白井喬二の「信長と鉄火裁判」

白井喬二の「信長と鉄火裁判」を読了。大日本雄弁会講談社の「キング」の昭和9年8月号掲載。小説やエッセイと言うより、信長にまつわる逸話紹介という感じです。しかしながら、白井の日本逸話大事典にはこの話は出ていませんでした。お話は、信長の頃、「火起證」という裁判のやり方があって、それは古代の「盟神探湯」にも似ていて、裁判の両者に真っ赤に焼いた鉄棒や鉄板を握らせて、無事な方を勝ちとする、という今から見ると何とも不思議な判定方法です。この話では庄屋の甚兵衛と左介という者が争って、左介が池田信輝の被官だったので、裁く者が依怙贔屓で左介を勝ちとしようとしていたのに、たまたま信長が通りかかり、甚兵衛の代わりに焼けた鉄棒を握って何事もなく、甚兵衛を勝ちに導くという話です。