大佛次郎の「照る日くもる日」

大佛次郎の「照る日くもる日」を読了。この小説は、サバティーニの「スカーラムッシュ」の翻案と言われていたのでそれを確かめるのが主目的の読書でした。結論としては似ているのは一番大きなプロットが一つだけで、この程度で「翻案」とか言うのは作者に失礼です。白井喬二の「珊瑚重太郎」が「ゼンダ城の虜」のパクリだとか言うのも同じレベルです。大体このレベルの小説のアイデアに著作権はありませんから。菊池寛がこの小説について「大衆小説の全ての要素が入っている」と誉めたそうですが、それは逆に誉めすぎかと。でもまあまあ面白く読めました。一番大きなプロットは最初から知っているので、ああこの男がこの男の…と簡単に想像が付きますが、それが分ったらからと言って興が殺がれることはありませんでした。主人公に二人の女性が絡み、その一人が盗賊団の一員というのは、ちょっと「雪之丞変化」を思い出させました。この小説は最初新聞小説であり、電車で通勤しながら少しずつ読んだのは丁度ぴったりした読み方だったように思います。

立花和夫著の「入門タグチメソッド」

立花和夫著の「入門タグチメソッド」を何とか読了。一部飛ばした所もあります。マハラノビス距離とかに言及している割りには、タグチメソッドについて、これまで2回くらい理解しようとチャレンジして挫折していますが、3回目でようやく触りくらいは理解しました。実験計画法はQC検定だと2級、タグチメソッド(ロバストパラメータ設計)は1級の出題範囲であり、はっきり言って難しいです。前の会社で、部下の20代の若手社員に4日間のタグチメソッドの研修に行かせたことがありますが、その若手も落ちこぼれていました。
この本は数式だけではなくて、具体例が豊富で、特に安定化電源回路を使っての、S/N比と感度の説明は分かりやすかったです。つまり10Vの直流電圧を出すことをゴールとして、それに対してばらつきを与える各抵抗の公差や使用温度条件などのノイズ要因の影響を最小にするパラメーターの組み合わせを求め、それが出来てから今度は目的の10Vに持っていく、という2段階の設計がタグチメソッドの本質のようです。その過程で、直交表というある要素と別の要素の組み合わせの実験で、何通りに値を振ればいいのかを教えてくれる表を用いて実験し、その結果を使ってパラメーターの組み合わせを絞って行く、ということのようです。
この本はマハラノビス距離についての解説もあり、ユークリッド距離とどう違うのかということも良く分りました。要は要素間に相関がある場合にその相関を考慮したのがマハラノビス距離であり、それによってあるデータが基準空間の平均に近いデータなのか外れたデータかを判別するのがマハラノビス距離だということです。2つの要素に相関が無い場合は、X、Y軸にそれぞれの要素を取ると、各データの分布は円形に近くなります。しかし2つの要素に相関があれば、円形が楕円になり、原点からのユークリッド距離が同じだったデータも、マハラノビス距離では差が出てくるということになります。

今度は囲碁関係の書籍を整理

今度は囲碁関係の書籍を整理。丁度本棚1台分くらいになりました。上段にある打碁集はまだ一割も並べていませんが、これは完全リタイアした時の楽しみに取ってあります。
大学時代に囲碁を本格的に始めた時は、100冊くらいの棋書を読んでいますが、その内残っているのは数冊です。後は捨てたり亡父に贈呈したりしています。なので私は典型的な本で覚えた碁です。そういう碁は実戦では弱いのですが、囲碁プラグラムと長年九路盤で対戦して実戦経験を積み、それで何とか有段者になれました。詰碁は好きではないのですが、むしろ最近少しずつやっています。

さらに本…

更に本棚を一つ追加購入し、さらにその上にオーディオラックを1段載せて、アカデミック関係の文庫本以外を収録。ついに本棚の数が大小合わせて21台になりました。いかに5LDKとはいえ、さすがにそこら中に本棚で、廊下にまで本棚がある、ということになっています。まあでもこれでいつでも自分が持っている書籍を見つけることが出来るようになりました。後10年くらいすると、生成AIがこの程度の書籍の内容は全て学習していて、質問すればどの本にどう書いてあったかたちどころに回答してくるような気がします。そうなったら書籍は処分出来ますが…

