本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が依田紀基9段、白番が志田達哉7段の対戦です。志田7段は私が今一番注目かつ期待している棋士で、近い内にタイトル戦の挑戦者として名乗りを上げてもおかしくない棋士だと思います。対局は依田9段が2連星から左上隅でなだれていき、厚みを築いて模様の碁を志向しました。志田7段はこれに対し右辺をワリウチし、右下隅にも入って地で先行する構えです。その右下隅の折衝で依田9段はラッパに継ぐ前に右辺の白にノゾキを打ちここを先手で決めてから継ぎに戻り、ここで黒がポイントを上げました。これに対し白は包囲している黒に割り込みを打ち、いつでも右辺で活きる手段を残しました。その後白は上辺に打ち込み、ここの攻防が勝負のポイントとなりました。白が一連の折衝の後、黒1子をシチョウに抱えたのに当てを利かされましたが、白は受けずに左上隅の黒に迫ったのが機敏で、その後更に左上隅の黒の急所に打って、黒は苦しくなりました。その後黒は包囲している白を出切ったのですが、これが無理気味で上辺で黒は何とか活きましたが、白の左上隅の取り込みが大きく、ここで白が優勢になりました。黒は右辺の白に対し、先に白が打った保険のような手の効果を打ち消す手を打ち、この白に襲いかかりました。しかし白は抵抗せずあっさりと右辺の石を捨てました。これで右辺の黒地は70目以上の規模にまとまりましたが、白も左辺の確定地と厚みでそれに十分対抗出来ていました。左辺は黒が打ち込んで多少の地をもって活きるスペースはありましたが、黒はそれでは足らないと見て、取られていた黒を引っ張り出しました。双方持ち時間がなく、一手30秒の攻防で最善手はお互い読み切れませんでしたが、結局黒はかなりの部分を助けだして活きました。しかし、それでも白は各所で得をしていて、白リードは変わりませんでした。その後白は上辺の黒に上手いヨセを打ち、勝利を確定しました。終わってみれば、白の10目半勝ちという大差でした。