NHK杯戦の囲碁は、本日より新しい71期のスタートです。それに伴いセットもBGMも新しくなり、また解説の碁盤もタッチパネルの電子式のものになリました。皮切りの対戦は、黒番が六浦雄太7段、白番が佐田篤史7段の好対局です。今回解説が前期優勝の関航太郎天元で、司会・読み上げ・記録も含め佐田篤史7段の27歳が最年長というのも驚きです。この碁の最大の攻防は左辺で、黒が大きく地模様を形成したのに、白が打ち込んで、黒が詰めた時に白が手を抜いて左下隅を滑って地を稼ぎました。この手は間接的に左辺へのワタリを見せる手が利くので、左辺の攻防に多少の支援にもなっていますが、おそらく素直に中央に飛んで頭を出していた方が優っていたと思います。黒が当然ボウシしたのに白が上方に付け引いて活きに行きましたが、黒が2目の頭を自ら跳ねられに行ったのが強手で、結局白が単独で活きる手は無く、かといって攻め合いにもならず、左辺の白が取られて左辺に40目以上の黒地が完成しました。これで黒が勝勢になり、以降黒が手堅く打ったため差は縮まりましたが、最後半劫を白に譲って、黒の1目半勝ちでした。
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NHK杯戦囲碁トーナメントに仲邑菫女流棋聖が登場!
第71期のNHK杯戦囲碁トーナメント、ついに仲邑菫女流棋聖が登場です!間違いなく最年少記録(14歳)です。これは楽しみ。TVという意味では既に2021年1月のお正月のお好み対局で芝野虎丸名人と対戦したことがありますが、本戦参加はまた別です。一回戦は大西竜平7段との対局です。
NHK杯戦囲碁 一力遼棋聖 対 関航太郎天元
本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が一力遼棋聖、白番が関航太郎天元の対戦で、決勝戦でした。結果は白の関航太郎天元の半目勝ちとなり、2回目の出場で初優勝を飾りました。一方、一力遼棋聖の3連覇はなりませんでした。この棋戦、今後の碁界の動向を占うものとして注目していました。一力遼棋聖はつい先日、芝野虎丸名人の挑戦を退けて棋聖を防衛したばかりで、勝てば文字通り碁界の第一人者として君臨出来たと思います。一方で関航太郎天元が勝てば、今後の碁界は本当の意味での戦国時代、群雄割拠になると思いました。結果として関航太郎天元が勝ったので、もう令和三羽烏という言い方ではなく、関航太郎天元も入れて令和四天王と呼ばないと失礼だと思います。その証拠に、この今回のNHK杯戦で、伊田篤史9段と令和三羽烏の三人を全員破っているのですから。
碁の内容は、一力遼棋聖が左上を捨てて打ったのが大胆な構想でしたが、狙ってそうしたというより苦し紛れにそうさせられた、という感じがしました。関天元の碁は、部分的な読みが優れているというより、大局観が素晴らしくて序盤・中盤で早々とリードを奪い、それを守って勝つ、というのはちょっと全盛期の呉清源さんを思い出させます。AIソムリエと呼ばれているそうですが、本当の意味でAIによって強くなった棋士の時代が来たのだと思います。一方一力遼棋聖は、終始苦しい碁でしたが、それを半目差まで追い上げた力強さはやはり見事でした。終盤下辺で逆転する筋があったのですが、時間が無い中それを見落としたのは残念でした。
NHK杯戦囲碁 許家元十段 対 関航太郎天元
本日のNHK杯戦の囲碁は、準決勝第2局で、黒番が許家元十段、白番が関航太郎天元のタイトルホルダー同士の組合わせです。なんと二人は今回が初手合いです。布石で白が右下隅で手を抜いて、その代わりに左下隅から左辺、下辺と模様を築きました。これに対して黒が左辺下方から侵入し、この黒への攻めが焦点になりました。左上隅は実は黒からシチョウの逃げ出しの手が残っていて、シチョウアタリが気になりましたが、白は左辺の白を攻めながらこのシチョウの逃げ出しを上手くカバーしました。その代わり黒は下辺に進出し、下辺はむしろ黒の勢力圏になり、4線にある白の逃げ出し具合が焦点になりました。黒は右辺にモタレて白への攻めを見ましたが、ちょっと黒が無理に攻めてる感が有り、攻めで黒が得をする部分が少なかったように思います。その後黒は右辺と下辺から延びる白を分断し、その余波で上辺から中央の白地を削減しようとしましたが、途中で成算がないとして止めてしまいました。この結果白の左辺、中央、上辺の地模様はほとんどそのまままとまり、地合いは盤面でいい勝負で、黒はコミが出せない状況でした。最後黒が投げ場を求めて左辺の白地の中で策動しましたが、白に的確に受けられて不発で、黒の投了となりました。来週はいよいよ決勝ですが、三連覇を目指す一力遼棋聖にとっては一番嫌な相手が勝ち上がったように思います。
NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 一力遼棋聖(2023年3月5日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が一力遼棋聖の対戦です。布石で白が右上隅に上辺から掛かり、黒が一間に受けてから白が黒の上辺から左上隅に掛かって石にコスミ付け、ここから激しくなりました。黒は左辺を捨てて中央を重視して打ちましたが、どこかに誤算があり、左上隅から中央に延びる石を厳しく攻め立てられました。この大石は文字通り綱渡りで上辺から右上隅に連絡しましたが、その代償で中央の黒6子が取られ、なおかつ右上隅でも白に潜り込まれて活きられたため、黒は圧倒的に地合いが足らなくなりました。こうなると後は残った右辺、右下隅、下辺をどれだけまとめられるかですが、白はまず右下隅に掛かって、また切りを見せて利かして右辺に余裕を持って地を確保しました。黒は下辺を地にしたものの、右下隅に手を付けられ、ここが白の有利な一手ヨセコウになり、中央で白5子くらいを取ったものの、地合いの差が非常に大きく黒の投了となりました。一力棋聖は決勝進出で3連覇まで後一勝になりました。
NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 一力遼棋聖(2023年2月26日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が一力遼棋聖の対戦です。序盤では白が右上隅の黒の一間高ジマリに横付けしてから、上辺で治まったのに対して、黒が左上隅で両ガカリしてから激しくなりました。黒は隅に潜り込み、白は左辺を破りましたが、白の一団に眼が無くなったのを黒がケイマで封鎖しました。白は中央の黒を攻めて反撃し、双方とも眼が無く、のっぴきならない攻め合いになりました。攻め合いは白の一手勝ちかと思われましたが、黒が左辺で取られている石から2線にハネたのが妙手で、これで黒の手が延び、逆に黒が攻め合い一手勝ちとなりました。しかし石を取れば勝ちでは無いのが碁の深い所で、白の左下隅を中心とする模様が立派になり、更に先手を取って下辺右の押さえに回ったので、形勢はむしろ白良しになりました。黒は中央で白模様の制限に向かいましたが、白の下辺押さえのもう一つの狙いである右下隅の黒の攻めに回られました。この黒を攻めながら自然に右辺の黒模様も制限出来ましたので、白の優勢が続きました。こうなると黒の狙いは、白の厚みに2箇所切りが入っているのを手がかりに下辺を上手く荒らせないかですが、結果的には不発でした。これで盤面でもどうかという形勢で黒はコミを出せず、投了となりました。これでベスト4が揃いました。
NHK杯戦囲碁 安斎伸彰8段 対 関航太郎天元(2023年2月19日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、準々決勝の第3局で、黒番が安斎伸彰8段、白番が関航太郎天元の対戦です。白が右上隅の黒の大ゲイマジマリの構えに星に付けていってから競い合いが始まりました。黒のハネに白が切っていってから激しくなりました。しかし黒は元々三間バサミで打った石を活かして上下の白を絡み攻めにしました。なおかつ白は上方の石でタネ石2子を当てられて継げないため、白だけが被告になり、この辺りは黒が優勢でした。その後黒が下方の白を分断して、白は忙しくなりました。中央で戦った後、白が右下隅に手を戻してここで大劫が始まりました。途中白が劫立てで右辺を出たのに黒が受けずに劫を解消していれば黒の優勢が続いていましたが、黒が受けたため、結局白は下辺の黒を取る劫立てを打ち、黒は劫を解消しました。黒は左辺下方の黒を上手くしのげば勝ちでした。ここで黒は白の左下隅にAIも予想していなかった上手い手を打ち、劫が残りました。ここで黒が右辺の白を切り離しに中央を出たのを、白が左下隅で2子抜いて劫を防ぎました。しかしこれで右辺は通しの黒地で100目以上となりました。後は残された左辺と上辺の白の模様の中で如何に白地を減らしながら活きるかですが、ここでちょっと黒の追及が中途半端で、左上隅、上辺、左辺といい白地が出来、白が勝勢になりました。終わってみれば盤面持碁の白の6目半勝ちでした。
