私のオーディオチェック用ソースその2。エディアルド・パニアグアの”Alarifes Mudéjares”。タイトルは「ムデハル様式の建築家達」という意味。ムデハル様式とは、レコンキスタ(キリスト教徒によるスペインの国土の奪回運動)の後、スペインに残ったイスラム教徒の技術とキリスト教が融合して建てられた、アラゴンなどに多く残っている建築様式のこと。
このCDはパニアグアらしく人を喰っていて、建築家達がノコギリを引いたり、トンカチで釘を叩いて、という教会を建てるシーンから入っています。音場は広大ですけど、縦長の建物の中というのが良く分り、左右は狭く、上が広いです。特に2階か3階に水盤か人工の泉があるのか、水が高い所から流れているのが面白いです。教会の外からは秋なのか虫の声がしています。そこで演奏される曲は、建築様式と同じでキリスト教とイスラム教が混じり合ったスペイン独特のものです。エディアルド・パニアグアは「聖母マリアのカンティガ」を多数録音していますが、カンティガの音楽ともかなり近いです。というかパニアグア一家のことですから、厳密な考証に基づくものではなく、かなりの部分想像によるものでしょうが。
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私のオーディオチェック用レコード紹介:「平岡養一 木琴リサイタル」
私のオーディオチェック用レコードの紹介。
「平岡養一 木琴リサイタル」(東芝EMI TA-60005)(録音1974年8月)
平岡養一さんは、戦前アメリカに渡ってシロホン奏者としてあるラジオ局の朝の番組で15分ほどその演奏が通算4,000回も全米に流され、「全米の子供達は毎朝ヨーイチのシロホンの演奏で目を覚ます」とまで言われた人です。単なる補助的な楽器だった木琴(シロホン)を、ソロ演奏に耐える楽器にまで地位を引き上げたのは平岡養一さんです。
私は、音はあくまで柔らかいけど鋭く立ち上がる、という音が好きです。典型的なのはクラシックギター・アコースティックギターですが、シロホンもまさにそういう音です。このLPの録音はジャケット裏に写真がありますが、コンデンサー・マイク2本によるステレオで、マイクはシロホンの近くにセットされ、伴奏のピアノは右後ろから聞こえる配置になっています。平岡さんの楽器は、アメリカのディーガン社のものを、自分で改造されたもので、とても良い響きの楽器です。この楽器は平岡さんの死後、マリンバ奏者の通崎睦美さんに受け継がれています。それで通崎さんがこの楽器を演奏しているCDも持っていますが、録音はこのLPの方がはるかに良いです。シロホンの直接音と間接音の混じり合いが絶妙です。オーディオチェック用だけではなく、純粋に音楽としても好きなLPです。
ダブル・オーディオルーム
相模原に購入した中古の一戸建ては、5LDK+1S(収納部屋)と広いので、二部屋をオーディオルームにしようとしています。一つが主にクラシック音楽、もう一つが主にジャズを聴くためのものです。まあ男の隠れ家、英語でdenです。この週末にメインのレコードプレーヤーを移して、両方それらしくなりつつあります。
Kripton KX-5PXのファーストインプレッション(兼 渡邉勝さんへの感謝状)
KriptonのKX-5PXのファーストインプレッションです。私にとってはKriptonのスピーカーは2007年のKX-3P、2021年のKX-1.5に続いて3セット目です。今回KX-5PXを買った大きな理由の一つには、KX-1.5の音が非常に良かったので、最上位機種が欲しくなったというのがあります。
私が最初に買った本格的なオーディオ用スピーカーは、オンキヨーのM77という密閉型+ソフトドームの3ウェイスピーカーです。(1980年)そして2セット目が、有名なRogersのLS3/5Aです。(1987年)これも密閉型+ソフトドームのスピーカーです。そして今回また密閉型+ソフトドーム(KX-5PXのツィーターは正確にはピュアシルクリングダイアフラム・ツィーターですが、振動板に樹脂を含浸させたシルクを用いており、明らかにソフトドームの発展形です。)のスピーカーに回帰して来ている訳です。
その間に実は密閉型+ソフトドームの正反対の性格を持つ、バックローデッドホーンをハセヒロのキットで2台組み立て使用していましたし、更には3年くらい前にJBL4307や、オンキヨーのD-77NEのような本格的なバスレフスピーカーも買って使っていますし、またB&W 706 S2やTANNOY Autograph mini/GRのような、背面ダクトのバスレフ(低音の増強用にダクトを使うのではなく、スピーカーの背圧を逃がすことを主目的としたダクト配置のバスレフ)も買いました。
そういう訳で、密閉型(エアーサスペンション方式)、バスレフ型(ダクト前面、ダクト後面)、バックローデッドホーンというそれぞれの方式のメリットとデメリットはそれなりに理解して来ています。
どの方式にもメリットとデメリットはあるのであり、密閉型(エアーサスペンション方式)については、
メリット
