2A3ロフチンホワイトシングルアンプ製作中

先日、2A3アンプ改造の45アンプを作ったばかりですが、今度は2A3ロフチンホワイトシングルアンプに挑戦しています。シャーシ加工が面倒なので躊躇していたのですが、家に一番最初に組み立てた真空管アンプ(サンバレーのJB300BVer.3)があるのを思い出しました。このアンプは部品の故障で今は動いておらず、多分セメント抵抗か電解コンデンサーを交換すれば動くのですが、300Bアンプは他にあるので未練はなく、解体してシャーシだけにしました。元が300Bシングルアンプですから、使う部品は似たようなもので、むしろ元が3段増幅で今回は2段増幅なので取付け穴は余りますが、まあ放熱用でそのままにします。(ロフチンホワイトアンプは熱くなるので有名です。)ようやくトランスやチョークコイルが届いて、外側の取り付けは完了しました。
後は内側で抵抗とコンデンサーを取付け、配線するだけです。
多分お盆休み中には完成(トラブルが無ければですが)すると思います。
中の写真で一番右にある大きめの部品はフューズです。前から2次回路にもフューズを入れるべきと思っていて、今回ロフチンホワイト回路で450Vと電圧が高いのと、貴重なヴィンテージ管を使うことを考えて、500V1Aのフューズを使っています。ケースが大きすぎて、出力トランスの一つのネジ穴に干渉してしまったのは失敗でしたが、ネジをアロンアルファで固定してごまかしました。まあ4箇所の内3箇所はちゃんとネジ止めしていますから大丈夫でしょう。

45アンプ無事稼働!

ヤフオクで落札したRCAの45ペアが到着。早速測定して動作に問題が無いことを確認してから、2A3アンプ改造の45アンプに装着して聴きました。最初通電5秒くらいで片チャンネルから「ガリッ」という音がしてあせりましたが、その後は問題ありませんでした。音は2A3の音を更に柔らかく繊細にした感じで、瀬川冬樹さんとか浅野勇さんがこの3極管を好まれたのは分るような気がします。出力音圧レベル88dB/m/Wのスピーカーでまったく問題無く鳴っています。(プリアンプ使用)

直熱三極管2A3 8種ダイナミックテスト補遺

前回の2A3ダイナミックテストにもう1機種付け加わりました。私がまったく知らなかったJMTECというブランドのもので、おそらく岡谷電機産業が製造したものではないかと言われています。

(9)JMTEC 2A3 評価:
特性は左右で、Ia(プレート電流)が43.27/36.18mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が4303/4562℧(Ref値5250℧)です。新品ではなく前のオーナーがそれなりに使っています。2枚プレート(H型)で、スプリングによるテンション調整です。全体に作りは非常に丁寧で、やはり日本製というのは間違いないと思います。それで音ですが、ほとんどRCAの1枚プレート、2枚プレートに負けていない、というか、非常に柔らかな音でかつ芯があり、またダイナミックな表現も悪くないです。音像が引き締まっていて、音場も広いです。それからちょっと驚いたのは、メルカリで買った個人の方作成の2A3無帰還シングルアンプを45用に改造(カソード抵抗を830Ωから1.5KΩに変更、出力トランスの2次側を8Ωから4Ωに変更)したのですが、この条件でも2A3は動作します。それでこの45条件で作動させた時のこの球の音質が非常にいいんです。ヒーター電流は定格が2.5Aに対し1.7Aで7割弱くらいしかありませんが、何というか非常に品位のあるいい音で、音が弱々しいという感じもまったくありません。以前もKT120やKT150をシングルで本来の定格より低い条件で作動させたのが非常に良かったですが、真空管というのは特性を欲張らずに控えめに使うのがいいのかもしれません。真空管も奥深いですね。

