真空管アンプにおける間違った両切り(スイッチ)

ちょっとKT150を使ったシングルアンプを探していたら、左のような回路図がありました。この会社のアンプでは電源スイッチに2極のスイッチを使って、いわゆる「両切り」にしたつもりなのかもしれませんが、残念ながらこれは「間違った両切り」です。一見すると2極のスイッチを使い、並列の2つの回路でスイッチを入り切りしているので、スイッチの負荷としては1接点当たり1/2になって信頼性が上がる、と多分思われているのだと思います。しかしこの考え方は間違いです。何故かというと2極のスイッチの場合、接点の開閉タイミングが両方で完全に一致するということはなく、どちらかの極の接点が先に開閉しますので、アークはそこで発生し、常に片側の接点だけが損耗して行くということになり信頼性が向上することはありません。(片方の接点が損耗した結果、ON-OFFタイミングがずれ、今度はもう一方の接点が先に開閉することになるという可能性もあるので、まったく意味が無い訳ではありません。)

正しい「両切り」とは、左図のように回路のライブ側(信号側)とニュートラル側(グラウンド側)の両方を一度に開閉することを言います。(この場合、2つの極の開閉タイミングが正確に一致する必要はありません。)これをする理由は床が濡れていた場合など、機器のグラウンドから漏れた電流による感電を防止することです。この場合濡れた床から人体を通じて機器に戻るという回路が出来る可能性があるので、グラウンド側の回路を明示的に切断することで感電防止になります。なので家の中の電灯用のスイッチでも浴室など水回りで使う場合は必ず両切りになっています。