白井喬二の「河上彦齋」(かわかみ・げんさい)を読了。1943年(昭和18年)の出版。この時期の白井喬二の作品にありがちな、時局迎合的な小説。河上彦斎は、幕末の肥後の藩士で、人斬りで知られ、佐久間象山を斬り殺したのが河上彦斎です。徹底した尊王攘夷の人で、長州藩と一緒になって蛤御門の変で戦ったり、高杉晋作を助けて奇兵隊に参加したりしています。その後肥後藩に戻りますが投獄され、明治になってから恩赦で許されます。しかし、明治政府が開国の方針を採ったのに対し、一貫して攘夷を主張し続けたので疎まれるようになり、ついには無実の罪を着せられ、東京で死刑になります。白井はこの河上彦斎を何か理想の人のように描いていて、そこが時局迎合的です。もっとも国を挙げて「攘夷」を実行中に書かれたものですから、やむを得ないのかもしれませんが。私は読んでいませんが、「るろうに剣心」という漫画の主人公がこの河上彦斎をモデルにしたんだそうです。
白井喬二の「河上彦齋」
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