の5に切る手があり、ここを黒が守るのか白が切るのかが焦点になりましたが、結局黒が守り、この守ったことで形勢が黒に傾きました。その後白が下辺の黒に打ち込みましたが、ちょっと白に誤算があって打ち込んだ白2子が取られました。また右辺で1線の急所に打たれて、死にはしないものの、黒が白2子を先手で取ったのは大きく、この辺りの大ヨセで差が少しずつ開きました。結局小ヨセでも蘇9段が正確に打ち、結局は黒の10目半勝ちという大差になりました。ところで、最初の挨拶で2人ともがお互いに顔が似ていると言われてきた、と言っていましたが、今回見た感じではそうは思いませんでした。

NHK杯戦囲碁 孫喆7段 対 牛栄子女流三冠(2024年5月12日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が孫喆7段、白番が牛栄子上流最強の対戦です。序盤は黒が各所で地を取り、白が厚く構えてというう碁でしたが、左下隅から競い合いが始りました。黒が中央の戦いで、ちょっと強引に白を切りに行きました。これに対し白が的確に対処し、黒が切っていった3子を取り込んだため、ここの戦いは白が上手くやりました。しかし黒も右下隅を地にしたので形勢的には互角でした。その後白が中央の黒の大石を攻めに行ったのですが、小さく活かして打つのではなく全体を取りに行き、結果的に左辺と上辺という元々白模様があった所に追い込んだ形になりました。黒は冷静にシノギを読み切り、中央が活きた結果、地合では大差になりました。その後白は右下隅に打ち込んでいって活きを目指しましたが上手くいかず、結局白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 李沂修8段 対 洪爽義5段(2024年5月5日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が李沂修8段、白番が洪爽義5段の対戦です。李8段はNHK杯戦5回目の出場ですがまだ勝ち星が無く、初勝利を上げたい所です。洪5段は最近院生師範をやられているそうです。元々洪道場で多数のタイトルホルダーを育成していますので、適役と思います。対局はじっくりしたペースで進みましたが、白が右辺の黒模様に打ち込んでからのサバキがあまり上手くなく、その前に右下隅で黒が手を抜いていて切りがあったのですが、そこが最初は黒が継げずに上から当てて妥協する所でしたが、この右辺の折衝の結果の後白が切って行きましたが、黒は継いで頑張りました。その後白は2回守りの手を打ち、それぞれ黒1子、2子を取り込んで自身を安定させました。その2手で形勢という意味ではある意味遅れたのですが、その後の攻めが見事でその遅れを取り戻しました。黒は逆にあちこちが薄く、上辺に踏み込んでいった手が無理気味で、上辺が大した戦果を上げなかった反面中央の黒が取り込まれてしまい、ここで白が勝勢になりました。その後も白は緩まず黒の薄みを追及して利益を上げ確実に勝ちを目差し、結局黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 大竹優7段 対 熊木熙弥2段(2024年4月28日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が大竹優7段、白番が熊木熙弥2段の対戦です。熊木2段は初出場です。序盤、右上隅で黒が3子を捨て石にして白を締め付けましたが、白が角を切っていって戦いになりました。その過程で白が黒を包囲しつつかつ左辺の白模様を強化する柔軟な手を打ち、熊木2段は初出場ながら伸び伸び打っている感じでした。碁は黒が各所で実利を持って地で先行し、対して白が厚みを生かして黒を攻めてどれだけ寄りつけるかという流れでした。しかし黒が左下隅でも活きたので、やや黒良しでした。白がそこで勝負手気味に上辺のほぼ黒地に近い黒模様に踏み込んで行きました。ここの攻防は難解でしたが、結局劫含みで攻め合いになり、黒が何とか勝っていました。しかし白も締め付けが打てるのでほぼ互角の別れだったかと思います。しかしヨセに入ってからは大竹7段の方が上手く打ってポイントを上げ、白はやはり地で追いつけず白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 羽根直樹9段 対 張豊猷9段(2024年4月21日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が羽根直樹9段、白番が張豊猷9段の対戦でした。布石では白が右辺に大きな模様を築き、黒が深く打ちこんで行きました。結局黒は右辺下方で活きることになりました。白はその戦いで得た厚みをバックに下辺の黒に覗きを打って仕掛けて行きました。この戦いで白の右下隅はまだ活きておらず、結局劫になりました。劫は白が勝って右下隅は活きましたが、黒が下辺の白5子を取り込んで打ちやすくなりました。ただ白も中央の白模様のまとまり具合ではまだ可能性がありましたが、羽根9段が慌てず騒がず白の策動を封じていき、最後は黒の3目半勝ちとなりました。羽根9段の的確な形勢判断とポイントを逃さない戦い方が参考になった碁でした。

