天頂の囲碁6との九路盤 ついに互先対局

天頂の囲碁6との九路盤対局、今度はついに互先(コミ6目半)での対局。しかし、途中の手順が少し違いますが、結局左下隅は前二局とまったく同じ形になりました。白はこのまま死形です。(一見セキみたいに見えますが、白から内ダメを詰めると、5目中手になり白死。黒からは外ダメをすべて詰めてから、板六の形に6目にして取らせて、急所に置けば白死です。)後は回りを包囲している黒が二眼作って活きてしまえばそれで終わりで、この碁では右下隅で二眼作れましたのでそれで終わりです。黒の31目半勝ち。

 

群司次郎正の「侍ニッポン」

群司次郎正の「侍ニッポン」を読了。この作品は映画化を前提に執筆され、その映画化の時の主題歌で有名です。曰く、
♪人を斬るのが 侍ならば
恋の未練が なぜ斬れぬ
伸びた月代 さびしく撫でて
新納鶴千代 にが笑い
昨日勤王 明日は佐幕
その日その日の 出来心
どうせおいらは 裏切者よ
野暮な大小 落し差し

という歌詞が、昭和6年当時(満州事変の頃)の世相とマッチしてヒットしました。といっても、私の世代がこの歌のことを少しでも知っているのは、梶原一騎・井上コオの「侍ジャイアンツ」で主人公の番場蛮がよくこの歌の替え歌を歌っていたからです。曰く
♪タマを打つのが 野球屋ならば
あの娘のハートが なぜ打てぬ
思いニキビを プチュンとつぶし
番場の蛮さん 泣き笑い

しかし、梶原一騎は子供の頃元歌を聞いたのでしょうが、「侍ジャイアンツ」の読者だった当時の子供(私を含む)が元歌なんて知る由もないですが…
お話は、幕末の安政から万延にかけての動乱の時代、大老井伊直弼の落とし胤である新納(にいろ)鶴千代が、ふと悪旗本から救うことになったお公家様の姫君に恋しながら、武士という身分に疑問を持ち、勤王にも佐幕にもなりきれないながら、色々なしがらみで水戸藩の勤王の志士と行動を共にするが最後は…という内容です。鶴千代は剣の腕はすばらしいものがあるのですが、酒に溺れ女性にも未練を持ち、胸が空くような活躍はまるでしません。その辺りのニヒルさが戦争へとひた走る日本の雰囲気と合ったのかもしれません。

天頂の囲碁6 九路盤定先/打ち直し

天頂の囲碁6との九路盤定先での対局をもう一度同じ手順で打っていたら、左下隅の受けで白が変化しました。しかし、前のは劫になりましたが、今度の受けでは(24)と継いだためそのまま死の形になりました。(一見セキみたいに見えますが、白から内ダメを詰めると、5目中手になり白死。黒からは外ダメをすべて詰めてから、板六の形に6目にして取らせて、急所に置けば白死です。)後は包囲している黒が生きればいいだけで、生きた所で30目以上の勝ちになりました。しかし、その後Zenのバグだと思いますが、ヨセが乱れて間違えまくり、結局49目勝ちという記録的な勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 謝依旻女流棋聖 対 小林覚9段

本日のNHK杯戦の囲碁は、謝依旻女流棋聖が黒番、小林覚9段が白番の対局です。白は上辺に展開していましたが弱く、ここを黒がどういじめるかが本線と解説の趙治勲名誉名人は言っていましたが、謝女流棋聖は右辺の白への打ち込みを選択しました。その結果、黒は白の三子を取り込んで右下隅からの地が大きく、大きな戦果を上げました。しかし白も先手で黒1目を抱えたのが厚く、上辺の白も心配がなくなりまたし先手で左下隅に打てたので、全体ではここで白がリードしました。黒は左辺で非勢を意識して目一杯の手を打ちましたが、途中で軌道修正したりしてちょっとちぐはぐでした。また、下辺の折衝で戦いになり、部分的には振り替わりで互角に分かれましたが、白は取られていた3子を生還させることが出来、ここでも白がポイントを上げました。そのまま白がリードを保ってヨセに入りましたが、ここで事件が起きて黒が左上隅に置いていったのに白が受けを間違え、白の2子が取り込まれて、出入り10目近く黒が得をしました。普通の碁ならここで逆転ですが、この碁ではそれまでの白のリードが大きく、終わってみれば、白の1目半勝ちでした。謝女流棋聖も非常に強いですが、このNHK杯戦で羽根直樹9段に連敗しているなど、男性トップ棋士にはもう一歩届かない感じです。

天頂の囲碁6との九路盤定先 天元布石

天頂の囲碁6との九路盤定先での対局。初手天元の布石を試してみました。左下隅を劫にして、この劫に無理矢理勝って左下隅の白を全部取り、なおかつ囲んでいる石に二眼作って攻め取りにもさせないで、結局9目勝ちになりました。この調子で連勝できると互先になるのですが、まだまだ無理ですね。

白井喬二の「珊瑚重太郎」の戦前での評価

この写真は、「キング」の昭和11年1月号にあった、同じ大日本雄弁会講談社の「講談雑誌」の広告で、そこで新連載となる白井喬二の「陽出づる艸紙」の広告です。そこに「『富士に立つ影』『新撰組』『珊瑚重太郎』等の大傑作によって大衆文学の大御所と仰がれる作者が…」とあります。私は「珊瑚重太郎」を白井の小説のベスト4に挙げております。戦前でも「珊瑚重太郎」が傑作と評価されていたことがわかってうれしいです。