辞書・事典の整理

書籍の整理第三弾。辞書・事典類。全部で100冊ありました。国語辞書が12冊もあるけど、これは日本語変換ソフトの開発部署にいた名残です。今はほとんど引くことはありません。英語も英和と和英は普段はほとんど英辞郎とカシオの電子辞書で間に合っています。オックスフォードのラテン語大辞典2冊は、マックス・ヴェーバーの「ローマ土地制度史」の翻訳のため買いました。

外国語関係の書籍の整理

ヴェーバー関係の書籍の整理に続けて、外国語関係の書籍の整理。本だけで言えば、英語、ドイツ語、古典ラテン語、古典ギリシア語、サンスクリット語、ヘブライ語、フランス語、イタリア語、スウェーデン語、フィンランド語、スペイン語、ポーランド語、ロシア語、韓国語、広東語、中国語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語(マレー語)、アラビア語、アイヌ語と21ヶ国語になります。もちろん本だけ買ってざっと眺めただけ、というのが大半ですが。

ヴェーバー関係の書籍の整理

新居にてようやく段ボール箱開梱もほぼ終って、これまで本はかなり適当に空いている本棚に詰めていただけなのを、本棚を更に1台追加して、まずマックス・ヴェーバー関係を集めてみました。残念ながら1台では足らず、翻訳の時の資料とかは溢れてしまいました。これだけ集めたのは、今集めておかないともう簡単には買えなくなるという予感があったからです。例えば「経済と社会」の日本語訳を出していた創文社は解散してしまいました。なのでヴェーバー本人の書いたものは大体読みましたが、研究書や入門書の類いはきちんと読んでないのが沢山あります。

教養としてのデータサイエンス

最近、データサイエンティストの養成が急務!とかいった論をよく見るので、データサイエンスに関する入門書を読んでみました。しかし悪い意味で予想が当たり、流行のIT用語を浅く広く紹介し、それに若干の統計学の初歩を付け加えただけの本でした。例えば実験計画法は注で2行の説明だけ。マハラノビス距離についてはまったく出て来ません。私には先日のDatabricksのセミナーでの大企業でのビッグデータとの格闘の例の方がはるかに参考になりました。

また、こんなの読むくらいだったら昔の数理統計学の本を読んだ方がよっぽどマシだとも思いました。写真は元々亡父(元高専の数学教師)の本で、私が情報処理技術者試験の一種を受ける時に、待ち行列などの参考書として持ち出したものです。1950年代後半から1960年代にかけての本です。

宮本常一の「忘れられた日本人」

宮本常一の「忘れられた日本人」を読了。民俗学や文化人類学を大学の時に囓っていたので、この人の名前は当然知っていましたが、これまで読む機会がありませんでした。内容は多くが西日本の村落を宮本が精力的に訪ね、その土地土地での古老の話を聞き取ってまとめたものです。その内容は生きた本当の生活史という感じで、忘れられたなにかを思い出させてくれるものでした。その中には大田植えで、植えるのが遅いものを両隣のものが先行して植えていってしかもその間隔を狭めていってついには真ん中の者の行き場を塞いでしまうという、大学の時野村純一先生の授業で聞いた話も出てきて懐かしかったです。その一方で不満に思ったのが、西日本では伝承は村単位で継承されるのに、東日本ではそれがイエ単位になるという非常に興味深い指摘をしています。しかし宮本民俗学はそこで留まってしまい、さらに多くの事例を検討して理論として深めていくというのが非常に弱いです。それは逆に言えば、少ない事例から無理矢理もっともらしい理論化を急ぐ、西洋風の学問への反発かもしれません。実際に宮本は柳田國男の「方言周圏論」を否定的に捉えていたようです。とはいえ、これが「学」かと言われるとちょっと私には抵抗があります。むしろ文学的価値の方が高いように思います。

文字通り汗牛充棟

新居の本の整理、ようやく一段落しました。しかし本棚16台を使ってもまだ残っており、今日Amazonにまた本棚を発注しました。本棚1台あたり大体200冊くらいということですから、単純計算で17台で3,400冊あるということになります。写真は一部です。私の場合、読む本はもちろんありますが、資料で買ったのも多いです。例えば四字熟語の辞書は5冊くらいあります。これはATOKの四字熟語を強化する時に使ったものです。後は白井喬二関係も本棚2台分くらいあります。これはどこかの図書館に寄付してもいいんですが、最近どこの図書館も蔵書スペースが足らず、寄付はまったく歓迎されないようです。まあ白井喬二関係では、私の蔵書が日本で一番充実していると思いますが。