NHK杯戦囲碁 小林覚9段 対 結城聡9段

本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が小林覚9段、白番が結城聡9段の対戦です。布石は両者4隅とも星打ちという、最近では珍しいものです。AIのMasterが星に対していきなり三々に入るという打ち方を多く試みて、その対策についてまだ十分研究が進んでおらず、プロ棋士が星打ちを避けるようになってきているみたいです。黒は白の左辺での大模様化を妨げるために左上隅に対して左辺からかかりました。しかし白はその意図を外して挟んだので、結局左辺は白が模様を張りました。右下隅では白が手を抜いて右上隅にかかり、白は実利を稼ぎましたが、その代わり右下隅にかかった石からの一連の石が弱くなり、この石がどの程度攻められるかがポイントとなりました。黒はその後左上隅の白の外勢にくっついている石を動き出し、あわよくば白の外勢を攻めて、右下隅の白石とカラミにしようとしました。しかしその間白は左下隅で大きく地をまとめ、地合では白がリードし、後は黒が二カ所の白石をカラミにして如何に得をして追い上げるかでした。白はまず右下隅の白石を安定させました。その後白は中央の黒2子を切断しようとするノゾキを打ちました。それに黒は受けず、上辺の白を攻める手を打ちました。しかし白は平然と黒2子を取り込んでしまい、地合は大差となって黒は上辺の白を全部取るしかなくなりました。しかし攻めている途中で黒が間違え、白石が活きて黒の投了となりました。もし黒が間違えなくても、白からは最悪劫にする手段はあったようで、劫材はどちらが多かったか分かりませんが、いずれにせよ黒が勝つのはなかなか大変ではなかったかと思います。

NHK杯戦囲碁 井山裕太棋聖 対 王立誠9段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が前期優勝の井山裕太棋聖、白番が王立誠9段の対局です。王立誠9段も過去棋聖を3連覇した名棋士ですが、如何せん井山棋聖とはかなりの年齢差があり、対戦成績は井山棋聖から見て9勝2敗だそうです。対局は井山棋聖が右辺で星と大ゲイマ締まりの組み合わせに対し白が右辺から右上隅にかかった後、黒が小ゲイマに受けた後、白が高く4間に開いたのが私としては珍しかったですが、世界戦で流行っている打ち方だということです。黒は高く打ち込んで行きましたが、白は下方の石を重視して、上方の石は黒からコスミツケられても手を抜き捨てて打ちました。右辺が一応一段落した後、白は左上隅を小ゲイマに構えましたが、その後黒が右辺に打ち込んだのが厳しく、結果としてこれが良くなかったように思います。黒は白の右下隅の4子をもぎ取り、黒は右上隅と右下隅でほぼ60目の地を確保し、地合では黒の大幅リードになりました。対して白は黒の1子を中央でゲタに抱えて厚く、白が左辺にどれだけ地を確保するかが勝負になりました。黒は左辺に割り打ちし、更に左下隅にかかって行きました。白はその黒の三間の間に打ち込んで行きました。しかし黒はその白1子を取って治まりました。白は黒が治まったので、ノゾキを決め、更に下から利かそうとしましたが、ここで黒は反発し、左下隅の白にノゾキをしました。白は受けずに結局左下隅は黒地となりまた黒地が増え70目レベルになりました。白としては白模様の中で切り離された黒を如何に厳しく攻めるかでした。黒は先に儲けているので全部を助ける必要はなく、半分捨て気味で打ち、一時は黒5子が取られました。しかしその後の黒のしのぎは巧妙で、左上隅に手をつけ、それと絡めながら、結局取られた5子も連れ戻してしまいました。こうなると確定地がものをいい、中央の白地もまとまらず、白の投了となりました。井山棋聖の常に相手の言い分に反発する打ち方が功を奏した一局でした。

