ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳第25回目

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第25回目を公開しました。翻訳のスピードは4月はかなり低下していましたが、連休もあって5月はかなり挽回しました。翻訳が一応完了するのは2020年12月末の予定です。この部分にも中世のイタリアの諸都市の法規における中世のラテン語が登場します。しかし、文学作品でないので修辞法を駆使したりはしておらず、大部慣れては来ました。

ヒュー・スモール著、田中京子訳の「ナイチンゲール 神話と真実」

ヒュー・スモール著、田中京子訳の「ナイチンゲール 神話と真実」を読了。これを読んだのは、こういう時期で治療の現場で奮闘する看護師さん達の元祖がどういう人だったのか、ちゃんと知りたくなったからです。既に一冊読んだのですが、それは中学生ぐらい向けのもので、物足らなかったので更に購入したものです。この本は、ナイチンゲールが成し遂げたことで本当に偉大であったものは何だったのかを明らかにし、逆に今まで「クリミアのランプの天使」として称賛され続けてきた彼女のスクタリの野戦病院での活動の彼女自身の評価はどうだったのかを明らかにします。
ナイチンゲールが実際に看護婦として働いた期間はわずか2年程度であり、彼女はクリミア戦争の現場から帰って来て以来、一度も看護婦として再度働くことをしていません。その理由の解明がこの本の主題です。ナイチンゲールは自身が働いたスクタリの野戦病院でのひどい状態が、一つはやたらと重傷の患者ばかりが送られて来ること、そして食料を含む物資が、非能率的な官僚組織のせいで不足して、患者が栄養不足に陥っていたことが原因だと信じていました。そして後者については自費で食料を調達したりして改善に努めています。しかし戦後の調査分析で明らかになったのは、そのスクタリの野戦病院での死亡率は他の野戦病院の倍でした。そして統計学と衛生学の専門家であるファー博士から、スクタリの高い死亡率は重症患者が他より多かったことでもなく、また食糧不足によるものではなく、病院それ自体の衛生状態の劣悪さ(湿度の高い湿地に作られ、下水処理はまずく、換気は悪い上に患者である兵士は高密度に詰め込まれ、等々)でした。多くの兵士は元の怪我で死んだのではなく、スクタリで新たに感染病にかかって死んでいました。これはナイチンゲールにとって衝撃の事実で、彼女は「不作為の罪」で多くの役人や医者、軍人を攻め立てましたが、知らなかったとはいえ、スクタリの基本的な衛生を改善することをせず、多くの兵士を死に追いやったのは自分だと思うようになりました。(実際に彼女は基礎的な衛生状態を改善すること無しに病棟の拡張までやってより多くの患者を受入れ、そして多くを死なせている訳です。)これこそナイチンゲールが帰国後二度と看護の現場に戻らなかった理由です。その代りに彼女は公衆衛生改善の権化となり、残りの人生の多くの力をそれに注ぎ込みます。そしてついに1875年に公衆衛生法を制定させ、各家庭の下水設備を整備する義務を定めます。ナイチンゲールの頃の平均寿命はわずか40歳ぐらいで、1930年頃にはそれが60歳ぐらいにまで延びます。これまでそれの主因は主として栄養状態が改善されたためとされていましたが、実際はこの法律のおかげでイギリスの家庭の衛生状態が大きく改善し、感染症にかかる人が激減した結果なのだそうです。
丁度今コロナ禍の真っ最中にあって、まさしく三密のような環境による感染が議論されている真っ最中に、この本でナイチンゲールの本当の功績を知ることが出来たのは良かったと思います。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の24回目を公開

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第24回目を公開しました。
合名会社と合資会社の違いは合名会社が無限責任社員だけで構成されるのに対し、合資会社では無限責任社員以外に有限責任社員がいます。
ヴェーバーは家ゲマインシャフト、家計ゲマインシャフトにおいて、その成員が契約した場合の債務がその人の出資分だけの責任となるのか、あるいはゲマインシャフトの財産全体の責任になるのかという点についての、イタリアの諸法規の変遷を追いかけて行きます。なかなか面白い所ですが、難解でもあります。
これでお陰様で既訳分が全体の50%を超え、折り返し地点を過ぎました。

ブックカバーチャレンジ:続々報

ブックカバーチャレンジですが、今日たまたまDMMというオンライン英会話のお題(新聞記事)がFacebookがその投稿内容の可否を審議する第三者委員会を作ったという話だったので、好ましくないコンテンツの例としてブックカバーチャレンジの話をしました。その先生はイギリスの人ですが、イギリスでは「CDのジャケットを説明無しで7日間」というのが現在一部でやられているようです。(例えばここ)(これももちろん著作権侵害で、更にアーティストの写真は大体においてその所属事務所が管理しているので、書籍のカバーより更に危ない。)こういう風にあちこちで、元の写真チャレンジの亜種が今頃流行りだしているということは、やはりインターネットのトラフィックを増やすために、誰かがやっているという疑いを禁じえません。
もう一度言います、ブックカバーチャレンジは止めましょう!やりたければ他人に回さず一人でやってください。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第23回目を公開

