本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が許家元9段の対戦です。二人の対戦成績が本木8段から見て6勝8敗と拮抗しています。序盤では右辺が戦いになり、黒が白の2箇所の石の中央に入って1:2の戦いとなりました。黒は途中で手をぬいて左下隅にかかり、黒が左辺で実利、白が厚みを築きました。白の下辺がいい模様になりましたが、黒はすかさず入って行きました。この黒を攻めた結果として右辺下方の白の一団が完璧に活きて厚くなり、右辺からの黒の一団と、下辺からの黒の一団の連絡を切断して行きました。下辺からの黒は白1子を取って治まりましたが、白も右辺と左辺が黒2子を取ってつながり両方が安定しました。右辺中央からの黒石は逃げながら今度は右辺上方の白に対して反撃を開始しました。ここで白に打ち過ぎの手が出て、右辺と上辺の白が分断されては黒の反撃は成功し、白が苦しくなりました。その結果上辺の白と左上隅の白が見合いの手を打たれてどちらかが取られそうになりました。白は上辺を活きましたが、左上隅が後に劫付きの攻め合いになりましたが、半分取られになりここで黒がリードしました。その後左上隅について延々と劫争いが続きましたが、黒は一旦劫に負けても、もう一回別の劫で粘る筋があり、結局黒はその利きも使って劫に勝ちました。しかしそれでも白は諦めず、おそらく黒にヨセでミスもあり、最後は黒の半目勝ちというきわどい勝負になりました。なかなか素晴しい戦いだったと思います。本木8段は次は一力遼棋聖とです。
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NHK杯戦囲碁 志田達哉8段 対 大竹優7段(2024年1月7日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が志田達哉8段、白番が大竹優7段という中部総本部同士の対戦です。序盤はお互いじっくりした碁でしたが、右下隅の攻防から局面が動きました。白が下辺からかかった石を挟まれて、上に逃げるか下辺の黒に付ければ普通でしたが、振り替わり含みに三々に付けました。黒は下にハネて反発し、結局黒が右下隅を取り、下辺の白は中央に逃げ出すことになりました。下辺の黒の模様が大きくなったので白は消しに行きましたが、こちらも逃げている間に中央の黒が非常に厚くなりました。この結果下辺からの白は活きる手を打たねばなりませんでした。しかしじっと我慢で守りの手を打った後、白は17の10の3線に出て反撃に転じました。これに対し逆に黒は跳ね出して白を上下に分断しました。上方の白は分断された後、黒の右辺の2箇所の切りを見合いにして上手くしのいだかと思いましたが、黒が中央に逃げている白に割り込み、黒一子が取られていた所を欠け眼にするという手が成功し、この辺りで黒が少しリードしたようです。その後白は左辺を大きくまとめ、また右辺からの黒に対しても寄り付きを狙いましたが、少し黒がいいという形勢はなかなか変わらず、結局黒の2目半勝ちという、予想通りのヨセ勝負を志田8段が制しました。志田8段は次は藤沢里奈女流本因坊です。こちらもヨセ勝負が予想されます。
NHK杯戦囲碁 福岡航太朗4段 対 一力遼三冠王(2023年12月24日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が福岡航太朗4段、白番が一力遼三冠王(棋聖・本因坊・天元)の対戦です。布石は何だか豆まき碁というか、相手の手に受けずにお互いが先を急ぐ展開で、左上隅の白の肩付きにさえ黒は手を抜きました。局面が動いたのは右下隅の攻防で、白が下辺の黒二間ビラキにいっぱいに詰めたのに対し、黒は白の隅のコスミのカドにまで迫りました。白は一つ押してから下辺からケイマに煽りました。黒はその石に付けて中央への脱出を図りましたが、白は強く抑え込んで劫付きながら黒を封鎖しました。結局ここで白は中央で黒2子をシチョウに抱え(序盤で打った左上隅の肩付きが丁度シチョウアタリになっていました)、また劫の関係で黒二子を抜いて厚くなりました。その厚みを生かして右辺に打込み、右辺下方の黒を攻め、結局黒を渡らせた代わりに黒の中央にケイマに飛んだ石を切離し、中央が白っぽくなりました。その後戦いは左下隅に移り、黒が三々に潜って振り替わりを目差したのに、白は全体を攻めようとしました。