白井喬二の「雪麿一本刀」(下)

jpeg000-30白井喬二の「雪麿一本刀」(下)読了。上巻では、仇と付け狙う青江霧太夫の手下の剣士10人ばかりをばったばったとなぎ倒して来た雪麿ですが、下巻に入るとようやく霧太夫の正体を突き止め、直接渡り合います。しかし、その戦いは邪魔が入ったり、霧太夫が逃げ出したりしてなかなか本懐を達することができません。そうこうしている内に、霧太夫は偽の切腹騒ぎを起こして死んだふりをし、その間に講武所の後釜を募集するという名目で、名だたる武門の秘伝書を集めて、それを自分のものにしてしまうという陰謀を企みます。霧太夫はある屋敷に隠れているのですが、それが「怪建築十二段返し」の再来のようなからくり屋敷で、その仕掛けにはまって雪麿は苦戦します。しかしながら奉行所の助けも借りながら、再度その屋敷に忍び込んで、見事秘伝書を取り返します。その時手伝った奉行所の者が忍術の心得があって、とこれは「忍術己来也」の再現。そして最後は奉行所公認での御前試合で、霧太夫と真剣勝負をして見事勝つ、という王道的展開です。全体的に深みはまったくないのですが、肩の凝らない理想的大衆小説です。雪麿を巡る女性も、最後に雪麿の妻となる香鳥、雪麿が世話になる大名家の鏡姫、年増のお壺、料亭の女お琴など、たくさん出てきて鞘当てを演じて飽きさせません。
なお、1961年にNETでTVドラマになっていて、主題歌を村田英雄が歌っています。

三遊亭圓生の「ちきり伊勢屋」(上)

jpeg000-29本日の落語、三遊亭圓生の「ちきり伊勢屋(上)」。
上下でCD2枚、(上)だけで70分以上もかかる長いお噺です。
よく当たるので評判の易の先生に、間もなく死んでしまうことを予言された伊勢屋の主人がどういう行動を取ったか、というお噺です。上下両方をやるのは圓生ぐらいではないかと思います。

白井喬二の「雪麿一本刀」(上)

jpeg000-28白井喬二の「雪麿一本刀」(上)を読了。昭和31年から32年にかけて京都新聞に1年半連載されたもの。タイトルからもわかるように、雪麿という主人公が刀を執って剣の腕をひたすら奮っていく話です。「国を愛すされど女も」の大鳥逸平、「神曲 左甚五郎と影の剣士」の森十太郎と同じく、雪麿も何故強いのかがよくわからない(剣はちょっと習っただけで後は自己流)のに、次から次に現れる名剣士達をばったばったと倒していくという展開です。白井喬二も戦前の初期の作品では「新撰組」の独楽勝負、「兵学大講義」での兵学勝負、そして「富士に立つ影」での築城術での勝負のように、チャンバラに頼らないストーリー展開を主として来たのですが、戦後の作品は一転してチャンバラ主体の話が多くなったようです。後もう一つの特徴は、エロチックなお話しが多く含まれるようになったことで、雪麿の養父の為永春歌が、16歳の美人の弟子の裸絵を描いて、あげくの果てはその女性を犯してしまおうとしたりします。さらにはお壺という中年女性が出てきて雪麿を誘惑したりします。白井喬二も戦後になって、自己流の制約を取っ払って、伸び伸びと書いているように思います。

丸根賛太郞監督の「狐の呉れた赤ん坊」

jpeg000-25丸根賛太郞監督の1945年(戦後)の作品、「狐の呉れた赤ん坊」を観ました。橘公子の実際の銀幕での姿を見たくて買ったDVDですが、実に泣けるいい映画でした。戦後の撮影でGHQにチャンバラを禁じられているため、斬り合いのシーンは一ヵ所も出てきません。荒くれ者が子供を可愛がるというのは、同じ阪妻の「無法松の一生」と共通しています。最後のシーンで、善太がある大名のご落胤であることがわかって、本当の父親である大名に会いに行くために、大井川を渡ろうとして、蓮台に載せた立派な駕籠が用意されているのに、善太が「ちゃんの肩車がいい」と言うのが泣かせます。(善太を拾って育てた張り子の寅は大井川の川渡しの人足です。)
目的の橘公子もまあ可愛かったです。

NHK杯戦囲碁 溝上知親9段 対 村川大介8段

jpeg000-36本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が溝上知親9段、白番が村川大介8段の対戦。黒は上辺に模様を作り、白が消しに行き、黒はそれを受けずに右辺をさらに拡げました。このタイミングで白は下辺の黒の眼を取って黒を攻めたてました。黒は中央に進出しましたが、ここで白が左辺の黒石に付けたのが、いわゆるもたれ攻めです。この攻めで白は地を稼ぐことが出来ました。ここまでは白がうまく打っていましたが、その後上辺の黒を攻めたのがちょっとまずく、黒はこの上辺を捨てて中央を大きく囲いました。その後更に黒は上辺右側の石も捨て、その代わり中央に80目近い巨大な模様が出来ました。しかし白の確定地も大きく、勝負は右辺と下辺の白の生死になりました。黒はどちらかを取れれば勝ちでした。その折衝では、両方が劫になる可能性がありましたが、溝上9段は劫材が足らないと見て、結局下辺の白の尻尾を取っただけに終わり、白は両方をしのぎました。これで白がわずかに優勢で、結局白の3目半勝ちでした。振り替わりに次ぐ振り替わりで、プロらしい見ごたえのある碁でした。