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第23回目を公開しました。
この部分では、ソキエタスのメンバー同士で連帯責任原則があったのと同様に家共同体でも連帯責任が普通だったことを、イタリアの色んな都市の法規を引用して延々と述べていきます。もちろん1次資料ではなく、ラスティヒその他の論考に出て来るものを主に使っていますが、それにしても良くこれだけ参照しているものだと感心します。

ブックカバーチャレンジの起源:続報

7日間ブックカバーチャレンジの起源についての調査続報。
「7日間」という縛りは無いですが”Book Cover Challenge”という言葉の使用では今の所見つかったサイトではこれが一番古いようです。2014年7月12日にポストされたもの。

goodreads

(引用開始)
Levels:
Level One: Read books for three requirements.
レベル1:下記の内3つの条件を満たす本をそれぞれ読みなさい。
Level Two: Read books for seven requirements.
レベル2:下記の内7つの条件を満たす本をそれぞれ読みなさい。
Level Three: Read books for all requirements.
レベル3:下記の内全ての条件を満たす本をそれぞれ読みなさい。

REQUIREMENTS:
1. Read a book with a dress on the cover.
本の表紙にドレスが載っている本を読みなさい。
2. Read a book that has no people on the cover.
本の表紙に人物が使われていない本を読みなさい。
3. Read a book with a cover you love.
あなたが好きなカバーの本を読みなさい。
4. Read a book with a cover you hate.
あなたが嫌いなカバーの本を読みなさい。
5. Read a book with a face-less person on the cover.
表紙に人が使われているけど顔が写っていない本を読みなさい。
6. Read a book where the title takes up most of the cover.
表紙がほとん書名だけの本を読みなさい。
7. Read a book with an animal on the cover.
表紙に動物が使われている本を読みなさい。
8. Read a cover that is your favorite color.
表紙の色があなたが好きな色である本を読みなさい。
9. Read a book with a bright colored cover.
表紙の色が明るい色の本を読みなさい。
10. Read a book with a darker-colored cover.
表紙の色が暗い(濃い)色の本を読みなさい。

Rules:
Post your books here.
ルール:
このブログのコメントとして投稿してください。
(引用終了)

所感:
(1)目的が本を紹介することではなく、条件を満たした「本を読め」なのでこれなら読書文化に貢献するでしょう。
というかこのサイトそのものが読書を奨励するサイトのようなので当然ですが。
(2)投稿例を見るとすべて写真ではなく販売サイトへのリンクなので、著作権侵害はまったくありません。
(3)このブログと2017年頃からのチャレンジとの関連は不明。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第22回目を公開

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第22回目日本語訳の第22回目を公開しました。今回の箇所はラテン語の引用が2箇所、17世紀のイタリア語の引用が1箇所あり、かなり大変でした。しかし、家の相続ゲマインシャフトから後に合名会社となるソキエタスが発展してくるのだという、この論考の中心となる部分です。

ブックカバーチャレンジ撲滅運動(補足)

七日間ブックカバーチャレンジについて色々と調べていて、チェーン投稿が何故いけないのか、昔と比べてネットワークの容量は格段に上がっているという意見の人がいました。

しかしこの意見を論駁するのは極めて簡単です。このチャレンジは一人が完遂すると、新たなチャレンジャーを7人産むことになるので、一世代で参加者が7倍になります。それが12世代後にどうなるかというと、極めて簡単で
7^12=13,841,287,201→138億以上。現在の世界の人口は77億人なのでそれを簡単に超えてしまいます。そこまで行かなくてもそれだけの大人数が写真付きの書き込みを7回行なえば、どんな大容量ネットワークのリソースでも簡単にパンクします。要するにネズミ講(無限連鎖講)と同じことです。

実際には途中でバトンを渡されても断ったり、あるいはルールに忠実に毎日誰かに振るというのをやらない人が多いのでそんな単純なパンクには結び付かないでしょうが、そういう危険性についてはきちんと理解して流行りだからと乗せられないようにすべきと思います。

今この時期に急に海外で2年以上前に行なわれていた変なチャレンジが流行りだしたのって、それこそロシアが2016年のアメリカ大統領戦に干渉したのと同じような、どこかの工作ではないのかと勘ぐりたくなります。

