NHK杯戦囲碁 井山裕太7冠 対 羽根直樹9段

本日のNHK杯戦の囲碁は準々決勝の最後で黒番が井山裕太7冠、白番が羽根直樹9段の対戦です。ここまでの2人の対戦成績は井山7冠から見て13勝10敗ということで、対戦数も多いですが、羽根9段が決して井山7冠を苦手にしている訳ではないことが分かります。布石で左上隅の白に対し黒は低くかかりました。白のハサミに対して黒はケイマにかけ、白は出切らずに這って受け、白は地をまず確保かと思いましたが、黒が隅に付けて利かしにいったのに白は右側の押しで応え、勢いで黒は出切って白は黒1目をポン抜き、黒は白の2子を取って隅の地を確保しました。この辺り、黒は羽根9段の得意な先行して地を稼いで後はしのぎで勝つというパターンを封じている感じでした。右下隅の攻防では、黒は強く戦わず、敢えて白に封鎖させて、ここでもやはり地を確保しました。その後左下隅も黒はかかった後三々に入り、ほとんど4隅を黒が確保する流れとなりました。白は右下隅で包囲しているとはいえ、ケイマとケイマなので薄く、黒から常に分断を狙われていました。局面が動いたのは、白が下辺の模様を広げるより、右辺の展開を優先し、必ずしも単純な模様の碁ではなく、辺の地で勝負しようとしたのに、黒が右辺に打ち込んだ時です。白は打ち込んだ黒をケイマに煽って攻めようとしましたが、前述のようにケイマで飛んだ所が薄く、黒はそれを利かしに行きました。白はただつながるのは悔しいので逆襲に行きました。ここの戦いは結局劫になりましたが、白は2子をアタリにされたのを受けず、右上隅の黒地を制しました。その対価として余分な石が1個付いているとはいえ、黒はいわゆる亀の甲で白2子をポン抜きました。これで黒が優勢かと思いましたが、白は亀の甲の黒全体を狙いました。黒は白の攻めに反発してまた劫になりました。黒は白に取られた右上隅に切り込んでこれを劫材にし、白は一度受けましたが、2回目の劫立てで受けずに劫を解消しました。この結果、攻め取りですが右上隅が再び黒地になりました。後は右辺に取り残された黒の一団をどうしのぐかですが、ここも結局多段の劫になりました。白は劫立てで右下隅の黒4子ぐらいを取りましたが、この戦果はイマイチでした。しかも黒から上辺の白5子を取る手が残りました。これで黒が完全に地合で大きなリードとなり、白としては多段劫を蒸し返して右辺から中央に延びる黒の一団を取るしかありませんでした。黒は下辺に飛んで、黒の一団の眼形を確保しつつ白地を削減するという手が打て、白がこの一団を取ることは不可能になり、ここで白の投了になりました。井山7冠が羽根9段の得意な先行して地を取るパターンを封じ、なおかつ自分の得意な乱戦に引き込んだ見事な勝利でした。