1.エンクロージャーを密閉することにより、空気バネの力で比較的小形のエンクロージャーでも低域の再生限界周波数を下げることが出来る。
2.同じく空気バネの力で比較的大出力を入れることが出来る。
3.スピーカー背面の音がほぼダンプされ前面に出て来ないため、低音での再生の忠実性が高い。このため低音楽器の音程がきわめて明確である。
デメリット
1.聴感上の低域の量感はバスレフ型に比べると劣る。
2.空気バネの力が働くことにより、特に低域で細かな音が抑圧されて聴き取りにくくなる。
3.やはり低域で空気バネの力により詰まった感じの音になりやすく、過渡特性が悪くなる。
ということになります。
デメリットの3.は特にソフトドームを使った場合は低域だけでなく、中高域でもパルシブな音(例えばピアノやドラム)が丸くなりやすいということになります。日本における密閉型+ソフトドームの元祖はビクターが1970年代初頭に出したSXシリーズです。このSXシリーズはクラシック音楽ファンからは非常に高く評価された一方で、ロック音楽のファンなどからは酷評されることもある、好き嫌いのはっきり分れるスピーカーでした。このスピーカーの開発チームに参加していたのが、KriptonのKXシリーズのスピーカーの開発者である渡邉勝さんです。
前置きが長くなりましたが、今回のKX-5PXについては、驚くべきことに上記の密閉型(エアーサスペンション方式)の欠点がほぼ解消されています。
1.低域の量感 → 低域は40Hzぐらいまで素直に伸びており、聴感上不足を感じることはありません。
2.細かな音 → KX-5PXは細かな音が非常に良く聞こえます。例えばホールエコーが減衰して消えていく様子がかなりの部分まで聴き取れます。
3.詰まった音 → 既にKX-3Pの時からこの欠点は解消されており、周波数全域において詰まった感じはほとんどありませんし、ピアノの音にいたっては、エンクロージャーのピアノ塗装仕上げもあって、もっともピアノらしい音を聴かせるスピーカーです。低域についても詰まったというより適度な弾力感がある音です。これはブチルゴムエッジの採用、アルニコマグネットでのコイルの移動距離の大きい磁気回路とクルトミュラーのコーンによる軽い振動板、2種類の吸音材による空気バネの抑制など、様々な技術の複合で実現していると言えると思います。ちなみに昔の密閉型スピーカーは反りのあるレコードを再生しても、バスレフと違って空気バネの力でウーファーが揺すられることはほとんどなく、従ってアンプのサブソニックフィルターは不要でしたが、KX-1.5やこのKX-5PXはそれなりにレコードの反りまで再生します。
以上のような密閉型(エアーサスペンション方式)の欠点の解消を私は「渡邉マジック」と呼びたいと思います。渡邉さんは、1960年代半ばにコーラル音響に入り、その後ビクターに移って、2000年代初め頃からKriptonに移り、一貫してスピーカーユニットとスピーカーシステムの開発に携わって来られました。渡邉さんがSXシリーズ以来一貫してこだわり続けているのが、
1.密閉型+ソフトドームという構成
2.ウーファーのコーンにクルトミュラーの紙を使うこと
3.スピーカーの磁石にアルニコマグネットを使うこと
です。もちろん価格の安いモデルでは、2、3は必ずしも採用されていませんが、このKX-5PXはまさにこの3つが採用されており、渡邉さんが長年に渡って改良を続けたいわば集大成となっています。
またもう一つ特筆すべきなのが、KX-5Pから採用された砲弾型イコライザー付35mm口径ピュアシルクリングダイアフラム・ツィーターです。これはハイレゾのソースに対応するためということで、高域の周波数を伸ばすために採用されています。従来のソフトドームだとドーム頂点部とドームの周辺部で出た音が相殺しあって高域が伸びないということのようで、それを解消するために、振動板部を同心円状に二重にし、また中心に金属のイコライザーを立てた構造になっています。Kriptonのスピーカーはこのツィーターを採用してから、音が大きく変わったと思います。このツィーターは最高域が伸びた結果として可聴領域での抜けが良くなり、聴感上はかなり華やかな感じの音となっています。更にはKX-5PXの特性表を見ると、明らかに5KHz辺り(クロスオーバーは4KHz)にピークがあり、若干ではありますがハイ上がりの音です。なので、ポピュラーのいわゆるオンマイクの録音の女性ボーカルだと、若干サ行の子音がキツく響く場合もあります。(これはおそらく使い込んでいくと解消されると予想します。)しかしながら全体的に音を明るい方向に持っていっており、好ましい方向の変化だと思います。
低域については、低音楽器の音程の明確さがこれほどはっきり感じられるスピーカーというのも初体験で、オーケストラ音楽については、低音の上に組み立てられた音響・和声をきわめて正確に味わうことが出来ます。
音像については、大きさはTANNOY Autograph mini/GRの10cm同軸スピーカーの音に比べれば若干ですが大きめですが、一般的に言えば問題ない大きさで、実在感も優れています。音場については細かな音が良く聞こえることが音場感の良さにつながっており、音場は広く特に高さが良く再現されます。
