本日のNHK杯戦の囲碁は、準決勝第一局で、黒番が志田達哉8段、白番が芝野虎丸名人の対戦でした。序盤で白が左上隅で早々と劫を仕掛け、右下隅に劫立てし、黒が受けずに劫を解消しました。しかしそれでいい勝負でした。しばらく進んでから黒は右下隅で動き出し活きた後、白の角を切って行きました。ここでまた戦いが始り、下辺の左右の黒、中央の白、右辺の白というもつれあいになりました。途中で下辺右の黒は白の手抜きを咎めて白2子を取ってつながりました。下辺左の黒も若干の犠牲打を放って中央が厚くなりました。残ったのは白の弱石2つで、特に中央は結局は眼2つでギリギリの活きでした。右辺は白が2子を犠牲に渡る形になりました。それからヨセになりましたが、AIの形勢判断がずっと6:4くらいで黒有利を示していたのですが、終わって作ってみれば白の半目勝ちで、AIもヨセの段階での形勢判断を間違うんだということが分りました。芝野虎丸名人は初の決勝進出で、井山裕太二冠と一力遼棋聖の勝者と優勝を賭けて戦います。
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NHK杯戦囲碁 志田達哉8段 対 藤沢里奈女流本因坊(2024年2月18日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は準々決勝最後の対局で、黒番が志田達哉8段、白番が藤沢里奈女流本因坊の対戦です。この二人はどちらもヨセが得意で半目勝負を勝ちきってというパターンが多いので、この碁もそうなると予想しましたが、始ってみると志田8段が随所で積極的な打ち回しを見せ、中盤からはかなりの戦いの碁になりました。いくつかポイントはあって、まずは右辺の白に黒が利かしにいって、通常は黒先手と思いきや白が手を抜いて他に先行しました。ただ白はここである意味借金を抱えているようなもので、実際に黒が後で切りを敢行し、これが利かしにもなり、また後で働きました。黒はそこも頼りにして中央で白がケイマで煽っている所を切って行きました。この結果上辺の白はいじめられ眼2つで活きなければならなくなり、ここで黒がポイントを上げました。その後、黒が左辺の模様を拡げた所に白が進出して行きましたが、これに対して圧力をかけて中央が黒が厚くなり、先ほど中央で切られて中央で孤立している白が危なくなりました。ここで黒の先ほどの右辺の切りが効いて来て、中央の白は黒の包囲網の中でもがくことになりました。しかし白も逆に右辺の黒を切って行って攻め合いを目指しました。しかし白の手が2手ぐらい短く、また黒は左辺の黒模様に進出した白も取り込む手を打ちました。結局白は中で活きるのも攻め合いも上手く行かず全部取られてしまい、白の投了となりました。女性棋士初のベスト4進出はなりませんでした。
NHK杯戦囲碁 井山裕太二冠 対 山下敬吾9段(2024年2月11日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、準々決勝第3戦で、黒番が井山裕太二冠、白番が山下敬吾9段の対戦です。この二人は主に棋聖戦で何度も戦っていますが、年齢差もあって井山二冠が勝ち数は大きくリードしています。白の山下9段は新手を見せてくれるので有名ですが、今回も黒の小目に5線からケイマにかかるという手を見せてくれました。しかしここから碁はまったく前例が無い戦いに突入し、特に黒がダメが詰まるのを承知で無理矢理切りに行ったのが強手で、ここから黒のペースになり、特に白は下辺3子を上手く捨てる手が無く、下辺を這って活きに行ったのが辛かったと思います。その後黒が中央の断点を守っていれば十分だったのを、最強の手で中央の白を攻めたのを、白が切りを決行して、白にもチャンスが生まれました。しかし黒はその後も最強手を連発し、白も果敢に戦いましたがなかなかチャンスが無く、左辺で黒が捨てるかと思った3子を活きに行き、地合でも頑張りました。その後中央の白を攻めながら上辺に地を作り、これでほぼ勝勢になりました。その後白が右上隅三々に入りましたが、黒に二段バネされ、辺で1子取ってもその後に活きるのが窮屈で変化しましたが、結局右上隅は黒が取り切り、盤面で10目以上の黒のリードは変わらず、結局白の投了となりました。井山二冠、次は準決勝で一力遼棋聖との対戦です。
NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人 対 河野臨9段(2024年2月4日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸名人、白番が河野臨9段の対戦です。この碁の焦点は右下隅から下辺の戦いで、黒が下辺で白にカケを打ったのを白が出切っていきました。そこで両者最強の手を打ち続けましたが、どうも白が捨てる石と守るべき石の選択を間違えた感じで、黒が下辺の白2子を取ったのが大きく、黒が全体に安定し、白が一方的な被告になった感じで、ここで黒に形勢が傾きました。その碁白は劣勢ながら左辺に仕掛けていきましたが、その途中で白が左辺真ん中辺りで黒1子を当たりにした所で、何と黒が継がずに左下隅を押さえていったのが強手かつ好手でした。この手の結果、白は中央の6子か左下隅の4子のどちらかが見合いで取られることになり、結局白は6子を捨て、黒はここに15目くらいの地を作り地合ではっきりリードしました。その後も、黒は中央で切りを入れ白8子を取り込んで更に地を増やしました。これで盤面15目以上の黒のリードとなり、その後右辺の折衝の結果、取られていた白8子が逃げ出せたのですが、今度は左辺から延びる白の大石が絞りを2つ打たれて眼がなく死んでしまう、ということでここで白の投了となりました。芝野名人の完勝譜で、初のNHK杯ベスト4進出となりました。
NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 一力遼棋聖(2024年1月28日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が一力遼棋聖の対戦でした。右下隅が一段落して白が小さくですが活きた後、黒は左下隅の白の一間ジマリのヨコに付け、その後左上隅の白が締まっている所に掛かっていきました。その後先ほど左下隅で付けた石から飛び、白も下辺の黒に肩を付き、左辺が全面的に戦場になりました。結局左上隅の黒は切断され、活きにいくしかなくなりました。白がその黒に利かしに行った時、黒は一本鼻ヅケし、その後活きる手を打った後、逆襲気味に白を切断して行きました。黒は結局中央の白に対し左辺を渡らせましたので一応言い分が通ったような形になりました。その結果中央の白の種石2子が薄くなり取られそうになりましたが、白は三間飛びでつながるともつながらないともという感じで右辺に利かしに行きました。白は右辺の黒を固めさせて中央を厚くしたかと思いきや、一転して右上隅に手を付けて行きました。その後黒が反発して中央を重視して手を抜いたりしたので右上隅の白は活き、またその左側の黒も活きて活き活きになりました。後は中央の白がどうなるかということでしたが、黒の攻めに対し、白は3子を捨てて右辺下方とつながりました。それでも黒はまだ全体を狙っていましたが、中央にも一眼を作り、黒の攻めをかわしました。この結果は白の地が厚く、ヨセが打たれましたが結局黒の投了となりました。一力棋聖はこれで準々決勝進出です。
NHK杯戦囲碁 六浦雄太8段 対 井山裕太王座(2024年1月21日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が六浦雄太8段、白番が井山裕太王座の対局です。序盤右辺で黒が低く二間に開いたのに白がすかさず肩付きし、更に右上隅で黒がハネたままになっていたのを白が切って行き、ここから戦いが始りました。その後黒が右辺で低く三間に開いたのが疑問で、白から上から利かされ黒は低い構えになり、ここでやや黒が形勢を損ねたようです。また白は左辺に利かした後、上辺の黒に取り込まれたかに見えた白を動き出し、結局黒はこの白を取ることが出来ないため、全体に眼が無く黒がピンチになりました。しかし黒は唯一のシノギ筋である中央の切りを打ち、右辺上方の白も薄いため上手くしのいだかに見えましたが、筋風に白に付けたのがポカでせっかくのシノギの筋が消えてしまいました。仕方なく黒は上辺で眼を作りに行こうとし、左上隅の白を攻めましたが、ここでも黒に失着が出て最悪劫にはなったのが白の活きになってしまいました。最後中央に出ようとする手も白に正しく受けられここで黒の投了となりました。
NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 許家元9段(2024年1月14日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が許家元9段の対戦です。二人の対戦成績が本木8段から見て6勝8敗と拮抗しています。序盤では右辺が戦いになり、黒が白の2箇所の石の中央に入って1:2の戦いとなりました。黒は途中で手をぬいて左下隅にかかり、黒が左辺で実利、白が厚みを築きました。白の下辺がいい模様になりましたが、黒はすかさず入って行きました。この黒を攻めた結果として右辺下方の白の一団が完璧に活きて厚くなり、右辺からの黒の一団と、下辺からの黒の一団の連絡を切断して行きました。下辺からの黒は白1子を取って治まりましたが、白も右辺と左辺が黒2子を取ってつながり両方が安定しました。右辺中央からの黒石は逃げながら今度は右辺上方の白に対して反撃を開始しました。ここで白に打ち過ぎの手が出て、右辺と上辺の白が分断されては黒の反撃は成功し、白が苦しくなりました。その結果上辺の白と左上隅の白が見合いの手を打たれてどちらかが取られそうになりました。白は上辺を活きましたが、左上隅が後に劫付きの攻め合いになりましたが、半分取られになりここで黒がリードしました。その後左上隅について延々と劫争いが続きましたが、黒は一旦劫に負けても、もう一回別の劫で粘る筋があり、結局黒はその利きも使って劫に勝ちました。しかしそれでも白は諦めず、おそらく黒にヨセでミスもあり、最後は黒の半目勝ちというきわどい勝負になりました。なかなか素晴しい戦いだったと思います。本木8段は次は一力遼棋聖とです。
