白井喬二の「麒麟老人再生記――久米城クーデター余聞」

白井喬二の「麒麟老人再生記 ――久米城クーデター余聞――」を読了。白井喬二が死の前年の1979年に書いた絶筆です。ぎょうせい、から出ていた「ふるさと文学館」の鳥取編に収録されたものです。読む前は89歳という年齢から軽いエッセイだとばかり思っていましたが、どうしてどうして立派な小説でしかも非常に面白い名作でした。米子藩の付属の小藩の隠し家老で荒尾勝宏という67歳の武士が、本家のお家騒動のとばっちりで浪人となり、自身が20年前の島原の乱の時捕虜にしたものを解放し、送って旅をします。その途中でその者を引き取りに来た姉の役者をしていた十朱太夫と知り合い、その芸を見て一目惚れし、…という話です。89歳の人間が67歳の人間の「老いらくの恋」の話を書くというのもすごくて、白井喬二先生、ちっとも枯れていないのが分かって嬉しくなりました。この老人は自分の藩の隠し砦を自ら設計して建築し、それを30年以上守ってきた人ですが、実ははっきりとは書いていませんが、剣の達人で色んな因縁で命を狙ってくる者を簡単にではありませんが、傷つきながらも次々に倒して行きます。その結果、本藩より武芸指南のスカウトの声がかかり御前試合が行われますが、十朱太夫との恋に命をかけていた老人は主君の前で…という話です。何というか主人公の老人の飄々としながらも筋を通し、若さを取り戻していく様が何とも言えずいいです。やはり白井喬二はいいな、と改めて見直しました。

NHK杯戦囲碁 一力遼9段 対 河野臨9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が一力遼9段、白番が河野臨9段の対戦です。布石で黒は懐かしい低い中国流でした。ただ昔とはかなりその後の打ち方が変わっています。この碁の焦点は下辺から左下隅にかけての攻防で、黒は右下隅と左辺の厚みをバックに下辺の白に鋭く仕掛けて行きました。黒が左下隅で覗いてここを手にしに行きました。白が最強に応じると劫になる所でした。しかしその最中に白が下辺の黒に当てを打ったのが余計で、黒が継がずに左下隅から這いを打ったのが機敏でした。これでも劫になりますが二段劫で、白からの解消に2手かかります。白は下辺の黒を封鎖しようとする手を打つ、劫材作りに右上隅に手を付けましたが、黒に白2子を打ち抜かれ、3手かけてた左下隅が黒地に変わり、また右上隅の白も黒から打てば劫残りで、黒が大きくリードしました。その後白は中央を大きくまとめるなどして挽回しましたが、元の損が大きすぎ結局黒の3目半勝ちに終わりました。一力9段はNHK杯戦の出場が8回でその内6回で決勝に進出、そして2回優勝です。3回目の優勝が見えて来ました。

スパークキラーの自作

自作真空管アンプ用に、岡谷電機のスパークキラーS1201を買おうとしたら、何故かどこのオンラインショップでも在庫無しで、納期が5月~8月とかです。仕方が無いので自分で作ります。スパークキラーといっても、単に抵抗とコンデンサーを直列につないだものなのですが、いざ自作しようとすると抵抗のW数とか、コンデンサーの耐圧が気になります。岡谷のデータシートを見た限りでは、抵抗は120Ω、コンデンサーは0.1μFでした。それで定格ですが、まずこのRC直列回路のインピーダンスを求める必要があります。式は左の通りですが、計算サイトがありますのでそれを利用すると、31.8KΩになりました。AC100VでI=V/Rから電流を求めると3.1mAになりました。この場合W数は100X0.0031=0.31Wになりました。であれば抵抗の定格は1/2W(0.5W)が最低限になります。またコンデンサーは岡谷のデータシートではAC150Vになっています。