NHK杯戦囲碁 小池芳弘7段 対 鶴山淳志8段(2024年4月14日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が小池芳弘7段、白番が鶴山淳志8段の対戦でした。序盤で白が左辺に40目レベルの大きな地を取りましたが、代償で黒の中央が厚くなり、下辺からが大きな黒の地模様になりました。それに対して白が突入した手がAIの推奨の手より一路深く、黒はこの手に対し右辺でカケを利かした後、肩を付いていってこの白を強く攻めました。この攻防で中央は劫になりました。白は何とか下辺で活きることが出来ましたが、黒は劫の部分をぶち抜いて全ての石がつながり強大な厚みが出来ました。後はこの厚みを生かして入って来た白を攻めながら右辺と上辺の地をまとめ、中央に付きそうだった白地もうまく侵入して削減し、地合で大きく黒がリードし結局黒の中押し勝ちとなりました。小池7段としては会心の一局だったのではないでしょうか。実はこの二人、2019年7月にもNHK杯戦でぶつかりその時は鶴山8段が勝っています。小池7段はリベンジを果たしました。

NHK杯戦囲碁 高尾紳路9段 対 平田智也8段(2024年4月7日放送分)


第72回NHK杯テレビ囲碁トーナメントが始りました。初戦は黒番が高尾紳路9段、白番が平田智也8段の対戦です。序盤右辺の黒模様を荒らしに行った白が途中で手を抜いて下辺の黒に仕掛けていき、その結果右辺の黒地がほぼ確定し、この辺は黒のペースでした。しかし下辺の戦いが劫になり、その結果左下隅方面の黒が切離されました。黒は中央の白に襲いかかる手があったのに守りの手を打ち、また左下隅を活きに行きました。その結果無事に左下隅が活きていれば黒も良かったのですが、攻め取りとはいえ取られてしまい、これで白地が増え、白が優勢になりました。その後左上隅方面の争いで白が2子当たりになっているを逃げず、右下隅からの白の活きを確かめたのが冷静で、これで白が優勢がほぼ確定しました。結局黒が投了して、白の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 決勝戦 芝野虎丸名人 対 一力遼棋聖(2024年3月10日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、いよいよ決勝戦で、黒番が芝野虎丸名人、白番が一力遼棋聖という名人対棋聖の対決でした。序盤で黒が上辺に模様を築き、白がそこに入って行き、ある意味開き直るような強い打ち方をしました。黒も目一杯の手で白を攻め、結局振り替わりのような形で右上隅が黒地となり白は右辺へと脱出しました。その白を黒が切っていっていた石がどうなるかが次の焦点で、結局右辺の黒は取られましたが、黒から中央の白に攻め取りでどれだけ締め付けが利くかが次の焦点でした。しかし白も巧みに中央で手数を伸ばして締め付けを避けました。そこで黒が一転して左下隅の星の白に付けて行き、そこから次のラウンドが始りました。その戦いの中で黒が白のハネに延びておけば良かったのに二段バネしたのがある意味打ち過ぎだったようで、中央の黒を脅かされつつ下辺に進出され、また一度取られていた白4子が復活する手が生まれ、さらには右下隅も攻めらました。更には左辺にもかなりの白地が付くことになり、ここの戦いで白が完全に抜け出しました。こうなると地合が盤面でギリギリということになり、黒の投了となりました。これで一力遼棋聖が4回目の優勝となりました。一力棋聖はNHK杯戦出場10回で、その内8回で決勝進出、そして4回優勝というとても信じられないような記録を作っています。まだ26歳ですから、この先どこまで優勝回数を伸ばすかが楽しみです。

NHK杯戦囲碁 井山裕太二冠 対 一力遼棋聖(2024年3月3日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、準決勝の第2局で、黒番が井山裕太二冠、白番が一力遼棋聖という最高のカードです。序盤左上隅で黒が両ガカリしてから競い合いになりました。白が上辺で黒を挟んだのを更に黒が挟み返してという目まぐるしい展開でしたが、黒が白に頭を押さえられる前に4線から3線に下がったのが良い手で、逆に白が黒に当て込みを打たせるためにタケフを切りに行った形になったのがマイナスで、ここでAIの判定が黒に傾きました。その先、左上隅から中央に延びる白を攻めるのに黒がケイマで煽った所をすぐに白が切って行って、結局右辺に展開しました。そして黒が上辺から延びている石と下辺が二間で連絡している所を黒が一手守ったのに白がくすぐりに行った後、白は大ゲイマで上辺から延びる黒への攻めを見ました。しかし黒は白の急所に置いていき、また中央の黒と下辺の黒をつながる守りの手を打たずどんどん下辺に出て行きました。この辺りまさしく井山二冠らしい打ち方でしたが、結局白に間を分断されて、黒が苦しくなり結果的には打ち過ぎでした。白はここでチャンスを掴み、左辺に展開して形勢は五分五分になりました。その後白がいっぱいに打ち回し、左辺上方の黒を取り込んで左辺の地を大きく取ったので、ここで白が優勢になりました。結局黒が投了しました。来週はいよいよ決勝戦で、一力棋聖と芝野名人というこれまた好カードです。