原子力潜水艦シービュー号の”Deadly Amphibian”

原子力潜水艦シービュー号の”Deadly Amphibian”を観ました。今回はWelch脚本ではありません。冒頭のクレジットでそれを確認するだけでほっとします。ただお話はまたも荒唐無稽な両棲人の登場で、シービュー号を音響砲で攻撃してダメージを与えます。どうでもいいけど、毎回のルーチンですが、シービュー号はちょっとでも衝撃を受けると盛大に艦内で火を吹きます。核ミサイルを16基も搭載している潜水艦がこんなに簡単に火を吹いていいのか。TVを観ている視聴者を楽しませようとしているのかも知れませんが、潜水艦ものとしてリアリティーを大きく損なっていることは否めません。両棲人は人間を動物と呼んで馬鹿にしますが、自分では原子力を発明出来ていなくて、シービュー号を乗っ取って原子力エンジンの出力で音響砲をパワーアップし、地球を征服しようとします。例によってネルソン提督が両棲人が使っている武器と同等のフォースフィールドみたいなのをあっという間に開発し、最後は核弾頭魚雷を発射して両棲人の住んでいる洞窟みたいなのを吹っ飛ばします。核弾頭魚雷なんて本当にあったのかと思って調べたら、Mk45というのが本当に1963年から実戦配備されていました。おそらく実際に潜水艦相手に発射されたことはないのだと思いますが。

ヒッチコックの「救命艇」

ヒッチコックの「救命艇」を観ました。1943年の作品で、私がヒッチコックのベストと思っている「疑惑の影」と同じ年に撮影されたものです。これで1934年の「暗殺者の家」以降のヒッチコック作品は2本の短い国策映画を除いてすべて観たことになります。お話はドイツ軍のUボートの魚雷によって沈没させられた客船の救命艇に生き残った10人くらいの人々のお話です。そこにこれまた沈没させられたUボートの乗組員が乗り込んで来ます。最初は足の怪我が壊疽になったガスの手術を買って出るなど、善人を装っていましたが、実はコンパスを隠し持っていて、船をバミューダの方ではなく、ドイツの補給船がいる方向に導こうとするなど、正体を現します。英語はしゃべれない振りをしていて、実は英語もフランス語も堪能という怪しさ満点の人物として描かれています。まあそのドイツと戦争をしている真っ最中に作られた映画なので、ドイツ人が悪者扱いされるのは仕方が無いかと思います。一部で有名なヒッチコック自身のカメオ出演ですが、さすがに人数が最初から決まっている救命艇に突然自分を出演させる訳にもいかず、何と生き残りの一人が読んでいた新聞の広告に、やせ薬服用の前と後、というシルエット姿で登場します。

原子力潜水艦シービュー号の”Blow Up”

原子力潜水艦シービュー号の”Blow Up”を観ました。「またも」Welch脚本。そして最低の脚本を更新。ネルソン提督がミサイルの燃料が漏れているのを修理している時に爆発が起き、その時クレーン艦長から渡された非常用呼吸装置を使った後、性格が変わって被害妄想になり、やたらと威張り散らして権威主義になり、シービュー号を危機に陥れ、あげくの果てはランデブー予定だったアメリカの艦隊に対し魚雷を発射するという話です。リチャード・ベースハートは自身の演技力を示すことが出来てご機嫌だったのかもしれませんが、ヒーローであるべきネルソン提督にこんなひどい役柄を演じさせてはいけません。

ウディ・アレンの「ラジオ・デイズ」

ウディ・アレンの「ラジオ・デイズ」を観ました。ゴールデンウィークに日本ラジオ博物館に行ってから、すっかりラジオ少年の血がよみがえり、その一環で観たものです。まだテレビが無くて、ラジオが日常の娯楽のほとんどすべてだった1938年から1944年ぐらいまでの、ウディ・アレンの少年時代を描いた作品です。冒頭でいきなり、ある家に押し入った強盗二人組の所に、ラジオの曲当てクイズの番組から電話がかかってきて、思わず出てしまい、3曲見事に当てて、その2人は50ドルくらいの物を盗んだだけなのに、次の朝それをはるかに上回る賞品がその家に送られてくる、というのでまず笑わせてくれます。ラジオがいいのは、テレビだと皆画面を見入ってしまって、お互いの会話とかほとんどありませんけど、ラジオだと皆自由に聞いて会話も成立する、という所です。ミア・ファローの演じる歌手志望の女性がチャンスをつかんでいくエピソードで、たまたまある店で殺人の現場を目撃して、目撃者として殺されそうになったのに、その殺し屋が実は同じ町の出身と分かってすっかり仲良くなり、その殺し屋のコネでチェーホフのラジオドラマの役をもらいます。その本番中に、突然ニュースのアナウンサーがスタジオに乱入してきて、「日本軍がパールハーバーを攻撃しました。」というニュースを読む、という演出がいいです。そこから戦争になりますが、灯火管制とかもありますが、日本とは豊かさがまったく比べものにならなかった、というのがこれを観るとよく分かります。その他、例の「火星人が襲撃してきた」というラジオドラマが本当だと受け取られてパニックになるという話と、主人公の叔母さんでオールドミスで常に結婚相手を探しているビーが、相手にほったらかされてしまう、というエピソードとからめていて、上手い演出です。全体に肩が凝らない楽しめる作品でした。

