中里介山の「大菩薩峠」第5巻

中里介山の「大菩薩峠」の第5巻を読了。ここまで再読してきて、少し中里介山のストーリーの進め方がわかってきたように思います。それは、これだけの長大な小説でありながら、登場人物があまり増えないということで、その代わり限られた登場人物がまるで順列組み合わせの全てのパターンをたどるかのように、それぞれがある意味ご都合主義の偶然で絡み合うようになり話が進みます。例えば、間の山のお君の愛犬であるムクは、東海道を旅している時に龍之助と同行するようになります。その時はそれだけだったのですが、この巻で笛吹川が氾濫して龍之助が家ごと急流に流されて死にかけた時に、それを助けたのはムクです。後で、龍之助は偶然夜中に駒井能登守の子を宿して気がふれてしまったお君を辻斬りの犠牲にしようとしますが、ムクが立ちはだかってそれを阻止します。さらにはこの巻では米友が吉原にて血を吐いた龍之助を助けて一緒に暮らしたりします。こういった登場人物(登場動物も)の間の不思議な縁の展開がこの小説の眼目のように思います。
この巻ではまた、軽業師だったお角が、安房に渡ろうとして船が難破し、洲崎の浜に半死半生で打ち上げられていたのを、駒井能登守が助けると、これまたご都合主義的偶然で話が展開します。しかし、この安房の国の巻では新たに茂太郎や盲目の法師の弁信が登場します。
これでようやく全体の1/4を読了です。

白井喬二の「捕物にっぽん志」(連載第11回)

白井喬二の「捕物にっぽん志」(連載第11回)を読了。「人物往来 歴史読本」の昭和37年4月号です。この雑誌も、この頃の物はパラパラとしか入手できないので、残念ながら全編を通して読むことはできません。この第11回では、慶安の変の由井正雪を題材にしています。白井喬二が由井正雪を取り上げるのは、私が知る限りでは3回目で、最初は「兵学大講義」で由井正雪と同じく軍学者の諏訪友山の間の、軍学による戦いを描きます。2番目が1924年の「正雪塾の大模擬戦」で、中学世界という雑誌に掲載されたもので、残念ながらまだ現物を見ることできていません。この「捕物にっぽん志」では、由井正雪の生まれはどこかから考証を試みていて、小泉三申(小泉策太郎)の説を正しいとしたりしています。後は、熊沢蕃山がある殿様の依頼で由井正雪をスカウトに行きますが、5000石という破格の知行を持ち出したのに正雪に断られ、正雪が叛乱を起こすような性格の人間であることを人相から見抜く所が面白いです。この回では完結しておらず次回に続いております。「歴史読本」の昭和37年5月号は取り敢えず見つかっていません。

中里介山の「大菩薩峠」第4巻

中里介山の「大菩薩峠」第4巻を読了。新しく甲府勤番となった駒井能登守は、馬を買いに馬大尽の許を訪れ、そこでお君を見初めます。お君は病気で江戸に残っている駒井能登守の妻にそっくりでした。お君をもらい受けた駒井能登守は、お君を溺愛します。一方で、牢に入れられていた宇津木兵馬は、同じ牢にいた浪士と共に脱牢します。逃げる場所に困った脱牢組は駒井能登守の屋敷に逃げ込みますが、そこで能登守と対決してみれば、脱牢者の一人と能登守は顔なじみでした。馬大尽の娘で顔にひどい火傷の跡があるお銀は、ふとしたことから神尾主膳の別荘にいた龍之助と知り合います。龍之助が目が見えなくてお銀の顔を見ることがないということにお銀は安心して、二人は男女の仲になります。しかし、その後二人は東山梨の八幡村に逃れますが、そこは龍之助が斬り殺した亡妻のお浜の実家でした。龍之助はお浜への思いから、また辻斬りを始め、お銀も龍之助の冷酷無残な正体を知ります。一方で駒井能登守は、自分の寵愛しているお君が被差別部落の出身であることを、お君が伊勢にいたころを知っていた神尾主膳に曝露され、甲府を去ることになります。
といった感じで、まだまだこの辺りはストーリーに一応の進展がありますので、読み進むのは苦痛ではないです。とはいえまだ全体の1/5を読んだに過ぎません。

中里介山の「大菩薩峠」第3巻

中里介山の「大菩薩峠」第3巻を読了。この巻辺りから、主人公の机龍之助は、甲府で神尾主膳と何故か仲良くなり、その別荘に住み着きますが、夜な夜な辻斬りを行うという修羅の姿として描かれるようになります。何故かしりませんが、段々登場の割合は減っていき、主人公とはいえ影が薄くなっていきます。
一方、龍之助を敵と付け狙う宇津木兵馬は、甲府で神尾主膳の元にいる龍之助を訪ねようとして、裏宿の七兵衛とがんりきの百蔵が、甲府御勤番の金を盗み出したのと同じになり、あろうことかその犯人と間違われて囚われの身になります。
また江戸にいた、米友はお君の行方を求めて甲府にやってきて、物語の舞台が江戸から甲府に移ります。
一方で甲府で、代々の馬長者の娘のお銀が登場しますが、このお銀は姿はお君にそっくりですが、顔にひどい火傷を負っています。
その他、神尾主膳の上役として江戸から駒井能登守が赴任しますが、神尾主膳より年が若く、主膳は面白くなく何かと嫌がらせをしようとします。

中里介山の「大菩薩峠」第2巻

中里介山の「大菩薩峠」第2巻を読了。この巻では宇治山田の米友が登場します。米友は背は子供のようだけど、顔は老人のよう、そうして体は筋骨たくましく、槍の名人というキャラクターで、龍之助とは対照的に天真爛漫で正義感が強い人物で、暗い展開が多いこの小説の中では一種の息抜き的な存在になっています。この巻で米友は無実の罪に問われ死罪で崖から突き落とされますが、道庵先生の手によって治療され奇跡的に助かります。しかし片足を骨折して跛になります。
物語のもう一つの流れとして、兄宇都木文之丞の敵として龍之助を付け狙う宇津木兵馬が、いつ龍之助と対決するかがありますが、作者はこれを徹底的に引っ張ります。確か私が記憶している所では、前回私が読んだ範囲ではまだ敵討ちは実行されなかったように思います。この巻ではまた、悪旗本の神尾主膳が甲府に配流されて、この地でまた悪を行おうとして龍之助と衝突します。
まだ全体の1/10を読んだに過ぎません。先は長いです。