2A3アンプを45アンプに改造

真空管アンプ沼が更に続いています。2A3に続いては、その一つ前の世代の真空管の45を聴いてみたいと思います。といっても、またシャーシから作るのは気力が湧かず、またヴェーバーの翻訳が遅れてしまうので不可。でも市販の45アンプはと言えば、山本音響工藝の28万円もする高価なもの(しかも注文後3ヵ月待ち)くらいで、後は見当たりません。それで色々調べていたら、2A3と45のスペックは、2A3のヒーター電流が45のそれの倍(つまり2A3には45が2つ入っている感じ)で、後はプレート電圧もバイアス電圧もほぼ同じなので、2A3のアンプのカソード抵抗を倍くらい(1.5KΩ)に上げて、なおかつ出力トランスのスピーカー側の巻き数を半分、つまり今まで8Ωを使っていたら4Ωにする、これだけで45アンプに変身するみたいです。2A3のアンプの先日買った秋一郎さん製作のは下手に改造して壊すと嫌なのでそのままにし、改造のベースになる安い2A3アンプを探しました。そうしたらメルカリで個人の方が出品されていた2A3アンプ(CR結合、無帰還)が何と55,000円で買えました。それで到着したらまたびっくり、付いていた真空管が2A3がJMTEC(岡谷)、整流管の5U4GBがシーメンス、そして6SJ7がなんとRCA製でした。トランスもノグチ(ゼネラルトランス)なので、部品代だけで十分元が取れそうです。(計算したら、真空管とトランス類だけで軽く55,000円を超えます。他にもカップリングコンデンサーはヒグチのオイルコンデンサーですし、かなりいい部品を全体に使っています。)ただ難点は見た目がかなりイマイチで、木のフレームに金属板をはめ込んだだけで、裏蓋はまったくなく、それでいてハムバランサーの操作は裏からやらないといけず、安全面ではかなりお粗末です。後電源コード(ACインレットはなく、電源トランス直結)と電源スイッチもかなり安物です。まあとにかく45を動かすのは、上の方にある白いセメント抵抗2つを1.5KΩ10Wぐらいのものに変えることと、後はトランスのOutput側で現在8Ωの線がつながっているのを4Ωの線につなげかえるだけです。部品が届けばおそらく30分もかからないでしょう。それで45の真空管自体は、eBayでSYLVANIAのペアが1万円ちょっとで買えて到着待ちです。

クリプシュのスピーカー RP-160M

実は一月ぐらい前に、アキュフェーズのプリメインアンプ2台をオーディオユニオンに売却しました。1台は買ってから8年、もう1台は15年くらい経っていたのに、買った時に払ったお金の45%で売れました。アキュフェーズ恐るべし、って実はアキュフェーズのアンプは2年に一回くらい新型が出るけど、中身はほとんど同じようなものなので、中古品買っても同じだ、ということで中古品の人気が高い結果だと思いますが。(後、新品は非常に高いので手が出ないけど、中古なら、というのと、またアキュフェーズは会社設立以来の全てのアンプの部品が取ってあって、古いアンプでも適価で修理してくれますので、それも中古人気につながっていると思います。)
ま、それは置いといて、それでオーディオを売却したお金は結局別のオーディオに化けています。クリプシュのRP-160Mというスピーカーを買いました。このブランド、日本ではあまり知られていませんが、昔クリプシュホーンという歴史的名機を作った会社で、アメリカではもっとも売れているスピーカーブランドなんだそうです。日本のAmazonで送料入れてペアで9万円でしたが、アメリカのAmazonではわずか$550です。私が一番最初に買った本格的スピーカー(オンキヨーM77)より安いです。
それで特長ですが、出力音圧レベルがなんと96dB/mもあり、低出力の真空管アンプには最適です。音も開放感あふれるアメリカンサウンドで、気持ちがいいです。(写真右が裏面ですが、高音のホーンの裏側に結構大きめのバスレフポートが開いているので、背圧は少なく、実に気持ち良く鳴ってくれます。)また能率が高くて細かい音が良く聞こえる結果として音場は広く、音像も明確です。ただサ行の子音が多少きつくなるのと、ずっと聴いていると少し疲れる気はします。また価格相応でコクとか艶には乏しいですね。でもコストパフォーマンスという意味では、最高でしょう。このスピーカーが日本であまり売られていない(過去にオンキヨーとかヤマハが輸入販売していましたが、いずれもすぐ止めたみたいです)理由は、このスピーカーのコストパフォーマンスの圧倒的高さが分ると、誰も馬鹿高いスピーカーなんて買わなくなるからではないかと思います。

