2月に、音の工房のPCL86シングル超三結アンプキットで、プリント配線板ベースの真空管アンプキットの作成に成功、また部品のほぼ総取っ替えも大成功でした。
それで今度は手配線のキットをもう一度作りたいと思ったのと、現在KT77とEL34がそれぞれ4本余っているので、これが使えるアンプキットを探しました。結果としてサンバレーのSV-P1616D(真空管無し)、税抜き95,000円、を買いました。(本当は上杉佳郎さん設計の真空管アンプを自分でシャーシの穴開けレベルから作ってみたいですが、まだそこまでのノウハウと知識が無いです。)
他のページで書いたように、このサンバレーのアンプは本当は「買ってはいけない」と判断しているものですが、部品の大幅取っ替えを行えば大丈夫かと思いました。また、最初にここのアンプキットを組み立てたのはほぼ10年前なんで、さすがに色々批判されて多少はまともになっているかと期待しました。しかし、届いた現品の部品を見て、期待は悪い方に裏切られました。良くなるどころか、更にひどくなっていました。以下、どういう風に変えるか、どこがおかしいかを説明します。(以下の写真は左がキット付属のもの、右が私が自分で用意したものです。)
1.電源スイッチ
サイトの写真ではベークライトのボディーだったので、お、ついにNKK製トグルにしたかと思ったら、届いたのは黒い中国製トグル。しかも定格20A@12VDC、ってこれは自動車電装品用ですが…しかもタブ端子(ファストン端子用)!これだけでもサンバレーという会社の部品の選定がいかに適当かが良く分かります。DC12Vで20Aという定格は、NKKのスイッチの例で125VACに換算すると、せいぜい6A~8A定格に過ぎません。このアンプキットに付いているヒューズが5Aですから、この定格はちょっと不安があります。真空管アンプの電源部には大容量のコンデンサーが使われているため、スイッチONの瞬間にかなりの突入電流が発生します。しかもこのアンプにはスパークキラーは付いておらず、何も突入電流対策はされていません。速攻でNKKのS-21Aを注文しました。(2極単投=ON-OFF)こちらは125/250VACで15Aの十分ゆとりがある定格です。2極にしているのは、電源の+と-側を両方一度に入り切りする「両切り」にするためです。高電圧がかかる機器では普通両切りにします。なお、このNKKのSシリーズのトグルは上杉研究所の真空管アンプにも電源スイッチとして使われています。(型番は違います。)
それからスイッチONの時の突入電流を防ぐスパークキラーですが、何と10年経っても付いてきませんでした!たかが200円もしない部品なんですが。デフォルトのまま使うと、ON時のポップノイズでスピーカーが傷むだけでなく、中国製自動車用トグルの接点も損耗して行き、おそらく5000回も開閉すればダメになるのではないかと思います。(ダメにならなくても接点の損耗により接触抵抗が増加し、音質的にどんどん劣化して行きます。)ちなみに音の工房のアンプキットにはきちんとスパークキラーが付いてきましたし、エレキットのアンプはスパークキラーまたは遅延リレーで対処しています。トライオードの完成品は遅延リレーで突入電流対策をしています。何もしていないのはサンバレーのアンプだけです。ちなみにスパークキラーは電源トランスの0Vと100Vの端子に接続します。スイッチに並列に接続すると、スイッチがOFFの時でも50Hz、60Hzという交流がわずかですがスパークキラーのコンデンサーを流れます。
2.電解コンデンサー
電解コンデンサーで一番大事な電源での平滑用の温度定格が他のが105℃なのに85℃です。私が買ったのは当然105℃で電圧も350VDCにしていますが(キット付属品は315VDC)、高さがありすぎてケースに入らないので放熱も兼ねてケースに穴を開けることを考えています。また一応同スペックで高さが同じのも取り寄せ中です。
3.カップリングコンデンサー
同じ会社の真空管アンプマニアに海神無線という店を教えてもらって、ASCと言う会社のフィルムコンデンサーを買いました。しかし耐圧が付いてきたものよりちょっと低いので、別のものを検討しています。
4.セメント抵抗
カソード抵抗用に20Wのセメント抵抗が付いてきています。しかし、以前作ったサンバレーの300Bシングルのセメント抵抗は、下の写真のような状態になっています。(このグリスのようなしみ出して来ているのが何なのかは不明です。一応まだ動作はしています。)実はセメント抵抗の耐熱性ってあまり高くはなく、発熱が多い場合は、金属ケース固定抵抗を使うべきだと思い取り寄せ中です。しかもマニュアルにはこのセメント抵抗の細いリード線で、熱対策のため基板から浮かせて取り付けろとなっています。振動による音の劣化が懸念されます。
5.その他抵抗
その他の抵抗も、すべて定格を1ランク上げ(例えば1/2W→1W、1W→3Wなど)、TOAかVishayのものに変更します。音質のためと言うより、全体での発熱を下げるためです。
6.ボリューム
今回付いてきたのが、またも左の小型で摺動面が露出している安物です。ツマミも安物のラジオのようです。以前300Bシングルのアンプにもこれと同等のものが使われていて半年で壊れました。(摺動部が露出しているのでホコリやゴミ等が中に入れば短期間でダメになります。)当然右のアルプスアルパインのRKシリーズに変更します。穴径を大きくし、回転止めの穴を新たに開ける必要があります。
7.ACインレット
付いてきたのはアース端子無しのもの。確かにアース端子には普通接続しないので不要と言えば不要ですが、コネクターの物理的な固定には役に立っている筈です。ともかく少しでも安物をというのは徹底されています。
8.整流用ダイオード
これは品質とか信頼性の問題では無く、音質の向上策として、今回初めてファーストリカバリーダイオードを4本使って自分でブリッジにして使おうと思っています。
9.真空管ソケット
付いてきたのはプラスチック製。挿入しにくい上に固定も弱いです。ステアタイトというセラミック製のに変更。このアンプ、出力管を色々差し替えられますよというのがコンセプトのようですが、それであれば真空管ソケットは良質なものを使うべきです。そうでないと接触不良とか最悪ピンが折れると言うトラブルが予測出来ます。
10.配線材
サンバレーのアンプキットは、スピカー出力回りにシールド線を使いますが、上杉佳郎さんによれば真空管アンプにシールド線は不要で、却って高域が落ちたりすることがあるということであり、今回はシールド線は使わないつもりです。その代り、音の工房のアンプでマスターしたツイストペア線は使いまくろうと思っています。その他付いてきた線は細すぎで、もっと太いOFC線やテフロン絶縁の線を使う予定です。
以上見て来てお分かりになると思いますが、サンバレーのアンプキットは組み立てた直後はちゃんと音が出ていたとしても、半年、1年経つとトラブルとなることが十分予測出来るような、そんな安くて信頼性に疑問がある部品が多用されています。間違えても完成品を買わないように。完成品で買いたいならトライオードの真空管アンプの方が10倍まともです。キットを買う方も、安い部品は総取っ替えした方がいいと思います。サンバレーのサイトでカップリングコンデンサーのアップグレード用のものを売っていますが、そういうものを買ってそこだけ良くしても、他の部分が故障したら何の意味も無いですから。