結論として、このスピーカーは日本におけるスピーカー作りのマイスターである渡邉勝さんが完成させた、ほとんど密閉型(エアーサスペンション方式)の完成型に近いスピーカーと言って良いと思います。ジャンルも選ばず、ほとんど万人に推奨出来るスピーカーです。以上を渡邉勝さんへの感謝状とさせていただきます。
評価機器:
SACDプレーヤー
・デノン DCD-SX1
USB-DAC
・デノン DA-310USB
プリアンプ
・SPEC RPA-P5
パワーアンプ
・SPEC RPA-W5ST x 2台(バイアンプ接続)
アナログプレーヤー
・VPI Classic Turntable
カートリッジ
・オーディオテクニカ AT-OC9XSH
MC昇圧トランス
・オーディオテクニカ AT3000T
フォノイコライザー
・フェーズメーション EA-300
CD、SACD、ハイレゾ音源、LPにて評価。
Kripton KX-5PX
もうオーディオは打ち止めと思いながら、新居(中古一戸建てを4月末に購入)でオーディオ環境が劇的に良くなると、人生最後のスピーカーが欲しくなり、フロア型も検討しましたが、結局クリプトンのKX-5PXにしました。
このスピーカーを設計したのは渡邉勝さんで、渡邉さんはビクターで銘器SX-3を設計された方です。それ以来、密閉型+クルトミュラーのコーン+アルニコマグネットの2ウェイに生涯をかけてこだわり続けた方です。釣りで鮒に始り鮒に終ると言いますが、私にとっても密閉型ブックシェルフに始り、密閉型ブックシェルフに帰って来ています。アンプはスペックのD級アンプで、パワーアンプ2台でバイアンプにして聞いています。音は言うことないです。これまでで一番いい音です。至福の時。
スピーカーLS3/5Aの価格の今昔
私は1987年頃RogersのLS3/5Aというスピーカーを買いました。その時の資料が引っ越し(相模原に中古一戸建てを購入し、8月にそちらに移ります)による整理で出てきました。それによると定価でペアで14万円です。右は現在Joshinで売られている同じ型番のスピーカー(LS3/5AはBBCが設計・開発したもので、ライセンスを受ければどこでも製造出来ます、故にメーカーは違います)ですが(このファルコンのはオリジナルの3/5Aを忠実に再現したと言っています)、価格は税込みでペアで何と572,000円です。私が買った時に比べると実に4倍です。私はこのスピーカーを20年近く使いました。なので断言出来ますが、確かに名機ではありますが、50万円以上の価格で売られるようなスピーカーではありません。このスピーカーは非常にコンパクトで日本の住宅事情には良く合い、また見た目に比べると良く鳴りますが、決して万能型のスピーカーでも何でもなく、いわばサブ用に近いと思います。にも関わらず、過剰評価された結果として今はこのよう馬鹿高い価格で売られています。
50シングルアンプのキット、製作中。
50シングルアンプのキット、少しずつ配線しています。配線だけなら2/3は終ったと思います。後はコンデンサーと抵抗の取り付けです。ともかく重くてでかいので動かすのが大変です。また配線材について、これまで私が使っている配線材は太すぎるかな、と思っていたのですが、このキットに付いていた配線材は私の手持ちのものより太めでした。細い線材の方がまとめやすくて、見た目は綺麗になりますが、音質的には太い配線材の方がいいと思います。なお、私はシールド線は使わない方針だったのですが、このアンプは縦のサイズが長く結構線を引き回さなければならないのと、シャーシアースじゃないんで線をシャーシに這わせてもノイズ削減効果が期待出来ないので、大人しく付いていたシールド線を今回は使いました。
50シングルアンプのキット
真空管アンプ道楽の打ち止めのつもりのSUN AUDIOの50チョーク結合シングルアンプのキットが到着。キットといっても、トランスもソケットも各種端子類も全部取り付け済みで本当に配線するだけなので、2回徹夜くらいで完成しそうです。(元々自作を検討しましたが、電源トランスの仕様が特殊で高いなどで、ちょっと面倒でした。)ロッカースイッチが付いていたのは分っていたので、私の会社の製品を買って取替えてやろうと待機していたら、最初からNKKのJW-M11RKKがついていました。(ただマニュアルの部品表は「ニッカイ」)このスイッチの定格は125VACで10Aですが、このクラスのスイッチを最初から付けている真空管アンプは(残念ながら)珍しいです。なのでこのまま使おうかと思ったのですが、やっぱり片切りではなく両切りにしたいのでJW-M21RKKに交換します。幸いにパネルカットのサイズは同じです。また、スパークキラーの取付位置がスイッチの両方の接点に平行で、これだとスイッチを切っていても微小電流が流れますのであまり好ましいとは言えません。それからトランスとチョークはタムラ製です。一番品質的にはいいものです。というのもこのSUN AUDIOという会社は元々タムラのトランスの代理店だからです。他のパーツも良質のものを使っています。