直熱三極管2A3 8種ダイナミックテスト

先日、2A3の無帰還アンプを購入してから、またも球転がし(rolling tubes)趣味が始まって、夜中に小人が出てきて、勝手にPCを立ち上げ、オークションで入札してしまうんですね。(笑)そういう訳であっという間に8種類になったので、私なりのレビューを上げます。尚、「直熱3極管book」というムックがあり、それにも各種2A3のレビューが載っていますが、テストが行われたのが2000年で、最新の2A3はまったく含まれていません。またWeb上にも300Bのレビューは多数見かけますが、2A3のはあまり多くありません。そういう訳で私のも多少は参考になるかと思ってアップします。

1.テスト環境
パワーアンプ:秋一郎さん設計・製作の2A3無帰還シングルアンプ。整流管は東芝のNOS品の5U4GB(直熱整流管)、電圧増幅部がSYLVANIA 6SL7GT(中古品)
プリアンプ:LUXMAN CL-38uC
SACDプレーヤー:Accuphase DP-570
スピーカー:Klipsch RP-600M(出力音圧レベル:96dB/m)
テストCD:村治佳織「CAVATINA」、河村尚子 ベートーヴェンピアノ・ソナタ Vol.2、リンレコード The Super Audio Surrounding Collection Volume 2

真空管の特性測定:etracerを使用

2. テストした2A3 8種
(1)JJ 2A3-40、実売ペアで4万7千円くらい、新品
(2)SOVTEK 2A3、ペアで2~3万円、新品
(3)PSVANE 2A3 Tii、ペアで4万5千円くらい、新品
(4)RCA JAN 2A3、1952年製、ヤフオクで入手、ペアで2~4万円くらい
(5)RCA 2A3、2枚(H型)プレート、製造年不明、ebayで入手、ペアで4~5万円くらい
(6)RCA 2A3、シングルプレート、製造年不明、メルカリで入手、価格は秘密ですが、訳あり品(片方が振るとカラカラ音がする→中の絶縁部の一部が欠けて落ちたもので、音質には影響なし。)。一般に良品はペアで15万円~25万円程度。
(7)松下電産 UX-2A3、1949~1952年頃の製造、eBayで入手、ペアで3~4万円くらい
(8)エレクトロ・ハーモニックス 2A3Gold、2A3の無帰還アンプに付属していたもの、ペアで2~3万円

3.テスト結果(写真はクリックで拡大します。)
(1)JJ 2A3-40 評価:
特性は左右で、Ia(プレート電流)が61.01/60.33mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が5448/5722℧(Ref値5250℧)と特性的には2A3の仕様に非常に忠実で左右も揃っています。また1枚プレート(十字型)で釣り竿式のフィラメントテンション調整で、これはRCA 2A3の最初期の仕様と同じです。ですが、大きさは通常の2A3よりはるかに大きく、というかこれはJJ 300Bとまったく同じです。(元々300BもJJ製は他の300Bより大きいです。)中身も完全に同じで、おそらく違うのはフィラメント部だけかと思いますが、それは外から見えません。
音は、構造が同じだけあってJJの300Bとの共通点は多く、音が濃密で、直接音と間接音が溶け合ったような独特の音場を作り出します。(おそらくガラスの厚みと硬度が影響しているのだと想像します。)またプレート損失も2A3の数値ではなく300Bのそれだと思われ、余裕があります。Fレンジは広いです。音場は左右が狭く奥に拡がるような感じ。音には適度な力強さがあり、低域もよく締まっています。ボーカルの定位は少し大きめですが、声の再現は悪くないです。長く聞くと少し疲れる音でもあります。以上全体に私の評価は高いんですが、300Bとどこが違うんだ、こんなのは2A3じゃない、という声が聞こえてきそうです。そこにこだわらなければお勧めです。

