稲垣浩監督の「無法松の一生」(1943年)を初めて視聴しました。新しいブルーレイプレーヤーを買った記念(?)です。これまでこの有名な映画を観る機会がありませんでした。また、戦前に内務省によって、また戦後にGHQによってと2度も検閲を受けてずたぼろにされた作品ですが、それでも名作ですね。阪妻は先日「狐の呉れた赤ん坊」を観ましたが、その主人公ともちょっと共通点があって、こういう役はぴったりはまっています。吉岡夫人を演じていた園井恵子は、広島の原爆に遭って亡くなってしまったということですが、物語の舞台となっている小倉も、寸前の所で原爆の惨禍に遭う所だったのを考えると、複雑な気持ちです。(長崎に投下された原爆は当初は小倉に落とされる筈でした。)この映画のクライマックスで出てくる小倉祇園太鼓の暴れ打ちは、創作で実際のものとは違うそうです。山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズはこの作品の影響を受けているそうで、主人公の車寅次郎という名前も、松五郎が車屋だったところからつけたそうです。
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丸根賛太郞監督の「狐の呉れた赤ん坊」
丸根賛太郞監督の1945年(戦後)の作品、「狐の呉れた赤ん坊」を観ました。橘公子の実際の銀幕での姿を見たくて買ったDVDですが、実に泣けるいい映画でした。戦後の撮影でGHQにチャンバラを禁じられているため、斬り合いのシーンは一ヵ所も出てきません。荒くれ者が子供を可愛がるというのは、同じ阪妻の「無法松の一生」と共通しています。最後のシーンで、善太がある大名のご落胤であることがわかって、本当の父親である大名に会いに行くために、大井川を渡ろうとして、蓮台に載せた立派な駕籠が用意されているのに、善太が「ちゃんの肩車がいい」と言うのが泣かせます。(善太を拾って育てた張り子の寅は大井川の川渡しの人足です。)
目的の橘公子もまあ可愛かったです。
「仁義なき戦い 完結篇」
「仁義なき戦い 完結篇」視聴。
この第五部は笠原和夫の脚本ではありません。で、脚本の出来不出来を言うより、どこまで腹をくくって事実を抉って脚本化するかという点で笠原脚本よりも劣るように感じます。
また、配役もかなり変に感じます。第2部の主人公だった北大路欣也が復活するのはまあ許せるとしても、第4部で殺されたばかりの松方弘樹がいきなり別の役で復活するのは違和感ばりばりです。(しかもすぐまた殺されるし…)第2部では千葉真一が演じた大友勝利がこの部では宍戸錠ってのもイマイチかな。(宍戸錠は日活作品ではいいけど、他社作品ではイマイチという評あり。)また、柔道一直線の桜木健一が、格好いい所のまったくないチンピラ役で登場し、最後に殺されて、それで広能が引退を決意するというのも、何だかなあ、です。やっぱりこの作品は第4部までかなと思います。
「仁義なき戦い 代理戦争・頂上作戦」
「仁義なき戦い」第3作代理戦争と第4作頂上作戦を続けて視聴。まだ第5作完結篇が残っていますが、笠原和夫が脚本を書いたのは第4作までです。
「代理戦争」の名前の通り、広島・呉の地元のやくざの戦いながら、バックにいた神戸の山口組と本多会の代理戦争が描かれています。ただ、小林信彦の「われわれはなぜ映画館にいるのか」に出てくる笠原和夫の解説によると、何故広島で争う必要があったかについては、中国地方進出を模索する山口組と下関の合田一家の争いが背景にあるということです。
個人的には、役者の豪華さに酔いしれます。菅原文太、成田三樹夫、小林旭、松方弘樹、梅宮辰夫、田中邦衛、金子信雄、山城新伍といった綺羅星のごとき役者の見せる、裏切りにつぐ裏切りの群像劇に心を奪われます。
「仁義なき戦い 広島死闘篇」
「仁義なき戦い」
シン・ゴジラ
シン・ゴジラ観てきました。傑作というほどではなかったですが、まあまあ楽しめました。それに、第1作へのオマージュが感じられたのが良く、特に伊福部昭の音楽がそのまま使われているのが良かったです。伊福部のゴジラ第1作の音楽はあまりにも有名ですが、あの低音部の繰り返しは技法的にはバッソ・オスティナート(執拗なバス)と呼ばれ、バッハが受難曲で、キリストの十字架を背負っての道行きの場面で使っている技法です。つまり伊福部昭はキリストの十字架を背負ってとぼとぼ歩く場面に使われた音楽をゴジラの歩みに転用したのです!