原子力潜水艦シービュー号の”A Time to Die”

原子力潜水艦シービュー号の”A Time to Die”を観ました。またもWelch脚本。自由自在に時間を操れるMr. Pemという男が登場します。その男のお陰で、シービュー号は100万年前に飛ばされ、そこでまたアーウィン・アレンのお得意のトカゲ恐竜が出てきます。もう何回目か、数える気もしません。ネルソン提督は男が、時を操るためにシービュー号の原子力エンジンのパワーを増幅させて使っていることに気がつき、エンジンをシャットダウンさせます。それで、わざとCircuitry Roomの看板をReactor Roomに変えさせ、そこに通常の1000倍の電圧をかけたスイッチを用意しておいて、その男に触らせて感電死させる、というオチです。Mr. Pemは誰なのか、何故時を操れるようになったのか、それで何をしようとしていたのか、一切説明はありません。またシービュー号もどうやって100万年前から現在に戻れたかの説明もまったくありません。Welchらしい論理性0のストーリーです。

原子力潜水艦シービュー号の”Terror”

原子力潜水艦シービュー号の”Terror”を観ました。久し振りにWelch以外の脚本。遠い銀河系からやってきたエイリアンが、蘭の花の形をしていて、そこから発せられた光線で人間に乗り移り、シービュー号の原子力エンジンの放射線を使って増殖し、地球を乗っ取ろうという話です。ネルソン提督は一度エイリアンに乗り移られ、その後一回解放されましたが、再度乗り移らることを予期しており、その際は自分を殺せ、とクレーン艦長に命じます。しかし再度エイリアンが乗り移ったネルソン提督はフライングサブに乗り込み、シービュー号をレーザーで攻撃します。クレーン艦長は魚雷攻撃を命じ、フライングサブは吹っ飛び同時にネルソン提督も死んだかと思われました。しかしネルソン提督は生きておりエスケープハッチからシービュー号に再度侵入し、原子力エンジンの放射線を使って仲間を増やします。クレーン艦長は理屈はよく分かりませんが、エイリアンに過剰なエネルギーを与えてオーバーヒートさせて殺す装置を作り、何とかエイリアンを倒す、という話です。シービュー号とフライングサブの対決がなかなかの見物でした。

アルフレッド・ヒッチコックの「海外特派員」

アルフレッド・ヒッチコックの「海外特派員」を観ました。ヒッチコックの映画は初期の作品を除いてほとんど30代前半くらいに観ているのですが、その中で2つ見逃していたのが、この「海外特派員」と「救命艇」でした。「海外特派員」はその頃土曜日の深夜にTVで放映があったんですが、丁度海外出張中で、VTRの予約録画がうまく行かず見逃しました。それでやっと今観たのですが、実に傑作でした!いつものヒッチコック流の「巻き込まれ型犯罪」が1938年の欧州での戦争前夜の雰囲気と合わさって傑作になったと思います。特に、誰がスパイか明らかになって話が終わりに向かっていた時に、主人公とそのスパイとその娘(主人公の恋人)が乗った民間機をドイツの軍艦が砲撃するというサスペンスがあり、民間機は海に落ちてしまいます。生き残った者は結局アメリカの軍艦に救助されますが、アメリカは中立を守ろうとして、船内からの連絡を禁じます。そこで主人公が使った手がありがちですが、なかなか面白いアイデアでした。
最後はその新聞記者がドイツ軍からまさに爆撃されているロンドンの現場から生中継でアメリカ国民に対し戦争へ参加することを呼びかける、というドラマチックなシーンで終わっています。この映画が最初に公開されたのは1940年のアメリカでであり、その時点ではまだアメリカは参戦していません。それを考えると最後のシーンはイギリス人ヒッチコックんの本音かもしれません。
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原子力潜水艦シービュー号の”Rescue”

