「君の名は」第2部におけるアイヌ女性の描写について

今日のオンラインの英会話で、「君の名は」(新海監督のアニメではなく、ラジオドラマ+映画の)の第2部でアイヌの女性が典型的な(少数民族への)偏見を持って描写されているというのをテーマにして話しました。北原三枝が演じるアイヌのユミという娘は、ヒロインの真知子と正反対で、情熱的で大胆で行動的でという感じで描かれています。つまりはビゼー(メリメ)のカルメンと同じです。
しかし、最近「まつろはぬもの」というアイヌと日本人の混血で語学の天才であったことから松岡洋右の密偵となって戦地を飛び回ったシクルシイという人の自伝を読んでいたら、彼の祖父が彼の出生(大正7年4月29日→昭和天皇と同じ日生まれ)を役場に届けにいった時の話が出てきます。そこに役場の人間のセリフとして「あんたの娘は誰とでも寝るんだな」というのが出てきます。それを聞いた彼の祖父は激怒していますが、しかし実際に3人の男性と関係し5人の子供を産んでいたようです。この女性が特異な存在なのか、アイヌの女性の一般傾向として性道徳的に緩いのかは判定が難しいですが、実際に日本人とアイヌの混血がかなり顕著に認められるという事実も考えると、このユミというキャラクターは、必ずしも脚本を書いた菊田一夫の偏見だけからではなく、少なくともユミのような性格のアイヌの娘がいてもおかしくはない、という了解があったような気がしてきました。(この「君の名は」第二部のアイヌ文化の描写については、実際のアイヌの人がチェックしていた、という話も聞いています。)一歩間違うとそれこそ思い込みによる偏見になりますので注意が必要なことを自戒しています。