読売新聞社の「第九期 棋聖決定七番勝負」を読了。1985年に、武宮正樹9段が趙治勲棋聖に挑戦した時のものです。武宮正樹9段と趙治勲名誉名人の7大タイトルの戦いは、本因坊戦が2回、そしてこの棋聖戦が1回の合計3回です。その全てで趙治勲名誉名人が勝っています。では、武宮宇宙流は趙治勲名誉名人にまったく敵わなかったのかというと、それが違うことを証明するのが、この時の戦いです。結果こそ4勝3敗で趙治勲名誉名人が勝利しましたが、途中2勝1敗、3勝2敗と武宮9段の方が勝ち星が先行していました。内容を見ると、武宮の宇宙流対趙の地に辛い打ち方の両極端が現れた局が多く、特にこの棋譜の第4局が典型です。いくら武宮が宇宙流でも、相手が警戒するためこんな極端な展開にはならないことが多いのですが、この時は違いました。7局を通して、武宮の方がうまく打っており、趙名誉名人が勝ったのは、まさに執念のなせる技というべきだと思います。
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NHK杯戦囲碁 伊田篤史8段 対 寺山怜4段
本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が伊田篤史8段、白番が寺山怜4段の対戦です。伊田8段は前々回の優勝者、寺山4段は前回の準優勝者です。この対局は上辺で白が黒に切られて、1子が当たりになったのを逃げ出したのが全てで、白はいっぱいに打ったのですが、黒も最強に応酬し、結局白は逃げた石を全部取られてしまいました。代償として白は右辺で若干地を得ましたが、黒の右上隅の地は60目近くになり、ここで勝負は決しました。それでも白は左辺の黒と下辺の黒を絡み攻めにして、どちらかを取ってしまおうとしました。しかし黒は包囲している白を脅かしながら、最強に頑張って両方を活きてしまいました。白は攻めの効果として中央の黒5子くらいを取り込んだかと思いましたが、それも半分を逃げ出す手があり、白の投了となりました。伊田8段はこのように本当に力が強いです。次の対戦は準決勝で井山裕太棋聖とですが、その豪腕で井山6冠王を苦しめて欲しいです。
NHK杯戦囲碁 井山裕太棋聖 対 河野臨9段
本日のNHK杯戦の囲碁は準々決勝第1戦で、黒番が井山裕太棋聖、白番が河野臨9段です。この二人は現在棋聖戦で激突しており、現時点で1勝1敗の五分です。対局は白の河野9段が4手目を三々に打ち、白の実利先行、黒の大模様という流れになりました。白が下辺の黒模様に打ち込みましたが、黒は中央を厚く打ち、白に左下隅に渡るのを許しました。黒はしかしこの渡った白へ利かしを打って、それを利用して左下隅と左辺に手をつけに行きました。しかし黒は途中まで打った後は手抜きし、中央に飛びを打って、白に一手入れさせるだけで終わりました。黒模様が広大になったので、白は右下隅に手をつけに行きました。それに対し黒は隅で治まるのも拒否して白の全体を取りかけに行きました。白は戦いの最中で下辺の黒への出切りを敢行し、それを利用して下辺左の黒7子を取るという振り替わりになりました。この結果はほぼ互角だったようです。その後黒は上辺の白への攻めを見ましたが、白はうまくさばいて、攻められていた石が中央にかなりの地を持って治まりました。ただ黒もその過程で右辺を味良くまとめており、形勢不明でした。黒は取られていた黒7子について先手で利かしを2手打てたのが大きかったようで、終わってみれば黒の2目半勝ちでした。井山棋聖はベスト4進出です。これまで7冠を取っていながら、NHK杯戦だけは準優勝が最高で、今期初優勝がなるかが注目されます。
藤沢秀行名誉棋聖の「秀行の創造 全局の要点」
NHK杯戦囲碁 結城聡9段 対 村川大介8段
本日のNHK杯戦の囲碁は最後のベスト8を選ぶ戦いで黒が結城聡9段、白が村川大介8段の対戦です。関西棋院同士の対戦です。対局は右下隅で石が切り結んだ戦いとなり、白は右辺から延びた石が黒の2子を取って治まり、また下辺も黒の石を2回ぽん抜いて、悪くなかったと思います。しかし黒は中央で延びた石から跳ね、白が跳ね返したのに、すかさず挟みつけました。この手が厳しく、結果、黒は中央を封鎖し、その結果、右辺の白の眼を取って攻める手が生じ、黒が打ちやすい碁になりました。しかし白も下辺で得をしており、大きなリードではありませんでした。その割には黒は左辺での打ち方が甘く、ヨセに入ってみると、地合は白優勢に変わっていました。非勢の結城9段は上辺の白の眼を取って攻めます。白は左辺に確実につながるのと、中央で眼を作るのが見合いでしのぐのは問題ないと思われていたのですが、実際にはどちらもダメで、上辺の白が取られてしまいました。ここで白の投了となりました。村川8段には惜しい一戦でした。来週からいよいよ準々決勝です。