原子力潜水艦シービュー号の”Rescue”を観ました。「またも」Welch脚本。あー、もういい加減にして欲しい。ある意味では待望の「潜水艦同士の戦い」なんですが、敵の潜水艦がこの間轟沈されたばかりの”Vulcan”号が何故か復活。登録されていない謎の潜水艦なのに、何故か名前を堂々とボディーに記載しています。通常の潜水艦なら肉眼では見れませんが、シービュー号には観察窓があって、肉眼で見ることが可能です。で、シービュー号の乗組員に敵のスパイがいて、色々妨害工作をやりますが、それがこの回からの新顔のビーチという男で、その裏切り者が何故かいきなりミサイルルームの責任者という重大な任務を任されています。シービュー号のセキュリティーは一体どうなっているのか。
それから大きな謎であるシービュー号の魚雷発射管の位置ですが、今回後ろから追いかけるバルカン号に対し、1号と3号の魚雷を発射していますから、魚雷発射管は明らかにシービュー号の後方にあります。しかしすぐその後に、敵潜水艦の基地を攻撃するのに2号、4号魚雷を発射しますが、それは写真にあるように前からです。しかしミサイルルームでは明らかに4本の魚雷発射管が上下左右に平行して並んでいて、どう考えてもその内2本が逆の方向に発射されるなんていうのはあり得ないのですが。この辺り、アーウィン・アレンのドラマでの特徴で、おそらく脚本家が共同で使う「シービュー号設定集」みたいなものが存在していないのだと思います。シービュー号のプラモデルなどを見ても、魚雷発射管らしきものはありません。

原子力潜水艦シービュー号の”Time Lock”

原子力潜水艦シービュー号の”Time Lock”を観ました。またもWelch脚本ですが、この話は割と楽しめました。ただ、シービュー号の話というより、タイム・トンネルの話と言った方が良く、タイム・トンネルの中にも良く似たプロットの話があります。(どっちが先か分かりませんが、放映時期はほぼ同じ頃です。)ある29世紀の男が、その世界では既に戦争は無くなっていますが、アレクサンダー大王やナポレオンなどの古今の有名な軍人をタイムマシンで拉致し、ある機械でその知識を吸い取った後は、彼の命令するがままに動く人形として扱うことをやっています。その中の一人にネルソン提督が選ばれてしまい、シービュー号の中に突然現れたアーウィン・アレンお得意の顔を銀色に塗ったアンドロイドがネルソン提督を拉致します。実は彼の真の目的は戦争の無くなった時代に戦争の知識を集めて、実は彼自身の戦争を起こして世界を征服することであることをネルソン提督が見破ります。ネルソン提督が未来に飛ばされた後、シャーキーも手違いで飛ばされ、そのシャーキーが銃で撃たれて傷つきながら、血でハンカチにメッセージを書いてシービュー号の中の転送装置に送り、それをクレーン艦長が読み、グレネードランチャーを持って未来に乗り込みます。未来人も彼のコレクションも目が弱く光に弱いことをシャーキーに教えられ、クレーン艦長は携帯ライトを使いながら未来人の基地に侵入し、ネルソン提督を救助し、最後に基地を吹っ飛ばします。

ピーター・ファレリーの「グリーンブック」

今日(13日)は有給休暇を取っています。「グリーンブック」を今さらですが観てきました。字幕が「戸田奈津子」というのを見た瞬間に間違い探しモードに入りました。そして冒頭からやってくれて、「この映画は実話です。」と訳していましたが、実際は「実話にインスパイアされた映画」と言っています。実際にアフリカン・アメリカンのピアニストの遺族から事実と違うと抗議が来ているそうで、この辺りの無神経な杜撰さこそ、まさに戸田奈津子字幕です。
私にとって印象的なシーンは車の中でトニーがシャーリーに家族のことについて聞き、シャーリーが別れた奥さんの名前が「ジューン」であると言います。するとトニーが「名犬ラッシーの女優と同じ名前だ!」と言います。トニーが言っているのは、ジューン・ロックハートで「宇宙家族ロビンソン」でモーリーンお母さんを演じている女優です。
全体的には、先日の「ドリーム」と同じで、この頃のアメリカの人種差別が如何にひどかったか改めて認識出来ました。タイトルの「グリーンブック」とは、その頃南部でアフリカン・アメリカンを泊めてくれるホテルを記載した小冊子のことです。
シャーリーが最後の演奏会で、そこで主賓として演奏するのに、そのレストランはアフリカン・アメリカンに食事を出さないというのに怒り、演奏会をキャンセルします。そしてトニーと2人でアフリカン・アメリカンが集まるバーに行き、そこで店の女性に請われてピアノを演奏しますが、それがいつも彼が演奏しているポピュラー音楽ではなく、ショパン(エチュードの「木枯らし」)だったのが印象的でした。アメリカではクラシック音楽の需要は欧州に比べるとはるかに低く、ましてやアフリカン・アメリカンでは確かにコンサートピアニストとして生きていくのはまず無理だったと思います。
後トニーが酒場で、ケネディ大統領の就任演説の名文句を無茶苦茶に引用するのに笑えました。
全体としてはとてもいい映画でした。しかし、アメリカでは評価がまっぷたつに割れているそうで、それも分かるような気がします。