全体に悪くはなかったですが、よく振り返って見ると、結局第1作のリメイクに過ぎないような気がしてきました。確かにマニアが評価するのは第1作だけなので、それしかないような気もしますけど。
結局新しい何かを付け加えたかというと、
(1)ゴジラが段階的に進化していくという設定
(2)JRの列車(新幹線と在来線)を使った攻撃
の2点ぐらいかな、と。
フラバァ続編(Son of flubber)
DVDで先日観た「フラバァ」の続編、「Son of flubber」(邦題:フラバァデラックス、1971年の再映時には新フラバー)を視聴。続編に傑作なし、で前作よりはかなり劣りますが、それなりには楽しめました。前作では非常に弾性の強いゴムであるフラバァを発明したレイナード博士ですが、今回は、そのガス版であるフラバァガスを発明します。前作では、フラバァをバスケットシューズの底につけた選手達がバスケットボールの試合でぴょんぴょん跳ねて活躍するのが爆笑シーンでしたが、今回はアメリカンフットボールです。博士はフラバァユニフォームを開発し、選手の一人に着せます。その選手を味方が抱えて放り投げると、その選手は空中を飛んで行き、ゴールまで一直線です。その選手の活躍で1点差まで迫ったのですが、あと少しという所で、ユニフォームのガスが抜けてしまいます。でもその選手はフラバァガスのチューブをもう一本隠し持っていて、それをユニフォームではなく、ボールに注入します。そのボールを蹴って、「98ヤード」のフィールドゴールに成功して、逆転勝ちします。(ちなみにフィールドゴールの実際の最長記録は64ヤードです。)最後の場面で、そのボールが人工衛星の間を飛んでいる様子が描かれます。宮下あきらの漫画で、投げたボールが人工衛星に当たって落ちてくる、というのがありましたが、それに先行するギャグです。
フラバァ(The Absent-Minded Professor)
ウォルト・ディズニー・スタジオの1961年の映画、「フラバァ」(うっかり博士の大発明 フラバァ)を取り寄せて観ました。亡父が、私が小学4年生の時に、一度だけ連れて行ってくれた映画が「トラ・トラ・トラ」でその時にリバイバルで併映されていたのがこの「フラバァ」でした。コメディー映画の傑作です。お話しは、ある大学の化学のブレイナード教授が、いつも怪しげな実験を繰り返しているのですが、偶然に、フラバァ(Flying Rubber → Flubber)という物質を作り出してしまいます。この物質は弾力性にすばらしく富んでいて、またそれ自体がエネルギーを持っていて、これをくっつけるとくっつけられたものは宙に浮きます。
丁度ブレイナード教授の大学のバスケット部とライバル大の試合がありましたが、教授の大学のチームは身長が低く、ライバル大にまったくかないません。ですが、ブレイナード教授がチームの選手のバスケットシューズの底にフラバァをくっつけたので、選手達は驚異的なジャンプ力を身につけ、試合に逆転して勝ちます。このバスケットボール試合のシーンが爆笑ものです。
また、フラバァの力を知った成金が、だまされてフラバァ付きのシューズを履かされ、ジャンプし始めると止まらなくなり、TV中継がやってきたり消防署がやってきたりと大騒ぎになるシーンがまた爆笑ものです。子供たちがこのジャンプのシーンを眺めながら、アイスキャンデーを舐めているのですが、ジャンプで上下するのに合わせて子供たちがアイスキャンデーを上下に舐めるのがまた笑えます。
教授はさらに、フラバァを自分のおんぼろT型フォードに組み込むと、このT型フォードは空を飛ぶようになります。教授はこのT型フォードでワシントンに向かって、自分の発明を政府に認めてもらおうとするのですが、UFOと間違えられてジェット戦闘機に追いかけ回されたり、ミサイルに狙われたりします。
小林信彦は、この映画を封切り時に観ていて、「地獄の映画館」の中で、スラップスティックコメディーの典型例として、この映画を高く評価しています。
この映画は1997年にリメイクされています。