しかし結局白は黒を活かし、その代わりここでも中央が厚く、かなり中地が付きそうな状況になりました。ここで先ほどの黒二子をシチョウに抱えていたのが、左辺の攻防の結果黒の逃げ出しが可能になっており、実際に黒は逃げ出しを決行しました。しかしここでも白は深追いせずに黒を活かして打ちました。白はその後右上隅でわざと白二子を捨て、その代わり先手で上辺で黒1子を取り、上辺が安定しました。それを利用して今度は左上隅の黒をハサミツケから攻め立てました。黒は中央に逃げましたが、先ほど活きとなっていた中央の石がカラミとなり、結局最後は黒の左上隅も中央も全部死んでしまうということになり、黒の投了となりました。一力遼三冠王の緩急を付けた攻めの上手さが光った白の名局でした。
NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人 対 酒井佑規4段(2023年12月17日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸名人、白番が酒井佑規4段の対戦でした。この碁では右下隅で白のカカリに黒が低く一間に挟み、白がかけたのに黒が出切っていったという所から全体の方向が最初から「戦い」という感じになりました。元々酒井4段が結城聡9段ばりの「武闘派」みたいです。また芝野名人もその辺りでは引けを取りません。酒井4段の真骨頂は、右辺右側でほぼ取られかけていた白1子を引っ張り出し、場合によっては1子ポン抜いている黒の一団を狙おうとしたのがそれらしかったです。ここの折衝で白は黒3子を取り込んで地を稼ぎましたが、その分中央の白3子が切離されたのと、かつ右辺下方から中央に延びる白の一団が非常に薄くなりました。黒はこれを本気で取りに行き、白からはどうやっても後手一眼しかない、ということになりました。その後白は下辺左方の黒を攻め立てこちらとの攻め合いを目指しましたが、残念ながら手数は黒の方が長いままでした。そこで白は中央にアヤを求めて黒を分断して行きましたが、黒は上辺の黒をあっさり捨てて中央を補強しました。その後黒が更に中央の白の種石2子を取ったため黒の石は全部活き、結局右辺下方からの白の大石は攻め合いにもならず全滅し、110目(?)レベルの大きな地が完成しました。普通はここで投了ですが、その後白はそれでも左上隅から上辺、左辺を全部まとめて地にしようと頑張りました。しかし黒が上辺に打ち込んだ石を活用してまずは取られていた上辺の黒が眼2つですが復活しました。その後黒が更に左上隅三々に打ち込んでいって、これが活きるかどうかが勝負になりました。結局ここは劫になり、白からは下辺の取られている石の復活を見せて劫材はそれなりにあるものの、黒からも左上隅で活きようとする手が全て劫材になるのと、たとえ劫に負けても劫立てで多少の白地を減らせれば勝ちという状況となり、白が投了しました。敗れたとはいえ、酒井4段の勝負を諦めない粘りは見事でした。
NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 富士田明彦7段(2023年12月10日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が富士田明彦7段の対戦でした。この碁の黒の布石では、最初は普通でしたが、右上隅の出切りからのシチョウを見て、シチョウアタリ的に左下隅で6の6に打ったのがさすが山下9段でした。それでこの左下隅で最初の戦いが始り、白が黒を分断するのに出ではなくハネで打ちました。そして黒が少し自重して左辺に三間に開いたのに、白がすかさずその間に打ち込んで行きました。結果として白は黒1子を抜けましたが、先ほどのハネの所は黒に切られてしまいました。それでこの左下隅は双方活き活きという手順もあったようですが、どちらもそれは選ばず攻め合い含みになりました。結果的にセキまたはコウということになりました。この場合黒はこれを取られたとしても小さく、それより中央が厚くなった方が大きく、ここで黒がリードしました。そこから今度は黒は左辺の先ほど黒1子をポン抜いた白の一団を攻め、その攻めを次は左上隅に転じ、更には今度は再度中央の戦いになりました。その戦いで白も一杯の手を打ちましたが、そのタイミングで黒が左下隅のコウをしかけ、白はこのコウは負けられず、結局黒が中央で白6子くらいを取り込みました。白はそれでも中央を手抜いて右辺で開いて地を稼ぎましたが、黒から左辺の白を再度攻められ、途中で黒が白の半分を取ることはもう確定していましたが、黒は白の全体を取りに行き、白のシノギも上手く行かず白の投了となりました。この碁は山下9段の一貫した攻めが光った碁でした。
