エデュアルト・パニアグアのCD

エデュアルト・パニアグアというスペインの古楽演奏者がいます。
私はこの人のCDを31枚ほど持っています。元々は、グレゴリオ・パニアグアとアトリウム・ムジケーという1964年に結成された古楽演奏団体があって、中世などの今日では失われた楽器を自分達の工房で再現し、それを使った演奏を行っていました。私が持っているアトリウム・ムジケーの音源で一番古いのは、スペインのHispavoxというレコード会社が出した「スペイン古楽集成」のLPの中の「聖母マリアのカンティガ集」がアトリウム・ムジケーの演奏によるものです。
グレゴリオ・パニアグアとアトリウム・ムジケーは、1980年頃に発売された「古代ギリシャの音楽」のLPをオーディオ評論家の長岡鉄男がアナログの超録音優秀盤として激賞したことで、一躍有名になり、その後「ラ・フォリア」「アラブ・アンダルシアの音楽」「ラ・スパーニャ」等のやはり録音優秀盤が次々に発売されました。ちなみに「古代ギリシャの音楽」は厳密な考証に基づくものではなく、限定された史料から楽器を再現し、また想像力を膨らませて曲を作って演奏しているもので、本来の古代ギリシャの音楽そのものとは言えません。そういう意味で真面目な音楽評論家・音楽学者はパニアグアを毛嫌いする人もいます。
今は、おそらくグレゴリオは引退し、その年の離れた弟(といっても1952年生れなので今は69歳ぐらい)であるエデュアルド・パニアグアが今でも精力的に演奏活動をやってPneumaというレーベルからCDを出し続けています。特筆すべきは、「聖母マリアのカンティガ集」の録音です。全部で406曲もあるこの14世紀の音楽のCDをエデュアルドはこれまで私が知る限り15枚くらい出しています。406曲の中できちんと楽譜が付いているのは一部で、それも正確に採譜されているか怪しいものも多く、おそらくやはり想像力と最新の研究を合わせてCDを録音し続けているんだと思います。
カンティガだけでなく、スペインの中世の特徴である、アラブ系・イスラム系の音楽も積極的に録音しています。スペインの中世というのは、キリスト教、イスラム卿、ユダヤ教(スペインを支配したイスラムの王朝はユダヤ教に関しては寛容で、ユダヤ人達は自分達の信仰を守りながら暮していくことが出来ました)の混じり合った非常に興味深い音楽文化を持っており、その一部をエデュアルドの演奏で聞くことが出来ます。
なお、今出ているCDの録音についても、かつてのLP時代のものに比べてまったく遜色ないどころか、場合によってはデジタル録音の進歩でかつてのレベルを上回り、オーディオチェックには最適です。長岡鉄男が亡くなってからこういう録音優秀盤を継続的に紹介し続ける人がいなくなってしまいましたが。