「人工知能は碁盤の夢を見るか? アルファ碁 VS 李世ドル」を読了。アルファ碁と李世ドルの対戦については、これまで棋譜をじっくり眺めておらず、今回初めて全局の棋譜を見ました。碁盤に一手一手並べた訳ではないのですが、アルファ碁が決して完全なソフトではないことはわかりました。多くの人は、コンピューターは部分の読みで人間に優り、人間は全体の構想力でコンピューターに優ると思われると思いますが、5局の棋譜を眺めた限りでは、実際は逆です。コンピューターは決していつも部分的に正しい手を打っている訳ではなく、李世ドルの読みや他の棋士が後から発見した手の方が良かったケースが何度もありました。また第4局で李世ドルの「勝着」となった白78の「神の手」も正しくコンピューターが応じていれば成立していませんでした。むしろコンピューターが優れているのは数手のセットで、人間が考えつかないような構想を見せてくれた所で、囲碁というゲームの奥深さがいっそう明らかになったように思います。また、第1局から第3局までは李世ドルはほとんどいいところがなく、コンピューターにやられっぱなしでしたが、第4局で初勝利し、第5局も惜しい戦いでした。このことは、李世ドルがアルファ碁との戦いに慣れてきて学習効果が出てきたことを意味します。もし、5局で終わりでなく、さらに対局が続けば李世ドルがもっと勝つ場面があったように思います。また、持ち時間が2時間というのも人間にとって不利です。アルファ碁の打ち方は、間違いなく人間が打った碁をベースにして学習したものですし、第4局で見せた明らかにバグであるような2手もあって、まだまだこれからという風に思いました。オセロも今は人間はとても勝てないですが、森田オセロが出てきた頃は最初の頃は人間に連勝していても、やがて研究されて人間の勝率が良くなった、ということもありました。コンピューター囲碁もまだこの段階で、完全に人間がコンピューターに負けたという段階までにはまだ来ていないように思います。
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