NHK杯戦囲碁 谷口徹5段 対 大西研也5段(2023年6月25日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が谷口徹5段、白番が大西研也5段の対戦です。大西5段は初出場ですが、以前NHK杯戦の記録係をやっていて顔なじみです。その頃より精悍な顔つきになったと思います。谷口5段は今回が3回目の出場で、過去2回とも初戦で敗れているので何とか勝ち星を上げたい所です。布石で珍しかったのは白の左辺の構えで、全て4線に構えました。普通は3線と4線をバランス良く組み合わせますが、4線のまま地になると大きいので、もしそれが成功すれば当然4線の方がいい訳です。しかし黒はこの碁では結局左辺に入って行くチャンスを逸し、一応3線に一度打ち込んだものの、この石を活きることは難しく、中央から利かして捨てることになりました。また良く分らなかったのが左上隅で黒は打ち込んで行ったのですが、活きが無いにも関わらず打ち続け、後に劫になった時の劫材として使うのかと思ったら当てを利かしたりし、更には途中で下辺で先手にならない手を打ち、結果的に丸ごと取られてしまいました。この結果左辺はぶっ通しで50目の地が出来、黒の地の全部に匹敵していました。こうなると黒は右上隅からの白の一団をいかに攻めて特を図るかですが、隅にはっきり一眼あり、中央でもう一眼を作るのはそんなに難しくありませんでした。それでも黒は眼を取りに行って目一杯打ちましたが、結果的に自分の方が薄く、包囲網を破られて眼を作られてしまい、黒の投了となりました。ちょっと黒の打ち方は淡泊過ぎたように思います。

NHK杯戦囲碁 辻󠄀篤仁4段 対 上野愛咲美上流名人(2023年6月18日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が辻󠄀篤仁4段、白番が上野愛咲美上流名人の対戦です。最初の見応えのある折衝は右辺で、白が下辺で右下隅の黒に利かしに来たのに黒は手を抜いて右辺で白2子を取り込もうとする手を打ちました。しかし白も手を尽くしてその白2子を下方に連絡し、黒の一団は眼が一つだけという状態で残りました。また下辺では白が黒2子をポン抜いて非常に厚くなりました。しかし先手を取った黒は左上隅の白に付けてから上辺に三間開きで展開し、右上の白を攻めつつそれなりの地を持って治りました。非勢を意識した白が左辺の黒に付けて行く勝負手を放ちましたが、その結果中央下部に白地を付けられそうになりましたが、その代償として左上隅の白がかなり危なくなりました。その後黒が中央でケイマしたのに、白が出切って行くという再度の勝負手を放ちました。この手の結果、黒は左右の石の両方をしのがなければならず、形勢は不明に戻りました。しかしながら白も薄い部分があって攻めきれず、黒は両方を活きて勝勢になりました。その後懸案だった左上隅の白について、劫になりましたが、白の劫立てが無劫であり、黒が劫を解消して左上隅を取り切ったためここで決まりました。途中のヨセでは黒白双方にミスがあり、形勢は揺れ動きましたが、後でミスした白の方が罪が重く、形勢の逆転には至りませんでした。黒の中押し勝ちでした。

NHK杯戦囲碁 結城聡9段 対 酒井佑規4段(2023年6月11日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が結城聡9段、白番が酒井佑規4段の対戦です。結城9段は言うまでもなく「武闘派」、そして酒井4段は初出場ですが、こちらも徹底した戦いの碁ということなので、激しい戦いが予想されました。序盤は黒が実利、白が厚みという進行で、黒が左辺の白模様に打ち込んで、3子を捨て石にして中央に頭を出し、なおかつ右辺から中央の模様形成に上手くつなげました。白がこの黒模様を削減しようとする時に下辺右から中央に延びる黒に利かしを打った時、黒が右下隅の白に切りを入れたのが上手い返し技で、黒はここを先手で切り抜けました。それで黒が優勢になったのですが白は途中まで自分が優勢と錯覚していたようで固い手を打っていましたが、その内気がついてからは一杯の手を打ち続け、黒を追走しました。そして小ヨセで黒が小さい手を打ち、見合いだった所を両方白に打たれ、これで逆転し白がわずかに優勢になりました。最後黒から劫を仕掛ける手がありましたが、劫材は白の方が多くて黒は決行出来ず、結局白の1目半勝ちに終わりました。