趙治勲名誉名人・二十五世本因坊の「お悩み天国 治勲の爆笑人生相談室 3」
趙治勲名誉名人・二十五世本因坊の「お悩み天国 治勲の爆笑人生相談室 3」を読了。結局三冊全部読んでしまいました。この巻には、いつも趙治勲さんがいじりのネタにしている石田芳夫二十四世本因坊が登場。治勲さんの悪口を全部許した上で、治勲さんが石田芳夫二十四世本因坊をいじるは、木谷一門での治勲さんの先輩の中で甘えられるのがもう石田さんだけだから、ということです。ちょっと感動的です。木谷一門というのは木谷実9段の弟子のことで、「木谷道場」と呼ばれる内弟子生活を送った棋士の総称です。一時は7大タイトルを一門で独占し、一門で取った7大タイトルの数は全部で146にもなります。そうやって若い時を一緒に囲碁修行をした先輩後輩の仲をずっと保ち続けるというのも素晴らしくうらやましいことだと思います。
劉昌赫/金世実の「小目一間ガカリの周辺」
趙治勲名誉名人・二十五世本因坊の「お悩み天国 治勲の爆笑人生相談室」
趙治勲名誉名人・二十五世本因坊の「お悩み天国 治勲の爆笑人生相談室」を読了。第2巻を試しに読んだらとても面白かったので、1巻と3巻もポチりました。この1巻も面白いです。「小林光一とは本当に仲が悪かったのですか」という質問に対して、色々書いた後で、「最後になりましたが、光一さん、名誉棋聖、名誉名人、名誉碁聖おめでとう。名誉本因坊もあれば最高だったね。なんで名誉本因坊がないんだろうねえ……」なんて書いています。小林光一名誉名人は、本因坊に4回挑戦しましたが、その相手が全部趙治勲さんで、その全てに負けたんです…
また、囲碁入門として紹介している張栩9段の「黒猫のヨンロ」、私もiPodで購入して(380円)、やってみましたが、なかなかいいですよ。囲碁を始めたい方にお勧め。
NHK杯戦囲碁 黄翊祖8段 対 河野臨9段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番は黄翊祖8段、白番は河野臨9段です。黄8段は3大タイトルのリーグにすべて入っています。河野9段は最近好調で棋聖戦の挑戦者になり、井山棋聖から1勝を挙げています。対局は、河野9段が4手目を三々に打ったことから、白の実利、黒の模様という展開になりました。白は右辺の黒模様を消しに行きました。黒はこの白を攻めましたが、下辺に白を追って、白が黒の覗きに対し普通に継がずに黒に突き当たって受け、黒がはねたのに対し、切りを入れました。黒はこの切られた石を左に這って頑張って受けたのですが、これがどうだったか、白がこの這った黒を追って左下隅に向かって延び、この結果白を攻めていた黒2子が取られてしまいました。しかも右下隅がそのまま黒地になった訳ではなく、白はすぐに手をつけて、結果として簡単に活きてしまいました。ここで形勢ははっきり白に傾きました。黒は2子取られた結果、左辺の黒が切り離されて薄かったのですが、それでも左上隅の三々に入って、両方を頑張りました。結果的に両方黒は活きたのですが、白はいじめて十分と見ていました。ヨセは白が少し損をしましたが、黒はコミを出すことが出来ず、黒の投了となりました。
趙治勲名誉名人・二十五世本因坊の「お悩み天国② 治勲の爆笑人生相談室」
趙治勲名誉名人・二十五世本因坊の「お悩み天国② 治勲の爆笑人生相談室」を読了。週刊碁に連載されていたもの。(囲碁を知らない人はびっくりされるかもしれませんが、囲碁の週刊新聞があるんです。私も学生時代は毎週買っていました。碁の雑誌がほとんど無くなる一方で、週刊碁は今も出ています。)趙治勲さんのTVの碁での解説とか、各タイトル戦での挨拶とかとても面白いので有名ですが、文章の方でも爆笑ものです。あまり期待しないで買ってみましたが、とても面白いです。囲碁をまったく知らなくても問題なく楽しめます。囲碁を知っている人にはもっと面白く、小林光一とか張栩の悪口とか、山城宏日本棋院副理事が登場したりします。趙治勲さんは、現時点で棋士の中でもっとも多数のタイトルを獲得した人で、もう還暦を迎えられていますが、現在でも第一線の棋士として活躍中です。