白井喬二(厨井道太郎)の「銀の火柱」

白井喬二の「銀の火柱」を連載1号分だけ(博文館 淑女画報 大正10年{1921年}2月号)を読了。というか名義が「白井喬二」ではなく、「厨井道太郎」名義です!最初本当に本人が書いたのか疑いましたが、白井喬二の自伝の「さらば富士に立つ影」の巻末の年譜にちゃんと出ているので間違いないでしょう。また白井と「淑女画報」は、白井が学生時代に近松門左衛門の作品の現代語訳である「雨乞い小町」「恋のはやりうた」をこの雑誌に載せていますので、以前から付き合いがあります。また内容は時代小説ではなく、(その当時の)現代ものであり、しかも丁度この回はある男子学生が女性に恋の告白をする(「あなたを愛しています」ではなく「あなたを恋しています」が使われています)、という白井の作品としては非常に珍しいものです。白井は他にも「東遊記」とか「旧造軍艦」の時も、前者で飛鳥亭主人、後者で白井狂風という別名を使っていますので、この白井の最初期(連載は1920年4月-1921年3月、「怪建築十二段返しは博文館の「講談雑誌」の1920年1月号{おそらく発売は1919年12月}に掲載)に別名で作風が異なるものを書いていても特に不思議はないと思います。林不忘=牧逸馬=谷譲次のような例もありますし。