NHK杯戦囲碁 沼舘沙輝哉7段 対 牛栄子女流最強(2023年5月28日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が沼舘沙輝哉7段、白番が牛栄子女流最強の対戦でした。この碁はちょっと黒の打ち方があっさりしすぎの感じで、白の右辺と下辺の両方に打ち込んだり策動するチャンスがあったのにまずは下辺に付けて白を固め、その後右辺に策動するかと思いきや右辺も押して白を固めました。結果として中央は厚くなりましたが、まとめるのは大変そうでした。その後左辺の戦いで白は単独で活きるのは簡単でしたが、左上隅の黒を切り離して攻め合いを目指しました。この攻め合いは白が有利で黒はやむを得ず捨て石作戦に切り替えました。白は黒の2子を取ることが出来ましたが、そうすると中央が止まり、最悪100目レベルの黒地が出来る可能性があり、逆に白2子を捨てて頭を出したのが好判断でした。ここの折衝で白が優勢になりました。この後の黒の打ち方が不可解で、形勢が悪いにもかかわらず手堅い手が多く、ヨセはずっと白優勢のまま紛れる所も無く、結局白の5目半勝ちに終わりました。牛栄子女流最強はNHK杯戦で初勝利です。

NHK杯戦囲碁 山田規三生9段 対 福岡航太朗4段(2023年5月21日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が山田規三生9段、白番が福岡航太朗4段の対戦です。山田9段はNHK杯戦での優勝経験があります。福岡4段は2回目の出場で前回は張栩9段に1目半負けだったので、何とか初勝利を上げたいところです。中盤の戦いで焦点となったのは左辺と下辺の戦いで、黒が下辺を頑張って地を持って生きた結果、左辺の黒が封鎖されて眼が無くなりました。黒の活きは見えずピンチでしたが、白が黒の断点を覗いたのが緩着で、黒はここぞとばかり下辺から白1子を当て、白が伸びた時に中央を出ていき、この結果黒7子は取られたものの、中央を厚くして右辺の地を期待出来るようになり、また右下隅の白にも寄り付きが期待出来、更に左辺は上方に渡って助けることが出来るという、理想的な捨て石となりました。また白が右辺の黒模様に手を付けてからの戦いで、結局中央で振り替わりになり、この振り替わりは単純計算で黒が4目ぐらい得をし、これで黒が優勢になりました。ただ白も左上隅で黒を切り離して得をしたので、大きな差ではありませんでした。黒は一応優勢だったので上辺について覗きを打って白2子を取っていれば勝ちでしたが、山田9段は形勢を悲観していたようで、勝負手気味に更に深く打込みました。しかし結果的にこの打込みは失着で打った石が全部取られてしまい、形勢は白が逆転しました。しかし更に右下隅で今度は白が間違え、固く受けたつもりが手が残っており、白4子を取られてしまい、黒が再度優勢になりました。しかし左辺から中央のヨセでまた黒が間違えて形勢は半目勝負になり、結局白の半目勝ちに終りました。時間のない早碁で冷静に形勢を判断するのは難しいですが山田9段は惜しい碁を落しました。逆に福岡4段は苦しい碁を耐えてわずかな可能性の勝ちを得ました。2回戦以降も期待したいです。

NHK杯戦囲碁 大西竜平7段 対 仲邑菫女流棋聖(2023年5月14日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、ついに来ました、黒番が大西竜平7段、白番が仲邑菫女流棋聖の対戦です。仲邑女流棋聖は14歳で初出場の最年少記録を更新しました。この碁の布石は黒白とも平行型の2連星で、かつそれにもかかわらず白が三間髙バサミをしたりでダイレクト三々がまったくないという、昭和の香りがする布石でした。戦いは上辺で始まり、黒が攻められながらも白の三間ビラキの間に打ち込み戦線を拡大しました。そんな中、左辺から左上隅にかかっていた2子が、黒が中央を押して白がそれに合わせて伸びた結果、白の包囲網に取り込まれて半分死んでいました。碁の流れで黒がこの2子を引っ張り出すことになりました。黒は尻尾を捨てるかと思いましたが結局強く全部を助けたので、行きがかり上白はこの黒全体(写真での左辺の黒7子)を取りに行きました。しかし黒が考慮時間を3回連続で使って白の包囲網の弱点を突いて全部を活きに行ったのが強く、白も切られて左上隅の石に眼が無く、無理矢理取りに行くと攻め合いになり黒勝ちのため、やむを得ず活き活きの形で収束しましたが、白は後手になり、白の大きな地が見込めた箇所を先手でガラガラに荒されたということになり、ここで形勢は黒に大きく傾きました。後は黒が薄い所を先に固めて行って白に付け入る隙を与えず、地合いで盤面12目程度の黒のリードが最後まで縮まらず、白の投了となりました。こうして仲邑菫女流棋聖の初挑戦は残念な結果になりましたが、今後どのような活躍をしてくれるかが楽しみです。