(2)SOVTEK 2A3 評価:
特性は左右で、Ia(プレート電流)が71.36/68.67mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が6020/5928℧(Ref値5250℧)と標準値を上回る数値になっています。1枚プレート(十字型)でバネ式のフィラメント固定です。
特性値が標準より大きいせいか、音は力強く歯切れが良いですが、逆に言えばやや硬い音でもあります。低音の弾力感は良いですが、高音の伸びはもう一つに感じます。音像は明確ですが但し多少大きめな感じです。ハッキリ

 

、クッキリ系で質実剛健な音ですが、逆に言えば洗練されていないワイルドな音とも言うことが出来ます。こういう系統の音がお好きであれば、価格もリーズナブルですし、良いかと思います。ボーカルが良いと評しているサイトもありましたが、私は特にそういう印象は受けませんでした。


(3)PSVANE 2A3 Tii 評価:
特性は左右で、Ia(プレート電流)が34.14/34.38mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が4020/4029℧(Ref値5250℧)と左右が揃っているのはいいんですが、新品であるにも関わらず標準値からするとかなり低く、本当にこれ2A3?という感じです。(使い込まれている中古品がIa、Gm共に低下しているのは当り前で不思議はありません。)PSVANEの2A3には現在売られているものでは3種類あり、これは中間グレードです。中が見えないのはカーボンスートと言って、一部の真空管で採用されているやり方で、ガラス管に当たる迷走した電子による悪影響を低減するとか、熱の放散を抑え

るとかの効果があると言われていますが、聞いた限りでの効果は不明です。(他にはKen-Radの昔の2A3にカーボンスートのがあります。)おそらくベースとなっているのは過去に燭光電子が開発した2A3ではないかと思われます。(2A3-Zがやはりカーボンスートでした。)それはプレート損失が高く、やろうと思えば2A3よりも出力W数を大きく出来る仕様でしたので、2A3の標準的な条件で測定してIaが低く出るのはそのせいかもしれません。1枚プレート(十字型)にバネ式のフィラメント固定です。
音は全体に重心が低めで高音があまり伸びていない感じで低域寄りに感じます。音像は立体的で特に前後が良く出ます。但し音像はやや大きめです。村治佳織のギター演奏のノイズ(フレットをこする時のキュッといった音など)が何故か少し強調された感じで聞こえます。弾力感はありますが、低音が膨らんで若干胴間声になっている感じです。音に力と品位はあり、また弦もきれいです。もしかするとこの球は2A3の標準的な定格ではなく、もっとプレート電圧を上げて出力を上げた時に本領を発揮する球ではないかと思いました。

(4)RCA JAN 2A3 評価:

特性は左右で、Ia(プレート電流)が52.62/55.38mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が5092/5022℧(Ref値5250℧)とまあまあNOS(新古品)と言ってもいいレベルかと思います。このJANというのはJoint Army & Navyの略で、米国の軍用に使われたもので、一部仕様を簡略化する代わりに逆に堅牢化を行っています。2枚(H型)プレートですが、フィラメントのテンション調整機構は無くなっています。これはフィラメントに使うタングステンに強度があるものを使って、テンション調整を不要にしたもののようです。このJAN品は米軍の倉庫に眠っていたのが市場に多く出回っていて、ヴィンテージ品としては比較的安く買え、また私が入手したもののようにほぼNOSに近いものが多いようでお買い得です。
音はまず音場が広く、まんべんなく拡がります。ただ音像が若干膨らみ気味、低域が不明確、高音に若干の歪みを感じるなど、(5)と(6)のJANではないRCA製と比べると、ほんの少しですが荒さが感じられます。ボーカルの実在感とかは良く、またレンジもそれなりに広くて、モニター的な傾向の音ではあります。価格も比較的安いのでヴィンテージ管入門としてはお勧めです。