結論としては、
(1)抵抗 120Ωで1/2W以上 カーボン抵抗が最低限。(出来ればもっと余裕を持たせた方がいいです。1/2Wより高い定格のを使う場合は金属皮膜抵抗とかになります。)
(2)コンデンサー 0.1μFで耐圧AC150V以上(出来ればAC200V) フィルムコンデンサーか積層セラミックコンデンサー
となります。
ただ、残念ながら抵抗もコンデンサーも1本だけ売ってくれる奇特なショップはないので、結局10本とか25本の最小購買数での購買になり割高になります。岡谷のS1201は通常100円くらいで一個から買えますので、こっちの方が安いです。

なお、取付位置ですが、電源トランスの入力側の0と100Vの端子につなぎます。スイッチに並列にするつなぎかたもありますが、上記の通りわずかですがスイッチをバイパスして電流が流れますのでいわゆる待機電力を消費しますし、またリレー等を使っている場合は誤動作する可能性があり、望ましくありません。

実際に私が買った抵抗とフィルムコンデンサーです。十分過ぎる余裕を持ったのにしています。

 

 

 

 

実際にアンプに実装したのはこんな感じです。このアンプでは大容量の電解コンデンサーが使われていてかなりの突入電流が予想されるので、0.1μFのフィルムコンデンサーを3つ並列にして0.3μFにして使っています。

真空管アンプにおける間違った両切り(スイッチ)

ちょっとKT150を使ったシングルアンプを探していたら、左のような回路図がありました。この会社のアンプでは電源スイッチに2極のスイッチを使って、いわゆる「両切り」にしたつもりなのかもしれませんが、残念ながらこれは「間違った両切り」です。一見すると2極のスイッチを使い、並列の2つの回路でスイッチを入り切りしているので、スイッチの負荷としては1接点当たり1/2になって信頼性が上がる、と多分思われているのだと思います。しかしこの考え方は間違いです。何故かというと2極のスイッチの場合、接点の開閉タイミングが両方で完全に一致するということはなく、どちらかの極の接点が先に開閉しますので、アークはそこで発生し、常に片側の接点だけが損耗して行くということになり信頼性が向上することはありません。(片方の接点が損耗した結果、ON-OFFタイミングがずれ、今度はもう一方の接点が先に開閉することになるという可能性もあるので、まったく意味が無い訳ではありません。)

正しい「両切り」とは、左図のように回路のライブ側(信号側)とニュートラル側(グラウンド側)の両方を一度に開閉することを言います。(この場合、2つの極の開閉タイミングが正確に一致する必要はありません。)これをする理由は床が濡れていた場合など、機器のグラウンドから漏れた電流による感電を防止することです。この場合濡れた床から人体を通じて機器に戻るという回路が出来る可能性があるので、グラウンド側の回路を明示的に切断することで感電防止になります。なので家の中の電灯用のスイッチでも浴室など水回りで使う場合は必ず両切りになっています。

WE300BよりKT150、170


KT170をずっと聴いていますが、やはりいいです。私の環境と機器、私の良く聴くソースでという限定ですが、どちらがより好ましい音を出すかと言われたら、ウェスタン・エレクトリックの300BよりTUNG-SOLのKT150、KT170です。まず低音に関しては圧倒的にKT150、KT170の方がいいです。十分に低域まで伸びて、しかもダンピングの利いた引き締まった低音を聴かせてくれます。中高音についてはどちらにもいい所がありますが、音の粒立ちの明確さという意味で、KT150、170の方が私好みです。分解能の点でもこのソースにこんな音が入っていたのかという感じです。音場・音像も良く、もっともこれはデュアルモノという構成による部分がありますが、いわゆる「前に出て来る音」です。もちろんアンプによる差というのが大きいですが、私の所ではどちらもエレキットのものをAmtransパーツに一部変え、ルンダールのトランスにしている、という点で同じです。それからコストパフォーマンスでは圧倒的にKT150、170が上回ります。2021年度に出たウェスタン・エレクトリックの復刻300Bはペアで23万円なのに対し、KT170はペアで3万ちょっとです。問題点は、ヒーター電流が大きいので、単純にはKT88用アンプでは使えないということですが、私みたいにデュアルモノでやるとか、あるいはヒーター専用のトランスを足すとか、色々と対策はありますし、何よりこれから色々なアンプが出て来るでしょう。