巣内尚子の「奴隷労働 ベトナム技能実習生の実態」

巣内尚子の「奴隷労働 ベトナム技能実習生の実態」を読了。著者は社会学修士でフランス→インドネシア→フィリピン→ベトナム→日本と移り住んだ経験を持つフリージャーナリストです。元はYahoo! ニュースに2016年から寄稿したものがベースになっています。ともかく実際のベトナム人技能実習生の話が多数紹介されていてとても参考になります。技能実習生の搾取で、縫製業者が多いのは、要するに中国の安い縫製業者に価格的に対抗出来ない、ほとんどつぶれかけている日本の縫製業者(多いのは岐阜県、徳島県、佐賀県)が技能実習生の以前から最低賃金違反、残業代未払いなどを続けていて日本人従業員が雇えないような状況になっていて、そこで技能実習生を使っているということです。一方の技能実習生側では特に手に職がなく建設業のような肉体の力を要求する仕事も出来ない女性の場合、縫製業者ぐらいしか働く所がないという事情があります。しかし男性の側でも、建設会社に雇われたとしても、この本の中に福島県で、それと教えてもらわないで実は除染作業をやらされていたというひどい例が出てきます。他にも、最低賃金違反、残業代未払い、給料未払い、休日が月1回も無い場合がある、セクハラ、パワハラ、相場と内容から見て不当に高い家賃の天引き、パスポート取り上げ、外出禁止、誰が見ても奴隷制度そのもの、人身売買です。しかもそうした待遇に耐えられなくて、逃げ出した場合からは入国管理局から不法就労者として追われ、見つかれば強制帰国となります。そうなると祖国を離れる時に負った100万円(日本人の感覚なら1000万円)を超える借金を返すことが出来なくなり、担保に入れた農地が取り上げられてしまいます。
またひどいのが監理団体で、技能実習生から相談があっても何もしないどころか、ひどいケースでは技能実習生の雇用主が監理団体を兼ねていたりする場合もあります。またほとんどの監理団体が農協や漁協、同業者組合の類いで、技能実習制度のために出来た団体では元々ありません。
救いは、少しずつではありますが、日本国内で技能実習生を支援しようとする人が増えていること。しかし、本当の意味での問題の解決は技能実習制度そのものを無くすことです。