(5)RCA 2A3、2枚(H型)プレート 評価:
特性は左右で、Ia(プレート電流)が61.36/66.76mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が5307/5495℧(Ref値5250℧)とどちらもRef値を上回り、完璧なNOS品です。到着した時に箱も付いていなくてプチプチでくるんであっただけなので、測定するまでは不安でしたが、杞憂でした。2枚プレート(H型プレート)で、フィラメント調整無しなので、特性値からしても比較的新しい管かと思います。
まずは音に躍動感があり、また中低域にちょっとしたまったり感がある一方で高音には繊細さもあり、これは1枚プレートとも共通します。またかすかにヴェールが被さったような音場表現ですが、これも1枚プレートと共通です。個人的にはこれはST管の大きなガラスによるマイクロフォン歪みが影響しているのかなと思います。300Bなんかもっと顕著で私は「夜霧」と呼んでいます。音場の広がりは左右、奥行き共に優れています。また定位も良く音像も小さめです。ボーカルが自然で滑らかであり、キツい、汚い音が出ない品位の高い音です。よく、2A3は1枚プレートが全てで、2枚プレートは箸にも棒にもかからない、といった評価をする方がいらっしゃいますが、それは私が聴いた限りでは間違いだと思います。

(6)RCA 2A3、シングルプレート 評価:

特性は左右で、Ia(プレート電流)が65.57/59.55mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が4275/4465℧(Ref値5250℧)であり、NOSではなく間違いなく前のオーナーがいらっしゃいますが、かなり大事に使われていたようで、特性値の低下は少ないです。
プレートは1枚で、現在発売されている他社の1枚プレートは直交する支持板が追加されていますが、こちらは本当に1枚だけです。フィラメントのテンション調整はバネ式です。なお、WEの300Bが釣り竿式のテンション調整なので、そちらの方が特性的に優れていると思われる方もいらっしゃるで

しょうが、それは間違いで、釣り竿式のテンション調整はフィラメントのテンションにばらつきが出やすく、それを改良したのがバネ式です。
音ですが、まずは音離れが良く、音が飛んで来る感じで歯切れが良いです。無帰還アンプは元々そういう傾向があるようですが、この管を使うとそれが更に強調されます。また適度なまったりした柔らかさと高音の繊細さが同居しており、非常に品位の高い音です。但し経年変化なのかどうかは分りませんが、Fレンジ的にはいわゆるカマボコ型の音で、超高域は早めに落ちている感じです。それから中低音は若干ですが膨らむ感じもあります。音場は広いですが、どちらかというと中央部分が濃い感じの音場です。後の音の傾向は2枚プレートとも共通ですので省略しますが、まったりさ+繊細さという特長は鳴らし始めた瞬間にすぐ分り、この1枚プレートを高く評価する方が多いのは分るような気がします。但し価格的には非常に高いですし、また元々この1枚プレートの長期信頼性に問題があったため2枚プレートに変わったのだということを考えると、無理してまで買うものではないように思います。上でも書きましたが、2枚プレートでも十二分に水準以上の音です。

(7)松下電産 UX-2A3 評価:
特性は左右で、Ia(プレート電流)が59.42/52.54mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が5266/4483℧(Ref値5250℧)で悪くはないですが、左右がアンバランスです。松下電産が真空管の製造を始めたのは戦後であり、またパッケージの漢字が旧字体だったので、2本とも1949~1952年頃の製造と思われます。ただ2本のプレートの表面の色が違う(左はアルミ色、右はカーボン色)なので特性値の違い以外にも厳密にはペア管ではありません。ただ、実際に聞いてみたら左右で音が違うという感じはしません。2枚プレートで、フィラメント調整はバネ式です。
音は音像がやや大きめです。また低音にやや締まりがなく、またダンパーにくるまったような音です。ただピアノの高音などの音色はとても綺麗です。音場はあまり拡がらず真ん中にまとまる感じです。ボーカルの実在感は良いです。フルートや弦の高音が若干ですが歪むような感じがする時はありますが、クリップすることはありません。松下の真空管は後にフィリップスブランドのOEM生産をするなどそれなりに高く評価されていますが、この時期のものはまだ試行錯誤しているような感じでしょうか。ただ普通の音楽鑑賞用としてはほとんど問題ないです。このレビュー全体にそうですが、わずかな差異を強調して書いていますので。

(8)エレクトロ・ハーモニックス 2A3 Gold 評価:

特性は左右で、Ia(プレート電流)が34.65/50.53mA(Ref値60mA)、Gm(相互コンダクタンス)が3394/4953℧(Ref値5250℧)と右がまだ新品といって良いレベルなのに比べ、左はかなり使い込まれている感じでアンバランスです。この管だけ私が買ったものではなく最初からアンプに付いていたものなので、こうなった理由は不明です。これも十字型の1枚プレートでバネ式です。
エレハモというと、何だか安物のように評価する方が多いと思いますが、このgoldが付くシリーズは300Bもそうですが、非常にクオリティは高いと思います。この2A3のGoldも、非常に音楽的な、音楽を聴くのが楽しくなる鳴り方です。一つ一つの特性が優れているという感じでなく、全体のバランスで勝負しているような管です。定位は良く音像も明確です。ただギターのハーモニクスの響きがやや弱かったり、ピアノの高音の美しさがそれほどでもない、などうるさいことを言えばそれなりに弱点はあります。価格もそれほど高いものでもないので、オーディオファン向けというよりは音楽ファン向けの管です。

最後に、高槻電器工業が2A3を開発して2022年7月1日より発売を開始ししています。但し問い合わせたら注文が結構入っていて納期が2ヵ月かかるのと、価格がペアで16万5千円もするので、今回の評価には含めませんでした。その内購入するかどうかは現時点では不明です。

P.S. もう1機種、JMTECの2A3のレビューを追加しました。(2022年7月25日)

 

松下製2A3(UX-2A3)

パナソニックじゃなくて松下電産/ナショナルの2A3ペアをebayで入手。正式な型名はUX-2A3で、作られた時期は不明ですが、箱の底に「正價980円」と旧字体が使われているので(真空管の真の字も「眞」です)、昭和30年よりも前でしょう。(新字体は昭和24年に作られていますが、すぐに社会全体が新字体に変わった訳ではなく、黒澤明の映画でも「黑」が使われているのが、1950年代前半ぐらいまであります。)また品名がUX-2A3でこの品名が使われたのは昭和30年までなんで、おそらくは昭和25~26年ぐらいの製造かと思います。(もっと前という可能性もありますが、戦争中はこんなどちらかというと娯楽向けの真空管は作れなかったでしょうし、また戦後すぐもこんな高級真空管の製造は難しかったんではないかと思います。)
でもその当時で980円は、おそらく今だと1.5万円~2万円くらいのイメージでしょうか。2A3は高級な電蓄に使われる高価な真空管だったので、価格は頷けます。
音質は今聴いていますが、柔らかさの中に芯がある感じでまた大音量でもクリップしにくく、なかなかいい感じです。日本製2A3というと、東芝製の方が有名みたいですが、松下製もなかなか悪くない感じです。無帰還アンプは真空管の違いを良く出してくれます。

P.S.
https://holdings.panasonic/jp/corporate/brand/history.html
に松下/ナショナル/パナソニックのロゴの歴史がありますが、写真右側の丸に「ナショナル」のロゴが作られたのが1937年と1955年の間になっています。なので上記の推定はそう間違っていないと思います。

P.S.その2
https://radiomann.sakura.ne.jp/HomePageVT/Tube_Identify_Date.html#Mat によると、松下で真空管製造が始まったのは1946年でした。またソケット部に「W」と「S」ってあってロットかなと思いましたが、上記ページによればWが1949年、Sが1953年製みたいです。eTracerで測定してみましたが、2A3のプレート電流の初期値が60mAなのに対し、片方が58mA、片方が55mAで少なくとも片方はいわゆる新古品(NOS)のようでした。この2本は、プレートの色が違い、明らかに製造時期が異なっています。

 

1952年製RCA JANの2A3

ヤフオクで落札したRCA JANの1952年製の2A3が到着しました。JANというのは米海軍事用管という意味で(Joint Army Navy)、本来のデザインから若干機構を簡略化してコストを下げたものです。なのでオリジナルのビンテージ品よりは安く入手出来ます。出品者の情報では未使用品ということです。これはその内測定器で調べて確認します。しかし、1952年ということは70年前で、私よりも長く生きている管です。
音はまだ聴き始めたばかりですが、PSVANEのTiiに比べると高音が自然です。(逆に言うとPSVANEは高音にちょっと強調感、装飾めいた感じがあります。)またボーカルの艶についてはこちらの方がはるかに優れています。全体にとても良い感じで、これは下手すると300Bより上かもしれません。

