ガンサー・シュラー指揮の運命・ブラ1

ガンサー・シュラーという音楽家をご存知ですか?アメリカでは2度グラミー賞を取った人で有名と思いますが、日本ではあまり知られていません。元々クラシック畑の人で、シンシナティ交響楽団の首席ホルン奏者を皮切りに、その後作曲家、指揮者となり、またジャズの世界でもあのマイルス・デイヴィスと一緒のバンドを作って活躍しています。また小澤征爾と一緒にタングルウッド音楽祭を始めた人であります。このCDはそんなシュラーが、ニューヨークフィルなどの腕利きの奏者を集めた少人数のオケを作り、自身が書いた「指揮法教程」という教科書の実践例として、自分のレコード会社であるGM Recorgingsから出したもので、内容はベートーヴェンの「運命」とブラームスの第1番の交響曲です。何でこのCDを買ったかというと、15年くらい前に、ブラームスのこの交響曲のカタログ征服を目指して、入手出来る全てのCDを集めようとしていたことがあり、その中で入手したものです。そういう経緯なのでまったく期待しないで聞いたのですが、演奏は素晴しいものでした。演奏スタイルはいわゆる新古典派的というか、「何も足さない、何も引かない」というきわめて楽譜に忠実な演奏です。そうした演奏は得てして無機的でダイナミックスに乏しい非人間的な演奏になりがちなのですが、シュラーの指揮から出てくる音楽は、まったくそういうネガティブなものがありません。またオケの一人一人の技量も素晴しく少人数ということもあって、そのアンサンブルの見事さはかつてのトスカニーニや1960年代のカラヤンを思わせるものです。ブラームスの1番は結局現時点までで220種類ぐらい集めましたが、その中で堂々のベスト10に入る演奏だと思います。4300円くらいとちょっと高いですが、今でもAmazonで入手可能です。