NHK杯戦囲碁 藤沢里奈女流本因坊 対 鈴木伸二8段(2023年12月3日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が藤沢里奈女流本因坊、白番が鈴木伸二8段の対戦です。この二人の対戦成績は藤沢女流本因坊から見て5勝1敗と、鈴木8段は藤沢女流本因坊を苦手にしているようです。
布石は非常に独特で、黒が同じ方向の小目、白が両三々と初めて見ました。局面が動いたのは、黒が左上隅で付けた時に、白が手を抜いて中央を打ったあたりからです。勢いで白は黒を切った石を伸びていって左辺で策動を図りましたが、黒が的確に受けて結局白の左辺の石は攻め取りにもならない持ち込みとなり、ここで黒がリードしました。その後の焦点は、右下隅からの黒がどこまで攻められるか、また白の上辺の地がどのくらいまとまるかでしたが、途中で白が受けの手を連発しました。ここで白が取られている中央左の一子(6の10)を引っ張り出して、左辺の石を攻め取りにさせるとかを狙ってほしかった所です。黒はリードした後は、手堅くまとめ白にまったく付けいる隙を与えず、結局白の投了となりました。藤沢女流本因坊はこれで自身初のベスト8進出です。以前謝依旻7段がやはりベスト8に進出してそこで敗れましたが、こうなったらもっと上を狙って欲しいところです。
NHK杯戦囲碁 井山裕太王座・碁聖 対 田中康湧4段(2023年11月26日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が井山裕太王座・碁聖、白番が田中康湧4段の対戦です。序盤では、黒が白の地模様だった左下隅に潜り込んで地を稼いだのに対し、白がお返しとばかりに左上隅では地を稼ぎました。その左上隅の戦いで、白2子が半分取られたような格好になり、これが動き出せるかどうかがその後の焦点になりました。ただこの石を動いてしまうと、左上隅が劫になってしまう可能性があり、白からのタイミングが難しかったようです。その後右辺の折衝で白が引いていれば無難だったのを伸びたため、黒がハネ込んで白を切断して行きました。ここの折衝の結果、黒が上辺を分断して左側とつながったため、先ほどの白2子の動き出しがほぼ意味が無くなり、ここで黒がリードしたようです。その後も黒が下辺に仕掛けていったりして難しい局面が続きましたが、最後白が左辺で稼いだのに対し、黒が左辺から右辺にまで延びる白の大石を切断しました。その結果白は両方で逃げてどちらも無事でしたが、その利きで黒は上手く下辺の白地を減らせましたし、最後は右側の白の連絡していた石3子を上手く取り込んでこれが決め手となり、黒の中押し勝ちとなりました。
NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 鶴山淳志8段(2023年11月19日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が鶴山淳志8段の対戦です。山下9段は今回は変わった布石はやらない、と言っていましたが、黒5手目で、小目の石に肩付くという、初めて見た打ち方をしました。これを白が4線に這えば白の地が多く白がいいのでは、と思いましたが、白は上方へ3線を這いました。なので結局ナダレ定石の前半みたいな形になり、簡明に別れました。その後白が左上隅で三々に入ったのを、黒は2段にハネて、隅の実利を取りました。これは山下9段にしては珍しい打ち方です。この後、右上隅の黒が攻められ気味に、白が右辺に展開したのを、黒は本日2回目の肩付きで、白が出たのを黒が押さえて、白が切って戦いが始りました。白は黒を当てた石を押していって、いわゆる車の後押しで、その結果黒は壁が出来て中央がいい模様になりました。その代わり右上隅が薄くなりましたが、山下9段も強く白を包囲する打ち方をし、双方眼がなく攻め合いになるかと思われました。しかし結局活き活きになりましたが、白は隅に潜り込んで地を辛く稼いでおり、また黒はヨセコウ残りを嫌って一手入れたため後手になり、右辺から白が中央に進出して黒模様が消え、ここでの戦いの軍配は白に上がりました。