B&W 706 S2 の再評価-無帰還アンプとの組合わせ


ちょっと思いついて、使っていなかったB&W 706 S2というスピーカーを物置きから取り出して、2A3無帰還シングルアンプに組合わせてみました。理由はこのスピーカーは音場がスピーカーの後方に広がる傾向があり、特にボーカルがそうでした。それに対し2A3無帰還シングルアンプは逆にボーカルが前に出るんで、組み合わせると丁度いいのではないかと考えました。結果は非常に良く、スピーカーの左右のユニットをつなぐ線よりわずか前くらいにボーカルが定位し、実在感があってなかなかでした。
ただこのスピーカーの欠点としては、音は美しいんですが、スピーカーが自己主張しすぎで、どんなソースを聴いても、このスピーカー独特の美音に変換してしまって、最初はいいですが、次第に飽きが来ます。(それが常用していない理由です。)この点は2A3無帰還シングルアンプとの組み合わせでも、多少マシにはなりましたが解消はされていないようです。
なお、このスピーカーのレビューで箱鳴りがする、と書いている人がいますが、それは単なるバスレフのダクトの共振(ヘルムホルツ共鳴)だと思います。私の試した限りでは、ダクトを完全に解放するより、付属のスポンジの外側だけをダクトに詰めるのがいいようです。全部詰めて密閉型にすると、若干ですが詰まった感じが出てきます。

整流管の品質について

真空管アンプと整流管について。真空管アンプを作る時、オール真空管にこだわる人は、整流に半導体ダイオードではなく整流管(2極管)を使います。その方が音がいいという主張ですが、故上杉佳郎さんも、ぺるけさんもそうい説には疑問を呈しています。個人的に、自分で作るアンプに整流管は使いません。
一番最初に組立てた300Bのシングルアンプが5AR4という整流管を使っていました。これの300BをJJ製に替えた時に、他の真空管もJJ製にしようと思って、整流管もJJ製にしたのですが、替えてすぐヒューズが飛びまくるという不具合が発生し、ヒューズの容量を増やしたりして色々調査しましたが、最後は整流管がビカビカとグロー放電して、明らかに整流管の不具合でした。その後、5AR4のソケットに入る半導体整流モジュールを試したりしましたが、結局ヤフオクで買った松下製の整流管(おそらく1960年代の製造)に替えたら、ピタリと不具合は治まりました。
それで何故現在作られている新品の整流管で不具合が出るのか調べて見ましたが、一説によるとRoHSというEUの環境規制である材料が使えなくなった結果、整流管の電気的耐久性が低下しているという話があります。これの真偽は確かめていませんが、ありえる話だと思います。何故なら私が勤めている会社で作っているスイッチにも同じような話があって、多くの会社で高定格のスイッチには接点部の銀にカドミウムを混ぜています。これがRoHSでやはり禁止なのですが、結局カドミウムを使わないと信頼性が確保出来ないということで、ずっと期限付き免除になっていて、期限が来る度に延長が繰り返されています。整流管にも同じような話があってもおかしくはないです。
今回、ヤフオクで落札した2A3の無帰還アンプが整流管でした。しかも最初に付いていたのは、トラブルを経験しているJJ製の整流管でした。すぐに手持ちの松下製(300Bのアンプに使っていたもの)に替えました。これでちょっと安心で、音質も気のせいかもしれませんが、柔らかくなりました。それで整流管というのは消耗品であり、1年ぐらいで寿命が来てもまったくおかしくないので、予備として東芝製と松下製をもう一本ヤフオクで落札しました。写真の右から2番目はSOVTEK製で、300Bのアンプに最初に付いていたものです。一番右はNational Electronicsというブランドのもの(これも新品ではなく中古品)で、松下製をヤフオクで落札した時におまけでもらったものです。作りは外から見る限りはしっかりしていますが、まだ使っていません。
ということで、結論としては、私は現在製造されている整流管の品質をあまり信用していません。この情報が本当かどうか分りませんが、トライオードの300Bアンプは最初整流管で出しましたが、整流管によるトラブルが続出したため、今は半導体整流に変わったということです。