NHK杯戦囲碁 村川大介8段 対 趙善津9段

本日のNHK杯戦の囲碁は高校野球の関係で1時間遅れの放送です。黒番が村川大介8段、白番が趙善津9段の対局です。どちらもタイトル経験者です。布石では村川8段が右下隅でかかってきた白にいきなりコスミツケたのが昔ではあり得ない打ち方でAIの影響です。また左上隅の白の星に対してこれまたいきなり三々に入ったのもやはりAIの打ち方です。このようにAIは確実にプロの打ち方を変えつつあります。その左上隅は白が黒のツケに手を抜いて左辺に開いたので、黒が跳ね出してここで戦いになりました。劫材としてはお互いに損コウを打つしかなく、白が劫材で這いではなくケイマにすべったため、黒は受けずに劫を解消しました。この結果、黒は左上隅で実利を取り、白は右下隅で切り離した黒をどう攻めるかが焦点になりました。白は黒を上手く攻め、上辺から中央にいい模様を築きました。黒はその間右下隅の石と左下隅の石が弱い石同士連絡することができました。黒は弱い石がなくなり、後は白模様をどれだけ削減するかが勝負でしたが、黒が白模様に進出した隙をついて白は黒の一間トビに割り込んで、黒の連絡の薄みを突いて形を整えに行きました。黒は下から切って当てていれば無事でしたが、そうすると白の形が厚く、左下隅に侵入されて勝てないとみて、上から当てて頑張りました。白は右下隅からの黒を切断して活きを強制し、上辺も目一杯の手を打って頑張りました。黒は左下隅と上辺の白模様に侵入した一団がつながりましたが、全体の眼がはっきりしませんでした。黒は左上隅で取られていた黒2子を利用して劫で白を切断に行き、これでしのごうとしましたが、結局劫の振り替わりでは白がはっきり優勢で、黒は謝る手を打ち、劫は白がつなぎました。しかし謝った手を打ってもなお黒の活きははっきりせず、隅に眼を作ろうとしましたが上手くいかず、黒の一団は死んでしまい、ここで投了となりました。趙9段の厚みを活かした鋭い攻めが光った一局でした。

NHK杯戦囲碁 許家元4段 対 高尾紳路名人

8月13日のNHK杯戦(旅行中だったので録画で視聴)は、黒番が許家元4段、白番が高尾紳路名人の対局です。この2人の対局はこれまで何と許家元4段の2勝0敗だとか。本局は、何というか非常にプロらしい、戦いが延々と続き、お互いに相手の石を突き抜き合い(どちらも「割かれ形」)、振り替わりに継ぐ振り替わりで、生きていた石が死に、取られていた石が生還し、という目まぐるしい展開でした。特に黒が下辺に侵入しようとした手を受けずに白が右辺に侵入し、右辺の黒を取ってしまう(攻め取りですが)になりました。この過程で司会の長島梢恵2段が指摘した手をおそらく両対局者とも気付いていなくて(解説の羽根直樹9段も気がついていませんでした)、もしそう打たれていたらまた違った展開になっていて、どちらが勝ったかは分かりません。結果的には白の高尾名人の半目勝ちで、白から劫を仕掛ける手段があるのを劫にせず終局したので、高尾名人がわずかな優勢を読み切っていたのだとは思いますが、どちらにころんでもおかしくない激闘でした。

NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 河野臨9段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番瀬戸大樹8段、白番が河野臨9段の対戦。これまでの2人の対戦成績は河野9段から見て4勝3敗とほぼ互角で、トップ棋士の一人である河野9段にほぼ互角というのはすごいと思います。対局は4隅すべて小目でしかもその全てでかかってという、ありそうであまりない布石でした。右上隅の攻防が焦点になりましたが、攻められている白が黒1子を取ってはっきり活きにいったのに対し、黒がその1子を逃げ出した打ち方が疑問で、白はうまく立ち回って中央と上辺を見合いにしたのが上手く、結局黒は中央に一手入れる間に上辺を突き抜かれ、眼二つで活きなければならなかったのは非常に辛く、形勢は大きく白に傾きました。黒は中央を押して行って厚みを築き、左辺の白に打ち込んでいきました。しかし白の1子のしのぎは容易で、簡単に地をもって治まりました。しかし、白が逆に打ち込んでいった黒1子を攻めにいったのがある意味打ち過ぎで、狭間をつかれて逆襲され、黒は左辺を分断し、左下隅にも利かすことが出来て、先手で切り上げ下辺の黒模様を盛り上げる手に回っては、黒がかなり挽回しました。しかしまだそれでも白が優勢だったと思いますが、寄せで河野9段は形勢を楽観していたのか、手堅い手を打ち過ぎました。中央の黒には薄みがあり、白はそこを追及してうまく得を図ることが出来た筈ですが、実際には黒がうまくまとめて8目程のいい地をもって治まりました。結果として黒の半目勝ちという大逆転劇でした。勝ち碁をきちんと勝ちきることがいかに難しいかを如実に示した一局になりました。

補遺:天頂の囲碁との九路盤互先(こちらが黒番)半目勝ち

先の天頂の囲碁との九路盤互先で黒半目勝ちとなった対局の最善手を追求して、途中黒29を変えたら、結局黒44目半勝ちになりました。どうも天頂の囲碁は自分が不利になってからの打ち方がおかしいようです。