NHK杯戦囲碁 西健伸5段 対 林漢傑8段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が西健伸5段、白番が林漢傑8段の対戦です。この碁での戦いは白が黒の勢力圏である下辺に打ち込み、黒が上からボウシしてから始まりました。下辺は元々スソアキだったので黒は白を右下隅に渡らせて打つかと思いましたが、この碁での西5段は積極的で、白を分断しました。白が中央に逃げて行くと黒の左下隅からの棒石も危なくなりますが、黒が白の飛んでいる石に付けて行って白を分断したのが良く、白1子を取ってこの棒石は完全に活きました。しかし白も下辺と中央の黒を分断し、かなり複雑な戦いになりました。この戦いの中で黒は劫で再度白を中央で分断しました。この劫は白は勝つしかない劫でしたが、黒からの何手目かの劫立てが小さく、白が劫を解消して一安心しました。この辺りで黒は中央左下の白のいわゆる「犬の顔」の真ん中に置いたり、一間トビに割り込んで白のタネ石を取って下辺と左辺をつなげておく手が大きかったのですが、何故か黒は打たず白に繋がられてしまいました。白はその後左側の黒へ寄り付きながら左上隅を大きくまとめたので、勝勢になりました。なお、左上隅はもしかすると三々に付ける手があったかもしれませんが、黒が別の場所に付けて結局持ち込みになってしまいました。この結果白の勝ちがほぼ確定し、黒の投了となりました。

故橋本昌二9段の直筆署名入り本(「松和・雄蔵」)

日本囲碁体系13の「松和・雄蔵」をAmazonのマーケットプレイスで購入したら、何と監修者の故橋本昌二9段の直筆署名入り!
おそらく持っていらした方が亡くなって遺族が処分したのだとは思いますが、私としてはこういうサイン本が古書市場に出ているのを見るのはちょっと悲しいです。
橋本昌二さんは、王座を2回、十段を1回取った関西棋院の強豪で、NHK杯戦でも3回優勝されています。

NHK杯戦囲碁 村川大介9段 対 鶴山淳志8段(2023年4月30日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が村川大介9段、白番が鶴山淳志8段の対戦です。この二人は先期も当たり、その時は鶴山8段が勝っています。布石は黒が向かい小目から二間高ジマリで、また右下隅と左下隅で黒が三々に入ったので、左辺が白模様となりました。そこに入っていった黒を白が攻める展開になりました。それに関連して、白が左上隅の黒の根拠を奪って攻め、黒が単純に活きる手を打たず外の白を切って行きました。白は上辺の黒に切りを入れ、白2子の犠牲で中央の黒6子を取りました。その後左辺の黒への白の攻めとなり、その攻防が下辺に及び、黒は裂かれ形を承知で下辺に出て行き、その結果左下隅で劫になりました。しかし劫は黒が勝ち、左辺から中央の黒のしのぎが焦点になりました。しかし黒は先ほど下辺に突き出した壁を頼りに、中央の白を切って行き、逆に左辺下方の白への逆襲を敢行しました。ここから先は左辺下方の白と下辺右方の黒との攻め合いになり、形勢はまったく不明になりました。しかし右下隅の白を黒が取りに行ったのがミスもあって失敗し、下辺右方の黒は取られてしまいました。それでも黒は右上隅の地を大きくまとめて追い上げました。しかしその後中央の黒の眼が無くなり、また左辺の攻め合いになりましたが、白は下辺の6子を捨て、その結果下辺右方の黒が復活しまし、さらに左下隅の白が黒を取っていた所もセキになりましたが、その代償で中央の黒が攻め取りとはいえ取られて、差は縮まりませんでした。結局白の8目半勝ちでした。