白井喬二の「寶永山の話」

jpeg000-27白井喬二の初期の短篇集である「寶永山の話」を読了。入っている話は、寶永山の話、月影銀五郎、本朝名笛傳、築城變、老子鐘、九段燈と湯島燈、拝領陣、遠雷門工事、油屋圓次の死、剣脈賢愚傳、青桐證人、鳳凰を探す、獅人面のぞき、芍薬畸人、ばっさい、闘鶏は悪いか、猿の方が貴い、神體師弟彫、國入り三吉、目明き藤五郎、邪魂草。読後感は一言で言えば、「奇妙な味」としかいいようがない内容です。白井喬二はおそらく実際には存在していないと思われる怪しげな出典文献を次から次に繰りだして、奇妙なお話を語ります。出てくる人物は白井喬二の趣味と見えて、何かの技術を持った職人みたいな人が多いですね。「富士に立つ影」に先駆けて、築城師も既に登場します。後は門作りの名人だったり、彫刻師だったり、水門作りの名人だったり。ただ、全体的に中篇・長篇と比べると、白井喬二の短篇はあまりうまくないように思います。お話がただ奇妙だ、に終わってしまっていてもう一ひねりがないように思います。

林家正蔵の「文七元結、五人廻し、蔵前駕籠」

jpeg000-22本日の落語は、八代目林家正蔵の「文七元結、五人廻し、蔵前駕籠」。それぞれ、昭和46年、39年、56年の録音。
「文七元結」は、噺の前半を省略し、長兵衛と文七の橋の上のやりとりから始める縮小版です。これまで志ん生、志ん朝、圓生のを聴きましたが、正蔵のもさすがにうまく、皆それぞれの味があります。
「五人廻し」は特にコメントなしです。
「蔵前駕籠」は、晩年の録音で、ちょっと呂律が回ってなくてあまり出来がいいとはいえません。

谷川流の「涼宮ハルヒの驚愕(後)」

jpeg000-24谷川流の「涼宮ハルヒの驚愕(後)」読了。
ともかく、表紙の女の子が可愛いので、それで十分です。
「涼宮ハルヒ」シリーズは、いとうのいぢの絵でもってます。
この「驚愕」は「分裂」の続きということみたいですが、「分裂」読んだのは8年も前なんでまったく覚えていないです…1年前に買った本でも行方不明になる部屋ですので、8年前のものは腐海の奥底に沈んでいます…

小林信彦作品についてのエントリー、リンク集

このブログにおける小林信彦作品へのエントリーのリンク集です。

袋小路の休日
虚栄の市(1)
虚栄の市(2)
虚栄の市(3)
冬の神話
監禁
日本橋バビロン
汚れた土地-我がぴかれすく
大統領の晩餐
丘の一族
夢の砦
衰亡記
極東セレナーデ
ドジリーヌ姫の優雅な冒険
唐獅子株式会社、唐獅子源氏物語
コラムの冒険 -エンタテインメント時評 1992~95
消えた動機
小説世界のロビンソン
パパは神様じゃない
素晴らしい日本野球
地獄の読書録
神野推理氏の華麗な冒険
ぼくたちの好きな戦争
地獄の映画館
超人探偵
変人十二面相
地獄の観光船
オヨヨ大統領の悪夢
一少年の観た<聖戦>
オヨヨ島の冒険
時代観察者の冒険
ビートルズの優しい夜
怪人オヨヨ大統領
オヨヨ城の秘密
名人 志ん生、そして志ん朝
セプテンバー・ソングのように 1946-1989
大統領の密使
合言葉はオヨヨ
秘密指令オヨヨ
怪物がめざめる夜
背中合わせのハート・ブレイク
紳士同盟、紳士同盟ふたたび
イエスタデイ・ワンス・モア
イエスタデイ・ワンス・モアPart2 ミート・ザ・ビートルズ
世界でいちばん熱い島
サモアン・サマーの悪夢
私説東京放浪記
ドリーム・ハウス
つむじ曲がりの世界地図
小説探検
ハートブレイク・キッズ
イーストサイド・ワルツ
ムーン・リヴァーの向こう側
新編 われわれはなぜ映画館にいるのか
裏表忠臣蔵
結婚恐怖
本は寝ころんで
東京少年
<超>読書法
私説東京繁昌記
流される
兩國橋(家の旗)
決壊
和菓子屋の息子 -ある自伝的試み-
四重奏 カルテット
横溝正史読本
決定版 日本の喜劇人

谷川流の「涼宮ハルヒの驚愕(前)」

jpeg000-23谷川流の「涼宮ハルヒの驚愕(前)」読了。ここのところ、ずっと白井恭二ばかり読んでたので、ちょっと気分変え。「涼宮ハルヒ」シリーズは、最初アニメ見てそれから原作を読みだして、2008年前半に「涼宮ハルヒの分裂」まで読んでいました。その後はフォローしていませんでしたが、久しぶりに検索してみたら続刊が出てたので(といっても5年くらい前)なので、久しぶりに買って読んでみました。このシリーズについては、巻が進むほど訳の分からない話になっていく、という印象でしたが、この巻はますますそうなっていました。新しい宇宙人、未来人、超能力者が増えていて、本当にワケワカです。しかも、同じ時間帯で二つの話が並行して進む、というパラレルワールド的構成。とりあえず、(後)を読まないとどうなるかわかりません。