NHK杯戦囲碁 志田達哉8段 対 大竹優7段(2024年1月7日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が志田達哉8段、白番が大竹優7段という中部総本部同士の対戦です。序盤はお互いじっくりした碁でしたが、右下隅の攻防から局面が動きました。白が下辺からかかった石を挟まれて、上に逃げるか下辺の黒に付ければ普通でしたが、振り替わり含みに三々に付けました。黒は下にハネて反発し、結局黒が右下隅を取り、下辺の白は中央に逃げ出すことになりました。下辺の黒の模様が大きくなったので白は消しに行きましたが、こちらも逃げている間に中央の黒が非常に厚くなりました。この結果下辺からの白は活きる手を打たねばなりませんでした。しかしじっと我慢で守りの手を打った後、白は17の10の3線に出て反撃に転じました。これに対し逆に黒は跳ね出して白を上下に分断しました。上方の白は分断された後、黒の右辺の2箇所の切りを見合いにして上手くしのいだかと思いましたが、黒が中央に逃げている白に割り込み、黒一子が取られていた所を欠け眼にするという手が成功し、この辺りで黒が少しリードしたようです。その後白は左辺を大きくまとめ、また右辺からの黒に対しても寄り付きを狙いましたが、少し黒がいいという形勢はなかなか変わらず、結局黒の2目半勝ちという、予想通りのヨセ勝負を志田8段が制しました。志田8段は次は藤沢里奈女流本因坊です。こちらもヨセ勝負が予想されます。
NHK杯戦囲碁 福岡航太朗4段 対 一力遼三冠王(2023年12月24日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が福岡航太朗4段、白番が一力遼三冠王(棋聖・本因坊・天元)の対戦です。布石は何だか豆まき碁というか、相手の手に受けずにお互いが先を急ぐ展開で、左上隅の白の肩付きにさえ黒は手を抜きました。局面が動いたのは右下隅の攻防で、白が下辺の黒二間ビラキにいっぱいに詰めたのに対し、黒は白の隅のコスミのカドにまで迫りました。白は一つ押してから下辺からケイマに煽りました。黒はその石に付けて中央への脱出を図りましたが、白は強く抑え込んで劫付きながら黒を封鎖しました。結局ここで白は中央で黒2子をシチョウに抱え(序盤で打った左上隅の肩付きが丁度シチョウアタリになっていました)、また劫の関係で黒二子を抜いて厚くなりました。その厚みを生かして右辺に打込み、右辺下方の黒を攻め、結局黒を渡らせた代わりに黒の中央にケイマに飛んだ石を切離し、中央が白っぽくなりました。その後戦いは左下隅に移り、黒が三々に潜って振り替わりを目差したのに、白は全体を攻めようとしました。しかし結局白は黒を活かし、その代わりここでも中央が厚く、かなり中地が付きそうな状況になりました。ここで先ほどの黒二子をシチョウに抱えていたのが、左辺の攻防の結果黒の逃げ出しが可能になっており、実際に黒は逃げ出しを決行しました。しかしここでも白は深追いせずに黒を活かして打ちました。白はその後右上隅でわざと白二子を捨て、その代わり先手で上辺で黒1子を取り、上辺が安定しました。それを利用して今度は左上隅の黒をハサミツケから攻め立てました。黒は中央に逃げましたが、先ほど活きとなっていた中央の石がカラミとなり、結局最後は黒の左上隅も中央も全部死んでしまうということになり、黒の投了となりました。一力遼三冠王の緩急を付けた攻めの上手さが光った白の名局でした。
NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人 対 酒井佑規4段(2023年12月17日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸名人、白番が酒井佑規4段の対戦でした。この碁では右下隅で白のカカリに黒が低く一間に挟み、白がかけたのに黒が出切っていったという所から全体の方向が最初から「戦い」という感じになりました。元々酒井4段が結城聡9段ばりの「武闘派」みたいです。また芝野名人もその辺りでは引けを取りません。酒井4段の真骨頂は、右辺右側でほぼ取られかけていた白1子を引っ張り出し、場合によっては1子ポン抜いている黒の一団を狙おうとしたのがそれらしかったです。ここの折衝で白は黒3子を取り込んで地を稼ぎましたが、その分中央の白3子が切離されたのと、かつ右辺下方から中央に延びる白の一団が非常に薄くなりました。黒はこれを本気で取りに行き、白からはどうやっても後手一眼しかない、ということになりました。その後白は下辺左方の黒を攻め立てこちらとの攻め合いを目指しましたが、残念ながら手数は黒の方が長いままでした。そこで白は中央にアヤを求めて黒を分断して行きましたが、黒は上辺の黒をあっさり捨てて中央を補強しました。その後黒が更に中央の白の種石2子を取ったため黒の石は全部活き、結局右辺下方からの白の大石は攻め合いにもならず全滅し、110目(?)レベルの大きな地が完成しました。普通はここで投了ですが、その後白はそれでも左上隅から上辺、左辺を全部まとめて地にしようと頑張りました。しかし黒が上辺に打ち込んだ石を活用してまずは取られていた上辺の黒が眼2つですが復活しました。その後黒が更に左上隅三々に打ち込んでいって、これが活きるかどうかが勝負になりました。結局ここは劫になり、白からは下辺の取られている石の復活を見せて劫材はそれなりにあるものの、黒からも左上隅で活きようとする手が全て劫材になるのと、たとえ劫に負けても劫立てで多少の白地を減らせれば勝ちという状況となり、白が投了しました。敗れたとはいえ、酒井4段の勝負を諦めない粘りは見事でした。