長谷川伸の「日本敵討ち異相」

長谷川伸の「日本敵討ち異相」を読了。中央公論で昭和36年から37年にかけて13回連載された、長谷川伸の遺作です。長谷川伸というと「瞼の母」や「一本刀土俵入」の作家で、股旅物というジャンルを作った作家です。この作品は、日本史上での敵討ちの文献を長谷川伸が370件ほども集めて、その内の13件を改めて長谷川伸がまとめ直したものです。敵討ちで、卑属が尊属の敵を討ってもいいけど、逆は駄目、というのは知っていましたが、姦通を行った不義の妻と相手の男を討つ「女敵討ち」というのはこの作品で初めてそういうものがあったのを知りました。他には敵を討つまで実に35年もかかって、その時相手は82歳だったとか、なかなかすさまじい実例が出てきます。敵を討つ方も討たれる方もなかなかに大変だったということもよくわかりました。長谷川伸は、白井喬二と一緒に二十一日会に参加しています。また、池波正太郎の先生です。

国枝史郎の「煉獄二道」

未知谷から出ている国枝史郎の伝奇全集補巻に入っている「煉獄二道」を読了。国枝史郎の場合、全貌が未だに明らかではなく、今頃になって新発見の長篇が出てきたりするのは、喜ぶべきなのか、悲しむべきなのかわかりません。この「煉獄二道」は1930年に映画になっているようなので、今まで何故見つからなかったのか不思議です。物語は、天草の切支丹の話で、島原の乱で終わります。国枝史郎としては珍しく話に破綻がなく、筋立てとしても無理がなく最後まで行きます。波乱万丈という感じではないのですが、何故か不思議な魅力を持っていて、途中大胆にも20年の話の省略があり、最後まで飽きないで読むことができます。有馬直純の娘のるしや姫とその娘のまりあ姫と、るしや姫を一生慕い続ける竹富義之介らが、幕府から禁じられたキリスト教信仰を守り通して最期は原城で果てるお話しです。

下村悦夫の「悲願千人斬」(下)

下村悦夫の「悲願千人斬」(下)を読了。土岐家の忘れ形見の太郎頼秀を秘かに隠し育てている白雲上人とその腹違いの弟土佐青九郎は、甥である稲葉伊代守に頼秀を託そうとしますが、一抹の不安を感じて頼秀ではなく、青九郎の息子で頼秀によく似た多門光治を身代わりに伊予守の元に送ります。光治はそこでしばらく匿われて侍女の深雪と深い仲になりますが、それを嫉妬した男の奸計により、光治は敢え無く命を落とします。本物の頼秀は無事だった訳ですが、その頼秀の存在もやがて敵方につきとめられ、敵方より秘かに派遣された美女の間者の手により頼秀も敢え無く毒殺されてしまいます。で、そこからがタイトル通りで、仏門に帰依した高僧であった筈の白雲上人と、青九郎が斎藤家の侍を次から次に斬り殺して、最終的に千人を殺すことを目標とする、という陰惨な話になります。白井喬二は「悲願千人斬」という題名を「古今絶無」と評したそうです。実はこの作品はジョンストン・マッカレーの「双生児の復讐」を下敷きにした作品だということです。下村悦夫という作家は、「大衆文芸」という言葉が生まれる前の「新講談」の時代にデビューし、結局一生その引け目が抜けず、また手を抜いた仕事が目立ってしまったようです。(朝日新聞に連載された下村の「愛憎乱麻」という作品は、読者からの抗議が殺到し、2年の筈の連載が1年で打ち切られたそうです。)
この作品は面白くないとは言いませんが、私の好みではないです。こういう作品を読むと、白井喬二作品の健全さ、明るさがよりいっそう引き立つように思います。

下村悦夫の「悲願千人斬」(上)

下村悦夫の「悲願千人斬」(上)を読了。獅子文六も主なものは大体読んだし、さすがに獅子文六で手に入るものを全部読もうとは思わないので、次に移行。次のステップとしては、平凡社の「現代大衆文学全集」に収められた大衆小説の作家。既に「現代大衆文学全集」そのものも古書店で5冊ほど購入済みです。この「現代大衆文学全集」は白井喬二が編集に携わったもので、第1巻であった白井喬二の「新撰組」が30万部を超える大ヒットとなり、この全集の成功をもたらします。この全集の成功は作品が採用された多くの作家に多額の印税をもたらし、例えば江戸川乱歩はそのお金で家を新築しています。
この「現代大衆文学全集」にも収録されている下村悦夫は和歌山県出身の歌人で、与謝野晶子、北原白秋の指導を得ますが芽が出ず、伝奇小説の作家に転じます。そんな下村悦夫の出世作がこの「悲願千人斬」で、雑誌「キング」の創刊号から連載され、吉川英治の「剣難女難」と人気を二分します。今回読んだ「悲願千人斬」は「現代大衆文学全集」収録のものではなく、講談社の大衆文学館です。物語は、戦国時代の美濃で、斎藤道三に滅ぼされた土岐家の忘れ形見の太郎頼秀を、名僧である白雲上人と、その上人の腹違いの弟である豪傑の土佐青九郎(白雲上人とそっくりという設定)が守って、主家である土岐家の再興を図ろうとするという話です。白雲上人に腹違いでそっくりな弟がいるということは秘密にされており、そっくりなことを利用して、この二人は色々なトリックを駆使します。そこが上巻の読みどころです。