本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山田規三生9段、白番が瀬戸大樹8段の対戦です。局面が動いたのは下辺で、黒が白に右下隅から詰められて、普通は下辺の黒を何か補強して守る所でしたが、黒は敢然と白の間に打ち込んで行きました。この手は若い頃「ブンブン丸」と言われたくらい力が強く強引に戦いに持って行くのが得意な山田9段らしい手でした。しかしその後の瀬戸8段の打ち回しが巧妙で、黒はこの後少しずつ形勢を損ねて行き、結局それは最後まで覆りませんでした。ポイントは2つあり、白が下辺左の黒にもたれて中央の白を強化し下辺右の黒を封鎖した時、黒は右下隅の三々に打ち込んで、場合によっては隅で地を稼いで振り替わろうとしました。しかし白の冷静な応手でこの手は不発になり、黒の一団は上方に脱出したものの、右下隅に打ち込んだ黒はそのまま持ち込みになりました。2番目のポイントは白が下辺右からの黒をまだ狙っている時に、右上隅の黒の二間ジマリの間に付けていった場面です。この手は単なる黒地の侵略の手段としても最近は普通の手ですが、白の狙いは隅を捨て石にして右辺から締め付けて壁を作り、黒の下辺右からの石を攻めることでした。この狙いは見事に奏功し、下辺右からの黒石は命からがら逃げ出し何とか右上隅に連絡しましたが、その代償として上辺中央の黒1子が切り離されて上辺が白地に変わり、なおかつ中央にも白地が見込めるようになりました。この結果、AIの判定では白の勝率が95%になり、以降黒の逆転のチャンスはありませんでした。白の名局で白の中押し勝ちとなりました。
NHK杯戦囲碁 山田規三生9段 対 瀬戸大樹8段
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