NHK杯戦囲碁 秋山次郎9段 対 洪清泉3段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が秋山次郎9段、白番が洪清泉3段の対局です。秋山9段は緑星学園出身で天元戦の挑戦者にもなったことがある強豪です。洪3段は韓国出身で韓国で棋士になろうとして果たせず、日本にやって来てアマ棋戦で優勝して活躍し、その後関西棋院でプロ棋士になった人です。また、先日アルファ碁に関する本を紹介した洪道場の主宰者でもあります。対局は白が4手目で右下隅にかかり、黒が残りの空き隅を打った後、白は右下隅でケイマにかけ、黒が付け引いて治まりに行った時、普通白は断点を固く継ぐのですが、継がずに下がりました。これに対し黒も気合いで切っていき、いきなり戦いが始まりました。その戦いでは双方目一杯の手を打ちました。その戦いの中で黒が右辺の一団からケイマにかけたのが少し薄い手で白から逆襲をくらい、結果として白が中央ではっきり治まって、ここでは白の打ちやすい碁でした。黒はそこで左上隅にかかった後すぐ三々に入りました。白がやや妥協したので黒は隅をえぐり、かつ左辺にも展開出来ました。しかし左辺は黒模様のように見えても回りの白が厚く、なかなか大きな地にはならない所でした。ここで黒が上辺の白に横付け(10の3)したのが目一杯頑張った手で白が伸びて黒がはねて白が押さえた時に黒はかけついで、右上隅から上辺右にかけて目一杯に地模様を張りました。これで形勢は細かくなり、どちらが勝つか分からなくなりました。ここで黒が白の勢力圏にある2子を助けず白に取らせたのが好判断で、その間に黒は逆寄せを2カ所で打つことが出来ました。また取られた黒2子も絞る筋があり白の地はそれほど大きくなりませんでした。その後右上隅で劫争いが起きましたが、白の劫立てに受けずに劫を解消したのがまた好判断でした。こうして黒がリードを広げ、また左下隅で白が寄せを間違えたこともあり、終わってみれば黒7目半勝ちの大差になりました。

天頂の囲碁との九路盤互先(こちらが黒番)半目勝ち

天頂の囲碁との九路盤の互先での対局、こちらが黒番ですが、何とか半目勝ちすることができました。これまで互先で勝ったのは何度かやり直しをしていました。今回、やり直し無しで勝てた初の対局です。左下隅は過去に勝ったパターンと同じようですが、天頂の囲碁側もあれから色々変化してきており、その後勝つことがなかなか出来ていませんでした。今回やっと勝てました。左下隅の白を包囲している黒は二眼を作らないといけません。攻め取りだと5目中手は手数が長いので大抵攻め合いに負けます。

NHK杯戦囲碁 安達利昌4段 対 内田修平7段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が安達利昌4段、白番が内田修平7段の対局です。安達4段は今回初出場で年齢も20代後半同士のフレッシュな対決です。二人は今回が初手合いです。布石は白が左辺で向かい小目を採用しましたが、黒が左下隅にかかったのを白が三間高バサミし、黒が更に左上隅にかかりました。黒は白が下付けしたのに手を抜いて左下隅を大斜ガケしました。白はこれに対しコスミツケて簡明な分かれを選択しました。下辺を黒は先手で切り上げ、左上隅に回って、白は2つの隅と下辺で実利を得ました。焦点は最初に三間高バサミで挟んだ白の1子が黒の勢力圏に取り残され、これへの攻撃としのぎが勝負のポイントになりました。白はその後左辺から逃げた石から、通常中央に一間に飛ぶ所でケイマにかけました。黒は当然出切ってきて、白1子を切り離して中央が厚くなりましたが、白も好形で脱出しました。このあたり、白の打ち方が明るかったと思います。その後右辺に黒がどれだけ地を築けるかが焦点になりましたが、白は右辺に先着し、それなりの地をもって治まりました。これで白が優勢になったようです。その後黒は右下隅を二間に構えて白に寄り付きながら地を目一杯取ろうとしましたが、白はこの右下隅にも手をつけ、結果として劫になりました。劫材は黒の方が多かったのですが、白は形勢判断したのか程々の所で手を打って妥協しました。黒はその間中央の白の分断をにらみながら上辺に手を付け、ここで得をしましたが、白の優勢を跳ね返すまでには至りませんでした。黒は全体に地が足らず、結局白の中押し勝ちとなりました。