しかし黒も左下隅の白に迫りながら左辺を模様化しました。この時左下隅の白が中央に一間に飛んだ構えに隙があり(AIはケイマを推奨していました)、黒が中から覗いて白を割いて行きました。白の下方は黒2子を取って活きましたが、黒が左辺の白の分断に成功し、黒が打ちやすくなりました。その後黒が左辺の白を攻める前に上辺にもたれていったのを、白は受けないで中央を補強したため、白の上辺も分断され、なおかつ中央の白を切り離す手が残り、実際に後でそうなりました。左辺と中央で激しい戦いが続いている最中、白は形勢不利とみて局面を複雑化させるため、下辺に打ち込みました。しかし結果としてはこの手は不発で、中央で一手遅れたため、黒は白の左辺と中央を劫付きですが切り無して戦果を上げました。最後白は左辺と中央を連絡する劫を仕掛けました。この劫は一旦は白が勝ち、そこで継いでいれば穏やかでしたが、白は更に黒2子を切って当たりにし、劫を大きくしました。黒が劫立てに右辺下方で切って行ったのを白は受けずに劫を解消し、左辺は白が分断して大きな戦果を挙げました。しかし黒が右辺下方で切って行った手は結局は手になり、攻め合いは黒勝ちで右辺の白が全部死に、白の投了となりました。見応えのあった見事な対局でした。
NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 志田達哉8段(2023年11月12日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が志田達哉8段の本格派同士の対戦です。この碁は渋い展開でしたが、左辺の攻防で、白が付けて黒がはねたままになっていたのを、白が切って行きました。ここの折衝で白は黒3子を取ってかなり地を増やしましたが、その代わり黒は中央を突っ切った形になり、上辺から中央に展開している白の大石へ黒がどのくらい攻められるかがポイントでした。しかし白は上辺で左側の白に渡る手を見せました。しかし黒はそれを妨げる手を打たず、結局白は全てがつながり、弱い石がほとんど無くなりました。でもそれで白が優勢になったという程ではなく、白は黒の右辺の模様をあっさり確定地にさせたので形勢は非常に微細でした。ヨセの段階でAIは左辺の白地と見える所に手があるという主張をしており、それを決行するという前提で黒が勝率80%程度という判定をしていましたが、結局黒も白もそれを決行したり守ったりしなかったため、一手毎に形勢が入れ替わるという終盤でした。その左辺の手は黒から打てば劫にはなるということみたいですが、劫材が黒が多い訳でもなく、微細な形勢でそれを決行出来ない、しないのはまあ仕方がないかと思います。結局白が左辺を守る展開となって、最後は白の半目勝ちでした。なお、志田8段は普段は無表情で、対局中にたまに「ニヤッ」とすることがあるのですが、本日の対局ではその「ニヤッ」を何でも見ることが出来ました。それだけ対局に没入していたのかと思います。
NHK杯戦囲碁 大西研也5段 対 富士田明彦7段(2023年11月5日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が大西研也5段、白番が富士田明彦7段の対戦です。序盤で黒が、右辺の白の二立三析の構えに上から詰めた後、右上隅の折衝の途中で、構えの内側に付けて行きました。しかし黒は強く戦わず結局三子を捨てて外側からノゾキを利かし、また当てを利かしたことで手を打ちました。その次に左下隅から下辺にかけての戦いになり、黒は何とか下辺の一団を右下隅に連絡し、また左辺下方でポン抜きの後の白5子を取り込みましたが、その代償で下辺上方の白が厚くなり、先ほど右辺で利かした黒3子がほぼ飲み込まれてしまいました。トータルではここで白のリードとなりました。次に左上隅、上辺、中央の争いになりましたが、一時は黒が取られている石を上手く活用して中央に厚みを築き、上辺の白を攻める展開になって形勢を盛り返しましたが、一手中央で守りの手を打ったのが逸機で、白に上辺を連打され、白は上辺にかなりの地をもって治ることが出来、ここで白が勝勢になりました。しかし形勢は細かく、その後ヨセで黒にも逆転のチャンスがありましたが、結局白の中押し勝ちとなりました。富士田7段は、本因坊・名人の両リーグに入り、また天元戦でも挑戦者決定戦まで行ったということで、一流棋士の道を進みつつあります。