国枝史郎の「蔦葛木曽桟」(つたかずらきそのかけはし)上巻を読了。国枝史郎については、白井喬二以上に読み込んでいて、2012年末から2013年初めにかけて、青空文庫に入っているものをKindleで全部で67作ほど読了しています。その時、「蔦葛木曽桟」については、まだ青空文庫に入っておらず未読のままでした。2016年の4月に青空文庫に入ったようですが、今回は文庫本を求めて読みました。国枝史郎と白井喬二を比べると、一つ一つの文章の詞藻の素晴らしさ、美文という意味では国枝の方が優れています。ただ、国枝は白井喬二に比べると長篇の構成力という意味では大きく劣ります。国枝の作品は長くなってくると途中でストーリーが破綻してきて、そのまま未完となってしまっているものも多くあります。というかこの「蔦葛木曽桟」も、結局「前篇」止まりで終わってしまい、その後続きが書かれることがなかったもののようです。イスパニアのキリスト教の司僧が日本に布教のためにやってきて、木曽の領主の義明のために斬殺されるが、残された娘は遊女となって義明に近づき、また息子は御嶽冠者と名乗って、それぞれ父の敵を討とうとするのですが、途中で敵討ちはどこかにいって、どんどん話が明後日の方に膨らんで行く所で、上巻は終わります。
国枝史郎の「蔦葛木曽桟」(上)
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