NHK杯戦囲碁 高尾紳路9段 対 許家元9段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が高尾紳路9段、白番が許家元9段の対戦です。布石は黒が右辺に大模様を築きましたが、黒は模様一辺倒ではなく、左上隅では三々に入り、また左下隅でも左辺から裾がかりし、バランスを取っていました。白は右辺は下方で浅い消しを打ちました。下辺の折衝でやや黒に誤算があり、あちこちに断点があって切れる可能性があり、白がリードしました。その後白が右辺上方に深く打ち込み、この石自体が単独で活きるのは難しかったですが、黒のダメヅマリを利用して、中央に利きを沢山作りました。そうしておいてから上辺の黒に対して1線に置いて眼を取ったのが真の狙いで、黒は劫に持ち込むことは出来ましたが、白の劫材は右辺に沢山あり、劫=死に、でした。黒はやむを得ず上辺を捨てて打ちましたが白の得が大きく、白の勝勢になりました。結局白の中押し勝ちになりました。許家元9段はこれまでNHK杯戦囲碁で高尾紳路9段に3連敗していましたが、ようやく1勝を返し、ベスト4に進出しました。
NHK杯戦囲碁 林漢傑8段 対 鶴山淳志8段(2023年2月5日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が林漢傑8段、白番が鶴山淳志8段という、YouTube「つるりんチャンネル」という囲碁のチャンネルの漫才のようか掛け合いによる囲碁講座で人気のある二人の対戦です。序盤は左上隅で黒が途中で手を抜いた関係で白が黒4子を取り込み、やや優勢になりました。黒は4子を犠牲にして左辺を囲おうとしましたが、すかさず白が入って行き、それを阻止しました。上辺に黒が打ち込み、取られている4子を連れ戻すと見せて利かそうとしましたが、白は逆手を取って渡らせる打ち方をしました。黒は結局渡って活きましたが、後手で自陣に一手入れての活きであり、白の優勢が拡大しました。その後白が左辺での連絡を強化するためハネたのが手拍子で、すかさず黒が切ったのが好手でした。この結果中央の白と下辺の白が分断され、なおかつ黒は右辺で地を増やすことが出来ました。その後白が下辺右で利かしにぐずんだのが用意周到な手で、黒は右下隅の黒に一手入れずに、下辺真ん中の4子を連絡すべきでした。黒が受けたので、白は4子取り(結果的に6子取り)を決行しました。この時先ほどのグズミが無いと黒に先手で切られて攻め合いが不利になるということでした。結局白は下辺で黒6子を取り、更にその下の黒も取り込んで30目弱の地を作り、白が勝勢になりました。黒はその後左下隅で何とか劫に持ち込みましたが、二段劫で白に余裕がありました。結局黒の投了となり、つるりん対決は鶴山淳志8段の勝利となり、ベスト4に進みました。
NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 佐田篤史7段(2023年1月29日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が佐田篤史7段の対戦です。黒が下辺に展開して地模様を作ったのに白が左下隅への渡りを見ながら2線に置いて侵略を図ったのに、黒がカウンターで左下隅三々に入って、結局白の下辺の石は渡れず、競い合いになりました。その競い合いの中、白が黒の右下隅にプレッシャーをかけた結果、黒が裂かれ形で突き抜かれた格好になり右下隅を単独で活きなければならなくなりました。この時の白の踏み込みがやり過ぎで、黒は先手で活きました。これで黒はピンチを脱し、足早に左辺に展開出来て、黒の打ちやすい碁になりました。その後白は右辺を大きく囲いましたが、黒も中央の白3子を切り離すことが出来て、黒が優勢を維持しました。更に白は左下隅から延びる石に眼が無く、劫がらみで黒に攻められました。特に白が中央で取られていた白1子を助ける劫立てを打ったのに黒が受けずに下に延びて白の左下隅と中央を切り離したのが機敏でした。このため白は左下隅の劫を一手で解消出来ない一手ヨセコウになりました。劫材は黒が多く、右下隅で黒が白4子を取って得をしてなお劫が続くという局面で白の投了となりました。今回思ったのは、AIの形勢判断は序盤のは当てにならないと言うことです。AIは決して神の次元には到達していません。以前も書きましたが、AIは複雑な戦いは避ける傾向にあります。これはアルゴリズムを考えれば、読み切れない複雑なことになる手より、簡便な打ち方の方が限られた時間の中では上位に来ると言うことです。これでベスト8が出揃いました。