ブックカバーチャレンジ撲滅運動

ブックカバーチャレンジですが、誰が始めたのか調べてみたら、元は海外で既に2018年7月にはあります。
 
もっと遡ると最初は、2017年で、「7日間に7枚の写真を」でかつ白黒写真でなければならない、というFacebookでのチェーン投稿タグだったようです。説明を付けてはいけない、はこの時から有り、また写真は人が写っているものはダメだったようです。
それが何で途中で本の表紙に変ったのかは知りませんが、要するに「読書文化の普及に貢献する」なんていう文句は後から誰かが適当に付けただけで、そんな目的は最初から無かったということが言えると思います。
 

こういうインチキが分っても、そして海外では2年前というインターネット上では大昔のチェーン投稿を未だにやりたい人は別に止めませんが、少なくとも「読書文化の普及に貢献する」なんて嘘を書くのは止めて下さい。

後、これは自明なんで書かなかったんですが、このチャレンジの参加者がルールに忠実に7日間毎日違う人にバトンを渡して受けた人も同じことをしたら、おそらく二週間くらいでFacebookのサーバーがパンクすると思います。パンクしなくても、在宅ワークの増加でインターネットのトラフィックが増加して問題になっている時期にやるべきことではないです。

P.S.
単なる写真から、本の表紙の写真に変った理由を推測するとこういうことかと。
元のルールは結構縛りが多く、(1)白黒写真(2)人が写っているものは不可(3)投稿者本人に関連した写真でないと不可、となっていたようです。
(1)はレタッチで白黒にすれば済む話ですが、(2)と(3)の縛りは結構大変で、それを7日間続けるとなるとかなりネタに苦しむことになると思います。それで誰かが「そうだ、7日間それぞれで読んだ本や雑誌の表紙ならいいだろう」と考えついたのだと思います。しかしながら、1日に1冊本(または雑誌)を読み、それを7日間続けるというのは普通の人にはハードルが高いと思います。そこでその7日間ではなく、その人の人生でその人に大きな意味を持った7冊、というのにルールが変った(多くの人が参加しやすいように作り替えられた)んだと思います。おそらく「読書文化の普及に貢献する」という嘘くさい説明は、新規に7冊ともかく読ませるというのであれば嘘ではないと思いますが、単に今まで読んで印象深い7冊を説明も無しで7冊分写真をアップするのに変った場合にはほとんど意味がなくなっていると思います。この推測は具体的な根拠はありませんが、十分ありそうに思います。ともかくこの変なチャレンジは途中で色々変っていって当初の意味が無くなっています。もしどうしてもやりたい方は、
(1)他人に振るのを最小限にする。
(2)説明無しで、というルールは単なる写真の時は意味があったかもしれないけど、本の紹介に変った瞬間にほぼ無意味になっているので無視し、その書籍が自分にとってどういう意義があったかをちゃんと説明する。

にしたらいいと思います。「ルールだから従わないと」という考え方は上記のような経緯が正しいのであれば、途中で方向転換してルールそのものが大きく変っていることを考えると滑稽以外の何物でもありません。

再度:七日間ブックカバーチャレンジは著作権侵害

もう一度書きます。「七日間ブックカバーチャレンジ」というものは、他人の著作物である本の表紙の写真を7日間に渡って何の本人の説明も付けずに自分の投稿として公開するというのをルールにしており、それは著作権者の公衆送信権の侵害になります。
本の表紙でたとえば単にタイトルと著者、出版社が印刷されているだけ、といったものは保護の対象になる著作物とは認められない可能性があります。しかし何らかの意匠としてデザインがあったり、絵・イラスト・写真を使っているものは明らかに著作物です。(これまで私が見た範囲ではほぼすべて著作物と認められるようなものでした。わかりやすい例ではコミックの表紙{当然絵入り}を上げた人もいました。)
そんなことを言ってもお前も普段やっているじゃないかという人もいるでしょうが、個人が自分の責任で勝手にやっているのと、不特定の集団が著作権侵害そのものをルールにしてチェーンメール的にやるのは意味が違うと思います。それに私がやっているのは本の紹介が主で写真は従であり、もし著作権者から写真を削除しろと言われたら従うつもりでやっています。(その場合はAmazonなどの販売サイトへのリンクに変えますが。)

それからフェースブックで友達限定だから私的使用の範囲内と言う方もいらっしゃいますが、フェースブックの設定はいつでも変更出来ますし、また友達限定といっても実際にはフェースブック側の人間も目にしているため、私的使用にはあたらないと判断しています。(証拠としては、フェースブックで他人の著作物の動画を友達限定で上げても、すぐフェースブック側から削除されます。)この手のものは多くの人がアクセス出来るサーバーに上げた瞬間に侵害になると理解しています。

このチェーンメールの目的に「読書文化の普及に貢献する」とありますが、本当に嘘くさいですね。こういうのをThe road to hell is paved with good intentions.(地獄への道は善意で舗装されている。)と表現するんでしょうね。