白井喬二の「梁川無敵伝 他七篇」(非凡閣、昭和16年2月16日発行)を読了。題名の「梁川無敵伝」は自選集の「梁川庄八」と同じ。白井の場合、同じ作品でタイトルが微妙に違うのが多くあります。その他、「鬼傘」、「鉄扇の歌」、「大膳猟日記」、「柳腰千石」、「後藤又兵衛」、「心学牡丹調」、「殖民島剣法」を収録。この中で初読は「鉄扇の歌」、「柳腰千石」と「後藤又兵衛」の3作。「鉄扇の歌」は白井らしい奇妙な味全開のお話で、藤堂高虎の家臣が、戦いの時に主君の鉄扇と自分の鉄扇を取り違えて戦場に持ち込み、それだけではなくて主君の鉄扇も無くしてしまい、髑髏に蟋蟀(キリギリス)の彫り込みの入った奇妙な鉄扇を手にいれ、結局藤堂高虎の怒りに触れて追放され…といたった話。「柳腰千石」はタイトルも面白いですが、兄が仕官の時の験し試合で大怪我を負わされた傲岸不遜な相手に対し、その妹が武芸の腕を磨いて見事仇を取るという話で、白井はこの女性こそ女性剣士で有名な○○と書いていますが、調べてもそういう女性の剣豪は見つからず、白井一流のほら話だと思います。「後藤又兵衛」は黒田長政と兄弟同様に育てられた後藤又兵衛が長政を立てつつ活躍する話です。
いずれの作品も読んでいてそれなりに楽しめる作品ではありますが、「奇妙な味」に留まっていないで、もう一ひねり欲しいという感じがします。
白井喬二の「梁川無敵伝 他七篇」
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